少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:急いで教室を出る尊野の後をつけた玲音は寂れた廃校でキングヘイローを見つける。そしてキングヘイローはそこでダービーへ勝つための準備を進めていた。

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「なんとなく」の感情

 次の日、俺は教室で自分の席に座りながら尊野を待っていた。その理由は昨日調べたことを伝えるためだ。

 

 昨日の夜に俺が調べたこと……それは芝で練習できるところだ。

 

 この社会は普通の人間とウマ娘が共生している。

 

 それ自体は当たり前のことであるが……ウマ娘の多くは中学・高校時代にレースに出走する娘たちが多い。

 

 ここのトレセン学園は確かに大きな学園で唯一中央レース……つまりトゥインクル・ドリームトロフィーシリーズへの参加権利を持てるところではあるが、トレセン学園は地方にも存在している。そしてそこで走っている娘ももちろんいる。

 

 だから結論としてウマ娘の多くは走ることが習慣となっている。いや、むしろ走らないとストレスがかかってしまうのだ。

 

 まぁそれは普通の人と同じ方法……ランニングなどをしてストレスを解消する。

 

 しかしウマ娘は本気で走れば時速70kmは出る生物だ。そんな生物が普通に公園や道路でランニングレベルで走ったら、軽くでも時速20キロは達するだろう。

 

 そうなると普通の公園や道路では走るのは難しい……仮に走れたとしてもランナーや歩行者、自転車など気をつけることがかなり多く、地面に関してもアスファルトを蹴り上げるのは脚を痛めるなど問題点多く、普通の道で自由に走ることはほぼ不可能だ。

 

 だがウマ娘にはこう思っている娘もいる……「レースのように本気で走りたい」と。

 

 そして俺が昨日調べたのは、そんなウマ娘のために用意された施設だ。

 

 その施設はいわゆる屋内型の小さな芝のトラック(距離としては400mあるか)だ。

 

 ここならレース場や学園のトラックほどの上質な芝ではないが、土のグラウンドで走るよりは脚を痛めることはないだろう。

 

「あっ」

 

 教室の扉が開き、そこへ現れたのは尊野だった。

 

 俺を見た瞬間にばつが悪そうな顔になる。

 

「おはよう尊野」

 

「あ、あぁ……おはよう」

 

 尊野は俺に挨拶しながら席に座る。その時視線が外れることはなかった。

 

 まぁ昨日俺は普通にストーカー紛いなことをしたんだ。そんなことをすれば誰だって警戒するに決まってる。

 

 それにただのストーカーならまだよかった(いやよくないけど)が、俺はキングヘイローと尊野が秘密裏に行なっていた練習を見てしまったのだ。せっかく考えたダービー勝利への手段がバレてしまったのだから、気が気では無いだろう。

 

「なぁ尊野、昨日にことだが……」

 

「な、なんのことかなぁ〜。俺は昨日、駅前の超激辛スープを食べに行ってたんだが? そうだ谷崎、よかったら今日いかねえか? 一緒に地獄みにいこうぜ!!」

 

「それは勘弁だ」

 

 俺は首を振りながらポケットの中に入れていた紙を取り出し、それを尊野の机の上に置く。

 

 尊野はそれを見て訝しげな表情を浮かべるが、俺は真顔のまま首を動かして手紙を取るように催促する。

 

 自分の意図が伝わったのか、尊野は置いた紙を手に取ってそこに書かれていることを読む。

 

「……谷崎、これって!」

 

「一般のウマ娘でも利用ができる施設だ。あの土のグラウンドで走るよりは足は疲れないだろ?」

 

「調べたのか? なんのために……まさか昨日のキングを見てーー」

 

「勘違いするなよ、これはスペのためだ」

 

 きっと尊野の頭の中では、俺は昨日のキングヘイローの必死な姿を見て感化・同情をしたと思っているだろう。

 

 でもそんなことはない。俺はキングヘイローのことなんか考えていない。むしろこっちからしたらライバルが減ったのも同然なんだから俺の内心は多分嬉しく思っているんだろう。

 

 だけど……なぜだか分からないが、彼女の脚は壊してはいけない。

 

 それはスペが気になってしまって走れなくなってしまうことを懸念したからというのもあるんだろう。だが、一晩経ってそういう理由じゃないような気がしてきた。

 

 じゃあなぜかと言われたら……「なんとなく」としか言葉が出てこない。

 

 でもキングヘイローがこのダービーで逃げることは……必要なことだと思うのだ。それももちろん何と無く。

 

「そっか……でもありがとな谷崎、これで少しは……」

 

「言っとくけど使用料は取られるってことだけは頭の片隅に入れとけよ」

 

「分かってるって!」

 

 尊野がそう言うと朝読書の時間を知らせるチャイムが鳴ったので、俺は席に戻り読書を始める。

 

 まぁ、これで俺がダービーへ向けて出来ることはほぼ無いだろう。あとはスペがどこまでやれるかだ。

 

 そんな風に考えながら読書をしているとうちの担任の先生がこっちに近づいて来る。

 

「尊野くん、◯◯トレーナーが昼休みにトレーナー室へ来るようにって伝言を受けてます」

 

「あっ」

「(あっ)」

 

 そうしてそのまま朝のSHRが終わり、号令をした後俺は自分の席に座らずに後ろを振り向いてみた。

 

 そこには真っ白に燃え尽きたみたいに自分の席に座っている尊野の姿があった。

 

「あ、Are you OK?」

 

「No……なあ谷崎、俺どうすれば良いと思う?」

 

「……笑えばいいと思うよ」

 

「笑うは笑うでも自嘲になりそうだな……ははっ」

 

   ・ ・ ・

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「いってら」

 

 4限目が終わり昼休みになると尊野は力なく歩き、ゆっくりと教室の扉を開けて教室を出て行った。

 

 考えてみればそうだった。アスケラのチームトレーナーは尊野がこの学園にいることは知っている。だったら呼び出せばいいだけのお話だよな。

 

 尊野……無事に帰ってきますように。

 

 さてと俺は……寝るかな。

 

 昨日は施設調べでいつもより1時間半くらい遅く寝たので朝からとても眠い。しかし授業で寝るわけにもいかないので、なんとかエナジードリンクを二本くらいキメて今まで乗り切ったのだ。

 

 お腹はもちろん減ってはいるが、空腹よりも今は睡眠だ。

 

 そう言うことで俺はイヤホンを耳に入れ、腕を組んでその上に覆い被さるようにして外界の明るさをシャットアウトする。

 

 そしてそのまま微睡みの中へ深く落ちてーー。

 

「玲音いる〜?」

 

 ……微睡みの中に落ちたかったが、どうやらまだ寝られないみたいだ。

 

 俺はその声がした方向を向いてみる。そしてそこにいたのはテイオーだった。

 

 テイオーは自分の姿を確認すると教室へ入ってきてこっちに近づいて来る。おいここ高校生のしかもトレーナー学科の教室なんだけど君中等部だよね、なんで普通に上級生の教室に入れるの? メンタルが鬼なの?

 

「何しているの玲音?」

 

「寝ようって思ってたんだよ……んで、なんか用かテイオー」

 

「あぁそうだった。ねぇ玲音、マックイーンがスピカに入るように説得してくれない?」

 

「なんだって?」

 

 テイオーが言った言葉を理解するのに時間が掛かった。

 

 というかなんでテイオーからマックイーンの名前が出てくるんだ?

 

 確かに二人は繋がりがあると花見の時に知ったけど……でもなんでテイオーがマックイーンをスピカに入れたいんだ?

 

「……理由は?」

 

「知らないよ……ただゴルシが「連れて来ないとパイルドライバーを食らわすぞ!」って脅してくるんだよぉ〜」

 

「はぁ?」

 

 もっと訳ワカメなことになった。

 

 なんでゴルシがマックイーンを連れて来いって言うんだ? あの二人ってなんか接点あったか? いや、無いはず。

 

 あぁでも、なんか花見の時二人があった時、ゴルシはなんか変なことを言ってたな……なんて言っていたか忘れたけど。

 

「まぁいいや。もうマックイーンには言ったのか?」

 

「うん、だけど他のチームも見たいからって断られてる。今日も断られたよ〜」

 

 まぁそうだろうな。この学園には多種多様なチームがあるんだ。1日では見て回れないだろう。

 

「分かった、自分からも練習見てもらうように頼むよ。あとついでにゴルシも叱ってやるよ。「後輩になにパシリをさせているんだー!!」ってな」

 

「お〜! 玲音すごく頼り甲斐がある!!」

 

「おう、だから今日はもう戻っとけ。今から言って来てやるから」

 

「うん、お願いね!!」

 

 そう言ってテイオーは教室から出て行く。

 

 さて、あんな風に啖呵を切ってしまったんだから、昼寝する訳にはいかないよな。

 

 そう思いながら俺は席を立ち一回大きく一伸びした後、教室を出る。

 

「(……そういえば、ゴルシってどの教室にいるんだ?)」

 

 まぁ、スペよりは年上だろうし、そこら辺の教室周辺で立っていればばたりと会うだろ。

 

   ・ ・ ・

 

 しかし、その昼休み中にゴルシと会うことはなかった。

 

 

 




・学校始まった……がんばるぞ、お〜。

・最近YouTubeでウマ娘の怪文書を書いてる……たのちい。

・次回はマックイーン・ゴルシ回の”予定”です。
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