少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
・前回の誤字の指摘ありがとうござました。(スペカって……某同人シューティングゲームに出てきそうですね)
・スピカが使っている小屋って、部室でいいのかな?
ウオッカとダイワスカーレットが部室を出た後、俺は部室の片付けをし、そしてスピカの部室で課題をやり始めた。
そして課題が終わったのは45分後くらいだったのだが……一番苦手な数学の課題で頭をいつも以上に使ったからか、眠気が襲ってきた。
寮が近いからすぐに帰ろうと思ったが、残念ながら俺の体はその場で睡眠を所望だったらしく、結局課題で使った机に突っ伏して仮眠を取った……。
***
久しぶりにあの子の夢を見た。
それはまだ幼い頃の断片的に残っている記憶・思い出だ。
俺とあの子はいわゆる幼なじみというものだった。
生まれた都道府県も町も……そして病院も時期も一緒だった。
俺が4月30日に対して、あの子は5月1日。
さらに偶然の連鎖は続くもので、俺とあの子のお母さんは同じ病室で同じ日に退院、そして家も道路を挟んで向かいにあり、俺とあの子のお母さんは馬があったのか分からないが親睦を深めていた。
そしてあの子……『スズカ』って言う子ーー俺はさらに縮めて『スズちゃん』と呼んでいたーーとも仲良くなっていった。
基本どちらかの家にいることが普通で、それこそ俺とスズが別々になる時はどちらかが旅行に行く時くらいで……それくらい俺がスズカの近くにいることは俺の中では当たり前を通り越して、自然なことだった。
そんな俺たちを見て、俺とスズカのお母さんたちはにこやかに会話していた。
「まるで本当の兄妹みたいね」
「きょ〜だい? きょ〜だいってなに?」
「玲音くん、兄妹って言うのは仲が良いって言うことなんだよ」
「そして玲音はスズカちゃんの近くにずっといて、守ってあげるの」
「まもる……?」
俺はとても幼かったので、お母さんたちが言っている意味が全然理解できない。
でも本能的に俺は守ると言う行動が分かったのか、俺はスズカのことを見て……そして手を握った。
「これは……まもる?」
「ええ、ずっと近くにいてあげること……それが守るってことよ」
「うん! ぼく、スズちゃんのちかくにいる!」
ぎゅっと握っている手に力を入れる。
すると、スズカの方も手の力を強めたのだった。
「スズちゃん?」
「わた……しも、ちかくに……いる」
「うん! ぼくとスズちゃんはずっとちかくにいる!」
「うん……!」
そう言って、笑みを浮かべてくれるスズカ。
子供だったから細かいことは分からなかったけど、一つ確かなことがあった。
それはスズカの笑顔を見ると、こっちも笑顔になって心がドキドキ……満足感や幸福感で満たされるということ。
「本当……仲睦まじい子たちね。このまま結ばれちゃったりして」
「そうですね。そうなると息子がウマ娘の子と……喜ばしいですね」
「さ、流石に冗談ですよ。仮にそうだとしてもまだ早いですよ」
「そんなことありませんよ、10年や20年なんて私たちおばさんからしたら早いですよ……ゴホッ! ゴホッ!」
「あらあら大丈夫ですか? お水持ってきますね」
「はい……ありがとうございます……」
・ ・ ・
そうして少しずつ俺とスズカは成長していったが……俺はある日からスズカにどう接せればいいのか分からなくなってしまった。
その理由として、心身の成長……それにより”考える”という事をするようになったからだ。
そして俺は……考えてしまった。
なんで俺とスズカは容姿があまりにも違うんだろうって……。
スズカには長い耳があった。長く自由に動く尻尾があった。
俺とスズカは全然似つかない……そのことに戸惑いを起こしていた。
そして何よりずっと一緒にいたのに……そのことに気づかなかった自分自身に一番困惑していた。
そんな風にお母さんに聞いてみると、ベッドに腰をかけながらこちらを向いて話してくれた。
「玲音、スズカちゃんはね、ウマ娘なの」
「うま……むすめ?」
「そう、彼女たちは走るために生まれてきたの」
「走る……それだけ?」
幼稚園でも駆けっこなどで走ったりはする。
だけれど走っても何にも楽しくない。だけどスズカちゃんはすごく楽しそうに走ってた。
まるで……走れることこそがスズカの生きがいみたいにも見えた。
そういうところを見ていれば、お母さんが言っていることも分かるような気がする。
でも……なんで走るんだ?
走って……一体何になるんだ?
「ウマ娘の走りはね、私たちに感動を……奇跡をくれるの」
「きせき……」
”かんどう”という言葉は知らなかったが、”きせき”という言葉はスズカのお母さんから言われたことがあったので意味が分かった。
きせき……それは不可能を可能にする不思議な力。
それをスズカがあげることが出来るのかと……。
「スズカちゃんはいずれ、多くの人に奇跡を与える子になる……でも、玲音にはもっと簡単な言葉があったわね」
「なに?」
「玲音はスズカちゃんのお兄ちゃんでしょ」
「っ! そうだった……」
そうだ。別にスズカで悩む事は無かったんだ。
だって俺はスズカのお兄ちゃんなんだ。スズカが何であろうと関係ない。
俺は……スズカの近くにいて、守ればいいんだ。
「ね? 簡単だったでしょ?」
「うん! ありがとうおかーさん!」
「どういたしまして」
「おかーさんも、早くげんきになってね!」
「……えぇ」
そう言って、お母さんは少しか細く笑みを浮かべた。
ーー数ヶ月後、お母さんは帰らぬ人となったーー
お父さんは俺が生まれる前に死んでしまい、母子家庭だった。
だがお母さんが死んでしまい家族がいなくなった結果、俺は親戚に引き取られることになった。
そしてそれは……スズカと生まれ育った町を離れていくということだった。
***
何かが震えるような感覚がして、目が覚める。
その感覚の方に目を向けてみると、俺のスマートフォンに謎の電話番号から呼び出しがかかっていた。
「……」
知らない電話番号の電話は取らない方が良いというのは分かっている事だが、何故だかこの電話だけは取らないといけない気がした。
俺は通話ボタンを押して、電話を耳に当てる。
「もしもし?」
『あぁ玲音? オレだけど?』
あっ、これ詐欺か。
「すみません、オレオレ詐欺はちょっとーー」
『いや詐欺じゃないからトレーナーだから、今どこにいる?』
あ〜トレーナーだったか。
……いやトレーナーなんで俺の電話番号知ってるの!?
って、今いるところ?
「スピカの部室ですけど……」
『はぁ? まだ部室なのか……まぁいいや。お前そこで待機な』
「えっ、なんでですか?」
『なんでって、紹介したい奴がいるんだよ』
紹介……そういえば、先生は確か今日誰かのスカウト交渉に行ってたんだよな。
もしかしてその人かな……そう先生に聞いてみると合っていた。
「そう言う事だからよろしく」
ツーツーと、向こうの方から電話を切った。
……さてどうするか。
俺はここで待機は確定。つまりやれる事は限られる。
まっ、スマホで時間を潰しておけばいいか。
そう考えて俺はスマホに入れている、馬という架空の4つ足の動物を育成し、レースに参戦するゲームをやり始める。
・ ・ ・
そして……30分くらい経ったところトレーナーから再び呼び出しがかかった。
『着いたから校門に来てくれ』
そしてすぐに切られる電話……俺はカバンを持って校門の方に向かって歩く。
それにしても、トレーナーが1日……いや、長い間ずーっと交渉しているウマ娘ってどんな子なんだろう?
すごくやる気があるとかかな。脚が良いウマ娘ははっきり言って、スピカに入ることはないと思うんだよなぁ。
そういう子はリギルとかがマークしている気もするけど……なんて考えると校門のど真ん中でトレーナーがポケットに手を入れながらこっちを待っていた。
「来ましたよ先生……で、スカウトした子は?」
「そう慌てるな……”スズカ”、こっち来い」
「えっ……はっ?」
今トレーナー……なんて言った?
いや、いやいやいや……そんな訳ない。
幻聴が聞こえただけ……そうに決まってる!
トレーナーは校門の外の方に視線を向けている。
自然と俺もその方向に顔を向ける。
やがてカツカツと足音が聞こえ……ゆっくりとその子は姿を現した。
学園の街灯に照らし出されたのは……明るめの栗毛の長い髪。
そして耳につけている緑のカバーアクセサリー。
俺は言葉を失い……呼吸は荒くなっている。
心臓はすごい早さで鼓動を打っている……全身から汗が噴き出してくるのが分かる。
落ち着け俺……そんな訳が無い。
あぁくそ、考えが重複してしまう。
でも俺の中には信じられない俺ともう一人、”今度こそ”信じたい俺もいる……だから、勇気を出してこう言った。
「スズ……ちゃん?」
「えっ……レオ……くん?」
間違いない……彼女は言った。レオって……。
それはあの子が使っていた……俺の愛称。
「玲音、紹介する。こいつはサイレンススズカ……明日から正式にうちのチームに加入する子だ」
「あっ……あぁ……!」
それは……ずっとずっと期待し続けてきた……幼なじみとの再会だった。
・これはスズカ、キャラ崩壊になるのか?(個人的にはセーフ)
・タグどうつけるべきか悩む。
・今度こその意味は次回に。