少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
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※後生寮……学生トレーナーの寮。(元ネタは公正寮)
なるほど……こう言う展開できますのね。
わたくしはこの作品に関しては原作を読んでいるので、結末は知っていました。しかし、この映画と原作の終わり方は全然違うものでした。
原作ではいわゆるバッドエンドという形でしたが、映画ではハッピーエンド……と言うかどうかは分かりませんが、娯楽映画としては万人受けする最後という感じでした。
まとめてしまえば、普通の日常を過ごしていた主人公・カナミとヒロインウマ娘・プラティナムクラフト、しかしある日カナミの妹が死んでしまう。悲しむ主人公だったが、その後過去に戻れる能力に目覚める。だが全然妹の死を改変することができない。何度も、何度も繰り返し、その度に妹の死を間近で目撃し、精神は疲弊していった。
それを心配するヒロインだったが……ある日、主人公の口から妹を救うために過去に戻っていることを伝えられる。そして諦めることも伝える。ヒロインと主人公の妹は本当の姉妹のように仲がよく、何より精神が疲弊している主人公をこれ以上苦しめたくはなかった。
ヒロインは主人公からどうやって能力を手に入れたか聞いた。そしてその方法(というよりシチュエーション)を知ったヒロインは能力に目覚めさせようとした……が、ダメだった。精神的にも肉体的にも疲弊したヒロインはその場にばたりと力無く倒れる。
そしてーー目覚めた時、ヒロインは何十年前に飛んでいた。
親切な人にお世話になりながら帰る方法を模索するヒロインだったが、その際主人公の父タツキと自分自身(つまりヒロイン)の母シルバークラフトと出会う。それも意外なことに付き合っているのだと言う。意外に思いながらも個人的に仲良くなっていく。しかし過去に戻ることができずに5年経っていた。その頃だった、タツキとシルバークラフトが結婚したのは……この時、ヒロインには疑問が一つ浮かんでいた。「私はどこで生まれてくるの?」と。そんな疑問を抱く中、2人の間には双子の兄妹が産まれた。それこそヒロインが大好きなカナミだった。
しかしその時に知ってしまったのだ、シルバークラフトが浮気をしている……その相手はヒロインの父だった。だがこれはヒロインにとっては都合の良いことだった。何せ、その2人が結ばれなければ、自分はこの世に産まれてこないからだ。
タツキはトレーナー業をしており、夜帰るのも遅く、少しずつ2人の間の愛情は冷めていった。このまま行けば離婚は確実……自分には両親がいるという当たり前のことが未来を物語る根拠になった。しかしその時、ヒロインにある考えが浮かんだ。それは離婚を阻止すれば未来が変わり、主人公の妹が助かるのでは無いのか。だがそんな事をしてしまえば、今の自分は存在しないことになる。彼女は悩むことになる。
そしてヒロインはあった未来を確実に葬るため自分の父を殺す。消える前にヒロインは大好きな人の未来を夢見た。
ここまでが原作の流れ、しかしこの映画はさらにここから展開がありました。
父を殺そうと考えるヒロイン、しかし育ててくれた実の父になる人を殺すことは無理だと悟った。なら、どうすれば自分が産まれない、離婚しない未来を確実なものにするか。ヒロインはまた悩む。そんな時泊めてくれている親切な人に言われたのだ「ならもっとラブラブにさせちまえ」と。
そうしてヒロインはタツキとシルバークラフトの仲を修繕するためにデートプランを考える。最初は順調だったが問題があり、しかしそれはヒロインが予定していた計画とは違う結果で成功する。そして未来が変わり体が白み始めるヒロイン、見られないようにその場を去るが……その際ウマ娘の少女が道路を飛び出しているところに出会す。そしてすぐそこには明らかに法定速度を超えた乗用車がいた。ヒロインは咄嗟に身を挺してその少女を助ける。
意識が遠退いていく時、助けた少女が泣きながらお礼を言ってきた。ヒロインは少女の名前を聞こうとする。すると少女は泣きながら名前を名乗った。さらに向こうも名前を聞いてきた。そうしてカメラアングルはヒロインの口元をアップし、口パクで名前を言う。ーーそこで意識が途絶え、プラティナムクラフトの存在はこの世から消えた。そして少女が小さく呟こうとし……そこで画面は暗転し、タイトルが表示される。そしてエンドロール。
2時間半でしたが。とても内容が濃く、ストーリー的にも満足できるところが多かった映画でした。
わたくしは残った紅茶を飲みながら、隣の玲音さんを見てみる……作中、時々スクリーンから視線を外して彼を見ていたが、とても集中しているのか瞬きせずにずっと同じ姿勢で映画を見てました。玲音さんって、案外集中して映画を見る人なんだなと意外な一面が知れました。
でも……エンドロールまで真剣に見るのは珍しいですね。
「……そうですわ」
ここまで集中していれば、さり気なく手を握ったり肩に頭を乗せてもバレないのでは? いや、バレないのはそれはそれで少し寂しいですけど。
そう思いながら、わたくしはそっと彼の手に自分の手を置こうとする。その瞬間、彼の体がびくりっと大きく跳ねた。
わたくしは突然動いたので、びびって手を引いてしまう。
「あ、あれ……ここは……」
彼は何か呟いていたが、わたくしのウマ娘の聴力を以ってしても何を言っているのか聞こえませんでした。
急に動き始めて驚いてしまいましたが、問題ありません。また手を握ろうとすればいいのですから。わたくしは彼の手を握る。すると少し遅れて、彼も握り返してくれる。
エンドロールが終わり、そろそろ立ち上がろうかと思った時、場面が切り替わり病院の病室みたいなところが映される。そしてそこには男性とウマ娘の夫婦らしき人たちが同じベッドに座っていた。どうやら産まれた子どもの名前を考えているようだった。するとお嫁さんの方がずっと考えていた名前があると旦那さんに言った。旦那さんにどんなのかと訊かれると、お嫁さんはふっと優しい笑みを浮かべその名前を口にした。「プラティナムクラフト」と。なぜその名前なのか理由も聞いたが、何と無く、だけどこれがいいと曖昧な理由だった。
しかし呟いてみると……どこか懐かしさを感じたらしい。旦那さんの方もその名前を気に入った。そして二人で名前を呼んだ。その瞬間、視点が子ども視点になる。すると目の前にいた男性がカナミだとその子どもが分かった。さらに子どもの心の声が消えたプラティナムクラフトのものだった。
これはつまり、ヒロインは主人公の娘として転生した……ということでしょうか? 考察しているうちに新しい場面となり、桜が咲いている川の土手。無邪気で楽しそうに走り回るウマ娘の子と、両親……その少女は見るからに幸せそうだった。両親に両手を引かれながら女の子はその場を歩いて去る。そして「FIN」の文字が浮かび、映画が終わった。
「……マックイーン、なんで涙を流してるの?」
「えっ……あっ、すみません」
いつの間にか涙を流していたらしく、ポケットに入れていたハンカチを取り出して涙を拭う。わたくしは映画を観ると色々と感化されてしまう人間ですが、今回は特にヤバかったです。原作では殺して願う事しか出来なかったヒロインが手を汚す事もなく、自分自身の幸せも掴むという終わりは……原作を見ていたからこそ感動が大きいですわ。
・ ・ ・
わたくしと玲音さんは映画館を出ました。時間としては18時半、ちょうど夕食の時間です。
今日は玲音さんの誕生日、ですからこのお出かけプランはわたくしが考えました。しかし彼を祝うのとは別に、わたくしはこのお出かけ……いえ、デートにはある目的があります。
それはわたくしと縁が深いところに彼を誘うということ。さっきの映画館はわたくしがメジロ家に入った頃から何度もお世話になっている場所、そして今からディナーとして行くところは、わたくしがメジロ家に入ることが決まった場所……現在のメジロマックイーンの原点と言えるところです。
「ディナーはフレンチって言っていたけど、俺こんなラフな姿でいいのか?」
「大丈夫です、それにそれくらいでしたら、スマートカジュアルになっているでしょう」
彼が来ているのは紺色のシャツに白色のTシャツ、そして黒色のチノパン。服装に関しては何も言っていないはずですが、自然とカジュアルな服装を選んでますね。
なんて考えていると目的地であるフレンチ料理店『Charlotte』が見えてきました。
一応何回かは二人で外食はした事もあり、お互いメジロ家で開かれる晩餐会に参加した事もあるのでテーブルマナーなども分かっていますが……流石に未成年だけで入るのは緊張しますね。
「へぇ、意外とシック……ビルの高層階にあるようなイメージだけど」
「それはテレビでよく紹介されるのが、ビルにあるフレンチ料理店が多いっていうのもあると思いますけどね」
そう言いながらわたくしは店の扉の取っ手を引く。
中に入った後、店員さんに予約していた名前を言うと指定された席に案内される。店内は木材そのものを基調とした床やテーブル、イス。暖かい色の照明も相俟って、クラシックな雰囲気が漂っています。
注文に関しては予約の時点で済ませているので、あとは料理が来るまで待つだけです。そうですね、無難にさっきの映画の感想を言い合いますかね。
「玲音さんは白金の戦闘機のどこが面白かったですか?」
「えっ……」
えっ?
「「……」」
な、何なのでしょう、この空気。暖かい照明で包まれているはずなのに、すごく冷えた空気に変わったような……それに冷や汗をかかれている気が……。
まさか全然、見ていなかったってことは……。
「えっと……ひ、ヒロインが過去に戻って、それでハッピーエンドになったところかな?」
「っ! えぇ! そうですよね!! そこが良かったですよね!!」
「(あ、合ってた……)」
「どうしました、玲音さん?」
「いや、何でもない!」
少し心配してしまいましたが、流石に映画で眠ってしまう人はいませんよね。その後はずっと感想を言い合っていました、とは言ってもわたくしが一方的に感想や考察などを言っただけですけど。
そうしてしばらく時間が経ち、料理が届く。
まず運ばれて来たのはオードブル「帆立貝柱とサーモンのマリネ 紅白仕立て」メニューには書かれていませんが、周りにはいくらも添えられています。
「それではいただきましょうか」
「あ、あぁ……」
わたくしたちは手を合わせる。
「「いただきます」」
・ ・ ・
その後、わたくしたちはフランスコース料理を堪能しました。その後に運ばれたのは魚料理「牡丹海老と白身魚のワイン蒸し 赤ワイン風味のクリームソース」。メインの肉料理「牛フィレ肉のソテー 野菜添え マスタードソース」、そして今はデザートの「スペシャルガトーとグラスの盛り合わせ」を戴いている。彼はブラックコーヒーも頼んでいる。あっ、コーヒーフレッシュと砂糖を入れましたね。
時々「これっていくらするんだ……」と呟きながら食べていましたが、魚料理辺りでもう諦めたのかフランス料理を存分に楽しんでいました。やはり奢るんでしたら、喜んでいてくれた方が払う側はとても嬉しいものです。
「あっごめん、ちょっとお手洗いに行って来るよ」
「分かりました」
そう言うと玲音さんはお手洗いの方へ消えました。それを確認した後、わたくしは足元に置いていたレザーバッグから包装された箱を取り出す。
その箱の中に入っているのはイヤホン……それもただのイヤホンではなく、カラーオーダーのソフトシリコンを使ったモニターイヤホンというやつです。そして何より、右耳の方には……0.05カラットのダイヤが嵌められている。
そして玲音さんはこの前、誕生石のことを知った。幼なじみのスズカさんの誕生石を調べたのでしょうが、おそらく自分自身の誕生石も調べているはず……。
「今回で、絶対意識させてみせます……!」
彼はわたくしのことを妹のようにしか見ていません。でもそれではいけないのです、だってわたくしは彼が大好きなのだから。
この国に生きている以上、年齢制限というのは守らなければいけませんが、それもたった2年だけ……なら、今からアタックしても早くはない。
……そろそろ彼が戻って来そうですので、わたくしは一度プレゼントをレザーバッグに戻します。
「ごめん、じゃあそろそろ出ようか」
「そうですね、ですけど少しお待ちを」
彼は何だろうと不思議そうな顔をしている。その顔が喜びに変わった後、次はどんな顔をするのでしょうか。以外と赤面したりするんですかね。
そう思いながら、わたくしはレザーバッグから包装された箱を取り出し。テーブルの上に置いた後、両手でそれを持ち、彼の方へと差し出す。
「玲音さん、お誕生日おめでとうございます」
「ーーっ、ありがとうマックイーン! 開けてみてもいいかな?」
「もちろんです、どうぞお開けください」
彼は包装を丁寧に取ると、箱のフタを開ける。
「へえ、イヤホンか……けどシリコンのイヤホンなんてあるんだね」
「プロのミュージシャンもライブで使っているモニターイヤホンです。イヤーピースも玲音さんの耳に合うようになっています」
「……いつ耳型摂取したの? あっ、やっぱ言わなくてもいいや」
そう言いながら、彼は早速イヤモニを着けてみせる。青と白のマーブル模様はかなり彼に合っている。
「どうかな、マックイーン?」
「えぇ! とても似合ってーー」
その瞬間、わたくしは絶句してしまいました。
それは何故か……それは彼が右耳側を見せてくれた時、そこにあるべきものが……嵌められているはずの小さなダイヤの輝きが無かったからです。
***
「……」
マックイーンとお出かけをして夕飯を食べて、プレゼントをもらって、その後二人でトレセン学園に戻り、栗東寮と後生寮の別れ道で別れて、そのまま後生寮に戻ってきた。
そしてマックイーンにもらったイヤモニで早速音楽を聞いている。流石プロミュージシャンも使っている物、とても音の粒が揃っている。
ただ……俺はずっとプレゼントをくれた後のマックイーンの顔がとても気になっている。
なんて言えばいいのだろうか……とても泣きたいことがあったのに、それを我慢して無理に笑顔で乗り切っているような、そんな感じだった。
大丈夫かと聞いてみても大丈夫の一点張りだったし、とても心配だ。気のせいだったらいいのだが。
「……あれ、何だこのくぼみ?」
一度休憩で右耳のイヤモニを取って偶然見つけた……そのイヤモニには一部だけ凹んでいるところがあったのだ。まるで何かがはまっていたかのような……。
でもこういう仕様だという可能性も信じられる……確か箱に詳細書があったはずだ。俺はそう思い机上に置いてあるプレゼント箱に近づく。
次の瞬間、箱の中で何かが輝いた気がした。俺は不思議に思い、ゆっくりと箱を机の上でひっくり返してみる。するとカランカランと何か小さな輝いている石みたいなものが机の上に転がった。
俺はそれをつまみ取り、見てみる……あれ、この輝きどこかで見たような。というか部屋の明かりでここまで光が反射するものか?
俺は記憶を遡り、この石に近い何かを探す……そして一つのある物にたどり着いた。
それは1週間前に見たダイヤモンド。その輝きと一致している。違うのは俺が今摘んでいる石はとにかく小さいというところだが……これくらい小さいダイヤも普通にあるだろう。
そして何となくだが、マックイーンが何故あんな顔をしていたのか納得がいった。
つまりこれはあのイヤモニに嵌められていたジュエリーで、しかし俺が着けた時にはそのジュエリーがなかった。
でもそれだったらあそこまで気持ちが沈むのだろうか……なんて一瞬しか考えなかった。
ダイヤは永遠の愛の代名詞、そして誕生石に込められた意味は恋愛・結婚。
マックイーンは恐らく……そういう意味でこのジュエリーをイヤモニに嵌めた。しかし自分には自然に気付いて欲しかった。だから自分からジュエリーが紛失していることを言えなかったのだ。
はっきり言うが、マックイーンは自分が好きだってことは、もう1年前から分かっている。だが、ダイヤを送ってくるくらい好感度が高いとは思ってもいなかった。
もちろん、俺はマックイーンが好きだ。ただその好きはLoveよりはLike……家族愛に近いものだ。
自分は向き合えるのか、マックイーンと……いや、多分その判断をするにはまだ俺は幼な過ぎるのだろう。答えを見つけたくても、もやもやとした考えが頭の中を埋め尽くすだけだ。
だったら、今の俺に出来ることはただ一つだ。
「接着剤でいいのかな……それとも瞬間接着剤? とりあえず、新しく買わないとな」
マックイーンは妹分みたいなものだ。妹分が悲しんでいるなら、それを払拭させるのは兄分である自分の使命だ。
……それにしても、
「(映画で眠ってしまった時のあの夢……あれは一体何だったんだ?)」
・フランス料理は北斗星のフランスコース料理が元ネタです。
・水着スペちゃんのポニテが可愛過ぎる……_:(´ཀ`」 ∠):_
・次回はスズカの誕生日パーティー回の”予定です”。