少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:道に迷った玲音だったが、心優しい男性がトレセン学園まで送ってくれた。

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・今回は短めです。


迷子になった次の日

 長い長い月曜日が終わった後、世界はいつものように火曜日が始まる。

 

 俺はいつもより早めに目を覚ました。そして自分が着ている服に違和感を感じた。

 

 なんで自分の部屋なのに学園指定のジャージを着ているのか……昨日のことはかなり簡単に思い出し、俺は完全に理解した。

 

 マックイーンを栗東寮に送った後、そのまま力尽きて寝てしまったんだ。

 

「……荷物どうしよ」

 

 俺が一番最初に思ったことは昨日部室に置いてきた鞄や学園指定のブレザーのことだった。

 

 トレセン学園には当たり前のことだが、指定された制服が用意されている。それはトレーナー学科にも当てはまる。

 

 ウマ娘の生徒が来ている制服はセーラー服調だが、トレーナー学科の生徒は男子はブレザー、女子はいわゆるセーラーブレザーというやつだ。

 

 そして登校・下校、廊下での移動の際、男子はブレザーを着る事が校則で決められている。

 

 だからこそ今日をどう乗り越えるか……下はこの時期は冬服のズボンを穿いているが、冬服と夏服のズボンはデザイン的には全く同じものなので、問題ない。だが上に関してはブレザー、そして学年別のネクタイ。この二つは替えがないものであり、着けていないと校則違反になる。

 

 事情を言えば許してくれるかな……というか、それしか方法がないだろう。

 

 今から学校に行って事情を説明……いや、先生だったら教員室かトレーナー室にいるはず。朝のうちに部室を開けてもらって荷物を回収、そして着替えてSHR前に教室に入る……完璧ではないか!!

 

「そうなったら、早速行くか」

 

 俺はとりあえずワイシャツ、夏制服の灰色のズボンに着替えて寮を出る。いつもは肩に学園指定のカバンがあるが、それもないので変な違和感に襲われる。

 

 さらにかなり早い時間に出たのは確かだが、その時間帯くらいに登校してくる生徒は少なからずともいる。チームによっては朝練習を行なっているところもあれば、ただ単に朝早くに来るのが好きな人もいたりと理由は様々だ。

 

 そしてそんな人たちはすごい奇怪なものを見たような目でこっちを見てくるのだ。その視線で俺の心は確実にダメージを負っている。

 

 俺は少し歩くスピードを速めて、なるべく周りと視線を合わせないようにして昇降口……そして教員室前までやって来た。

 

 ドアをノックしていつも通り教員室の中に入る。生徒が入ったくらいでは教員はこっちを向かない。だが一度前を通れば嫌でも注目されてしまうだろう。だから入り口辺りで先生がいるかいないかを見る。身体を限界まで伸ばせばギリギリ見える位置になっているからな。

 

「うぐぐ……先生は〜」

 

「何をしているんだい、君は……」

 

 後ろから声が聞こえ心臓が大きく飛び跳ねた後、俺は反射的に振り向く。

 

 そしてそこにいたのは制服を着たシンボリルドルフだった。

 

 あかん……会いたくなかった生徒ランキング上位の人とエンカウントしてしまった。

 

「どうしたんだいそんなコソコソと……それにブレザーとネクタイは? 分かっていると思うが君は校則違反を二つ犯している」

 

「実は……」

 

 自分は一昨日の長い長い夜のお話を一行に凝縮して説明した。

 

「なるほど、それは災難、そしてよく無事に戻って来てくれたね。だが今日はハナさんとそちらのトレーナーは放課後まで居ないんだ」

 

 オーマイガー……それってつまり放課後までこの格好のまま?

 

 あぁいや落ち着け、先生は基本部室の鍵を事務机の引き出しに入れていたはず。

 

 仕方ない……先生にもちゃんと事情を言ってーーー。

 

「待て、今日は火曜日、試験1週間前だ。鍵は恐らくトレーナー本人が持っているだろう」

 

「あっ、そうか」

 

 トレセン学園はテスト1週間前になると自主練習期間……形式としては試験勉強に集中する期間に入る。ただし今週のレースに出走する(例としてはマイルCS)娘はトレーナーと練習してもいいようになっている。

 

 さらに部室の鍵は基本チームトレーナーが手中で管理するもので、練習がない日は基本持ち帰っているトレーナーも多い。そしてそれは先生も当てはまる。

 

「となると今日はこのままか……」

 

「残念ながらそうなってしまうな、だがちゃんと話せば教員たちも理解してくれるだろう」

 

「それはそうなんですけど……道や同期に理由を聞かれた時に迷子になったからと言うのも少し恥ずかしいというか」

 

「別に本当の理由はぼやかしても大丈夫だと思うがな……それに道くんはそんな人ではない。それは君も知っているだろう?」

 

「……そう、ですね」

 

 シンボリルドルフの言う通りだ。尊野と道とはもう一年以上の付き合いになるが、あいつらは誰かの失敗や恥ずかしい経験を話の出汁に使ったりはしないし、バカにするような言動も取らないはずだ。

 

 その事を気が付かせてくれたシンボリルドルフに俺はお礼を言おうとしたが、次振り向いた時にはシンボリルドルフはそこにいなかった。

 

 俺はとりあえず学年主任や今日教えてくれる教員に迷子と制服のことを話した。「高校生で迷子か」と揶揄されてしまったが、先生が出張に行っている事もあり、許可を出してくれた。

 

 そしてそのまま教室に行くと道が居て、なぜネクタイとブレザーが無いのかを聞かれたので少し事情があると話したら、それ以上は聞いてこようとはしなく、後に来た尊野も最初少し揶揄ったくらいで後は普段通りに接してくれた。

 

 そうして一日を乗り越え、先生が戻って来た時に部室の鍵を開けてもらってブレザーとネクタイも回収した。これでめでたし、めでたし……。

 

   ・ ・ ・

 

 次の日、ウマ娘の教室でウマ娘の生徒に土下座をしているトレーナー学科の生徒が一人いた。

 

「勉強教えてください!!」

 

 

 




・深夜テンションで物語を書くと……次の日に困惑する時がある。電撃大賞は二次落ちでした。

・次回は勉強回(スズカ・ライス)の予定です。
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