少年とウマ娘たち - ススメミライヘ -   作:ヒビル未来派No.24

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 前回のあらすじ:玲音はクラス展でブラックジャックのディーラーをやった後、テイオーに引っ張られてそこで執事喫茶リギルを堪能した。

・UA177,000・178,000を突破しました。ありがとうございます!



諦めと噂と、廃れた線路と──── ~秋の感謝祭 後編~

 

「スズカさん! 次はあそこに行きましょう!!」

 

「もう、急ぐと転ぶわよスぺちゃん…」

 

 私はスぺちゃんと今日も同じように感謝祭を一緒に巡っています。

 

 昨日もそうだったけど、一つ一つのことにとても感動するようにリアクションするスぺちゃんを眺めるのは、なんかとても癒されるものです。

 

 この後はリギルに所属しているスぺちゃんの友だちであるグラスワンダーさんとエルコンドルパサーさんと巡る約束をしているようで、その後私は暇になる。

 

 エアグルーヴとタイキが確かその時間帯、空いているって言ってたからちょっと誘ってみようかな…。

 

 ……なんて当たり前のことのように考えたけど、少し前までの私はこんなことは考えることがなかったんだ。

 

 レースという厳しい環境を生き残るためには、独りの方がやりやすかった。

 

 だからリギルに所属していた時は全然友だち付き合いというのも最低限しか関わらなかったし、さらに言えば他人を突き放すような言動やオーラも出していた。

 

 でも、スピカに来てからは全く真逆だ。

 

 今ではむしろ、一人の時間帯というのが少ないかもしれない。いや、しれないんじゃなくて、ないんだ。

 

 スぺちゃんが積極的に傍にいてくれるのもある。そして、レオくん。

 

 ずっと会えなかったからこそ、今のこの距離というのがとても有難い存在になっているのかも。って、私はもう何回考えただろうか。

 

 ……ふと、左手首を見ていた。

 

 そこには、何もないはずだった。でもどこか翡翠色の何かが温かみを帯びてそこにある気がした。

 

「どうしましたスズカさん?」

 

「ううん、なんでもないわ」

 

「そうで──あ! あの屋台の食べ物美味しそうです~!!」

 

「ちょ、スぺちゃん!?」

 

 そう言いながら駆けていくスぺちゃん、私もそれを追おうとした瞬間、話し声がはっきりと聞こえて来た。

 

「えぇ~!? じゃあ花火の時は一緒にいるの!?」

 

「うん、だってこの学園のジンクスの一つなんだよ~?」

 

「え~? でもそんな子ども染みたこと信じるの~?」

 

「だって、本当に叶っているんだよ?」

 

「えっマジ?!」

 

「そうそう! 花火を──」

 

「スズカさん!!」

 

 お話を聞こうとした瞬間、横から声を掛けられて少しだけ驚く。

 

 そこにはたこ串を3つくらい持って、1つを頬張っている。

 

 そしてその一つをこっちに突き出す。

 

 多分、1つどうぞということかな。

 

 私はそれを受け取って、1つパクッと食べる。磯の香りが一気に口内に広がり、噛めばコリコリとした食感がとても楽しい。

 

 うん、とっても美味しい。

 

 ……それにしても、今のやつどんな意味なんだろう?

 

 多分、あれかな? ずっと仲良くいられるとか、そんな感じかな。

 

「(だったら……花火、レオくんと見てみようかな…)」

 

   ・ ・ ・

 

 あの後、普通にお茶をしてからライスさんの教室へと訪れた……のだが、俺は絶望しました。(自動翻訳感)

 

 だって、目の前にあった看板には『恐怖の部屋』と書かれていたのだ。

 

 あ~うん、これってあれですよね。お化け屋敷ってやつですよねそうですよね。

 

 なんて思っていると中から「「ぎゃああああああ!!??」」って声が。

 

 あ~うん、はい。

 

 す ご く 行 き た く な い 。

 

 え、てか本当にここなのかな?? ライスさんって怖いのって大丈夫なタイプの人だったのかな??

 

 …とりあえず列に並ぶ。

 

 一歩進む度に、悲鳴が聞こえて…う~ん帰りたい。でもまぁせっかくライスさんのクラスの出し物が見れる訳だし…。

 

 …あれ、そういえばライスさんって俺よりも年上、だよな?

 

 ってことは、高校三年生…だよな?

 

 つまり、つまりだ。

 

「(今年がライスさんの最後の感謝祭…?)」

 

 そのことに気づいた瞬間、辺りの喧騒が遠くなった。額に手を当てて俯く。

 

 つまりライスさんは、最後の感謝祭でやることを自分に見せたかったのだ。きっとあのLANEは真剣なものだった。

 

 だけど自分は二つ返事で返した…そのいい加減さに対して、自分自身少し怒りが湧いてくる…。

 

「次の方お願いしま~す!」

 

「あっ、はい」

 

「最後に謎解きがございますので是非挑戦してみてくださ~い」

 

 順番が来たらしく、通される。俺は一呼吸置いてから部屋に入った。

 

       ・ ・ ・

 

 部屋に入った瞬間、冷気が襲ってくる。一瞬、半袖で露出している肌を手で擦る。

 

 順路は当たり前だが一本道になっている。

 

「うひゃ…?!」

 

 っと、少し進むと突然上から水みたいなのを掛けられる。後ろを見てみると、そこには小さな四角い空間ができていた。そしてそのさきから薄っすらと笑い声みたいなものが聞こえてくる。

 

 なるほど、ここから手を出して霧吹きか何かで吹きかけているんだろう。

 

 文化祭の肝試しってこういうところに手作り感とかがあっていいんだよな。

 

 なんて思っていると今度は後ろからダンダンダン!! と金属を殴るような音がその音にびっくりして振り返る。

 

 すると上の方を見るとそこにはロッカーが。

 

 なるほど、あれを叩いているのか。限られた資源でここまで思考錯誤して人を驚かせれるのって普通にアイデアに脱帽だ。

 

 さらに進むと辺りが赤い照明で照らされている。そしてその先には、誰かがいた。

 

「あ、あの~?」

 

「(カキカキカキカキカキカキカキ…)」

 

 声を掛けてもロングヘア―の女性はずっと何かを書いている。

 

 それがなんなのかと俺は覗き見るように見る…するとそこには『呪』の文字が、何十にも何百回も同じように赤文字で書かれていた。

 

「うわっ…」

 

 俺は気味が悪くなり、その場に離れようとする。その瞬間、空いた左手が自分の右足元に勢いよく置かれる。いや、叩かれると言った方が正しいだろうか。

 

「っ!?」

 

 少しビクッとしてしまった。しかしそれ以上女性は何もしないでまた呪の字を書き始めた。

 

 とりあえず先へ進むことに。

 

 と思ったら、ここで終わりのようだ。

 

 ちょっと意外と思ったが、普通の教室の大きさなら十分なボリュームかな。

 

 そうして扉を開けようとしたが…開かない。

 

 なんで? と思った瞬間に入口で言われたことを思い出す。

 

『最後に謎解きがございますので是非挑戦してみてくださ~い』

 

 ってことは、どこかに謎解きがあるはず。

 

 そうやって周辺を探すけど…どこ?

 

 あ、あれ? おかしいな、全然問題がない…。

 

 なんで? 一応周辺全部見たような…。

 

 ……なんて思っていると、次の瞬間後ろから気配が──そこにいたのは…。

 

「う、うらめしや~!」

 

「────」

 

 瞬間、自分のありとあらゆる思考する力や様々なことを伝達する理性が吹き飛ぶ。

 

 そこにいたのは──白い装束を着て両手を少し突き出して、そしてとても恥ずかしそうに顔を赤面しながらもそう言う黒髪のウマ娘…ライスさんがそこにいた。

 

 ……と、ここでぴぴぴっと何かタイマーみたいなものが鳴る音が聞こえた。

 

   ・ ・ ・

 

「どうだったかな、ライスたちのクラスの展示は…?」

 

「えぇ、まぁ……はい──理性が飛びましたね」

 

 俺はライスさんと一緒に二つくらい隣のクラスの展示店(レモネードスカッシュやベビーカステラなどの軽食系)に訪れて適当に軽食を取っている。

 

「ふふっ、今年が最後だからね。ちょっと張り切っちゃった…ちょっと恥ずかしかったけど…」

 

 そう言いながら赤面しながらも微笑み、頬の辺りをぽりぽりと指で搔いている。

 

 あぁ、その一つ一つの行動がかなり可愛らしい。これが癒しというやつなのだろうか。

 

「…あぁ、やっぱり最後なんですね。今年が…」

 

「……うん」

 

 さっきまでの楽しい雰囲気は風のように過ぎ去り、エアコンの冷気が嫌に肌に刺さる気がした。

 

「レオくんは、まだ高2だよね」

 

「えぇ…そういえば、ウマ娘って卒業後ってどうなるんですか?」

 

「え~っと、主に卒業・進学かな…一応、この学園の大学コースなどもあるけど…それは、ある程度実績がないと…」

 

「……ライスさんの実績は…?」

 

「GⅠを一勝…それ以外はぱっとしないかな。一応他のGⅠは二着とかだったけど…」

 

「え、普通にいいじゃないですか?」

 

「でもドリームトロフィーリーグに進むには、もっと勝たないと────でも」

 

 ふと、ライスさんの瞳に光が消えた気がした。

 

 そして、またさっきみたいに口角を上げながら…しかしそこに笑みなんてなかった。笑っているはずなのに、笑ってない。

 

「ライスは、もう走らないよ…」

 

「…………え?」

 

「じゃあ、ライスは戻るね」

 

 そう微笑み言いながら、ライスさんは席を立ってそのまま教室を出ていく。

 

 俺もワンテンポ遅れてその場を立ったが、あまりのことで何を言えばいいのか分からず、俺はライスさんの方にある虚空に対して少し手を伸ばす程度だった。

 

 ライスさん、なんで……なんて考えても、彼女の考えていることなんか、ましてやその感情なんて分かる訳がなかった。

 

   ***

 

 予定より少し早めに集合場所に着いたわたくしはスマートフォンでメッセージを送る。少しもしないうちに返信が返ってきます。

 

 そうしてわたくしはポケットに入れた手鏡を持って前髪を整える。ふと顔を見ると少しだけ頬が紅潮していることに気が付きました。

 

 ただ会うだけなのに、なぜここまで心と尻尾が躍り出すのでしょうか。

 

 なんて考えていると玲音さんがこっちへやってきました。

 

「あっ、玲音さん」

 

「やぁマックイーン、ちょっと遅れたかな?」

 

「いえ、わたくしも今来たところです。では行きましょうか」

 

「あぁ…」

 

 そうしてわたくしは玲音さんの隣にひょいと移動し、そのまま歩き始めます。

 

 少し周りを見てみると、ウマ娘同士で感謝祭を楽しんでいるグループもいれば、外からやって来た家族連れ…そして、カップルで来ている人たちが目に入ってきます。

 

 …わたくしと玲音さんは、傍から見るとどう見えるのでしょうか。なんて突拍子もないことを考えてしまいました。

 

「っ? マックイーンなんか顔赤くない?」

 

「へ!? そ、そんなことありませんわ!」

 

「いやいや、9月中旬…下旬? でも結構暑めだし、まさか無理しているんじゃ…」

 

「だ、大丈夫です。それに自分の体調は自分が一番分かってますわ」

 

「そう言って、1年前くらいに走りすぎて脚壊しかけてたのはどこの誰だ?」

 

「ぐっ…」

 

 玲音さんのその言葉を聞いた瞬間、わたくしがあまりにも愚かだった頃のことを思い出してしまいました。

 

 わたくしはメジロ家のコースで走っていたのですが、玲音さんの忠告を無視して走り続けた結果ちょっとだけ軽い怪我をしたことがあります。

 

 あの時は玲音さんがすぐ医者を呼んでくれたので大したことにはなりませんでしたが、医者曰くかなり危なく下手をすると疲労骨折も考えられたと言っていました。

 

「マックイーンは集中しすぎたりプレッシャーが強いと自分の状態を軽んじるからなぁ…」

 

「も、もうあんなことは起こしませんわ。わたくしももう中学二年、残り数か月でメイクデビューなのですから」

 

「そのことにプレッシャーがかかってるんじゃないか?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、わたくしの心の中にあるなにかのスイッチがONになるような音が聞こえた気がした。

 

 わたくしは肩にかかっている髪を一度払い上げるように手を上げる。

 

「わたくしは、メジロの者ですわよ? その程度のことでプレッシャーなんて感じませんわ。なにせ、わたくしの目標は春と秋の────」

 

 『天皇賞制覇』と言おうとした瞬間、突然頭に手が置かれる。

 

 そして、そのまま豪快にわしゃわしゃと頭を撫でられる。

 

「ひゃあ!? な、なんですの!? せっかくさっき整えたのに!!」

 

「マックイーン、俺といる時くらいメジロの人間だ~とか、そんなの考えなくてもいいぞ」

 

「……え?」

 

「マックイーンは俺に『お嬢様』と呼ばれるのが大っ嫌いだろ? それと同じでさ、せめて俺の前でメジロうんぬん考えるのはやめてほしいかな」

 

 そう言うと玲音さんはこっちの瞳を真っ直ぐ見て、真剣な面向きで言葉を発します。

 

「俺は、マックイーンとして君と過ごしたいんだよ」

 

「っ…!」

 

 瞬間、悟りました。

 

 あぁ、やはりこの人には絶対勝てないんでしょうねと。

 

 それはもちろん単純なパワーなどではなく、心や人間性。

 

 

 だからこそ、わたくしはこの人に惚れているのでしょう。

 

 ……最初はただのお礼と尊敬でした。あの林間学校の時に迷子になったわたくしにずっと付いていてくれた。そのお返しがどうしてもしたくて爺やに調べてももらって直接会い、そしてメジロ家の邸宅に招き入れました。

 

 普通なら、そこで終わりなはず。でもわたくしはまた会う約束をして、次も…次も…わざわざ遠くからやって来て、わたくしと触れ合ってくれました。

 

 するとどんどん、あの人がどんな人なのか分かって来て…いつしか気になるようになって……。

 

「そう、ですね……では…」

 

 そう言って、わたくしは玲音さんの右手をぎゅっと握ります。そして駆け出します。

 

「行きましょう!」

 

「うわちょ、少しは加減してぇ!?」

 

   ・ ・ ・

 

 わたくしたちが向かっているのはマチカネフクキタル先輩の占い部屋です。

 

「い、意外だな…マックイーンのことだからスイーツなどの方に行くかと…」

 

「わたくしをスイーツにしか目がない娘だと思ってます?!」

 

「え、うん」

 

「あんまりですわ!?」

 

 まさか玲音さんにそんな風に思われていたなんて…いやでも、実際そうではありますし…。

 

 う~、でも少し複雑ですわ…。

 

「まぁ冗談冗談、マックイーンって占いとか信じているんだなって、ちょっと思ってさ」

 

「少しだけ、ですが。しかし、ここはまた少し違うらしいですよ」

 

 これは同じクラスの方々に教えてもらったのですが、マチカネ

 

「玲音さんは占いって信じます?」

 

「まぁ、ぼちぼち? ニュースの占いとかは無意識ながらも確認しているし」

 

「そうなんですね、そちらも少し意外です…」

 

「まぁ完璧に信じているわけじゃないからねって、ここか」

 

 なんて話をしている内に『表あっても占い』に着く。

 

 っと、同時に誰かが出てきました。あれは……確かスペシャルウィークさんとクラシックを競い合っているキングヘイローさんでしたか。その隣にいる男性の方は学生トレーナーの制服を着ています。

 

「なかなか貴重な意見が聞けたわね」

 

「そうか? しばらくの運勢は下降気味で年明けから運が向いてくるって、結構誰にも当てはまりそうなこと言っているが」

 

「違うわよ。占いっていうものは全てを信じるのではなく、それを通して己を仮に知ることで、現状を変えさせるという働きがあるのよ……それに、このキングはそんな悪い運勢にも抗ってみせるわよ、おーっほっほっほ!!」

 

「やっぱキングはすげぇや」

 

 そう言いながら2人はその場を去っていきました。

 

「あれは尊野とキングヘイローか…おっ、今空いているみたいだよマックイーン」

 

「では入りましょうか」

 

   ・ ・ ・

 

「ようこそおいでくださいました! ささ、お座りください…!」

 

 入口から入ると、その先は薄暗く紫の照明が施されたなんとも不気味な部屋でした。

 

 目の前には水晶玉、そのすぐ奥に制服姿のマチカネフクキタルさんがいました。

 

「今日は何を占いますか?」

 

「今後のわたくしと玲音さんの運勢を占ってくれませんか?」

 

「分かりました…! シラオキさまのお伝えを聞いてみましょう…!」

 

 そう言いながらフクキタルさんは水晶玉に手をかざします。

 

 そして目を閉じながらその手を複雑に動かし「ふんにゃらぴ~ひゃら」など、なんかそれっぽい呪文を唱えます。

 

「むむっ! 見えました!!」

 

「結構早いな…」

 

「まず今日の運勢ですが、お2人とも凶です!!」

 

「きょ、凶ですって!?」

 

「それはまた運が悪い…」

 

「まずそちらの…えっと…」

 

「メジロマックイーンです」

 

「メジロマックイーンさん、あなたはこの後の時間がつぶれるでしょう。それも振り回されるような形になるでしょう」

 

 なんてことですの…まさか凶でしたとは。

 

 もちろん占いということなので、そういったことを言われるのは覚悟していましたが、いざ言われるとかなりショックを受けますわね。

 

 でも玲音さんもとは…少し意外です。

 

「そしてそちらの男性の方ですが、まさに今日イヤな予感がします…」

 

「嫌な予感って……なんだそのアバウトな言い方、そんなの誰でも当た───っ?!」

 

「……玲音さん?」

 

 玲音さんの表情を見ると、どこか顔が青くなっている気がした。

 

 なぜこんなに青くなっているのでしょう…。

 

「ま、まぁ分かった…注意しておく」

 

『運勢というのは自分だけではなく、その周りも含めますから気を付けてくださいね』

 

 あれ、なんかフクキタルさんの声が冷ややか…? それにさっきよりも目に光がないような。

 

 なんて思っていると目に輝きが戻りました。

 

「では今後ですが、メジロマックイーンさんに関してはメイクデビューまでは安全です。油断せずにそのまま行きましょう!」

 

「そうですか…まぁ、わたくしは油断などしませんわ」

 

「まぁ、マックイーンにそんなイメージはないけどね…だけど根を詰めすぎるのは玉に瑕だけどね」

 

「うぐっ…」

 

「そしてえーっと、谷崎玲音さん。でしたっけ?」

 

「あれ、自分フルネーム言いましたっけ?」

 

「スズカさんから聞いています! 10年ぶりの再会を果たした幼なじみだと…!」

 

「あ、あはは…少し恥ずかしいなぁ…」

 

 そう言いながら頬をぽりぽりと掻いて頬を少し赤くしている。

 

 恥ずかしいながらも少し嬉しそうです。

 

「──ですが、あなたには言っておかなければならないことがあります」

 

「……言っておかなければ、いけないこと?」

 

 すぅ…と一呼吸を置くと、フクキタル先輩は話始めました。

 

「まずあなたの運勢……というより未来ですが、これがすごく複雑なんです。本来、人の未来というのは一本の線路が引いてあるところにポイントが三つくらい用意されており、それに従うような形なんです。これが俗に言う運命というものですね」

 

「は、はぁ…」

 

「私の占い、というよりシラオキ様はその線路のポイントを見ることが可能で、それを私がお言葉としてみなさんに説明するんです」

 

「なるほど…かなり手が込んでいるんですね……」

 

「(よくできた設定だな~叔父さん聞いたらめっちゃ喜ぶかな?)」

 

「ですが、玲音さん。あなたの線路は確かに一本な…はずです」

 

「はず?」

 

「確かに今。とても近い未来の運命の線路は見えているんです、いえ、辛うじてと言った方がいいでしょう」

 

「辛うじて? でもさっきその、しらおきさま? って神様は見えるんじゃ…」

 

「そのはずですが…あなたの未来はとても不明瞭なのです。まるで霧がかかっているような。さらに言えば、その先の影には幾千の廃れた線路が見えて…その先は…完全に見えないんです」

 

 重苦しい空気の中、フクキタルさんはそう言い切りました。

 

 つまりこれは、簡単に言ってしまえば玲音さんの未来はない…ということになるのでしょうか。

 

「それはまた…随分、洒落にならない言い方だな…」

 

「もちろん死ぬってわけではない……ですが」

 

「やめてくれそこで合間を取るの。結構この前ま──」

 

 そこまで言うと、不自然に玲音さんの口が止まります。そしてなにやらもごもごしていると、再びその口が開きました。

 

「この前、地味に車に轢かれかけたんだからな?」

 

「おっと、それは危なかったですね…」

 

「まぁとりあえず、気をつけろってことでいいんだよね?」

 

「可能性があまりにも無限大過ぎますからね…それで大丈夫だと思いますよ」

 

「……」

 

 その言葉を聞いてから玲音さんはそのまま黙ってしまいました。

 

 というよりさっきの言い方と地味に違うような…本当に玲音さんが漏らしたことは、今のが本音なんでしょうか…?

 

「そこでお2人のラッキーアイテムですが」

 

「あっ、そういうのあるんですね」

 

「まぁ占いだからあるだろ…」

 

 そう玲音さんが突っ込むのと同時に、フクキタルさんはビシッとわたくしに対して指を指します。

 

「ズバリッ、あなたのラッキーアイテムは焼きそばです!!」

 

「や、焼きそば…?!」

 

 あまりにも意外すぎる単語がフクキタルさんの口から発せられたので、わたくしは思わずその単語をオウム返ししてしまいました。

 

 と、それと同時にカーテンが開かれました。

 

   ***

 

「……焼きそばの方から現れたな…」

 

 カーテンが開かれたと思うと、そこにいたのはゴルシだった。

 

 どうやら一人で焼きそば屋を開いていたらしいが、捌ききれなくなったようでマックイーンを探していたとのこと。

 

 んでマックイーンが何か訴えるようにこっちを見て、少し考えている間にゴルシはマックイーンを攫っていった。

 

「……なぁマチカネフクキタルさん」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「さっき『この後の時間が潰れる』とか言ってたよね? まさかこれのことじゃ…」

 

「……」

 

 そう無言で笑顔を浮かべるマチカネフクキタルの顔が俺にはとても恐ろしいものに見えた。

 

 さっきの、冷ややかな目と声。まるで別の誰かが乗り移ったような変な雰囲気。

 

 あれは一体、なんだったのだろうか…。

 

「あなたのラッキーアイテムはスマートフォンです……『絶対離さないように』」

 

「っ…わ、分かった」

 

「それでは、お気をつけて!!」

 

 そう言うと笑顔で手を振って部屋から見送ってくれるマチカネフクキタル。

 

 その笑顔が、やっぱり恐ろしいものに感じた。

 

「……適当に潰すか」

 

 部屋を出た後、特に何も予定を入れていない俺は適当にぶらぶらする。

 

 帰ってもいいけどどうせ一年に2日しかないお祭りだ。何もしないっていう選択肢はあんまりしたくない。

 

 まぁ、できることなんて喫茶店っぽいところを巡るってだけだけど。

 

 なんて考えながら、俺は歩き回りながら適当な教室に入って、飲み物を飲んで食品を食べて出てを繰り返し、時間を潰していく。全部とまではいかないが、ほとんどの喫茶店・軽食系は回っただろう。

 

 そして空が夕焼け色に染まり始めた頃、学園内のスピーカーから声が聞こえてくる。

 

『以上を持ちまして、『第──回トゥインクルシリーズ秋の大感謝祭』を終了させていただきます。どの方も、お忘れ物がございませんよう、気を付けてお帰りください』

 

 というアナウンスが学園中に響く。

 

 確か数時間後に打ち上げ花火が上がるはずだけど、正直誰かと見る訳でもないしなぁ…。

 

 スズカでも誘うか? いやでもスズカにも一緒に見たい友だちはいるだろうし。

 

 ……なんて思っていると、ポケットの中に入れていた携帯が震えた。どうやら誰かから連絡が来たらしい。

 

「もしかしてスズちゃん、だったりして」

 

 自分は微笑みながら独り事を囁いて、そして携帯を手に取り通話ボタンを押した。

 

   ***

 

「それではスズカさん、また学校で!」

 

「えぇ、スぺちゃん」

 

 そう言うとスぺちゃんは同期の子たちと一緒に去っていく。

 

 この場には私だけになってしまった。

 

「……さて」

 

 私は初めに考えていたように、レオくんに連絡をかける。

 

『prrrrr、prrrrr──おかけになった電話をお呼びしましたがお出になりません。ピーという発信音の後に、お名前とメッセージをお伝えください』

 

「……あれ」

 

 私は通話を切って、LANEを開いてレオくんの個人メッセージを開く。

 

『ねぇレオくん、もしよかったらなんだけど、一緒に花火を見ない?』

 

 そうしてしばらく既読が付かないかと待ってみるけど、反応がない。

 

 もう一回電話を掛けたけど、同じ結果だった。

 

 どうしたんだろうレオくん…もしかしてもう誰かと一緒にいるのかな…。

 

「……」

 

 私は学園の校舎から背を向けて、寮への帰路を辿り始める。

 

 実は栗東寮は感謝祭の打ち上げ花火が綺麗に見えるスポットなんです。私はいつも自室で一人ゆっくり部屋の窓から花火を眺めるのが毎年の恒例でした。

 

 ……今年は、ちょっと違うかもしれないと思っていたけど。

 

「そんなに変化が続くことなんて、むしろレアよね…」

 

 周りには私だけではなく、同じく寮に帰る生徒や一般参加客などが帰路を辿っている。

 

 ……ふと私は視線を上げて、前を見ました。

 

 するとそこにいたのは──顔を青白くし焦燥の表情を浮かべながらタクシーに乗ったレオくんが視界内に映ったのだった。

 

 私は──なにか、胸騒ぎがしましたが、その場を動けませんでした。

 

 

 




・これふつ~に二つにすればもっと早くに投稿できたのでは…?(困惑)

・メジロブライト…かわいい…。

・マックイーン来てよォ!!(悲しみ

・次回、その後のお話をお送りする予定です。
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