少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
・UA162,000を突破しました。ありがとうございます!!
クラスの出し物の話し合いを終えたその日のチーム練習の後、俺たちは片付けと着替えを終えた後、チームの部室に集まっていた。
なんでも話したいことがあるらしく、ここで待つように言われたのだ。
「そういえばスぺ、長距離のペース配分の練習はどうだ?」
「うぅ~やっぱりまだ慣れませんね。でも前よりは遥かに感覚を掴めている気がします!」
「……そっか」
改めて認識させられる、スぺのポテンシャル。
いや、そうか。スぺはもう新人のウマ娘なんかじゃない。
ダービーを制覇し、その名前はもう日本全土(は言い過ぎかもしれないけど)に響き渡っている。
それに他の娘はデビュー期間とジュニア級を挟んでいる。そこに2月くらいから入ってきて、ここまで競うことができる娘は多くはないだろう。
デビューして半年くらいとは到底思わないが、スぺは日本一になると2人の母親に固く誓い……そして皐月賞の後のあの切り株の前で、声を高らかに上げて宣言した。
「スぺは、すごいな」
「えっ、えっ!? どうしたんですかいきなり?!」
「どうしたも何も、今思ったことを素直に言っただけだよ」
「うっ、嬉しいですけど……ちょっと恥ずかしいです」
そう言いながらも耳は少しだけ横を向けて、しっぽを大きくブンッと振った。その頬も少しだけ紅潮している。
素直に言っただけだけど、まさかここまで照れるとは思ってもいなかった。ちょっと今度から何か言うときは考えてから言った方がよさそうだな。
「そういえば新人、お前って確か整体師科を取っていなかったか?」
「んっ、まぁ取っているけど…」
「ならそれをスぺにやってみたらどうだ?」
ゴルシがそう言うと、ここにいる何人は「お~」と素っ頓狂な声を上げる。
確かに俺は今は整体師科のマッサージの授業を受けている……でも、それは座学だけだ。
実践するのは10月の上旬からと先生には言われているし、今自分にできることは何もない。
「まぁでも、実際にやるようになってからやってみるのはいいかもしれないな」
「わぁ! じゃあその時は──!」
「やめとけやめとけ」
スぺが何かを言おうとした瞬間、扉を開けて先生が入ってきて、ゴルシの案(いや、賛成したのは俺だから俺の賛同に?)を否定する。
「プロがやるならいい。だがな玲音、お前はトレーナー学科の一生徒だっていうことを忘れるな。生半可な覚悟で、とても浅い付け焼刃な知識だけで動いて何かあったら……お前は責任を取れるのか?」
「っ……」
「まぁ、でもいつかは頼む時が来るかもしれないな」
「そう、ですか」
俺がそう返事すると先生は一度大きく頷き、ホワイトボードの前まで行き、何かをキュッキュと書いている。
そこに書かれたのは『感謝祭スピカ出し物……喫茶店』の文字。
一通り書き終えると先生はすぐに振り返り、さっきまで書いていたペンの先でトントンと文字のところを叩いた。
「今年のスピカは、喫茶店を行う!!」
『……喫茶店?』
先生たちが言った言葉に対して、俺たちはオウム返しを返した。
その中で一人だけ、ウマ耳を後ろに倒して明らかに不満がありそうな表情をしている。
「おいおい待てよ! 今年はゴルシちゃんの特製焼きそばとマックちゃんのスイーツ弁当を配るって言ったよなぁ?!」
「うぐえ!?」
ゴルシが叫びながら立ち上がるとそのまま先生にアイアンクローを決める。
その光景を見てすぐに、マックイーンと協力をしてゴルシを抑えにいく。多分俺一人じゃ抑えられなかったが、マックイーンがいてくれたので助かった。
「いてて……確かに屋台もいいが、それじゃ儲からない」
「えっ? ちょっと待ってくださいよトレーナー」
「感謝祭って学祭だよな? あんまり売れることって考えちゃダメなんじゃねえか?」
確かに学祭の出し物というと、そこまで儲かることを考える感じではない。
どちらかというと配布とかに近いかもしれない。まぁ、食べ物系に関しては安かれ高かれお金を出していると思う。
そもそもそういう儲けた金は学校の方に徴収されるとは思うが。
「確かに普通の学祭なら学校側が儲かった金を徴収するが……このトレセン学園ではそうはならないんだ」
「どういうことトレーナー?」
「この感謝祭での儲けはそのままチームの活動資金に充てることができるんだ」
『お~!』
「そこでたくさん儲けることができれば、スカーレットやウオッカの勝負服の費用に充てることができる」
「「ホント(かよ)!?」」
なるほど、確かに儲けをチームの資金にすることができれば、かなり先生の自腹額が軽くなる。
……あれ、そういえばスピカって去年出店って開いていたっけ?
「あの、私はリギルだったんですけど……スピカは出ていましたっけ?」
「去年も参加はしたはしたが…その時は全然売れなかったよな?」
「そりゃカラシたっぷりの焼きそばなんて売れるわけないだろ!?」
「なんでだよカラシと焼きそば合うだろうがよぉ!!」
「合うのは普通はマヨネーズとかだろうが!! ……まぁいい、つまり去年は売れなかったってことだ」
そのまま先生は話を続ける。向かいにいるゴルシがぶつぶつと「せっかくマヨとカラシを混ぜて改良重ねたのに……」と独り言を呟いている。
「だが今年は5人も人数が増え、さっき行われたチームでの教室使用権を巡る抽選も無事終わったからな」
そう言うと先生はポケットから何か紙みたいなものを取り出して、ウィンクしながら真っ白な歯を見せる。
その紙には「使用許可」と書かれていた。
「おっ、てことは今年は使えるんだな教室!!」
「そういうことだ。そして喫茶店は競争は激しいが、安定して伸びる……それに」
そう言いながら先生は俺に視線を合わせた。それに釣られてみんなの視線がこっちに向けられる。
「えっ、俺?」
「玲音、お前は確かコーヒーを淹れることができたよな?」
「えっ? まぁ、趣味ですけど……」
「こんな逸材がいるのに喫茶店をやらない手はないだろ!!」
「そ、そうですか……?」
なんでその発想に至ったのかが分からないが……まぁ、とりあえず自分がコーヒーを淹れることになりそうだ。
でもコーヒーを淹れるだけでそんな売り上げなんて上がるのだろうか? むしろマイナスになるような気がするけど。
「でもでもトレーナー、喫茶店って言っても普通のことしてもそこまで売り上げ伸びないよね?」
「あー、そういえばリギルは去年はメイド喫茶したんだっけ?」
「エッ!? もしかして玲音も去年行ったの?」
「あー違う。クラスメートが行ったってだけ、俺は基本自分のクラスにいたから」
「えぇ~なにそれ~、じゃあ今年のやつは行こうね!」
「あぁはいはい、時間あったらね」
「確かにリギルみたいに全ファンたちが待ち望んでいるようなコンセプトもいいが……俺がやりたいのはこれだ!!」
そう言うと先生は再び、ホワイトボードに何かを書き足す。
その単語を……ここにいた全員は声に出した。
『勝負服?』
「そうだ!! 勝負服は普段GⅠレースの時でしか見られない。それがどうだ! この日だけコーヒーや軽食を楽しみながら傍で勝負服姿のウマ娘たちがウェイトレスしてくれる。そんな夢のような空間を! 俺は提供したいんだ!!」
『お~……』
その先生の熱烈な演説に俺たちは感嘆の息を漏らし、自然と拍手をする。
でもなるほど、夢のような場所を提供……か。
そういう発想ができるのは先生がウマ娘のことを、そしてファンの人たちのことも考えているからこそだろう。
「いいですわね……ファンとの交流にもなりそうですわ」
「出ているのはスぺちゃんとスズカ、あとゴルシだけどね~」
「あら? わたくしは結構有名な方なんですよ?」
「ボクだってエレメンタリークラスなら、結構有名だよ?」
「「……」」
「わたくしの方が有名ですわ!」
「ボクの方が有名だよ!!」
「マックイーンもテイオーも何を言い合っているんだ……」
なぜだかエスカレートしている二人の間に入って、俺は仲裁に入る。
この二人もなんだかんだお互いをライバル視しているよな。
「ねぇトレーナー。アタシは勝負服持っていないんだけど、それはどうするの?」
「そこに関しては学園の方で保管されているライブ用の衣装を借りるつもりだ」
「げっ、ライブ衣装のやつってヒラヒラしてるあれかよ……あれで人前に出るのって結構恥ずかしいじゃねぇか」
「あら、そんなことで音を上げてちゃ、レースではアタシに勝てないわよ?」
「れ、レースとライブは違うだろぉ!!」
まぁ、いろいろ個々が思うことはあるが……チーム・スピカの出し物は『勝負服喫茶』に決まったのだった。
・はぁ~祭りだぁ~!!
・筆が進まない……本当にすみません。
・次回は準備や買い出しなどのお話の予定です。