少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
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「学園・生徒会主催の肝試し?」
合宿が始まってからもう5日間が経過し、合宿の終わりが見えてきた今日この頃、俺はゴルシから学園が主催している肝試しが今日の夜、近くにある山で行われるというお話を聞いた。
なんでも生徒会や数人の上級生が下級生のために開いてくれる催しなのだという。
「スピカは全員参加するつもりなんだけどよ、新人も一緒に行かねえか?」
「えっ、みんなってことはマックイーンも?」
「当たり前だろ?」
「ゴルシが煽ったりとかしてないよな?」
「……当たり前じゃねえか」
「おいなんだ今の空白」
俺の記憶が正しければ、マックイーンって怖いものがかなり苦手だったような気がするんだけど……大丈夫だろうか?
でも俺自身もそんなに怖いものが得意な訳ではない。で まぁ、ホラー映画とかは好きだが。
それにやっぱりマックイーンが少し心配だな……いくら中学校2年生とはいえ、俺にとってマックイーンは可愛い妹みたいな存在。妹が困りそうだったら近くにいてあげるのが兄の役目だ。
「分かった。俺も参加するよ」
「そうこなくっちゃな! んじゃあ夕飯食ったら出かけるから用意しておけよ」
・ ・ ・
チームのみんなで夕飯を食べた後、そのまま俺たちは宿から少し歩いたところにある山に向かった。
ちなみにこの時点でマックイーンは怖がっているのか自分の後ろをピッタリとくっついている。いや、歩き難いったらありゃしない。
そこまで怖いんだったら何か理由をつけて断ればいいのに……まぁ相手がゴルシだから上手く乗せられたのだろう。
「マックイーン、大丈夫か?」
「へっ、な、ナニガデスカ?」
「怖いの確かダメだったろ? 別に俺も得意なわけじゃないんだし、二人で理由をつけてもーー」
「えっ? マックイーン怖いの苦手なの〜?」
そう煽ってくるのはゴルシだけだと思っていたが意外や意外、マックイーンを煽ったのはテイオーだった。
「そ、そんなわけないでしょう? わたくしはメジロのウマ娘……こんくらいなんてことありませんわ!」
そう強気に言ってはいるが、自分の後ろにいる時点で少しカッコ悪いというか強がっているのがバレバレである。
……しゃあない。そう思いながら俺はマックイーンの左手を握る。マックイーンが怖がっている時は基本こうしているのだ。って言ってもまだ数回しかやったことないが。
「あっ、玲音さん……」
「せめて着くまでは手握っててあげるよ」
「あ、ありがとうございます……」
そう言うとマックイーンは弱々しく俺の手を握り返した。
そうしてそのまま20分以上歩くと、他のチームのウマ娘たちの姿やトレーナー学科の生徒の姿も見えてきた。
そうなると自然とマックイーンと繋いでいた手は離れていた。
「チームで参加の人は集まるようにして、人数が多いところは四人一組になってくださーい!」
「よ、四人一組!?」
そう言いながらウマ耳を垂れ下げるマックイーン。恐らく自分と離れることと、下手すると全ての元凶であるゴールドシップと組むことになってしまうことを危惧したんだろう。
「んじゃあここは公平にグッパで手取り早く決めようぜ!」
ゴルシがそう言うとチーム・スピカ全員で小さな円を作って、手を前に突き出す。
「(玲音さん、グーですわ! グーを出すんです!!)」
そしてマックイーンからすごい視線を感じる。まるで「今から出す手は分かりますわよね?」とでも言いたげな視線を送ってくる。
いや、そんなアニメの世界じゃないんだからマックイーンの考えていることを読み取るなんて不可能だから。
『グッパでわっかれまーしょ!!』
全員でタイミングを合わして手を振る。
俺はパーを出した。そうすると俺を含めた五人がパーを出していた。
ちなみにマックイーンはグーだった。
「ちょっと玲音さん、わたくしグーだって言いましたわよ!?」
「言ってないし、心を読み取るなんてできないからな!?」
「なーにワーワー言っているんだ、さっさと次行くぞ〜! はい! グッパでわっかれまー」
『しょ!』
2回目のグッパ……それで組み合わせが決まった。
・ ・ ・
「次の組、どうぞー!」
「おうし! ゴルシ探検隊! アマゾンの奥地へ出発じゃーい!!」
「ま、待ってくださいゴールドシップさん!!」
グッパで二組に分かれて数十分後、いよいよ俺たちの番が回ってきた。
ゴルシは意気揚々と暗い道を進んで行く。唯一の光源である懐中電灯は一人しか持てなく、それをゴルシは掻っ攫うように持って行ったので、ゴルシと一緒になっている娘たちはゴルシに付いていく。
あっ、ちなみに俺はゴルシとは別の組み合わせになった。ゴルシと一緒になったのはスペ・スカーレット・ウオッカだ。
つまり俺と一緒になっているのは……。
「あっ、今結構遠くで悲鳴が聞こえたかも」
「ひっ……て、テイオー! 不安を煽るようなことを言わないでください!!」
「いえ、今のは確かに聞こえたわね……」
「す、スズカ先輩まで……」
俺、スズカ、マックイーン、テイオーがもう一つの組合わせだ。
まぁマックイーンは自分と一緒になりたかったんだろうし、仲良さそうなテイオーもいるからマックイーン的には一番理想的なメンバーだろう。
「まぁ大丈夫だよマックイーン、肝試しって言っても学生が作るレベルなんだから、そんなにビビらなくてもーー」
「〇〇さん! 着いたよ!! ゴールに着いたよ!!」
「……(ガタガタガタガタガタガタガタ)」
ゴール地点はこのスタート地点から少し離れたところにある。
しかしその大声はこっちまで聞こえてきて、何事かとスタート地点にいた多くの生徒はその声の方に視線を向ける。
そこには一人の学生トレーナーがウマ娘を負ぶりながら本部らしきテントのところに駆けていく光景が見られた。
そして負ぶられているウマ娘は目は開いているものの心ここに在らずな感じで、ガタガタと某青鬼ゲームに出てくるタケシみたいに体を震わせていた。
「(えっ、待って……そんなにガタガタするレベルなの?)」
どうせ学生が作るお遊び程度の肝試しだと思っていたが……これってもしかして結構ガチなやつ?
マックイーンとは違って自分は怖いのは楽しめる方だ……だけどあんなものを見せられると「やばいのでは?」という感情が心と頭の中を満たしてくる。
「次の組、どうぞ〜」
「れ、玲音さん……」
ぎゅっと自分の服を摘むマックイーン。その瞳には明らかに動揺と恐怖が宿っていた。
……俺がビビってどうするんだ。ここではスズカとは1日違いとはいえ俺が一番年上なんだ。それに妹が怖がっているなら、堂々として妹を安心させるのが兄としての役目だ!
いやまぁ本当は無理させないのが一番なんだけど、マックイーンのプライドがそれを許さないだろう。
「よーし、三人とも行くぞー!」
「おー!」
「お、お〜?_」
「おー……ですわ」
・ ・ ・
懐中電灯を持って山道を進んでいく。今日の月齢は三日月であり、月明かりで山道が照らされるなんてことはない。
さらに言ってしまえば懐中電灯もLEDの眩しいやつではなく、そんなに眩しくない豆電球の物なのでずっと先を照らせる訳ではない。
『きゃああ!!』
『あ゛ぁ゛!!』
そしてこの先に聞こえてくる悲鳴が俺とマックイーンの不安を煽る。
「れ、レオくんにマックイーン。足震えているけど、大丈夫?」
「大丈夫じゃない、問題だ」
「えぇ〜玲音怖いのってダメなの〜?」
「ホラー映画とかは好きだけど、自分が肌身で感じる系は苦手って感じだな」
「へぇなんか意外ーー」
その後、多分テイオーの言葉が続くはずだったんだろう。
しかしその言葉はぴとっ……と背中に何か冷たくぬめっとした物が当たる感触がしたことによって遮られる。
ついでに俺の背中にも感触がーー。
「ピギャアアアアァァ!?」
「アビャアアアアァァ!?」
「ひゃあ!? な、なんなんですの二人とも! 急に大声を出して!!」
急に大声を上げた俺とテイオーに怒るマックイーン。いやでもあれは誰でも声出るだろ!?
「冷たいものが当たったんダヨ!! こう、ピトッ……って!!」
「もしかして……これのことかしら?」
スズカがあるところを指差しているので、俺はスズカの指差している先を見てみる。
そこにあったのは……糸に吊るされたこんにゃくだった。
「こ、こんにゃく……だと?」
アニメとかマンガなどの肝試しなどでこんにゃくを扱う主人公やそれに驚くキャラというシーンは見たことがある。
『こんにゃくにある独特のヌメリやその安価さから使われていることが多いんだ』って叔父さんが教えてくれたことがあったけど、本当にこんにゃくで驚かされるとは思わなかった……。
糸の先を追ってみると二人のウマ娘の姿が見える。一人は会釈すると会釈を返してくれ、もう一人は手を振ってくれた。
正直序盤でここまで驚かされるとは……俺の精神は保つのだろうか。
その後はまぁ様々なカラクリや驚かせに驚きながら、中間地点の青いリボンが結ばれた木までやってきた。
「やっと半分か……結構喉痛い」
「こ、これは……キッツイですわ……」
「ここまで大声出したの、いつぶりだろう……」
「三人とも、結構消耗してるわね」
俺、マックイーン、テイオーは結構この時点で満身創痍なのに対して、スズカは結構涼しい顔をしている。
スズカって結構怖いの怖くないんだな。昔はよくお化けとかに怖がっていたイメージだけど……それは幼稚園児の頃のイメージだからそりゃ変わるか。
「あっ、ここから先はこれを持って行ってくださいね」
そう言って役員のウマ娘がマックイーンに渡したのは……お皿だった。
「これは……何に使うのですか?」
「それは言えません……が、これだけは言えます。
絶 対 何 が あ っ て も 割 ら な い で く だ さ い ね 」
「エッ……」
役員のウマ娘さんはあまりにも低すぎるトーンでその事を伝えると椅子に座り直した。
マックイーンはおどおどしながらその役員のウマ娘に語りかけるが、役員のウマ娘は沈黙を続ける。
仕方なくそのまま先に進む俺たち……しばらくすると何やら草むらが揺れた。
風邪かと思ったが、今日は全然夜風がない……ってことはやっぱりこれは脅かしイベントか……さっきは人魂、さらにはのっぺらぼうや口裂け女……今度はなんだ?
なんて思っているとその脅かし役はその場で大きく跳躍した。
「きゃああああぁぁ!?」
マックイーンの悲鳴をあげる。それに合わせるようにソレは俺たちの前に着地した。
そして俺たちの目の前に現れたのは……さっきまでのコスプレをしたような感じではない。まさに人外というのに相応しい造形をしたナニカだった。
トカゲみたいに発達した足や腕に着いたヒレ、緑を基調にところどころに赤い線が走っている。
そして何より特徴的なのは夜でも妖しく光る真っ赤な二つの眼。
「って待て待て、これってアマゾーー」
「キキー!! ケケケケーー!!」
ソレは不気味な鳴き声を上げると再び跳躍して、草むらにまた隠れてしまった。
いや……えっ? マジでどういうこと? なんでこの肝試しにライダーらしきものがいるの?
いや確かにアレやアレの派生作品の造形って一般人から見たらライダーかと言われるとNoとは答えるだろうが……。
「あの動き……あれはヒシアマゾンね」
「えっ、あれってヒシアマさんなのか……結構役になりきってたな」
「役? あれはなんの妖怪なの?」
「いや違う、昭和ライダーのアマゾーー」
「あぁー! マックイーンマックイーン!! 手! 手の中!!」
「へっ? あっ……」
テイオーが言った通り、マックイーンの手を見てみると……持っていた皿がパキリッと割れていた。
「や、やってしまいましたわ……!」
ただ小皿の割れ方はかなり綺麗だ。線に沿っているみたいで、まるで割られることが前提みたいな……そんな割れ方だ。
「ねぇ待って、何か聞こえない?」
スズカがそう言うと目を瞑って、ウマ耳に意識を集中させる。
それを見てテイオーとマックイーンもウマ耳に意識を集中させる。
自分も一応耳を澄ましてみるが……聞こえて来るのは草木の音だけだ。
しかしスズカたちは何かを聞き取った様でウマ耳がピンッと立った……あっ、いやマックイーンは耳が垂れ下がって顔がこれでもかってくらい真っ青になった。
「どうしたんだマックイーン?」
「……チャキチャキと、音が聞こえるんです」
「チャキチャキ……あっ、それってもしかして」
「えぇ、恐らく」
「「お菊」」
お菊……それは『番町皿屋敷』という日本の階段に出て来る怨霊のことだ。
父と母を流行り病で失ったお菊は青山家という大きな家柄で女中として雇われ、美しく成長する。
しかしある新年会の首席で使われた貴重なお皿を洗っていると、10枚中1枚がないことに気付く。どんなに数えても9枚しかない……その事を主人に報告すると「金目のものだと知って盗んだな!」とお菊の弁明を聞かなかった。お菊は右手の中指を切り落とされ、狭い女中部屋に放り込んだ。
犯人は青山家に仕えていた古参の女中だった。さらに主人がお菊の手打ちを決めると女中は嬉しそうにお菊に報告する。
そしてお菊は……古井戸に身を投げた。
しかしその5か月後に出産した子どもの右手の中指がなかったり、深夜に怨霊が現れたりする様になったのだ。
「い、嫌ですわ!! 呪われたくないですわ!!」
「オーケー。じゃあマックイーン、そっちの皿こっちに渡して」
俺がそう言うとマックイーンはすっと静かに真っ二つに割れたお皿を差し出した。
そうして俺たちはまた歩き出す。しばらくすると、自分の耳でも微かに聞こえるくらいの音でチャキ……と皿と皿がぶつかり合う音が聞こえてきた。
その音が聞こえた瞬間、俺の額に嫌に冷たい汗が流れる。
「レオくん本当に大丈夫? 少し顔が青いよ?」
「大丈夫大丈夫、多分ここが肝試しのピークだろうし……ネタが分かってたらそこまで怖くないよ」
なんて言っていると、少し開けたところに出た。
そしてその中央には……井戸みたいなオブジェクト。その近くには人魂と白い衣に身を包んだウマ娘がいた。
そのウマ娘はカチャリと音を立てながら、近くにあるお皿を平積みしていく。「一枚……二枚……」とか細くもおどろおどろしい声でお皿の枚数を数えている。
「七枚……八枚…………九枚………………」
最後の一枚がないことに気がつくと、そのウマ娘はゆら〜りと顔を上げ、こっちの視線
「あと一枚……足りなああああぁぁいいいい!!」
「「「きゃああああぁぁ!!」」」
振り返ったその顔を見てみると片目が抉れていた……いや怖い怖い怖い!!
えっ、待ってあれどうやってメイクしてんの? めっちゃお金掛けて特殊メイクしているこれ!?
あまりにもリアル過ぎてガチで発狂寸前くらいの悲鳴を出してしまった……マックイーンに関しては腰が抜けているし、テイオーも流石にこの本気度にウマ耳を垂れ下げている。
しかしこんなガチな特殊メイクを見ても動じていないのがスズカなのである。
「あら、エアグルーヴ?」
「むっ、スズカか。珍しいなこういう催しに参加するなんて」
「全員参加する流れだったからね」
いやなんでそんなに普通に喋られるの? スズカの精神力恐ろしいな……。
というかお菊はエアグルーヴだったのか……あぁ、冷静になって来ると確かにエアグルーヴだ。
「こんばんはエアグルーヴ、めっちゃ驚かされたよ」
「むっ、谷崎か……今年はかなり特殊メイクに力を入れているからな」
「それってどれくらい費用かけたの?」
「全体の費用は分からんが……私のこのメイクは100円ショップで立体傷口メイクシールというものがあったからな。血のりやファンデーション、水彩絵具などでメイクした。皿はこちらで回収する」
へぇ、これが100均で揃えられるのか……最近の100均ってすごいな。
というかスタート前に見たゴール地点でタケシ状態になっていたウマ娘はこれを見てあんなにもガタガタさせていたんだろう。
いや、マジでこのメイクすごいな……改めて見ると本当に怪我しているみたいだ。
「あまりジロジロ見るな」
「あっ、ごめん」
「次もあるからな、ゴールはもうすぐだ」
そう言うとエアグルーヴはお皿を片付けて、次の組を驚かすための準備に入った。
俺たちは顔を見合わせて先に進もうとした……のだが、マックイーンが歩き方が少しぎこちなくなっていた。
「す、すみません……今ので少し力が入りませんわ……」
「まぁ今のは無理もないわな……背負うか?」
「……じゃあ、お願いしますわ」
懐中電灯をスズカに渡して、俺は姿勢を低くする。するとマックイーンはゆっくりと体重を俺の背中に預ける。
心の中でタイミングをつけて一気にマックイーンを持ち上げる。
昔は結構ひょいとできたが、少しだけよろけてしまう。そりゃそうだ、マックイーンは数年成長しているのだから……俺はマックイーンの成長を背中で感じ取った。
そうしてそのまま俺たちは順路を進んでーーブオオオオン!!
「「「へっ?」」」
何やら後ろから変な音が……まるでなんかの機械が動くような音が聞こえて、俺たちはその音がした方向に振り返る。
スズカがライトを当てるとそこにいたのは……チェンソーを持ったジェイソン。
「はっ!?」
ライトが当たった瞬間、そのジェイソンは紐を引っ張ってチェンソーを起動させ……突っ込んでくる。
それを見た瞬間、俺たちはダッシュで逃げる。
いや、これって肝試しだよな!? なんでこんなに走らねえといけねえんだよ!?
後ろを振り返りたいが振り返った瞬間にGAME OVERになりかねない。しかし俺は普通の人間、さらにマックイーンを背負っていることもあり、そんなに上手く走れない。
「(やばいやばいやばいやばい!)」
とにかく必死に走る。肺が痛くなってきたがそんなの気にすることもできない。
というかなんでジェイソンらしきヤツは俺を攻撃してこない? もしかしてこれも肝試し要素の一つ?
いやでも肝試しで金曜日とか聞いたことねえぞ。というか本物のチェンソーを使うな!! ていうか本物は使ってねえよ!?
なんて余計なことを考えてしまったせいか、俺は呼吸のリズムを完全に乱してしまいむせってしまった。
その影響によって、俺は走ることをやめてしまう。
「レオくん!」
「玲音!」
「玲音さん!!」
不味い……このままだとヤられてーー。
「結構驚いてくれたみてえだな」
「「っ!? そ、その声はまさか……」」
「ゴルシなのか!?」
「ゴールドシップさん!?」
「ピンポンピンポーン! ご名答〜!! そう、この金曜日の夜に現れた謎の仮面ウマ娘、その正体は〜〜このゴルシちゃんじゃーい!!」
そう言いながら仮面を勢いよく取るジェイソン……ではなく、ゴルシ。
「いやぁ〜結構道具を借りた甲斐があったぜ〜! まさかここまで驚いてくれるな……んて……」
調子に乗っているゴルシだったがその声はどんどん弱々しくなっていく。
それは恐らく、俺の背中から感じるウマ娘の殺気と怒気を感じ取ったからだろう。
「玲音さん、下ろしてください」
「仰せのままに」
マックイーンをその場に下ろすと、マックイーンはゆっくりとゴルシに近づいて行く。そしてマックイーンのウマ耳は完全に攻撃態勢のものだった。
そして真顔のマックイーンから漂う殺気が俺にも感じ取れた。
だからだろうか、ゴルシは少し耳を垂れ下げそうになっている。
「ゴールドシップさん……物事には限度というものがありますわー!!」
「ぎゃああああぁぁ!!」
そうしてゴルシはマックイーンに脇固めを決めたのだった。
・ ・ ・
しばらく歩くとスタート地点で見たゴール地点に辿り着いた。
「あぁ〜脇がすごく痛え……」
「「それは自業自得だ(ですわ)」」
「でも、中々楽しかったね!!」
「えぇ、結構楽しめたわ……ありがとうございますゴルシ先輩」
「良いってことよ!」
まぁ、色々あったけど、なんだかんだチーム内の親密度が上がるようなイベントになったと思う。
「あっ、玲音センパーイ! こっちですよー!!」
ウオッカの声が聞こえたのでその方向を見てみると、スカーレットにスペの姿も見えた。
そうか、ゴルシが抜けたから三人で肝試しをやってたことになるのか……俺は少し駆け足で三人の方に寄る。
「三人とも、ゴルシが急に抜けたと思うけど大丈夫だった?」
「はい大丈夫ですよ、何せ……」
「玲音先輩がワタシたちを見つけてくれましたからね!」
……んっ?
「いやあ、順路に外れちゃって少し焦りましたけど、玲音先輩のお陰で助かりました!」
「アンタがいい加減な道を行くからでしょ! 何が「オレの勘がこっちだと囁いてるぜ!」よ!!」
「なにおう! そういうお前だって道間違えてただろうが!!」
「喧嘩は止めましょう! 玲音さんのお陰でここまで来られた、それでいいじゃないですか!」
「……それもそうだな」
「……それもそうですね」
スペは俺の前まで歩み寄って来て、とても眩しい笑顔でこう言った。
「ありがとうございます玲音さん、私たちを見つけてくれて」
「えっ、あ、あぁ……?」
「そういえば玲音さん途中から居なくなりましたけど、どこにいたんですか? あっ、スズカさんたちと再び合流したんですね!」
ちょっと待ってくれ……これって冗談だよな?
俺、スペたちを見てなんかいないんだけど??
でもスペたちに嘘をついているような、イタズラをしているような素振りもない。
じゃあ……スペを見つけた俺って、なんだったんだ?
その疑問が浮かんだ瞬間、ぞわぁと鳥肌が立つ感触がした。
「どうしました玲音さん?」
「い、いや……ナンデモナイヨ」
「……? そうですか」
そうして俺たちは泊まっている宿に帰り、各々部屋に戻ったが……その晩、俺はスペが見たという俺の形をした何かが気になってあまり眠れなかった。
・いやぁ天皇賞・秋は素晴らしかった……。
・流鏑馬のブライアンとカイチョーすごくかっこいいし、奉納舞のシチー・カレンチャン・ユキノまじで綺麗で可愛かった。
・体育祭が終わり、高三は遠足。しかし他のクラスが県外の遊園地行くのに自分たちのクラスだけ県内でみかん狩りと座禅って……ハァ( ゚Д゚)?
・次回は合宿最終日、夏祭りに行く予定です。