少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:玲音、幼なじみと再会……しかし。

・前回の誤字の指摘ありがとうございます。スズカが急に玲音のお兄ちゃんになってました。

・1話2話3話を現在の書き方に修正しました。(名前消すだけですけど)

・前回都道府県と書きましたが、北海道と東京と書かせていただきます。

・UAが3000(約4000も)を超えました、皆様ありがとうございます。


スズカという名前

「……」

 

 俺は寮のベッドに力なく倒れていた。

 

 今日(いや、0時を回ったから昨日なのかな……)起きた事を心の中で何度も再現させる。

 

 でも……何なんだろう。このやり場のない気持ちは……。

 

 俺はずっと願っていた幼なじみと再会できたっていうのに……どうしてこんなにも感情がぐちゃぐちゃになるんだろう。

 

 もちろん嬉しいという気持ちもある。じゃあこの苦しさの感情は何なんだ?

 

「……」

 

 そんな感情に悩みながら……俺はずっと目をうっすら開けて、自分の部屋の白い壁をぼんやり見つめる。

 

 するとそこには映画のスクリーンのように、さっきのことが映し出されている。

 

   ・ ・ ・

 

 先生は言った……明日から正式にチームに入る子だって……。

 

 名前はサイレンススズカ。

 

 俺はもう『スズカ』という名前しか覚えていないが、この特徴的な明るめの栗毛は……時々夢に出てくるスズカと同じ髪の色だ。

 

 声はだいぶ大人しい感じだけれど、それでも聞いた瞬間に確信した。

 

 ……なのに、何で疑っているんだろう。

 

「レオ……くん。やっと……」

 

 スズカがこっちに近寄ってくる。

 

 再会のハグでもしたかったのだろうか、ゆっくりとこちらの瞳を見ながらある程度近づくと両手をこっちに差し出してくる。

 

 そしてゆっくりと……俺の体が本当に存在するのを確かめるように手を背中に回し……優しく抱きしめて来た。

 

「会えた……ね……」

 

「……」

 

 こんな時、どう声をかければいいのか分からない。

 

 いや違う。今の俺には目の前の彼女は映っていなかった。

 

 こんなに決定的なことがあっても俺は……まだ疑っている。

 

 だから俺がしてしまった行動……それは、スズカの肩に手を置いてそして引き離す。

 

 それは言わば、拒絶だ。

 

「レオくん?」

 

「……ごめん」

 

 そう言って俺はこの場から離れた。

 

 そして一瞬だけ見えた……スズカの驚きと悲しみが混じったような表情。

 

 先生が俺を見て、怒りを露わにしているのを。

 

   ***

 

 そう、俺はスズカを拒絶したんだ。

 

 なぜなのかと言われたら……分からないとしか言えない。

 

 ……いや、違うな。

 

 心当たりはあるはずだ……それはずっと昔から俺の心にある一つの思い。

 

 ーー奇跡なんて起きるはずがないーー

 

「……」

 

 そうして俺はずっと目を開けて……白い壁に映るさっきの出来事をずっと見る。

 

 意識がなくなり目の前が暗くなったのは……部屋に朝日が刺した頃くらいだった。

 

   ***

 

「玲音先輩……大丈夫なのかな」

 

「朝、寮の廊下で倒れてるのを発見されたのよね……でもただの疲労だってトレーナーは言ってたし……」

 

「ってことは仕事を押し付けたトレーナーがクロだな! よしトレーナー、ちょっと腰貸せ!」

 

「貸さねえよ、てかなんだその某カプコンの格ゲーに出て来そうなプロレススタイルのキャラみたいな構えは!?」

 

「このゴルシ様が編み出した、スクリューパイルドライバーを最初に味わうことを光栄に思え!」

 

「やめろ! ってなんか吸い寄せられ……!? ぐああああああ!!」

 

「……」

 

 私はチーム・スピカに入ると決めた次の日、部室に来て自己紹介をした。

 

 後輩のウオッカとスカーレット。そして多分年上のゴールドシップさん。

 

 リギルみたいな少しピリピリとした緊張感はあまりない……とても賑やかなところ。

 

 でも私の感情はそんなに賑やかではなかった。

 

 その理由はもちろん、昨日のこと……レオくん(あっちがスズちゃんと二文字で呼んでいたから、真似して私もレオって呼んでいた)が私との再会を喜ばず……何かに怯えるようにしていた。

 

 私はあの後考えた。

 

 何でレオくんはあのまま去ったんだろうって……。

 

 もしかして、私と再会するのがそんなにも嫌だったのかな。

 

 そう考えてしまうと、気持ちが落ち込んでしまう。

 

「いてて……ゴルシお前本当に容赦ないな……」

 

「あの……トレーナーさん」

 

「何だ……って言っても要件は分かる。玲音のところに行かせてくれだろ? 悪いがそれは許可はできない」

 

「どうして……」

 

「あいつにも考える時間が必要だろう……特にお前のことになるとな」

 

「えっ、スズカ先輩、玲音さんと知り合いなんですか?」

 

「……えぇ」

 

 知り合い……とは言っても、もうずっと会っていなかった者同士。

 

 もしかすると、あの約束を覚えていて守ろうとしていたのは私だけだったのかもしれない。

 

 なら私はレオくんの知り合いだって、そう言えるほどの人なんだろうか。

 

「まっ、スズカは俺と来い。そしてゴルシ・スカーレット・ウオッカ、お前たちにはこれをやってもらう」

 

 そうやってトレーナーさんが取り出したのはずた袋。

 

 何でずた袋?

 

「あぁ? また誰か拉致るのか〜?」

 

「あぁ、時が来たらメールで知らせる。それまでいつもの練習内容をやっておくように」

 

「また基礎練かよ、そろそろオレもデビューレースに向けて本格的な練習がしたいぜ」

 

「文句言わないのウオッカ、レースも土台がないと勝てないんだから」

 

「いやでもよ〜……」

 

 そう話し合いながら、ウォッカとスカーレットは部室から出て行く。

 

 ゴールドシップさんは部室を出て行かず、トレーナーの方を見る。

 

「んっ、どうしたゴルシ?」

 

「あいつ、本当に大丈夫だろうな?」

 

「大丈夫だろ……それにこんな程度でくたばっているようじゃ、この世界ではやっていけないからな」

 

「……」

 

 そうしてゴールドシップさんもずた袋を持って部室を出て行った。

 

「んじゃ、行くかスズカ」

 

「……はい」

 

 私もトレーナーさんの後ろをついて行く。

 

 着いた先は……私が少し前まで練習してたリギルのメイントラック。

 

 そこには何人かのウマ娘たちがリギルのトレーナーさんの前に列を作って並んでいる。

 

 そういえば今日は入団テストって少し前から言われていたっけ。

 

「俺はここであの子らを見ているから、スズカは適当に周辺走っててくれ」

 

「適当……ですか?」

 

「そう……まぁ、レースの翌日だからな、休息も兼ねている。そしてあの子らの中に見て欲しい奴がいるんだ」

 

「見て欲しい子?」

 

「そう、ショートカットで前髪が白色。背丈はお前よりちょっと小さめのやつだ」

 

「は、はぁ……じゃあ少し流して来ますね」

 

「おう」

 

 トレーナーさんの返事を聞いて、私は走り始める。

 

 しばらくするとさっきの子達がゲートに入って行くのが見えたので、トラックの近くに行ってみる。

 

 するとちょうどゲートが開いて、一斉に走り出す。

 

 先頭にいるのは……なんだろうあれ、覆面マスク(?)をつけている子が最初から大きく差をつけている。

 

 他はぼちぼち……いや、一人だけ大きく遅れている。

 

 ……あれ、あの子……トレーナーさんが言っていた特徴と一致している。

 

 私はその子を見てみる……するとその子も私の方を見た。

 

 すると次の瞬間、その子は加速した。

 

 次々と他の子たちを抜かしていき……そして2着でゴールした。

 

 それが私が一番最初に見た。スペシャルウィーク……スペちゃんの走りだった。

 

   ***

 

 あれ、もう1日終わっていたのか?

 

 この感覚は夢を見るときの感覚……そういえば最近よく夢を見るようになったなぁ……。

 

 

 俺は小学校3年生までは北海道にいた。

 

 だから夏休みや冬休みを使って地元に帰ることができて、その際はスズカとたくさん遊んだり、お互いのことを話したりした。

 

 でも小学校4年生の時、叔父さんの急な転勤が決まった。

 

 その結果、俺たちは北海道から東京に急遽引っ越すことになった。

 

 しかもそれは本当に突然決まったことだったため、スズカちゃんに伝えることもできないまま、北海道を離れてしまった。(電話番号は分かっていなかった)

 

 そして夏や冬になるたびに北海道に行こうと提案したが、叔父さんがあまりにも忙しかったため、それは叶わなかった。

 

 でもどうしてもスズカに会いたかった俺は小学校6年生の時、一人で北海道に行くと叔父さんたちに告げた。

 

 叔母さんは却下したが、叔父さんは面白そうだと全面協力してくれた。

 

 ……最悪、向こうに着いたらスズカのお母さんのお世話になればいい。そう思って、僕は東京から北海道へ向かった。

 

 そして懐かしい我が家の前まで着き、俺は向かいの家のチャイムを鳴らした。

 

 ……でも、出てきたのは全く知らない人だった。

 

 その人から前の住民は引っ越しをしたというのを聞いた。

 

 幸い我が家はまだ買われていなかったため、持ってきた鍵で我が家に入った。(あらかじめ叔父さんが大家さんに話してくれた)

 

 さらにお金もまあまあ持たせてくれたから、近くのコンビニで適当なコンビニ食を食べれたので、食べる物に困ることはなかった。

 

 でもスズカやその家族がここにいることを大前提にしてた俺にとって、これは計画の総崩れだった。

 

 だけどスズカには会いたい。そう思った俺は駅で情報を集めることにした。

 

 今思えば無謀だけど、当時の俺はそんなことは考えなかった。

 

 次の日、駅で情報を集めた。

 

 もちろん多くは「知らない」の一言で遇らわれたが、数人は聞き覚えがあると言ってくれて、その度に俺は心の中で狂喜乱舞していた。

 

 そして会えると思い、スズカが居そうなところを回った。

 

 ……でも。

 

『君は誰かな?』

 

『うちの子に何か用?』

 

『お父さんとお母さんはどうしたの?』

 

『お母さん、こいつすごく変! 気持ち悪い!』

 

『すみませんが、お帰りいただけますか?』

 

 そこで会ったのは『スズカノローディー』や『ディージースズカ』など、名前に『スズカ』と付くウマ娘の子たちで……。

 

 そこに俺が会いたいと思っていた『スズカ』はいなかった。

 

 そして……俺は分かってしまったんだ。

 

 俺はもうスズカには会えない。だって……本名を知らないんだから。

 

 本名が分からなければ、俺はスズカとは会えない。

 

 でも、それを調べる術は俺は持っていない。

 

 だからもう二度と会えない。

 

 奇跡の再会なんて信じてはいけない……お母さんに奇跡が起きなかったように、スズカとの奇跡の再会なんて起らないって……。

 

 

 

 

 




・トレーナーのHPは高そう。某ひぐらしのK1といい勝負するんじゃ?

・競走馬でスズカって名前は結構多いことを調べて知ったので、その事をネタとしました。

・次回、残っているメインウマ娘2人の1人、中2の頃の子を出す予定です。
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