少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
・UA91,000・92,000、6話のUAが10,000を突破しました。みなさま誠にありがとうございます!
・読者様から「スペのタグも増やしたら?」と提案されたので、”スペシャルウィーク”のタグをつけました。貴重な提案、ありがとうございます。
「ふふふん、ふふふん、ふっふっふ〜ん♪」
自分の寮の部屋で上機嫌に、いつも飲んでいるはちみつドリンク店のCMソングを口ずさみながらボク、トウカイテイオーは着替えをしていた。
ちなみに同室のマヤノ(トップガン)はまだ寝ている……平日休日ではあるけど、流石に寝すぎなんじゃないかな?
でもまぁ寝る子は育つって言うし、このままでも多分大丈夫だよね!
「……んっ、テイオ〜ちゃん?」
「あっ、マヤノ……起こしちゃった?」
「んん〜、だいじょ〜ぶだよ……」
すごく眠たそうな声を出しながら、ゆっくりと体を起こすマヤノ。小さく可愛らしいあくびもした。
「あれ、テイオーちゃんどこか出かけるの?」
「うん、ちょっと街にチームの先輩と買い出しを手伝うことになってね」
「そうなんだ……気をつけてね〜」
「うん、行ってくるね!」
そう言ってボクは寮の部屋から出る。あっ、そうだどうせだったらこのままスペちゃんの部屋まで行こうっと。
なんて思ってたけど……向こうから見知った顔が現れた。
「あっ、テイオーさん!」
「やっほースペちゃん、今からそっちに行くつもりだったんだ〜」
「私も準備できたんで呼びに行こうと思ってたんですよ!」
へえ、スペちゃんもボクと同じこと考えていたんだ……なんだかボクたち、
「私たち気が合いますね!」
「ボクたちは気が合うね!」
「「あっ」」
なんともまぁ面白いタイミングにハモったから、ボクとスペちゃんはその場で少し笑った後、寮を後にした。
・ ・ ・
ボクたちがやって来たのは駅前……って言っても、何か買おうとか考えると行くところはここくらいしか無いんだけど。
それでもボクはここよりも田舎に実家があるから、今でもこの都会特有のうるささと空気は慣れない……なんて思ってたらこの地域って東京の中でもまだ比較的田舎な方と知った時、ボクは叫びそうになったけどね。
ちなみに今日のお出かけはスペちゃんの買い出しの手伝いだ……同室にはスズカがいるらしいけど、今日は少し遠くまで出かけているらしい。
……そういえば、スペちゃんは今日何を買うんだろうか?
「ねぇスペちゃん、今日の買い出しの目的ってなんなの?」
「えっと、実は今週の土曜日の30日って、玲音さんのお誕生日なんですよ。ですからプレゼントを作るための毛糸と道具を少々……」
「ちょっと待って!? えっ、玲音って今週誕生日だったの!?」
「そうらしいですよ? 私もこの前の休日にスズカさんに聞いただけですけど……」
そうなんだ……玲音、あと数日で誕生日なんだ……。
それだったら言ってくれたっていいのに〜……いやでも、自分から自分の誕生日を教えてプレゼントを要求するっていうのは中々に図々しい態度になっちゃうのかな? それにまだ会って数ヶ月の人にプレゼントを貰っても普通は困惑するよね。
そんな風に考えているとスペちゃんは駅前にあるビルの中に入る。そしてエレベーターに乗って5階のボタンを押す。
5階には確か……あぁなるほど、スペちゃんが行きたいところが分かった。
なんて思っているとエレベーターはあっという間に5階に到着して扉が開く。そして目の前にあったのは超有名な100円ショップ。
確かここのフロアの半分以上が100円ショップだったはず。
「ここが全ての商品が100円のお店なんですね!」
隣にいるスペちゃんは初めて遊園地に来た子どものように興奮していた……めちゃくちゃ尻尾を振りまくっているけど……もしかして。
「スペちゃんって100円ショップ初めてなの?」
「はい! 私の住んでた地域はかなり田舎で100円ショップなんて無かったんですよ。その代わりなんでも屋さんみたいなものはありましたけど」
「へぇ……」
100円ショップがないって、どれだけ田舎なんだろ? ボクの実家は東海地方の田舎と言える方だったけど、普通に100円ショップがあったけどなぁ……。
まぁでもあそこよりも田舎なところはこの日本にはたくさんあるよね、ボクの実家の地域で運行しているバスは1時間に一本だけど、1日に三本しか来ないところもあるって聞いたことあるし。
「それでも全てが100円なんてすごいですね! わぁ! この食器も100円!? わぁ……すごい」
スペちゃんは棚に並べてあった食器を手に取って、そのクオリティーの良さを体感している。
確かに100円ショップの商品ってかなり高クオリティーだよね……お店とかでもそれっぽいものとかあるし。
「スペちゃんは食器系を買うの?」
「いえ……でも一つは買っていこうかなぁ、でも寮だと使い道が……」
スペちゃんはそこでむむむっと悩んでいたが……食器を棚に戻して、代わりにその隣にあった小洒落たコップを手に取った。
確か寮の食堂って紙コップはあるんだけど、自分で持って来たコップで飲む子も多いんだよね、スペちゃんもそっち派なのかな?
「えっと、100円ショップって毛糸も売ってますかね?」
「普通にあると思うよ。あの奥に手芸って書いてあるからそっちにあるんじゃないかな?」
そう言いながらボクは手芸コーナーの方に進む、後ろからスペちゃんもついてくる。
そして手芸コーナーに足を踏み入れてすぐにスペちゃんの目的の物である毛糸があった。スペちゃんは迷わずにベージュ色と灰色の毛糸を取って、その横にあった長い竹でできた棒(棒針というらしい)ととじ針、そして糸を切るためのハサミを買い物カゴに入れる。
「スペちゃん、もしかして手編みのプレゼントを送るの?!」
「はい! スズカさんにはマフラーを、玲音さんには手袋を上げる予定です」
「えっ、今から作るの?」
というか玲音だけじゃなくて、スズカも誕生日だったんだ……。
「よく実家で手袋とかマフラーとかの編み物とかはよくやってたんですよ。お母ちゃんと作りあってその季節はそれをお互い着けていたなぁ……」
「へぇ……お母さんと仲が良いんだね」
「これくらい普通じゃないですか?」
「……ううん、そんな事ないよ」
そう言って、ボクは実家にいるパパとママのことを思い出す。
別にボクと両親は仲が悪いって訳では無いと思う……だけどここに入る時は少し揉めた。
『レースで生きていけるウマ娘はごく少数だぞ、なぜ険しい道を進もうとするんだ?』
『分かってあげてテイオー、お父さんはあなたのために言っているのよ?』
もちろんパパが言っている意味も、ママがパパの意見を重んじている意味もボクは分かっていた。
だけど、それでもカイチョーみたいなウマ娘になりたいという想いは当時のボクは変わらなかった。それにボクはエレメンタリークラス(小学生のウマ娘が出るレース)では良いところまで行ったことがある……だから中央でもやっていけると思っていた。
最終的には入学は認めてくれたけど……でも、最後までパパの顔は浮かないものだったなぁ……。
「テイオーさん? 急に暗くなりましたけど、具合でも悪いんですか?」
「えっ……あぁ大丈夫大丈夫」
「そう言えばテイオーさんは誕生日プレゼントは贈らないんですか?」
「いやいやスペちゃん……一応ボク、スペちゃんに今日教えてもらうまで2人の誕生日知らなかったから」
前もって知っていれば用意していたかもしれないけど、今持っているお小遣いはなし。寮に戻れば幾らかはあるけど、誕生日プレゼントとしては相応しいのが買えれるか微妙な金額なんだよねぇ……。
「スペちゃんは何で2人にプレゼントを贈るの?」
「スズカさんと玲音さんには日頃からお世話になっていますから……その感謝の気持ちです。これ買ってきますね!」
そう言ってスペちゃんは会計の列に並んで行った。
それにしても、スペちゃんって本当にすごいなぁ。会ってまだ数ヶ月の人にプレゼントを贈れるなんて……それも年上の人と異性の人。
それが普通なのかな……いや、そんなことは無いんだろうな。
・ ・ ・
「今日はありがとうございました、テイオーさん!」
「ううん、スペちゃんお買い物ができて楽しかったし、お昼もご馳走になっちゃったからね」
ボクたちはあの後同じビルの8階にあるレストランエリアでお昼を取った。何でもオムライス専門店というもので、ボクはホワイトオムライス(卵が白っぽく、掛けられているソースがホワイトソースで、中のご飯はチーズリゾットみたいになっていた)、スペちゃんはキャロットオムライスなるものを食べた。結構美味しかった。
そしてお昼を取って、ボクたちは他愛の無い世間話をしながら、トレセン学園の帰路についている。
……ふと車道の向こう側にある施設がボクの視界に入る。
その建物は……ゲームセンター。
よく休日とかにダンスゲームとかをやりに行くボクのお出かけスポットの一つ……でも今日はダンスゲームの方ではなく、その奥のクレーンゲーム筐体に目がいった。
「……ねぇスペちゃん。今200円って借りても良いかな?」
「えっいいですけど……なんでですか?」
「やっぱボクも……玲音とスズカのプレゼントを調達しようかなって」
横断歩道で向こう側に渡り、ボクたちはゲームセンターに訪れる。
スペちゃんがなんかぼーっとした目でゲームセンターを見ている……もしかしてゲームセンターも初めてなのかな?
まぁいいや、ボクは店の奥に行ってあるクレーンゲーム筐体の前で立ち止まる。
そのクレーンゲームで取れるのは……イルカのぬいぐるみだ。両手に収まるくらいの大きさで色はピンク・水色・黄色・白・そして黄緑色……二つくらいシャチのような柄の子もいる。
ボクは結構クレーンゲームは得意な方だ……だからクレーンゲームで誕生日プレゼントを獲得する!
早速ボクは100円を投入口に入れる……その様子をスペちゃんは隣で見守る。
狙うのは黄緑色のイルカ……スズカのトレンドカラーっぽいし、耳に緑色のカバーを着けているから丁度いいと思う。
ボクは場所を見極めて……ボタンを離す。
ゆっくりと降りてくるアーム……そのアームはヌイグルミを掴み取る事はなかった。
「あ〜……惜しかったですね」
スペちゃんは残がっているが……本番はここからだ。ある程度降下が終わったアームは一回閉じる。その時閉じたアームの先っちょがイルカのヌイグルミのタグに引っ掛かったのだ。
そしてアームが上がると……ぬいぐるみも持ち上がった。
「えっ!? なんでそれで取れるんですか!?」
「クレーンゲームのスキルだよ、ボクは裁縫や編み物はできないけど……クレーンゲームならかなり極めているから」
そう言っている間にもアームはヌイグルミを運んでいき……そして落とす。
まずは一個……スズカの分は確保完了。スズカには何かと練習でお世話になっているから、日頃のお礼っていう事にもなるよね。
そして玲音には水色を……っと思ったけど、男子にイルカのぬいぐるみをあげるのもどうなんだろうと思って、ボクは一旦筐体から離れて周りを見てみる。
そうだなぁ……無難にお菓子系とかにしてみようかな?
そう思っているとスペちゃんがある方向に体を向けているのが目に入った。ボクはスペちゃんの視線の先を見てみる。
「テイオーさん、あれって何ですか?」
「あれは『ぱかプチシリーズ』だよ、重賞を何度か勝ったウマ娘がぬいぐるみになるんだ〜」
「へぇ……じゃあ私もぬいぐるみになったりとかするんですかね?」
「なるんじゃないかな?」
そう言いながらボクはぱかプチに近づく……すると、ある事が分かった。
それは……新しいぬいぐるみとして『ミニサイレンススズカ』が登場しているというものだった。
そして実際、そのクレーンゲームの中にはたくさんのミニサイレンススズカがあった。
「わぁ……! スズカさんがいっぱいです!」
そういえばスズカは玲音の幼なじみって言っていたよね…………スズカのぬいぐるみをあげたら、玲音貰ってくれるのかな?
あまり男子にぬいぐるみを渡すっていうのは聞いた事ないけど……多分大丈夫だよね。
そう思ってボクは100円を投入口に入れる。
このぱかプチシリーズのクレーンゲームは少し特殊であり、ぬいぐるみにタグなどがなく、普通のクレーンゲームで使えるようなスキルは使えない。
ではどうやって取るか……それは単純明快、ぬいぐるみをガッチリと掴み取って、あとはアームの確率機を信じるだけ!
アームはミニスズカの体をがっしりと掴み、持ち上がる。
落ちるな……落ちるな……とずっと心の中で願う。それが伝わったのか分からないけど、アームの確率機はどうやら当たりを引いたらしい。ミニスズカはそのまま取り出し口の真下まで運ばれ、アームが開いてぬいぐるみが落ちる。
にしし……これで玲音の誕生日プレゼントも取れた。さて、これを持って帰るとしよう。
「あっ、スペちゃん200円貸してくれてありがとう! お陰でいいプレゼントが取れたよ……今度ちゃんと200円返すーーー」
「あの、テイオーさん! お願いがあるんですけど……」
そう言って、スペちゃんはポケットから数百円を取り出し、こっちに差し出してくる。
「もう一個……ミニスズカさんを取ってくれませんか?」
「ん? スペちゃんもミニスズカ欲しいの?」
「はい、結構可愛いので……お願いできますか?」
「もっちろん! お安い御用だよ」
その後、3回くらいチャレンジしてスペちゃんの分のミニスズカもゲットした。そのぬいぐるみを両手で優しく抱えながら幸せそうな顔をして帰路に着いたスペちゃんだった。
……正直言って、何でいきなりプレゼントを用意しようと考えたのかは、はっきり言ってボク自身理解していない。
スペちゃんが言ったように『お世話になっている感謝の気持ち』のためなのか……それか別の理由なのか。今のボクにはまだ分からない。
***(おまけ)
「えへへ〜……スズカさ〜ん……Zzz」
「(す、スペちゃんが私にそっくりなぬいぐるみと一緒に寝ていて、しかも寝言で私の名前を呼んでいる……私じゃないって分かっているのに、どうしても耳と意識が反応しちゃう……)」
次の日、スズカは授業中にも練習にもアクビが止まらなかったらしい。
・期末オワッター!\(^o^)/(二重の意味で)
・学校の昼休みに試しでしっとりテイオーを書いていますけど、難しいですねぇ。
・次回は模擬レースの相談回の”予定”です。