少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:ウマ娘のファンたちのファン投票によって出走するウマ娘を決めるドリームレース・宝塚記念。そこでサイレンススズカは多くの夢を背負い、そしてゴール板を駆け抜けた。

・今回は短め。



かける言葉 〜宝塚記念を終えて〜

「スズちゃん!!」

 

 大声で幼なじみの名前を呼びながら、彼女に近づく。

 

 すると向こうも俺の存在に気が付いたのか、こっちへ顔を向けてくれる。

 

「レオくん……!」

 

 そうして俺はスズカの側で立ち止まって彼女の瞳に視線を合わせる……今思ったけど、自分はスズカに何を言えばいいんだろう?

 

 確かにスズカがゴール板を抜けた時、俺は何も考えずスペと一緒に喜んだ。だけど冷静になってさっきのドーベルも見て、今の俺にスズカにかけられる言葉は一体どういうものだろうか。

 

 ……いや、”今は”ドーベルのことは考えないでスズカを祝うことだけを考えよう。

 

 でもどういう感じで言うか……褒めちぎるか? それともクールに言った方がいいのかな?

 

 なんて悩んでいると、スズカが歩み寄ってくる。たった1mしか空いていないのにも関わらずだ。

 

「スズちゃん?」

 

 そう困惑したような声を出してもスズカは足を止めることなく、お互いの顔が目と鼻の先まで近づく。

 

 あまりにも距離が近かったので俺は目を閉じてしまう。するとスズカは自分の腕を俺の首に回し、俺の肩に頭をひょいと乗せた。

 

 少し体が硬直してしまったが……俺も彼女の胴回りに腕を回してぎゅっと抱きしめる。

 

 そうして俺とスズカはしばらくの間、抱擁し合った。周りの音はさっきまでうるさかったのに、今は静かになっている。

 

「私の走り、どうだった?」

 

「……すごくよかった」

 

 耳元で優しく囁きながらスズカは俺に話しかけてくる。俺もそれに呼応するように囁きながら答えを返す。

 

 ふと、俺は昔の出来事を思い出す。

 

 それは幼稚園の運動会、スズカが駆けっこで1着を取ってこっちに駆け寄った時にこういう行動を取っていた。

 

 他にもお手伝いとかでワキアさんや俺のお母さんに褒められた時にわざわざ俺のところまで来て、その行動を取っていた。

 

 そしてそうした時に要求していたものは確か……俺はスズカの後ろ髪をぽんぽんと優しく数回叩いて、そしてその髪を撫でる。

 

「んっ……レオくん」

 

「本当にすごいよ、スズちゃん……また遠くに行ってくれた」

 

 今回のGⅠ勝利によって、ますますスズカと俺の差は開いてしまった……だけど、それを悲観的なものだと考える必要はない。

 

「レオくんは……いつか私に追いついてくれるよね?」

 

「当たり前だ。俺はスズちゃんの幼なじみで……お兄ちゃんなんだから」

 

「……うん!」

 

   ***

 

「ドーベル」

 

 わたくしは玲音さんを見送った後、地下バ道へ訪れる。

 

 そしてそこで水を補給しているドーベルの姿が見えたので声をかけた。

 

 水を飲むのを一回やめ、ペットボトルに口を付けながらわたくしの方を横目でちらりと見る。

 

「……マックイーン」

 

「宝塚記念、5着おめでとうございます」

 

「ありがとう……6番人気にしてはまぁまぁの結果だったわね」

 

「そうですね」

 

 そうは言っていってますが、その言葉の語気や垂れ下がっているウマ耳を見るに落ち込んでいることは明らかですね。

 

 メジロ家はアスリートウマ娘を育てる名家。メジロの看板を背負うウマ娘には目標とされるレースが設定されている。わたくしなら天皇賞制覇という目標があるように、ドーベルにはエリザベス女王杯制覇という目標がある。

 

 宝塚記念はドーベルの目標レースではありません……しかしそうは言ってもGⅠのレース、勝ちたかった気持ちはもちろんあったのでしょう。

 

「……アイツの様子どうだった?」

 

「スズカさんの勝利を喜んでました……でもドーベルが負けたことも気にしていたようですよ」

 

「何それ、私のことは気にしないでいいって言ったのに」

 

 そう言いながらも尻尾をうずうずとさせているドーベル。本人は隠しているつもりでしょうけど、尻尾はとても正直ですね。

 

 ……それにそろそろ来そうですね。そう考えながら私のウマ耳は地下バ道の入り口の方へ傾けます。するとこっちへ走ってくる一人の男性のブレス音が聞こえてきます。

 

「ドーベル!」

 

「れ、玲音?!」

 

 突然の玲音さんの登場で少し驚いているドーベル。いつもは冷静に振舞ってますけど、こういう想定外のことが起きると結構可愛い仕草を取ってくれます……まぁ、わたくしもそうみたいですけど。

 

「……応援しなくていいって言ったわよね?」

 

「うん。だから、二言だけ伝えようと思って」

 

「……二言?」

 

 そう言うと玲音さんは深呼吸して、ドーベルの瞳を真っ直ぐ見つめて言葉を発する。

 

「ドーベルの走り、カッコ良かった……だから次のレースはドーベルを絶対に応援する! そんだけ! んじゃ、また!!」

 

 そう言うと玲音さんは来た道を戻っていきました。

 

 なるほど……ずっと居ると次第にスズカさんの勝利とドーベルの敗北のことを考えてしまう。だったら言いたい事をあらかじめ決めておいて、スパッと言った後にすぐ去る。そうすれば伝えたいことだけを伝えることが出来て、心のダメージも少なく済む。

 

 ドーベルはあまりにも一瞬のことで目を丸くしている……しかしすぐにいつもの凛々しい目に戻って、小さく微笑みました。

 

「何よそれ……ばか」

 

   ・ ・ ・

 

 今回のGⅠの結果、そしてこの前玲音さんが言っていたチーム・スピカの特徴。

 

「(他のチームはかなり出るレースはトレーナーさんが決めていましたが、スピカはウマ娘の意思を尊重したプランを考えてくれる)」

 

 それは天皇賞制覇を目標にしているわたくしからしたらとても嬉しいことです。

 

 さらに言ってしまえば、あのチームにはテイオーというライバルもいて、目標を達成したところを見て欲しい……だ、大好きな人もいます。

 

「……決めましたわ」

 

「何がですかマックイーンお嬢さま?」

 

 わたくしの独り言を聞いてた爺やが質問をしてきました。だからわたくしはその決めたことを爺やに話しました。

 

 すると爺やは……とても嬉しそうに目を細めてました。

 

 

 




・FNS歌謡祭最高でしたなぁ……うまぴょい♪ うまぴょい♪

・次回は同期トレーナーの志し・スピカへ新加入するウマ娘のお話です。
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