少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:優雅(?)にコーヒーブレイクを朝から過ごしていた玲音、しかし今日が始業式だと気付き、急いで向かおうとしたが……偶然遅刻していたセイウンスカイに会い、彼女に説得され、ゆっくりと学園に向かうことになった。

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身に覚えのない選択

 トレセン学園に入った後、俺は教員室に行き、遅刻カードというものを書いた。

 

 教員室にいた教員には「君が遅刻なんて珍しいねぇ」と笑われてしまったので、俺は苦笑いを浮かべることしかできなかった。

 

「また遅刻ですか!!」

 

 俺が教員に弄られていると、教員室内に怒号が響き渡る。

 

 自然と視線をそちらに向けると、そこには少し遅れてやってきたセイウンスカイがいた。

 

 またってことは……もしかしてセイウンスカイって、結構遅刻常連者なのか?

 

 なんかちょっと意外だな。セイウンスカイって、普段はゆったりはするけど、やるべきことはやる子だと思っていた。

 

 実際、数日間は近くにいたからある程度、性格は掴めていたはずだけど……やっぱ分からないこともあるもんだな。

 

「今日はいつもより早く来たじゃないですか〜。ちょっとくらいいいじゃないですか~」

 

「トレセン学園は文武両道、いついかなる時も学問と走りを両立させないといけません」

 

 すごく険しい顔で叱る教員に対して、セイウンスカイはニヤニヤとどこか余裕そうな顔を見せている。

 

 他人から見てみれば、完全に先生を舐め腐っている生徒だ。

 

 でもなんだろう。どこか威勢を張っているというか、なんか本性を隠しているような……そんな変な感じがする。

 

「まぁ、君も遅刻は今日限りにしなよ?」

 

「今後も態度が変わらない場合、クラシック申請の強制停止も覚悟してくださいね!!」

 

「はい……」

 

「…………はーい」

 

 俺とセイウンスカイはほぼ同じタイミングで踵を返して、教員室から出た。

 

 とりあえず教室に行くか……。

 

「……」

 

「~~っ♪」

 

 さっきまで怒られていたのに、今は機嫌がよさそうに鼻歌を歌っている。

 

 

 ……そんな呑気にしていられる場合なのかなぁ。

 

「あっ、トレーナー学科は向こうですね~。ではでは~♪」

 

「……ちょっと待ってくれ、セイウンスカイ」

 

「や~だでーす、ばいなら~」

 

「あっ、おい!」

 

 俺の静止を無視をして、セイウンスカイはウマ娘の教室の方へと向かっていった。

 

 俺は追いかけようか悩んだが、やめた。

 

   ・ ・ ・

 

「よぉ谷崎!」

 

「初日から遅刻……たるんでいるんじゃないの?」

 

「おはよう尊野、道」

 

 遅刻したからすごい奇怪なものを見るような目で見られると思っていたが……意外と気づいたのは数人の生徒、しかもみんな気さくに挨拶してくれたり、普通に無視だったり。

 

 結構みんな他人のことって見ないんだな。

 

「本当にどうしたんだ、今年どころか、去年も休んでいなかったのに?」

 

「まぁ……勘違いだよ」

 

 別にさらさなくてもいいけど、なんとなくのノリで全てを言ってしまう。

 

 すると尊野は大爆笑、道は深くため息をした。

 

「まぁでも、まだ初日でよかったじゃないか。どうせ数十分前に来ていても、やっていたのは一か月半ぶりの大掃除に、長ったらしいお偉いさまのお話を延々と退屈に聞くだけだったぜ」

 

「……ふーん、理事長の話の後のシンボリルドルフ様のお話も退屈だったって言うのかな? かな??」

 

「ちょ、橘? なんかキャラ変わってないか? ていうかなんでそんな負のオーラ全開なんだ!?」

 

「ふふふっ」

 

 そう言いながら笑う道。

 

 ……うん、これどこかで見たことあるなって思ったけど、これはあれだ。グラスがエルに対して静かに怒る時に浮かべる笑顔だ。

 

 

「……ま、まぁ! 会長様のスピーチは素晴らしかったな!!」

 

「……そうだよね! 特にー-」

 

 その後、道からシンボリルドルフが話したことを聞いた。

 

 『天高く、ウマ娘燃ゆる秋』。秋は空が澄みわたって高く晴れ、気候がよいので食欲も増進し、ウマ娘もよく肥え、走りの質が一段上がる。秋がさわやかで、心身ともに心地よい季節であることの形容だ。

 

 手紙とかでよく使われることわざだが、シンボリルドルフはこのことわざと秋に行われるレースのことを関連付けて話したらしい。

 

 流石生徒会長、他人の心を掴むのがとても上手い。そう思った。

 

 なんて思っていると「キーンコーンカーンコーン」と始業のチャイムが鳴る。

 

 まぁ、初日ということと先生がまだ来ていないということもあり、みんなはそこまで焦っていない。

 

 夏休みの宿題忘れたぁ!! と嘆いている生徒もいたが、宿題は基本明日やる課題テストをやり、そして最初の授業が始まった時に提出なので、何も焦る必要はない。

 

 そして数分経ち……担任の先生が教室に入ってくる。その両手には多くの紙が積み上げられていた。

 

「……なぁ、尊野」

 

「なんだ?」

 

「今日って大掃除と始業式と、あとLHR(ロングホームルーム)だけだよな? でもなんで先生あんなに紙を持っているんだ?」

 

「お前~やっぱ夏休み気分抜けていないだろ」

 

 やれやれと莫迦にするように首を振りながら、話を続ける。

 

「6月の終わりくらいに、二学期から始まる選択科目のアンケートを行っただろ?」

 

「……んぬえ??」

 

 尊野が言った言葉が理解できなくて、俺は変な声を出してしまう。

 

 6月の終わり……何かあっただろうかと、俺は頭の中で約2ヶ月前に遡る。

 

「……あぁ、そういえばそんなもの書いた…ような」

 

「まぁあの頃の谷崎って、結構病んでいたからな」

 

「あの時は迷惑をおかけしました……なにがあったっけ?」

 

「全部は忘れたけど……確か谷崎は英語発展を選んでいたな」

 

 それを聞いてピコンッと豆電球が光るように思い出した。

 

 そうだ、確かは英語を選択していた。

 

 というのも他の選択が「栄養管理科」や「鍼灸師科」、または「マッサージ師・整体師科」など、いわゆる専門職に関することが多かったのだ。

 

 だから仮に普通の大学になったり、トレーナーで成功して海外へ行く際に少しでも知っていた方が楽なのかな……と考えて、選択したのだった。

 

 ちなみに道も確か英語発展を選択していたはずだ。

 

「はーい、じゃあ今からアンケート冊子と実際に分かれる紙を渡すから、もらったら確認して、10分後には記述されている教室に移動してください」

 

『はーい』

 

 生徒全員が返事をすると、先生は番号順で紙を受け取るようにと言い、そして配り始めた。

 

 そして数分後に俺の番に近づいたので、席を立ち、そして先生のところに行き、紙をもらう。

 

 その場では読まずに、一度席に戻ってから紙を見てみる。

 

 さてさて、英語発展の教室はどこかなぁ〜……って、んっ……あれ?

 

 俺は目が腐ったのかなと思い、一度手で目のところゴシゴシと擦って、再びもらったアンケート用紙と、その授業教室の書かれている紙を見てみた。だがしかし、何回見ても「英語発展科」のところに丸が付いておらず、その代わりに「マッサージ・整体師科」のところに丸が付いていた。授業教室も整体師科になっている。

 

「嘘だ!?」

 

 俺は何度も何度も読み直して……挙げ句の果てには声をあげてその場から立ってしまう。数人の視線が突き刺さるが、今の俺にはそんな視線は痛くも痒くもなかった。

 

「ど、どうしたんだ谷崎?」

 

「いや……これ……」

 

 俺は尊野に、そして俺の声を聞いて寄って来た道にも俺のアンケート用紙を見せる。

 

「あれ……谷崎くんって、確か私と同じ英発……」

 

「だよね? そうだよね!?」

 

 なのに現実は、丸は整体師科のところに丸が付いている。

 

 そしてかなり細かいが、よく見ると……これは俺の字ではない。なぜなら、丸の始まりと終わりがしっかりとくっついて、綺麗な円になっているのだ。

 

 だが、俺は丸を書く際はかなり適当に書くので、基本線同士が繋がらなかったり、逆にオーバーして少しだけ飛び出る時とかもある。

 

 でも、ワンチャン心が病んでいた時に書いたから文字が綺麗になった説もあるよな……。

 

 全員の分が渡し終わると、先生は各教室に行くように指示を出す。

 

「……どうするの、谷崎くん?」

 

「うーん……まぁ、行ってみるかな。もしかすると間違いかもしれないし」

 

「それはそれで恥をかくんじゃないか?」

 

「でもまぁ、それが手っ取り早いよね」

 

 そんなお話を少しして、俺たちは別れた。

 

 紙に書かれた教室まで移動し、そしてそこに入ると十数人の生徒と30代くらいの女性の先生がたっていた。

 

「君は……谷崎玲音くんだね、君の席は窓際の一番後ろよ」

 

「(あっ、やっぱ自分このクラスなんだ)」

 

 先生に言われた通り窓際の一番後ろの席に座りながら、俺は確信してしまう。

 

 2ヶ月前の俺……完璧にやらかしたなと。

 

   ・ ・ ・

 

「……はぁ」

 

 学校自体は午前中で終了し、午後からはチーム練習になっていた。

 

 俺はみんなのタオルを洗濯して、部室の裏に用意されている物干し竿に干しながら……俺は今日のことを振り返っていた。

 

 まぁ、まさか朝遅刻しただけではなく、2ヶ月前にやらかしたことが今に響くとは思わなかった。

 

 いくら心が病んでたからとはいえ……これはあまりにも莫迦莫迦しいことだ。もはや笑えてくる。

 

「おうおうどうした新人? そんな2ヶ月前に買った宝くじが実は当たりだったことに今さら気づいたみたいな顔して?」

 

「……ゴルシ、練習は?」

 

「新人の仕事っぷりを監視するのも、先輩の役目だろ?」

 

「もう半年以上スピカにいるし、新人じゃないだろ」

 

「アタシにとっちゃ、まだ新人みたいなもんよ」

 

「はいはいそーですかー」

 

 急に現れたゴルシに驚きながらも、俺はゴルシと会話を交わす。

 

 というか例え方がめっちゃ的確すぎる……実際はいいことではなく、悪いことが判明したのだが……。

 

「いやさ、俺って英語発展を選んでいたはずなのにさ、なぜだか整体師に丸になっててさ……まぁ、あの時の俺は狂ってたから、手元も狂っただけかもしれないけど、あんな綺麗な丸を俺が書けるのかって、少しだけ疑問なんだ」

 

「お〜それはご愁傷様。同情するぜ……」

 

「……なぜだろう、全然同情されている感じがしない」

 

「まあ、別にいいんじゃねえか? 予期しないことが、意外といい方向に働いたりとかするぜ?」

 

「いい方向にって……具体的に何だよ?」

 

「…………知らね♪」

 

 なんか長い間妙な真剣な顔をしていたが、結局笑顔になって吹っ掛けるゴルシ。うん、ぶっ飛ばしたいその笑顔。

 

 でも、いい方向にか……今考えても、待っているのは授業についていけなくて詰む未来なんだが……。

 

『おいゴルシ!! お前どこに行きやがった!!』

 

「やっべ、トレーナーが来てーー」

 

「先生!! ゴルシはここにいまーす!!」

 

『そっちだな!! おいゴルシさっさと来い!!!!』

 

「おい!? ものの数秒で裏切りかよ!?」

 

「裏切りも何も、俺はサボりを許したつもりはないぞ」

 

「ぐっ……覚えてやがれ! いつかドロップキック受けてもらうからなぁ!!」

 

 そう言いながら、この場から去るゴルシ……そして遠くで聞こえるトレーナーの怒鳴り声。

 

 しかしそれは少しずつ遠くなっていって……聞こえるのはセミの大合唱だけ。

 

「……」

 

 本当……この先どうなるんだろうか。少し、不安だ。

 

 

 




・青春というものを……学校でのスイーツ作りを介して知りました。

・8日前にクソイナゴ曇らせチャンネル様で投稿された「自分のプチキャラにあった時のウマ娘怪文書」で、軽い賞をいただきました。

・次回は……現時点では、文化祭の打ち合わせのお話を予定しています。(もう少し執筆スピード上げたい……)
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