少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
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「次はーー、○○に宿泊になるお客様はここでお降りください」
ここで降りまっせ〜と思いながら、俺は降車ボタンを押そうとした。しかし実際降車ボタンは自分が押すよりも早く赤く点灯した。
なんかはしゃぐ声が聞こえてその声の方に顔を向けてみると、そこには男の子が興奮気味にボタンをカチカチと連打していた。
「(あぁ、あの子が押したのか)」
自分も子どもの頃、バスに降車ボタンを一番に押したくてあんな風に連打していたっけ。
なんて10年前くらいのことを思い出しながら俺は降りる支度をする。
しばらくするとバスが停車し、俺はイヤホンを外してリュックを持つ。
ちなみにチームのみんなは宅配で荷物を宿に送っているが、自分は送れなかった。
というのもお盆で北海道に戻る際一日泊まるホテルの方に荷物を送った。その結果、大きい荷物入れがこの今手に持っているリュックだけだった。一応出かける時はショルダーバッグを使っているが、あれに数日分の着替えを入れるほどの容量はない。
……まぁ要するに北海道の方に意識が行ってしまっていて、ただ単に忘れただけなんですけどね。
少し段差になっている降車口を降りると辺りは森で覆われていた。東京ではアブラゼミがよく鳴いているが、耳を澄ましてもアブラゼミの鳴き声は聞こえない。その代わり東京ではあまり目立たないシャワシャワという鳴き声があっちこちから聞こえてくる。
って、悠長にセミの鳴き声を聞き分けている場合じゃないや。
さっさと宿の方にーー。
「レオくん」
振り返るとそこにはスズカがいた。
なんでスズカがこんなところに……先生と一緒にチェックインしたんじゃないのか?
そう思いスズカがなんでここに居るのか聞いてみる。スズカが言うには「トレーナーさんから「迎えに行ってやれ」って言われたの」ということらしい。
いや先生、どんだけ俺をバカにしているんだと言いたいところだが、先生は数ヶ月前に俺が迷子になった事を把握していたらしい。
「それに……」
「それに……?」
「レオくんに……早く会いたかったの」
「それまたどうして? いや、別に悪い気はしないけどさ」
「なんでなんだろうね……」
そう言いながら困惑の顔を浮かべるスズカ。そして俺もその事に困惑するしか無かった。
ただスズカの目を見ると少し腫れていて、頬には涙を流したような跡があった。
そういえば京王線に乗っていた時、確か俺は涙を流していたよな。
「(なんかの偶然か?)」
でもそんな二人して同じ夢を見ることなんてあるのだろうか?
そもそも夢というのは本人の頭が寝ていても覚醒している時に見るものであり、自分の脳と他人の脳が繋がっているわけではないので、同じ夢を見ることはないはずだ。
しかし夢を見るのがレム睡眠時だと明らかになったのは1950年代の時であり、夢の研究は遥か昔から行われているが夢にはまだ分かっていないことが多い。
「どうしたのレオくん、そんなにこっちの顔を見て?」
「いやなんでもないよ……行こうか」
「あっ、荷物持つ?」
「……じゃあ、お言葉に甘えようかな」
そう言いながら俺はゆっくりと荷物を下ろす。するとスズカはひょいっとその荷物を持ち上げる。
かなり重いはずだが、そこはウマ娘。赤子の手を捻るように持つ。
そうして俺たちは宿に向かった。
・ ・ ・
宿に辿り着くとそこには先生がいて、俺はチェックインの手続きを受ける。
その後はお昼まで自由時間、そして昼になったら水着を着て砂浜に出るように……とのことだった。
俺はいつも寮でしているみたいにベッドでゴロゴロしながら、適当に時間を潰す。
ふと携帯から視線を外し、時計を見てみると時間は11時54分。そろそろいい頃合いだろう。
俺はリュックから水着を取り出す。ちなみに学園指定の水着ではなく灰色のいわゆるサーフパンツというやつだ。この前amaz○nで安かったのでポチっておいた。
まぁ特に泳ぐ予定もないし上は適当に速乾性のあるTシャツとか着ておくか。あとサンダルも履いてっと。
鍵を受付に預けて、俺は宿から出る。
遠くを見てみるとテイオー・マックイーン・スカーレット・ウオッカ・スペ・スズカの後ろ姿が見えた。
まぁかなり遠くだから走って追いつくほどじゃないが……なんて思ってると、テイオーが振り返った。そして視線が合う。
次の瞬間テイオーがダッシュでこっちに向かってくる。いやなんでわざわざこっちに向かってくるんだ?
「やっほー玲音!!」
「テイオー……わざわざこっちに来なくても良かったのに」
「えぇ〜だって移動は別々だったでしょ? ボクは早く玲音に会いたかったんだい!!」
「そ、そっか」
まぁテイオーは中学校一年生。年上に甘えたいみたいな考えもあったりするんだろう。分からんけど。
てことで、俺はテイオーと道を歩く。その先ではみんなが待っているので少し足早に歩く。
「ねぇねぇ玲音! ボクの水着の姿似合うかな??」
「男子高校生が女子中学生の水着を見るとかどんな変態野郎だよ……」
「別に気にしないよ〜。それでどうかな?」
そう言いながらテイオーは器用に歩きながらターンを決める。
ちなみにテイオーが着ているのは学園指定の水着であり、それは向こうで待っているみんなも着ているものだ。
だからまぁ慣れているっちゃあ慣れてはいるが、こうして見てみるとテイオーってかなりスリムだな。
「スリムで似合ってる……それくらいしか言えないや」
「えぇ〜それだけ〜!?」
「そもそもスクール水着でどう褒めればいいんだよ……」
ブーブーと文句を言うテイオーを聞き流して、俺はそのままチームのみんなと合流した。
・ ・ ・
チーム・スピカのみんなで砂浜に来ると他のチームのウマ娘や学生トレーナーが砂浜や海の中でトレーニングなどを行なっていた。
なるほど、海だから遠泳とかできるのか……なんて思いながら先生の姿を探す。
「お〜いお前らこっちだ〜!」
先生の声が聞こえてきたので俺たちはその方向に歩き出す。すると黒の水着を着けた先生がいるのを発見する。
そして先生の近くにはあるものが置かれていた。それは……。
「ねえトレーナー、なんで砂浜にバーベキューグリルがあるのかしら?」
「そんなの腹ごしらえをするからに決まっているだろ?」
スカーレットが言う通り、先生の目の前にはバーべキューグリルと机、食材(主にニンジンと肉)が置かれていた。
そう言えば今ってお昼時か……確かに腹ごしらえをするにはちょうどいい時間かもしれない。
「腹が減っては戦はなんとやら! 今はたっぷり食べて午後に備えるぞ!!」
『おー!』
ということで俺(と他数人)の初めての合宿はバーベキューで幕を開けたのだ。
先生が率先してニンジンとお肉を焼いてくれるので、俺たちはそれを頃合いを見ていただく。
バーベキューグリルで焼いたニンジンは普通に食べるよりも甘みが強く出ており、肉たちは若干炭っぽくなっているところがあってそれがまたバーベキュー感を煽る。
「うらああああぁぁ!!」
「……(ひょい)」
ゴルシがマックイーンの分をヘッドダイビングしながら奪い取ろうとしたが、マックイーンはひょいっと串を高く上げて避ける。
するとそのヘッドダイビングした先にあったのはテイオーの串、その先端がゴルシの目に……なんていうちょっとしたハプニングが起きた。
ちなみに本人曰く「大丈夫だ、問題ない」ということらしい。いや、あれは重傷になってもおかしくないだろ……やはりウマ娘の丈夫さ・治癒力は普通の人よりも高いんだということを改めて再確認した。
・ ・ ・
その後……。
「熱ッ!? あっついですって先生!?」
「弱音吐くな玲音、お前だけだぞ熱いって文句言っているのは」
「というかなんで俺もこの練習に参加させられているんです!?」
海が近くにあるのになぜだか砂浜で筋トレをやることになったり……。
・ ・ ・
「次、右手青」
「えぇ!? もうこれ以上複雑に出来ないよー!!」
「あ、あらテイオー? もうギブアップですか?」
「このボクに諦めるという文字はないんだよ……そういうマックイーンもきついんじゃな、い!」
「次、左足赤」
「なっ!? こ、この体勢から左足赤!? そんなの体の構造的に無理ですわ!!」
「へ、へぇ? マックイーンでも流石にこれは無理なんだね……じゃあボクの勝ちかな?」
「わ、わたくしはメジロ家のウマ娘。舐めたら足を掬われます……わ!」
「うわっちょっとそんな風に体を捻ったら!!」
「きゃあ!?」
「うわっ!?」
マックイーンが無理な体勢から右足を赤に置こうとした結果、マックイーンはバランスを崩し、そのままテイオーを巻き込んで二人ともツイスターゲームのシートに倒れてしまう。
今自分たちはツイスターゲームをやっている。砂浜で。
「なんで俺たちは砂浜でツイスターゲームをしているんだ」
「なんでアタシたちは砂浜でツイスターをしてるのかしら」
・ ・ ・
『問3:次に行われるクラシック三冠最後の一戦である菊花賞、現名称になったのは何年から?』
「(はぁ?)」
砂浜にわざわざ勉強机と勉強椅子を置いて、砂浜で小テスト……って!
「全然海関係ないじゃーーん!!」
「全然海関係ねぇじゃねえか!!」
自分が思ったことを大声で言うとテイオーも同じことを考えていたらしい。
これってわざわざ海に来た意味ってあるのか? こんな調子で合宿って大丈夫なんだろうかと少し心配になる1日目だった。
・面接が〜近づいてる〜(白目)
・某怪文書チャンネルで書いたスズカの長文怪文書が400以上のいいねで優勝した……やったー!
・この前のタイトルホルダーはすごかった……。
・次回は学園主催の肝試しのお話をする予定です。