少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
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子どもの頃は当たり前のようにやっていたことが、今ではできなくなっている。
そんなことはないだろうか?
例えば公園で走り回ることだったり、春はたんぽぽの綿毛を飛ばしたり、夏はプールに行ったり、秋は紅葉でできた自然のカーペットの上を寝転がってみたり、冬に雪が積もったら雪だるまを作ったり雪合戦をしたり、雪が積もってなかったとしても霜柱を踏んでみたり……まぁ取り上げたらキリがない。
でも年を取ってくるごとに、大人に近づいて行く度に……人は楽しみや興奮よりも疲れそう・面倒などネガティブな感情の方が勝ることが多くなってしまう。
さらに昔は用意されていたからそれに従って楽しむことができたが、いざ自分自身で用意しようとすると費用がかなりかかったり、先に考えたように面倒臭いなどの感情が湧いて来たりしてしまい、次第と昔楽しんでいたことをしなくなるのだ。
でもそんな時こそ、歳が経った今だからこそ……その遊びをした時の感動はとても大きいのだ。
もちろん恥じらいだってあるかもしれない。でも一度やってみればきっと楽しさが勝つと思う。
そう……今の俺みたいに。
・ ・ ・
「見てみて玲音! 必殺二刀流持ちー!!」
そう言いながら細い棒のようなものを両手に持ちながら、クルクルと回りながら笑顔になっているテイオー。
その笑顔はその棒のようなものから放たれている火花が彼女の水色の瞳をキラキラと輝かせている。
「こらこらテイオー、危ないから持ちながら動き回るのはやめとけー」
「え〜いいじゃーん!」
なんてテイオーに注意しているけど、昔は俺もやってお母さんやワキアさんに怒られていたなあ。
こうして見ていると昔のことを思い出して、ちょっと自分もやってみようかな? みたいな考えが頭を過ってしまう。
「そんな慌てんなよテイオー、まだ花火はたっぷりあるんだからよ!!」
俺たちが帰路に着いている時、ゴルシが俺たちに出したもの……それは手持ち花火だった。
「夏といえば、やっぱり花火だろ!!」
「花火? ゴルシお前いつからそんなの持ってたんだよ?」
「祭りの景品であったからな、たんまり稼いできたぜ!!」
そう言いながらこっちに向かってピースするゴルシ。どこか誇らしげだ。
「ん〜、でも今から花火か……」
だが俺はどうも乗り気にはならなかった。
それはやっぱり日中にやっていた練習の疲れとさっきまで夏祭りで人に揉まれていた疲れが溜まっているからだ。
さらに言ってしまえば明日も午前中は練習があり、その後は北海道に移動しないといけない。
時間としてももう21時くらいなのでお風呂に浸かってベッドの上にダイブして休息を取りたいという気持ちの方が強い。
なんて考えていると自然とあくびが出てしまう。ゆっくりと吐かれた息が全身の力を緩めたようにも思えた。
そうなるともっと眠気を自覚してしまう……あぁだめだ、やっぱ眠くなってきた。
「……確かに魅力的な提案だけど、流石に今からはーー」
「わー! 面白そう!! ねぇねぇ、やろうよみんな!!」
そう言いながらぴょんぴょんと跳ねるテイオー。
その仕草が小動物に見えてしまう。あっ、可愛いなこれ。
「そうね……夏祭りの余興としては十分ね」
「オレももうちょっと遊びたいと思っていたところだぜ!」
「わたくし、手持ち花火はあまりやったことがないので、少し興味がありますわ」
「私もです!」
「レオくん、一緒にやろう?」
テイオーの一言からチーム全員は花火をやる雰囲気になっている。
まぁ、花火なんてそんなに疲れないだろう。その場で火花が散っているのを眺めるだけなんだから。
「……じゃあ、俺もやろうかな」
「なんだなんだ? すっげえ眠そうな声じゃねえか?」
ゴルシに指摘される。
そりゃそうだ。実際眠いんだし……ただ結構抑えたつもりだったけど、思った以上に眠そうな声だったらしい。
「安心しろ、そんな眠気すぐに覚まさせてやるからな!!」
そうして俺たちは海岸に移動した。先生はバケツとチャッカマンを借りに宿の方へ戻っていた。
今回の合宿で日中の夜の砂浜というのはあんまり来たことがなかったので波の音と自分自身とみんなが砂を歩く音しか聞こえないというのはなんか不思議な感じだった。
月明かりに反射して白波がキラキラと見えている。でもそれ以外の月明かりが当たっていないところはどこまでも続く暗闇で、このまま見続けていると吸い込まれるんじゃないかと突拍子もないことを考えてしまう。
「────」
「レオくん、トレーナーさん戻って来たよー」
「…………分かった」
そう返事して俺はみんながいる方に戻る。
戻ってみると各々気になる手持ち花火の袋を開けている。それこそ派手なフォントがあるものからシンプルに箱だけの物など様々だった。
というか手持ち花火って結構種類あるんだな……。
「眠そうな新人はこれをやってみろ」
そう言われて俺はゴルシから少し太めの手持ち花火を渡される……いやでかいな、まさか爆発とかするタイプなのか?
……ゴルシならそんなものを持っていてもおかしくないな。
「なんか失礼なことを考えていないか?」
「いや、眠すぎて何も考えれないよ」
「そうか? ならこれで少しは目を覚ませよ」
そう言いながらゴルシはチャッカマンを俺が持っている花火に近づける。
「新人! カウントだ!!」
「えっ!?」
「ほら早く!!」
「え、えっと……3、2、1!」
唐突に言われて咄嗟に思いついたカウントダウンに合わせてゴルシはチャッカマンのスイッチをカチッと押した。
チャッカマンの先端から小さな炎が出てくる。そしてその小さな炎が手持ち花火の先端に当たる。そして次の瞬間、金色の火花が俺の目の前に広がった。
「……すごい」
最後に手持ち花火をしたことなんて、一体いつの頃だっただろう。
確かまだお母さんがいた時……だったら10年前くらいだろうか。
でもあの時の花火の火花は……もっと小さかった。こんなに激しくはなかった。煌びやかでもなかったと思う。
だからこそ、今俺の手の中にある花火の美しさに……俺は息を飲んでいた。
「どうだ? 目ぇ覚めただろ?」
「あぁ、すごいな最近の花火は……こんなに激しく、そしてこんなにも綺麗だなんて……」
「おっと、これで終わりじゃねえぜ?」
「えっ?」
ゴルシの視線が手持ち花火の方に移ったので、俺は再び手持ち花火に視線を落とす。
すると金色に輝いていた火花が突然、水色に変わった。
「色が……変わった?」
「おう、こいつは色が何度も変わるんだぞ」
「最近のやつって結構すごいんだな」
「いや、こいつは老舗が作っているやつだぞ。まぁーーっと、そんなことはいいんだ。ほらまた色が変わるぞー」
ゴルシがそう言ったのと同時に火花が水色から緑色に変わる……花火って赤と橙色を混ぜたような火花しかないと思っていた。
でもこうしてやってみると花火にも色んな色があって……こんなにも綺麗で……すごく楽しい。
楽しい……まるであの時の思い出が少しずつ思い出してくるような、そんな感覚もしてきた。
「おいテイオー! こっち来いよー!」
「おっ、玲音のやつそろそろ消えそうだね。じゃあ火花もらうね!」
そう言うとテイオーは手に持った花火を俺の花火に近付ける。
しばらくすると俺の花火は燃え尽きた。それと同時にテイオーの花火が火花を散らす。
そっか……花火ってこんな風に火をつけることも可能なんだっけ。
テイオーは花火をつけた後、テイオーは「わーい!」と大声を出しながら砂浜を駆けていく。
そうしてテイオーはある程度の距離を取ると両手に持っていた花火をブンブンと振り始めた。
それを注意するが自分も子どもの頃にあんなことやっていたなと、少し懐かしい思いが蘇ってくる。
「アタシ、結構花火って好きなんだよ……さっきみたいに火花を分け与えることができるだろ? それはその気になればずっと続く……命のバトンに近いような感じがしてな」
「花火でそこまで考えるか? まぁそう言われたら、確かにそんな感じだろうな」
なんか意外だった。
ゴルシって結構ロマンチストなんだな。
命のバトンとかよくそんな喩えが出てくるな……意外と本を読んだりとか映画を鑑賞したりとかしているのかな。
・ ・ ・
「あぁ!! 今度も負けたー!!」
「これでようやく10対10……並んだわね!」
「二人とも、何やってるんだ?」
ウオッカ、スカーレットの方に近付いてみると二人は隣り合わせに並びながら花火を持っていた。
周りが丸くなったり向かい合わせになっているのに、この二人だけ隣り合っていたので興味本位で近付いてみた。
すると足元にはバケツが置かれておりその中には何十本もの花火の燃えカスが入れられていた。
「オレとスカーレット、どっちの花火が長く燃焼するか競っているんです!」
「同じ花火でも地味に燃焼時間が違ったりとかするんですよ」
「へぇ……でも同時に火をつけるにしても、若干つける時に差が出ないか? 片方がつくのが遅いとか……」
「えっ、そんな事ないですよ?
「えっ、そんな事ありませんよ?」
そう言うと二人はほぼ同時にチャッカマンを取り出し……寸分の狂いもなく同時に火花が散り始めた。
いやすご……寸分も狂いがないとか、この二人どんだけ息が合っているんだ?
「「今度は絶対に負けない!!」」
「ほ、ほどほどにな〜……」
・ ・ ・
「ひゃあ!?」
「うわぁ!?」
「ははは! どうだマックイーン、テイオー! これが鼠花火ってやつだ!! ってちょっと待てゴルシちゃんの方にぎゃあああぁぁ!!」
「鼠花火……?」
マックイーンにテイオー、そしてゴルシが固まっていたので近寄ってみると何やら鼠花火というものを行なっていた。
手持ち花火だったら一応何回かやったことはあるが……あんまり普通の花火以外をやった記憶はない。
だからこそ足元でシュルシュルと音を立てながら回って、火花を散らしている鼠花火とやらに興味が湧いたのだ。
「ぜぇ……ぜぇ……んっ、なんだ新人。鼠花火を見るのは初めてか?」
「あぁ、それってどんなやつなんだ?」
「見ての通り走る花火だ。どっちの方向に行くのかが分からないからな、あんまりあたりが燃えそうなところじゃ出来ねえからこういう砂浜が一番適しているんだ」
「へぇ……」
「わたくしも存在は知っていましたけど、この目で見るのは初めてですわ」
「ボクもボクも、あんまり地元ではやっていなかったかな」
「はぁ……こうして伝統っていうのは消えていくんだろうなぁ」
俺たちの会話を聞いてゴルシは伝統が風化していくメカニズムを知って何やら物思いに耽っている。
それを鼠花火と繋げるのはかなり無理がある気がするが……なんて思いながら、俺は袋から入っている鼠花火を取り出す。見た感じ、導火線にみたいに伸びている紐……そこに火をつければ良さそうだ。
さっき見ていた感じ、地面で走るような感じだろうから地面に置きながら導火線にチャッカマンの火を近付ける。少しすると導火線に火が灯る。
「すぐ離れた方がいいぞ、いつ暴れ出すか分からないからな」
「そっか」
「ってちょっと待ってよゴルシ! ナンナノその足元にいっぱいある花火は!?」
テイオーが叫んだのでゴルシの方を見てみると、その足元には夥しい数の鼠花火があった。
いや待って? そんなに多いとかなり地獄絵図になるんじゃ……。
なんて考えている間にゴルシはどう点けたか分からないが、その夥しい数の鼠花火に火が灯る。
そして少しするとシュルシュルと音を立てて、俺のやつも含めたそれらが辺りを走り回る。
「わ、わわっ!?」
「これどう収拾つけますの!?」
鼠花火自体はそこまで大きくはない……でもあり得ないくらい量があればその小さな火花も大きな火花となる。
ていうかこれって大丈夫なのか? なんかすごい火花の数なんだけど、夜の海岸なのにみんなの姿がはっきりと見えるんだけど……。
「ヒャッホー! 最高だなぁ!!」
「うおっ?!」
砂浜を走っていた鼠花火が俺の足元まで迫って来る。
俺は火が当たらないようにステップして避ける。
「……んっ?」
俺はステップで避けるため、そしてまたこっちに来る可能性もあるためその鼠花火と他の鼠花火を見ていた。だからこそ気付いたのだ。
その多くの鼠花火が同じ場所、簡単に言ってしまえばゴルシがいる方に向かって行っている。
「はっ? ちょちょちょちょちょ!?」
ゴルシはその事にやっと気付いたが……もう遅かった。鼠花火たちはゴルシの四方八方を塞ぐように移動していた。
そして次の瞬間、激しく燃えていた鼠花火たちが一斉に「パパパパパン!!」と大きな爆発音を立てた。
一つだけだったらそこまで大きくない爆発音もその多くが同時に爆発すればかなりの音になる。
さらにウマ娘はとても聴覚が優れている……同時に爆発した鼠花火たちの音は、ゴルシのウマ耳にとってはかなり苦しい音になってしまった。
「ぎゃああああぁぁ!!」
「……自業自得ですわ」
・ ・ ・
「わぁ! スズカさん玲音さん!! この花火色が変わりました!?」
「私も久しぶりに花火をやったわ……最近のやつはすごいのね。ねぇレオくん」
「んっ?」
「昔を……思い出すね」
「……そうだな」
昔の事とはいえスズカと花火をやったのは薄っすらと記憶にある。
確かあの時もこうやって二人で屈みながらお互いの花火を眺め合っていたっけ……そしてその周りには俺のお母さんとワキアさんやスズカのお父さんがいて……とても美味しい料理とかもいっぱい並んでいたっけ。
「でもまさかまたこうして、一緒に何かできるなんて……思ってもいなかった」
「何言ってるの、勉強とかだって色々したじゃないか」
「でも幼い時にやった事を今やるのはあまりなかったでしょ?」
「……確かに」
そう言っている間にスズカの花火は火花を散らすのをやめる。スズカは立ち上がって、次の花火を用意する……のかと思ったが、スズカは俺の隣に来るとそのまま腰を下ろす。彼女の尻尾がふさっと俺の背中をくすぐった。
「こうやって、レオくんが花火をやっている姿を見ていた」
「……そうだね」
しばらく、火花が散る音だけがその空間を支配する。
いや、互いの呼吸音と自分自身の鼓動音も聞こえている。
「……ねぇ、レオーー」
「あっ、スズカさーん!」
スズカが何かを言おうとした瞬間、スペがこっちに向かって大きな声を出す。
「ゴルシさんがそろそろ締めに入るらしいですよー!!」
「「……締め?」」
花火で締めって一体何なんだ? 打ち上げ花火とかならスターマインとかがあるけど……俺はスッと腰を上げてスペの方に向かおうとする。が、すぐに踵を返して手を差し伸べる。
「行こう、スズちゃん」
「……えぇ」
優しい笑みを浮かべた後、スズカは俺の手を取って立ち上がり……俺たちはみんながいる方へ向かった。
・ ・ ・
締めっていうと何なんだろうと思っていたのはきっと俺だけではなかったはずだ。
でもゴルシが取り出したそれを見て、俺らは納得したのだ。手持ち花火の締め……それは、線香花火。
「やっぱ最後と言えばコレっすよねー!」
「言っとくけど、線香花火でもアンタには負けないわよ!!」
「望むところだぜ!!」
「わー! なんでボクの花火はすぐ落ちちゃうの!?」
「テイオーはいちいち騒がしいんですよ。もっとお淑やかにすれば、そんなすぐ落ちる事なんてありませんわ」
「えぇ〜……でも確かにマックイーンのやつは長く保ってるね」
「もちろん、メジロ家たる者。常にお淑やかでーー」
「あっ、落ちた」
「な、何でですの!?」
「わぁ〜すごく綺麗……」
「本当に綺麗ね」
「私、おかあちゃん以外と花火したの初めてです」
「そうなのね」
「じゃあ俺たちが初めての相手ってことかな? なんかそれは光栄なことだな」
「っ! 私も! 初めてがスピカの皆さんたちで……本当によかったです!!」
「……あぁ」
溢れんばかりの笑顔をこっちに向けてくれる。スペ、その瞳には線香花火の光が反射していた。
線香花火……これもだいぶ久々にやったが、やっぱり風情のある物だ。派手さはないけどじっと見つめるからこそ、その火花の変化に気付きやすい。そして見ててとても落ち着く。
「なぁお前たち、知っているか?」
ゴルシが何かを話し始めようとしているのでみんなはゴルシの方を向く。
全員の視線が集まったことを確認すると線香花火を取り出し、火をつける。その灯火を俺たちは大事に見守っている。
「この花火は、昔はお線香のように、香炉に立てて楽しむものだったんだぜ」
「なるほどなぁ……その名残で線香花火って未だに言い続けてるんだな」
「線香花火の燃え方には、名前がついている」
「最初の玉になっている状態を『蕾』。その名の通り花の蕾に似ているところから来ている」
「蕾が溶け、火花が飛び出すようになると『牡丹』。美しく咲き誇るボタンの花に例えられているんだ」
飛び散る火花が、さらに激しさを増し始める。
「これが『松葉』。火花が四方八方に飛び散る様子が松の葉によく似ているんだ」
線香花火を見つめながら、みんな無言でゴルシの話に耳を傾けていた。
「勢いが衰えてくると『柳』。しだれ柳って知っているだろう? あれみたいに見えるんだ」
そう言っている間にもゴルシが持っている線香花火の火花の勢いはどんどん衰えていく。その姿に、どこか哀愁を覚える。
「そして……火の玉が落ちる直前の、この状態。これが『散り菊』だ。菊の花は花びらを一片ずつ落としていくんだ。実際、綺麗だろ? こいつの散り際は……」
「あっ……」
やがて少しの時間差で、みんなの火の玉が砂の上に落ちた。
最後まで残っていたゴルシの散り菊をみんなで眺める。
「うちの爺ちゃんが言っていたんだが、線香花火は人生に見立てられているらしいんだ。『蕾』は命の宿りを。『牡丹』は若々しい子供の成長を、『松葉』は壮年の激しさを、『柳』は穏やかな家族との時間を。『散り菊』は思い出を見つめ返す晩年を……そう見てみると、この花火は特別な物に見えねえか?」
みんな優しく微笑みながらもどこかしんみりとした空気になる。
でも、この雰囲気も花火の一幕だ。
波の音を聞きながら、昼間の熱を微かに残した風を受けーー火薬の匂いと煙の香り、火花が咲く音を聞いて……そして、ゴルシの線香花火の火玉は落ちること無く、そのまま静かに燃え尽きた。
・ ・ ・
砂浜で片付けをした後、俺たちは再び帰路に就く。
「ゴルシ先輩! 今日はすごく楽しかったです!」
「とても貴重な経験でした!」
「はっはっは! このゴルシ様を讃えるがよいー!!」
「あんまり調子乗るなよ?」
「あまり調子乗らないでください」
スピカのみんなは花火をやったからか、全員笑顔を浮かべている。もちろん、俺だって笑顔を浮かべている。
この夏合宿、短いようでとても長く感じた……そんな合宿の最後が花火という美しいもので終わるのだ。とは言ってもまだ半日あるんだけど。
よし……明日も頑張るか。
「あっ……すみませんトレーナーさん。ちょっと砂浜に忘れ物したみたいで……」
「お〜そっか……じゃあ玲音、お前付いていってやれ」
「分かりました。行こう、スズ」
「うん……」
ということで俺はスズカの忘れ物を探すために、みんなと別れる。
それにしてもスズカが忘れ物だなんて珍しいなぁ……なんか景品とかを砂浜に置いたまんまだったりしたのだろうか。
なんて思っている間に砂浜に再び入る。そして俺は目を凝らして見てみる。だが何かが置かれている感じはない。
あれ……その忘れ物って結構小さいのか? 結構これって長くなるか?
「あ、あの……レオくん!」
いつもはそんなに大きな声を出さないスズカが、大きな声を出したので俺はびっくりしながらもすぐにスズカの方に体を向ける。
「ど、どうしたのスズちゃん? 忘れ物なら俺がーー」
「ご、ごめんなさい。忘れ物をしたって言うのは……ウソなの」
「えっ……なんでウソを?」
「本当にごめんなさい……でも、どうしてもレオくんと二人っきりになりたかったの」
「……どうしても?」
スズカは一度、呼吸を整えるために深呼吸を行う。その間に砂浜で吹いていた風は段々と弱くなっていく。
そして目をキリッと目を見開いて、スズカは言葉を発した。
「私も北海道に……レオくんのお母さんに会わせて欲しいの!」
その瞬間、砂浜に強い風が吹く。その風によってスズカの栗色の髪の毛が激しく揺れた。
・コントレイル、ラストラン……あれは泣いた。
・テーオーケインズが強過ぎて……マジでやばい。
・エフフォーリア有馬人気投票一位はとても嬉しいです。
・11月は二つしか出せなかったので、12月はもう少し多く書きたいですね。大学は合格しました。