少年とウマ娘たち - ススメミライヘ - 作:ヒビル未来派No.24
・UA170,000・171,000・172,000・173,000・174,000を突破しました。お久しぶりですが、本当にありがとうございます!!
『わぁああああー!!!!』
観客のボルテージがどんどんと上がっていく。みながそれぞれ個々の推しにエールを送る。
大食い大会選手権はいよいよ終盤戦に差し掛かるかというところだった。
優勢なのはオグリキャップ。あとにスーパークリーク、タマモクロスと続いているが、2人と比べてみてもオグリキャップはその残りの量や食べるスピードも桁違いだ。
片手で一度持ち上げてそのまま一口でドーナツをヒョイっと食べ、数秒後にはその動作を再び繰り返している。その表情も目を閉じてて一回一回ドーナツの味を楽しむ余裕もあるように見られる。
それに対してスーパークリーク、タマモクロスの表情はまさに必死という言葉が合う。その両手にドーナツを持って、二口か三口で食べている。
『さぁ第33回大食いグランプリも大詰め!! 先頭はオグリキャップ! 続くはスーパークリーク!! 商品の大穴ドーナツ巨大ぬいぐるみを手に入れるのはどこのどいつだー!!』
***
胃がキリキリと張り詰めるような感覚がしとる。長時間口の中が油とバターの匂いで充満していて、少し頭がふらつく。
せやけど、ウチの目はドーナツへと向いとる。ウチの手だってその口にドーナツを入れようと動いとる。まだ、まだいける…! いけるはずや!!
ウチは横目でイナリの横にある大穴ドーナツを見る。あんだけ大きなドーナツのぬいぐるみをあげれば、きっとおチビたちは喜んでくれるはずや。
流石はオグリ、大食いに関してはウチでは歯が立たないかもしれへん
でも、でもな!!
「(おチビたちのためにも! 絶対ここは──譲れへん!!)」
『おおっと!! タマモクロスここで加速!! ターフの上でも見せるような電光石火の稲妻のような末脚を!! ここでも発揮できるのかぁ!!』
「うらあああああぁぁぁああ!! 難波のど根性! 見せつけたるわああああぁぁ!!!!」
動け! 動くんや!! めいいっぱいドーナツを掻き込むんや!!
***
タマモクロスが一気に加速した!?
あの小さな体の一体どこに、あの山盛りのドーナツを入れるスペースがあるんだ…?
確かにウマ娘は普通の人間と比べて身体能力が高い分、消費エネルギーが激しい。そのため覚醒化したウマ娘は普通の人よりも多くのカロリーを必要とする。
しかし、しかしだ。それでもあの多さのドーナツを処理できるものなのだろうか…?
なんて考えている間にもタマモクロスがオグリキャップに追い付いた!
観客全員、その事に興奮している。
そして次の瞬間……オグリキャップとタマモクロスが同時に手を挙げる!
『おっと!? 同時に手を挙げたのはタマモクロスとオグリキャップ!!」
「ど、同着?」
「いや、オグリの方が早かったぞ」
「嘘、タマちゃんの方が早かったよ!!」
観客がみなそれぞれ独自の見解を述べているが、俺的にはまさに同じタイミングのように見えた。それこそ、5月に行われたダービーのような…。
『おっと、ここで審査の札が上がったぁ!!』
「……審査?」
イナリワンの視線の先を追うように俺、そして観客もそっちへ顔を向ける。
するとそこには審判席があり、そこに座っていたグラスが『審議』という立札を上げていた。
いや、大食い対決に審判も何もあるのかな??
『映像による判定を行います!』
イナリワンがそう言うとステージ上からスクリーンが降りてくる。
そしてそこにさっきまでの繰り広げられていた激闘が映し出される…しかし一体どこに審議の対象が?
などと思っていた次の瞬間、タマモクロスの方を見ていたスーパークリーク。そして勢い良く取ったドーナツ。しかしそのモーションによって多くのドーナツがオグリキャップの方へ飛んでいった。
これには観客全員が驚いていた。だってそれは数個なんてレベルじゃない。十何個以上のドーナツが皿の上に乗ったのだから。
つまり…オグリキャップは2人よりも多かったのにタマモクロスと同じ早さでフィニッシュしたってことか!?
「確かにちょっと多かったが…」
『ちょっとじゃない!?』
これに関しては会場にいた観客全員が同じことを叫んだ。いや、あの量をちょっとって正気の沙汰じゃないな。
『第33回大食いグランプリ、優勝は──オグリキャップ!!』
パンッ! パンッ!! という音ともに紙吹雪が舞う。そして会場は歓声と拍手喝采に包まれるのだった。
「なんか…すごかったね」
「えぇ…これ歴代の猛者の戦い……」
オグリキャップは優勝賞品の大きいドーナツぬいぐるみを受け取る。そのすぐ横では少し涙目になっているタマモクロス。
タマモクロスは途中で急に加速した。つまり、あのドーナツを欲しがっていたのだ。さらに言えば、そうやって追い付いてそして同時に食べ終えた。だが、結果は同着ではなく、オグリキャップの圧勝だった。
僅差の勝利が、大差の敗北となる。
それは、どれほど辛いことなのだろうか。
……と、少しだけ感傷に思っていると、オグリキャップがタマモクロスの前まで歩み寄り、そして持っていたドーナツのぬいぐるみを手渡した。
『オグリ…? なんでや?』
『私はドーナツが食べたかっただけだ』
『お、オグリー!!』
そう大声を出して泣きながらオグリキャップに抱き着くタマモクロス。それを受け止めるオグリキャップ。
普段はお互い切磋琢磨しながら学校生活を過ごし、ターフの上では永遠のライバルである二人。しかし普段はとても仲睦まじい女の子たちなのだ。
そのことを、ここにいる全員は理解する。
気付けば興奮と歓喜で叩かれていた拍手は、2人を包みこむように叩く温かな拍手へと変わっていた
────ぐぅ~。
っと、そんな中でも一際目立つ音。
その方向を見てみると、少し頬を紅潮させてお腹を押さえているスぺが。
「……お腹減った?」
「は、はい……///」
「ちょうどいいし、何かおやつ食べようか。スズちゃんもそれでいい?」
「うん、いいよ」
「スぺ、好きな奴奢ってやるぞ」
「い、いいんですか!?」
「あぁ!!」
そうして俺たちは会場を離れて少し行った先にある出店エリアに訪れる。よく見渡してみると焼きそばやたこ焼きなどの軽食と、ケーキやプリンなどのスイーツなどもあった。
「好きなの食べていいぞ、俺の奢りだ!」
「えっ、いいんですか!?」
「あぁ」
俺がそう答えるとぴょんぴょんと飛び跳ねて笑顔で喜ぶ。何この体全体で喜びを表す子、可愛いかな?
「スズちゃんは何にする?」
「ううん、私はいい…レオくんに」
「俺がスズちゃんに奢りたいだけだよ」
「レオくん……じゃあこのベイクドチーズケーキ…いいかな?」
「んっ、俺もそれにしよ」
そうして列に少しだけ並んで、ベイクドチーズケーキを二つ購入する。
…そういえば幼稚園の時も、こうやってケーキを一緒に食べていたっけ。確かあの時食べていたのは俺の母さんお手製、クリームといちごをたっぷり使ったショートケーキだったかな。
なんか懐かしい…。
「……あら、玲音さん?」
後ろから自分を呼ぶ声がした。俺はゆっくりと振り返る。
そこにいたのは二人のウマ娘。エルとグラスだ。
「2人とも、審判お疲れさま」
「うぅ、少し疲れたデース…」
「エ〜ル〜? そんな疲れたことしていないでしょう…?」
「でも退屈だったデースってアイタァー!?」
グラスはエルの横腹を強く抓ったようだ。うん、一瞬でもかなり力強かったな、あれ。
「あはは…あ、そうだ。2人もご馳走しようか?」
「エッ! いいんデスカ!!」
「そんな、申し訳ないです…」
「いいのいいの、お仕事お疲れさまムードってことでさ」
「……でしたら、お言葉に甘えさせていただきますね」
そう言うと一瞬だけだが、グラスはは尻尾を横にぶんっと素早く振った。
エルも尻尾を小さく細かく横に揺らしている。
「なにを食べる? なんでもいいよ」
「チョコレートケーキがいいデース!!」
「では私は…いちごのショートケーキを」
「おっけー、すみませーん!」
そうしてグラスとエルのケーキも注文する。値段としては野口さんが1人と小銭が何個か消えた。
だがその代わり、ここのケーキは学校の文化祭とは思えないほどクオリティが高い。
ぶっちゃけもう少しお金を取ってもいい気がする。
「…そういえば、スペちゃんはどこかしら?」
「あ、確かに…」
「あ、スペちゃんでしたらあちらに…」
そう言ってグラスは腕をある方向に向ける。その腕の先を視線で辿ってみると、そこには列に並ぶスぺの姿が。
一体なにに並んでいるんだろうと、視線をその列の最先端の方へ向けてみる。
『大ボリューム! トゥインクルパフェ!!』
「……わーお」
これは……野口さん一人が旅立つなと感じた。
・ ・ ・
パフェも買って合流し、俺たちはイートスぺ―スに腰掛ける。
「感謝祭、とっても楽しいですね…!」
「ここの文化祭、もとい感謝祭って区内で見てもかなり力を入れているところだからね。それこそ向こうには本当の営業店なども並んでいるし」
「私、地元の学校はとても小さくて、中学生や高校生と同じ教室で授業を受けたりしていたんですよ。だからうちの文化祭は町を興して盛り上がったんですよ!」
「へ~…」
なんかスぺのお話を聞いていると、マンガなどを思い出す。
実際にあるんだな、本当にそういう地域でのコミュニティ的なもの。
こっちに来てからご近所とかの付き合いというのはあんまりなかったからこそ、ちょっと憧れるということもある。
「玲音さんの小学校の頃はどんな文化祭だったんですか?」
「俺? 俺は────」
当たり前のように答えようとした瞬間、思い出す。
そうだ、自分は小学校の頃の記憶があんまりないんだった。
「俺は、なかったかな…」
とりあえず無難な答えにしておく。中高だと文化祭があるところは多いが、小学校の文化祭というのはなかなか珍しい気がする。
「え、なかったんですか?」
「私も…小学校はなかったかな?」
「私とエルはそもそも文化祭という文化がありませんでしたしね…」
「へぇ、向こうには文化祭みたいなものはないんだ…」
「そーですね。夏休み前に全員で夏休みの宿題を4・3階から投げて、誰が誰の課題か分からなくする…などの恒例行事? はあったデース」
少し想像してみる…夏休みの課題を持って集まる生徒、そしてカウントダウンが0になったのと同時に課題が舞い、笑いながら生徒はそのまま学校を出る。
うん、用務員さんの掃除がすごく大変そうだ。
「ここへ来てからは色々驚かされることばかりです。生徒の手で校舎を綺麗にする、多くの行事や、礼儀作法……日本へ来て、本当によかったと思ってます」
「エルもそう思いマース! いいライバルとも会えマシタ!」
「そうですね」
「うん、私もエルちゃんやグラスちゃんと会えてよかった!」
「「…仲いいなぁ」」
そんな何気なく思ったことを呟くとスズカと被った。
それを聞いて3人は笑う。それにつられてスズカも笑う。
そしてそれを見て、俺も笑う。5人で笑っているからか少しだけ視線が向けられた気がした。
……そうしていると、ポケットの中に入れていた携帯が震える。
「ちょっと席を外すよ」
俺は少し離れたところに行ってから携帯を取り出す。どうやら着信のようでその着信主は先生のようだ。
通話ボタンを押し、スピーカーを耳に当てる。
「はい、もしも────」
『玲音お前今どこだよ!?』
「んぐぁ…」
突然の大きな音に俺は少しだけ怯む。そして明らかに先生の声からは怒りと焦りが混じっていた。
『メッセ―ジ何度も送っただろ!!』
「……メッセ?」
俺は一度スピーカーを話し、メッセージアプリの『LANE』を開いてみる。
『ゴルシがどっかに行ったんだ! 戻ってきてくれ!』
『お~い! 見てるかぁ!?』
『頼む返事してくれぇ!!』
…なるほど、全然気づかなかった。
というのも基本自分は消音モードをオンにしているから、全然メッセに気付かなかったんだ。
「分かりました、すぐ戻ります…!」
『頼むぜ…』
俺は通話を切って、4人の元へ戻る。
「ごめんみんな、ちょっとチーム展に戻らないといけなくなったから俺は行くね」
「あ、なら私も戻るよレオくん」
「うん、助かるよ」
そうして、俺とスズカはその場を離れようとする──ふと、三人の顔色がどことなく暗いような…そんな印象を浮かべた。
「三人とも、どうしたの?」
「い、いえ…」
「……」
なんだろう、やっぱり元気がないような…いやでも今はそんなことを考えている時間ないか…。
「スぺちゃんはどうする?」
「わた…しは……もう少しいます」
「おっけ、それは俺から言っておく」
「お願いします…」
「じゃあスズちゃん、行こう」
「うん…レオくん」
そうして俺とスズカはその場を離れ───。
「スズカ先輩!!」
後ろを振り返るとエルが立ち上がっていて、そしてスズカの瞳を真っ直ぐに見つめていた。
「今度の毎日王冠、アタシも出走します!!」
「っ…本当?」
「エルの目標は世界制覇! そのためにもスズカ先輩、そしてグラスには勝ってみせます!!」
「そう、ならその日はよろしくね」
「ハイ!!」
・ ・ ・
勝負服喫茶・スピカに戻っている途中、俺はスズカの姿を横目で見た。するととても優しく微笑んでいて、耳を横に向けていた。
「…なんかいいことあった?」
「うん…追ってくれる存在って、怖いけどとても大切な存在なんだね…」
「……追ってくれる存在か、あんまり俺には分からないや」
俺はそう言って、あははと笑う。すると「もう…」とスズカも笑った。
そして喫茶店に戻って、閉店までテキパキ働いたのだった。
スズ「あの、ヒビルさん?」
ヒビ「……」
スズ「宝塚、もう終わりましたよ?」
ヒビ「……」
スズ「この半年で……いくつ回が進みました?」
ヒビ「……第6Rの前半場面…」
スズ「前回の投稿から…いくつ経ちました?」
ヒビ「……2ヶ月です」
スズ「……第7R、リアルの方までに間に合いますか??」
ヒビ「…善処します」
スズ「あと、これあと何年かかるんですか…?」
ヒビ「……」
スズ「あと、私の快文書も書いてください…」
ヒビ「うん…」
・大変お久しぶりです() もう存在忘れられてたんじゃないかな。ヒビルです。執筆や快文書創作に全然熱が入りません…スランプですかね? ウマ娘ももうあんまりやっていません…とりあえず、第7Rはリアルの秋天までには間に合わせます(鋼の意志) 今後とも、ススメミライへのご愛読、よろしくお願いします。