少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:玲音難しく考えることをやめ、スズカやスペ、チームのために動くと心に決めた。

・UA152,000・153,000、14話のUAが10,000を突破しました! 本当にありがとうございます!!(マックイーンの耳かき回はpixivの方でも2021年の最多閲覧数でした)

・明けましておめでとうございます。今年一年もよろしくお願いします。



第6R「蕾なり、花は咲く」
ライスお姉さまとロールアイス


 いよいよ明日からトレセン学園の二学期が幕を開ける。

 

 そんな夏休みの最終日、俺は寮の自室に篭って般教をしていた。

 

 というのもやっていなかった宿題が朝に見つかったので急いでやり始めて、思ったよりも早く終わってしまったので、始業式開けて次の日にある夏休みの課題テストがあるのでそれに向けての勉強をする。

 

 そしてある程度集中していた時に……机の上に置いてある固定電話からコール音がなった。

 

 俺はシャーペンを置いてから3コールくらいしたくらいで受話器を取って耳に当てる。

 

「もしもし?」

 

『谷崎くんかい? 寮長の未波です』

 

「あっ、お世話になっています。どうされましたか?」

 

『この前こっちに来た黒髪の可愛い嬢ちゃんが、またこっちに訪れてるよ』

 

 黒髪の嬢ちゃんっていうと……ライスさんのことだろうか?

 

 何か俺に用事があるのだろうか……それとも、この前みたいに昔を思い出すためのお出かけをまたするんだろうか。

 

 となると、外出になることはほぼ確定だから……。

 

「分かりました。そこで待つように言っておいてください。5分すれば降りるとも」

 

『はい分かったよ……あぁ、あとこれは報告なんだけど、子どもとその親が君を訪ねに来てたよ』

 

「あっ、そうなんですか?」

 

『また機会がある時にって電話番号渡されたんだ。帰りでいいから寄ってくれないかな?』

 

「分かりました」

 

   ・ ・ ・

 

 自室で少し外出の準備をした後、部屋を出て階段を降りる。

 

 エントランスの方を見てみると、特徴的な大きな耳が視界内に入ってくる。

 

 しかしそれだけではなかった……この前はベージュ色の少し暖かそうな格好をしていたが、今回は……白のワンピースだった。

 

「あっ、玲音くん!」

 

 自分の姿が見えたからか、ライスさんは耳をピンッと真っ直ぐ立ててこっちに向かってくる。

 

 俺が階段を降りたのとほぼ同じタイミングで目の前にライスさんが立ち止まる。

 

「ライスさん、お久しぶりです」

 

「うん、宝塚記念ぶりかな?」

 

「あ、あぁ〜……そうですね……」

 

 ライスさんが宝塚記念という言葉を出した瞬間、つい1ヶ月ちょっと前の阪神でのやり取りを思い出してしまい、とても恥ずかしくなってしまう。

 

 今思うと、とても恥ずかしいところをライスさんに見られてしまったし、その後俺は……ライスさんの鼓動を聞いて……。

 

 あああああああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

 

 心の中で悶絶しながら絶叫する。

 

 なに俺!? なんであんなに甘えちゃったの!? まぁまぁ歳取っている男子が恥ずかしくないのか!?!?

 

 ……なんて叫んでも、もうやってしまったものは仕方ないので、俺はなるべく顔に出さないようにその事に関して謝る事にする。

 

「ああの、こ、この前はぁ↑ご、ご迷惑をきゃけ、もも申し訳ありませんでしたぁ↑!!」

 

 いやおい待て、なんだこのかみかみな呂律に声の裏返りは!?

 

 流石に動揺しすぎだろ……。

 

「そんなに気にしなくても良いよ……それとも〜また甘えてみる、かな?」

 

「…………しばらくは、大丈夫です」

 

 おい何だよ今の間は? 俺は何を考えた?

 

 自分自身でもなぜ間を置いたのか、全然理解できない。

 

 自分の理性では考えられないところで、何か考えてしまったんだろうか……。

 

「……な、なんちゃってね? ご、ごめんね変なこと言っちゃって?」

 

「だ、大丈夫です!」

 

「ううん、大丈夫だよ……(ちょっと嬉しかったから)」

 

 何かライスさんは呟いていたが、上手く聞き取れなかった。

 

 その後、お互い俯きしばらくの静寂が訪れる。

 

「そ、そうだライスさん! 今日はどんなご用でこっちに?」

 

「あっ、そうだった……!」

 

 そう言いながらライスさんは肩に掛けていたポーチの中からスマホを取り出す。そして何かを操作した後、そのスマホの画面をこっちに向けてくる。

 

 そこに映し出されていたのは動画配信サイトのUIと何やら湯気みたいなものが出ている鉄板みたいなもの。

 

 そしてライスさんは動画を再生する。

 

 動画が再生されると、何やら生クリーム? 牛乳? みたいなものが鉄板の上に落とされる。

 

 すると店員らしき人は何やら鉄ヘラみたいなやつを両手で持って……なんか叩き始めた。あっ、なんかその牛乳見たいやつが落とされた中心にクッキーみたいなものが置かれている。それをヘラで粉砕しているのか。

 

「あのね、ロールアイスっていうらしいんだけど、少し興味があって……れ、玲音くんと一緒に行きたいなあって思って」

 

「えっ……つ、つまり今日は、俺の記憶を思い出しーー」

 

「ううん、違うの……ライスはね、今の玲音くんと、行きたいなって思ったの」

 

「……今の、俺と?」

 

 ライスさんが言った言葉に俺は少し驚いた。

 

 つまりライスさんは……普通にお出かけがしたいってことなのか? それとも記憶を思い出すなどを意識させないため?

 

「ライス、この前玲音くんを甘えて気付いたんだ。玲音くんは多分、ライスのことを覚えているんだと思う。だからあの時のライスを玲音くんは拒まなかった」

 

「単に病んでいただけだと思いますけど……」

 

「それに、この夏休み期間中ずっと考えて思ったんだ。ライスと玲音くんは、会えたこと自体が奇跡だった。だったら今は玲音くんと会えなかった数年間分の思い出を取り戻すことが大切なんだって……ライスは思うようになったんだ」

 

「……」

 

 ライスさんの気持ちはすごく分かる……いや、全ては分かっていないと思う。

 

 でも会いたい人と会えない苦しみと、奇跡のような偶然で会えた時の喜びは俺も知っている。でも俺とスズカは覚えていたけど、俺とライスさんは……俺が記憶喪失なせいで、理性ではどうしようもならない距離がある。

 

 なら、俺にできることは……一つしかない。

 

「分かりました、ロースアイス……食べに行きましょう!」

 

「えっ、本当にいいの?」

 

「はい! むしろあの時甘えさせてくれたんで、その時のお礼として奢らせてください!!」

 

「えぇ!? そ、そこまでしなくていいよ?」

 

「いや、俺が奢りたいんですよ! ほら早く行きますよ!!」

 

「わっ、わわっ!? 玲音くんどこに行くか分かってるの?!」

 

「分かりませんけど、とりあえず駅は行きますよね!」

 

 俺はライスさんの手を引いて後生寮から出て、府中駅に向かった。

 

   ・ ・ ・

 

 学園の最寄駅から急行で新宿まで乗り、そこから乗り換えて山手線に乗る。

 

 最近、山手線の新型車両ができた〜とか縦線だ〜みたいなニュースになっていたが、俺のイメージだとやっぱり山手線は横線だ。

 

 実際今来たのも横線だった。まぁ向かい側のホームは新型の縦線になっている山手線だったが。

 

 内回りで二駅、やって来ましたのは流行が溢れている町、原宿!

 

 駅を降りた瞬間にナウでヤングな若者たちが街路を歩いている。その一人の髪型や髪色、服のファッションセンスなど見ていて飽きない。

 

 正直上下を『ウマクロ』という庶民ブランドで済ましている俺からしたら、完全にアウェーだ。

 

「えーっと……あっ、あった」

 

 駅から大体4分くらい人混みに揉まれていると、ライスさんはあるお店の前で立ち止まった。

 

 『ハドソンロールアイスクリーム』お店の外観と外から見える内装はアイス屋さんというより小洒落たカフェみたいだ。

 

 本当にここなのか? と思ってしまったが、ライスさんは何も臆することなく店内に入っていたので、俺はライスさんの後に続く。

 

「いらっしゃいませ! ご注文はおきまりでしょうか?」

 

「あっ、えっと……このストロベリー&ベリーで」

 

「(えっ、もう決まってるの?)」

 

 いやまぁそりゃそうか。ここを知っているってことは、ライスさんはちゃんと下調べをしているんだから、メニューとかオススメの一品とか調べているよね。

 

 えっ待って何にしよう。こういう時自分って結構悩むタイプだから、まさかこんな早くに注文が回ってくるとは思ってもいなかった。

 

「ご注文はお決まりですか?」

 

「あぁ……えっと……」

 

 なるべく脳をフル回転させてメニューを見る。見た感じベリー系とバナナ系、あとはクッキー系があるようだ。

 

 その中でもチョコバナナがいいかな? よし、決めたチョコバナナだ。

 

 そう思い言葉に出そうとした瞬間、俺はあるメニューに目が行った。それはチョコレートミント。

 

 これだ……と思い、俺はそれを注文する。

 

 店員はオーダーを受け取ると冷えている鉄板(コールドプレートと言うらしい)にオレオビスケットを置いて、そこにアイスの原液、ミントリキュールを入れる。

 

 すると店員は両手にヘラを装備して、動画で見たよう固まった液を剥がしたり、ビスケットを砕いたりしている。

 

 そして何回か砕いたり剥がすのを繰り返すと、ある程度アイスっぽいものが出来上がる。そこからヘラを使って鉄板の上にアイスを伸ばしていく。

 

 アイスは均一に長方形に広げられる。表面を均してから広げたものの上にチョコソースを掛ける。そして片方のヘラを置いて、長方形の隅からゆっくりと丁寧にヘラの先端部分を使って、広がって固まったアイスを巻いていく。

 

 そのアイスが巻かれている工程はなんか見ていて、少し気持ちがいいものだった。

 

 そうして出来上がった7つのロールアイスを紙のカップに並べ詰める。その上にプレーンビスケットを立てて、ホイップクリームが乗る。さらにオレオビスケットを盛り付け、ホイップクリームにミントリキュールとチョコソースを掛ける。そして最後にミントの葉を添えれば……。

 

「お待たせいたしました、チョコレートミントです。そちらのお客さまとお会計は同じでよろしいでしょうか」

 

「はい」

 

「お会計1700円になります」

 

「……わーお」

 

 いや待て、それってアイスでだよな?

 

 アイスで一つ850円は高い……というかメニュー表には値段がなかっーーってあったわ。レギュラーサイズ850円って書いてあったわ。さらにいえばスモールサイズあったんだ。そっちにすればよかった。

 

 自分の注意力のなさを痛感しながら俺はその値段を払ったのだった。

 

   ・ ・ ・

 

「「いただきます!」」

 

 二人で挨拶をしながら、ほぼ同じタイミングでアイスを口に頬張る。

 

 うん、やっぱりチョコミントは美味しい。このチョコのビター館と食べた瞬間に抜けていくこの爽快感はチョコミントでしか味わえない。

 

 一部の人からは歯磨き粉と言われているらしいが、そんなことは気にしない。

 

 それにこの爽快感を感じながら食べるオレオビスケットは結構美味しい。

 

「ん〜♪ このアイスに刻まれているイチゴの甘い風味とベリーの酸味がすごく合っててとても美味しい♪」

 

「ライスさんは満足しましたか?」

 

「うん、玲音くんは?」

 

「俺もよかったですよ……あまり行きそうにないお店でしたし」

 

 マックイーンと一緒だったらいく可能性もあるが……なにせお値段がお値段なので、これなら31とか、17でいいのでは? と考えてしまうのは、自分がその味で慣れているからだろうか。

 

 でも値段は高くても美味いっちゃあ美味いので、とても満足である。

 

「ふふっ、それならよかった」

 

『テレビの前のウマ娘を愛する皆さま、こんにちは! 今週も『みんなのAIBA』がやってきました!』

 

 ライスさんがそう言った瞬間、店内に設置されていたテレビからウマ娘のことに特化した番組が流れ始める。

 

 店内にいた数名はテレビの方に視線を移す。自分も目ではないが、耳はテレビの方に集中していた。

 

『今週はスプリンターズステークス、クラシック・ティアラ最終戦特集! 間も無く秋のGⅠが始まりますからねぇ。今波に乗っているウマ娘は誰か、皆さんと共に見ていきたいと思います!』

 

「そっか……そろそろ後半戦が始まるんだね」

 

「……そう、ですね」

 

「玲音くんのチームに確か、スペシャルウィークさんっていたよね。玲音くんはその子を応援しないとだね」

 

「……はい」

 

 俺は……見た。

 

 テレビに映っているアナウンサーの人が『クラシック・ティアラ最終戦』と言った瞬間に、ライスさんの耳がしゅんっと前に垂れ下がっていたのを。そして今もあまり顔色が良くない。

 

 確か、ライスさんは宝塚記念の時に話してくれた。自分の過去を。

 

 三冠が期待されていたライバルを最後に打ち負かしたライスさんは……多くのファンからヘイトを向けられた。

 

 だからライスさんにとって菊花賞は……トラウマの出来事。

 

 さらにライバルの娘は夢現病という病気を患って意識不明で、走る理由も、その気力も今のライスさんにはあまりない。

 

 ……俺にできることはないだろうか。たった一回とはいえ、ライスさんは菊花賞を制した。つまりポテンシャルは秘めている可能性があるということだ。それがこんな形で摘み取られるのは……ダメな気がする。

 

 でも多分、今の俺にはライスさんの手助けをすることはできないだろう。知識も、経験も、そして友好も、何もかも不足しているからだ。

 

 だけど、俺はいつか……ライスさんの支えになりたい。他人のために生きるというのは、別にスピカに限らなくてもいいお話だ。

 

 俺は……ライスさんが未来へ進む姿を見てみたい。そう思っていた。

 

「急に成長してきた蕾とずっと開花を待っている蕾……どっちの花が咲くか、楽しみ」

 

 

 




・はーい今日から学校でーす()

・ガチャは爆死ンでしたね()

・次回は学校再開のお話をする予定です。
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