少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
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「幼なじみと再会したのですか!?」
「あぁ……」
初めてのお粥を堪能した後、俺はメジロマックイーンからなぜ俺は倒れていたのかと問われた。
倒れた記憶は正直、覚えていないが……でも昨日(いや今日とも言えるか?)はずっと目を開けて、スズカとの再会を脳裏に思い浮かべていたから、寝不足になって倒れたんだろうと勝手に想像した。
「なるほど、以前から幼なじみの存在は教えられてきましたけど……本当に存在したんですね」
「いや存在してるよ、俺の妄想とかじゃ無いから……!」
「それで? ずっと念願にしていた幼なじみとの再会で気分が上がり……昨日は眠れなかったと?」
「……」
「何ですか玲音さん、そんなにこっちを見て」
「マックイーン、なんで怒ってーー」
「怒ってませんわ」
いや怒ってますやん……現に鋭いツッコミしているし、ウマ耳は後ろの方に耳を倒してるおこ耳だし……。
それに顔も明らかにさっきよりも厳しさを増している。
にしても、気分が上がり眠れなかった……か。
むしろそっちの方だったら、どれだけ良かったことか。
「……玲音さん?」
「……」
マックイーンに打ち明けたら、どうなるだろうか。
飽きられるか、それとも幻滅されるか。
「何か話したいことがあるのでしたら、わたくしで良ければ話を聞きますわよ」
「……ありがとう」
そうして俺はスズカとのこと、小6のあの嫌な出来事、そして再会した際にしてしまった過ちをマックイーンに打ち明けた。
マックイーンは耳をこちらの方に向けて……静かに俺の話を聞いてくれた。
「それって本当のことですの……?」
「……あぁ」
「……」
ある程度喋ると、マックイーンは黙ってしまった。
……やっぱり幻滅されたかな。
「ごめんな……こんな話しても、だから何って感じだよな……ははっ!」
少し暗くなってしまった空気を少しでも和ませようと笑ってみるが……明らかに引き攣っているし、声も裏返っている。
本当に俺は何がしたいんだか……。
自分が惨めに思えてくる。
「……ほら、一応俺は風邪ひいてるからさ、風邪がうつる前にマックイーンも帰ってーー」
「玲音さん……わたくしたちが出会った時のことを覚えていますか?」
「……えっ?」
早く帰ってもらおうと思ったが、マックイーンが突拍子もなくそんなことを言ってきたので、少し困惑する。
「そりゃ、覚えているけど……」
「わたくしは小学校5年、そしてあなたは中学校2年の時です。わたくしが通っていた小学校では林間学校が、あなたが通っていた中学校では野外活動がありましたわ」
***
中学校2年生の時、俺の学校には野外活動があった。
目的としては生徒たちの信頼関係や友情関係の向上、そして自然に触れるといったところだろう。
でもまぁ、そんなに苦だとは思ってなかった。
自然とは言っても、朝・晩ご飯は施設の食堂で食べれるし、お昼も施設が用意してくれる。
小説やその頃やり始めたSNSでは「炊飯活動たのしー!」とか書いてあったけど、うちの学校は「炊飯活動、何それ美味しいの?」という感じだった。
そんな初日の晩ご飯の時だった、メジロマックイーンと出会ったのは……。
「……」
視線を感じて隣を見てみると、そこには紫色の髪のウマ娘がこっちを見ていた。
しっぽをめっちゃぶんぶん振って、耳をぴこぴこ動かしている。
そしてその目は俺……ではなく、お皿に乗せられたみかん・いちごタルトの方を見ていた。
「……」
「……(ソワソワ)」
「……食べる?」
「っ! いいですの……!」
俺は答える代わりに皿の上に置いてあるタルト2つを目の前の子に渡す。
するとしっぽをさっき以上にぶんぶん振りまくって、顔はまるで向日葵でも咲いたかと思うくらい笑顔になっていた。
まぁ、喜んでもらっているし……これっきりだろうから、ちょっと良い事をした気分になっていた。
……でも、次の日に開催された肝試し大会でその子と再会したのだった。
俺は他の2人と3人ペアで動いていたのだが、ある辺りに差し掛かると誰かが啜り泣く声が聞こえたので辺りを見渡した。
そして見つけたのが……先日デザートをあげた子だった。
「はぐれちゃったのかな……かな?」
「ぐすっ……うぅ……」
「どうするんだ玲音?」
「どうするって……一つしかないだろう……」
俺は泣いているその子に近づいて、目の前で隠し持っていたアメを取り出す。
その子は少し困惑していたけど、そのアメを受け取って口に入れる。
そしてなるべく自然に……優しく語りかけるような口調と表情を意識して、言葉にする。
「一緒に行こうか……ここはちょっと危ないからね」
「……うん」
そうして手を繋いで、俺たちは彼女の先生を探した。
幸いにも俺らの学校で設定されていたチェックポイントと、彼女の学校が設定したチェックポイントが同じだったので、そこら辺に行くと彼女の学校の先生、そしてはぐれていたであろうグループの子たちもいた。
泣いて喜んで再会している姿を見ていると……良いことをしたと俺たちは思った。
そしてそこにいた小学校の先生に何度もお礼を言われて……そしてあの子もお礼を言ってくれた。
でもまさか……別の形で改めてお礼を受けるとは思ってもいなかったが……。
***
なんでいきなり、そんな昔の事をマックイーンは話しているんだろう。
「わたくし、知っていますの。あなたが本当に優しい性格をしているという事を……それはもうわたくしが何度も実感していますわ」
「……」
「だからあなたが一度の過ちを犯したとしても……あなたなら大丈夫ですわ」
一度の過ちを犯しても……大丈夫……?
流石にそれは綺麗事すぎないだろうか。
その一度の過ちが時々大きな溝を作る事だってあるはずなのに……。
「そんなに過去のことが気になるなら、忘れてしまえばいいんですわ」
「えっ?」
それは……彼女らしからぬ言葉だった。
だっていつもは「メジロ家の令嬢であるこのわたくしが〜」と、挑戦的・不屈的な言い方をしているマックイーンが……忘れるという後退するような言葉を使ったから……。
「だって、今のあなたはあなたです。昔のあなたではないんです」
「それは……どういうこと?」
「そこまでは言えませんわ……それは自分で見つけてこそ価値があるものですから……」
そう言うと、マックイーンはカバンを持って椅子から立ち上がる。
「では、ご機嫌よう玲音さん」
そう言って、マックイーンは部屋から出て行った。
「過去のことを忘れる……」
一度呟いてみたが……やっぱりしっくり来なかった。
***
スペシャルウィークさんがスピカに入った後、私は結局……トレーナーさんに黙ってレオくんが住んでいるトレーナー寮に訪れた。
トレーナーさんにはあんな風に言われたけど……でも私はレオくんと話したい。
そして……レオくんの本当の気持ちを知りたい。
そんな風に考えていると……廊下にウマ娘の子が向こうから歩いてきた。
あれ……ここは確かトレーナー寮、ウマ娘が入るには寮長さんの許可を取らないといけないはず……。
まぁ、いい。今はレオくんのお見舞いに……リンゴがお見舞いにいいんだよね。
「少しよろしいですか?」
「えっ?」
さっき廊下にいたウマ娘の子が私の前で立ち止まっていた。
「あなたがサイレンススズカ先輩で間違いないですか?」
「は……はい、あなたは?」
「わたくしはメジロマックイーンと申します。玲音さんのお見舞いに来たのですか?」
「は……はい」
なんでこの子……レオくんの名前知っているんだろう。
もしかして、レオくんの知り合い?
「あの人、ずっとあなたの事で悩んでいます。ですから彼を解放させてあげてください」
「えっ……?」
「わたくしからはそれだけです、ではご機嫌よう」
そう言って、メジロマックイーンと名乗った子はトレーナー寮から出て行った。
それよりも……レオくんが私のことで悩んでいる。
それは……どっちの意味で悩んでいるんだろう。
分からない……怖い……でも、私は知らないといけない。
彼の本当の気持ちを……だから私は覚悟を決めるように一歩一歩踏み締めて、レオくんの部屋へと向かった。
・マックイーンの親愛度はだいぶ高めです。
・やっぱりお嬢様口調は難しい。(書いたことがない)
・次回はレオちゃんとスズちゃんが交わした約束のお話の予定。