女帝からこってり搾られ、みんなのママたるスーパークリーク先輩に慰められ、その後も続くゴルシの奇行に絶句しながら対処して、気が付けばオレの疲弊度はMAXだった。なんだよフライトゴルシちゃん4号って、無駄に技術力高すぎんだろ。1人用ヘリじゃんあんなの。しかもカ○コンのお家芸みたく墜落してんじゃねぇか。それで何で生きてんのさお前不死身か?ギャグ補正完備かコノヤロー。
疲れた表情で自分の席に座り、机に突っ伏し生気が抜けるようなマヌケな効果音が入りそうなほどのオレに、聞きなれた溜め息のあとに口にラムネを放り込まれた。取り敢えず気力は若干回復した。
「エアシャカールさんくす」
「そりゃあんな惨劇を見ちゃな」
「唯一の救いだわマジで」
前の席に座っているエアシャカール。ピアス付けてて強面な分誤解されやすいが、れっきとした頭脳派で収集データに基づいた戦略的な追い込みが得意な奴。オレの所属するチーム【サジッタ】のメンバーで参謀のような役割でチームを支えている。他にもメンバーは居るが曲者揃いというか、なんというか……いやオレはまだ常識的だし。
「それと聞いたぞ、またやらかしたな」
「ゴルシが悪いんだよゴルシが。アイツの乳モゲてしまえと何度考えたことか」
「結局いつものかよ。胸ねぇ方が空気力学では有利なんだぞ」
「マジレスよかチヤホヤされてーのオレは! この世界じゃ胸のデカさは優先されるステータスなんだよ、最重要ステータスなの! 世界にばら撒かれた乳をフュージョンライズすればこの世の全てを手に入れることが出来るんだよ!」
「誰も見たかねぇわそんなワン○ース! 新しい胸を探し求めて
「毎度毎度生徒会に足運ぶ度に胸囲の格差社会の現実に打ちひしがれるオレの気持ちが分かるか!? 何だよあの胸オレにも分けろや!あの胸で七冠と無敗三冠取ってんだぞ寄越せ!」
「お前は生徒会で一体何を考えてんだよ!?」
何が悲しくて地雷原を真っ直ぐに突っ込んで行かなきゃならんのだ! スズカパイセンだけがオレの同胞なの普通に考えものなんだよ! 格差社会に翻弄された哀れな被害者のひとrヘブシッ!
「誰か邪な考えをしてませんでしたか?」
「うごごごご……パイセン、ここ別のクラス。いつ来tギィヤァアア!?頭めり込んでるめり込んでる机メリメリ言ってるゥ!」
「もう、ジャスタウェイったら変なことばっかり」
「見えてないけど多分笑顔なんだろうなぁ! 般若が笑ってんだろぉなぁア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!」
「うふふふふ」
このあと予鈴が鳴るまでその状態で拘束され続け、机にクモの巣状の亀裂が入っていたことを知って新しい机を補充する羽目になった。エアシャカールは色んな意味で何も言えなかったらしい。呆れられた。
酷い目にあった。何がと言われると形容し難いが一言で表すなら鬼に会った。まさかのグラスワンダーにも狙われてそのまま差された、さながらサメ映画の主役みたいな感じでオレを狙っていやがった……あの目は本気の目だった。獲物を捉えた目だったよ。
とぼとぼと効果音の付きそうな重い足取りで1人、サジッタの部室へと向かう。途中でくそ長太チュロス食ってるキャップと合流してそのまま部室まで同行した。キャップ──オグリキャップパイセンはこのトレセン学園に来る前は地方で逸材として評価され、ここに来てからもその逸材ぶりを発揮するかのように存在を知らしめている大物中の大物。サジッタのエースとしてオレをふくめたメンバーはキャップと呼んでいる。
とは言ったがこのキャップ、かなりの健啖家。もとい大食いで他のウマ娘と比べても相当食う。2倍3倍の話じゃねぇ、それ以上の倍率で食う。食費掛かりすぎんだろと今でも思う。たらふく食った筈なのにまだ食うのかと云わんばかりの食事スピードに感心するほど。
「要るか、トメさん」
「要らねぇよ、あとトメさんじゃねぇっての」
偶然腹を空かしたキャップと夜に出会って、そのまま飯作って食わせたら何故か懐かれた。それでトメさんと呼ばれる事になったが、オレは食堂のおばちゃんじゃねぇっての。そんな歳でもないし。部室が目の前に差し掛かったところでキャップの食っていたチュロスも無くなり、2人して手持ち無沙汰になった状態で部室に入る。
「おー、来たな」
「おーぅ、来たぞハゲー」
「スキンヘッドだっつってんだろバ鹿」
自称スキンヘッドのハゲトレーナー、もといオレたち【サジッタ】のトレーナー『
「あとキャップ、キャラメルの匂いするんだが」
「なぜ分かった……!?」
「普通に分かるわそんなもん。取り敢えず食ったぶんは動けよ」
「ただいま練習終わりましたー!」
勢いよくドアが開いたと思えば快活な声が部屋に響く。その声の主はサクラバクシンオー、本人は至って真面目で実直な性格なのだが如何せんアホの子なのが唯一の欠点である。こんなのでも短距離走では上位どころかトップ3に入るほどの瞬足、アホの子なので長距離に出たがってるが簡単に言いくるめられる。
「おぉ、お二人とも来てたんですね!」
「ついさっきな。お前さんは休憩か?」
「はい! 少し水分と塩分補給してまた戻ります!」
「じっとしてるのが苦手なのは分かるが、体は休ませてやれよ。テメーが元気よく走るためのもんだからな」
「心配性ですねジャスタウェイさん!大丈夫です私優等生ですから!」
「へいへいわーったよ。なら言う事ぁねぇな」
「勿論ですとも!と、いけません直ぐに補給しなければ! ではお二人とも、トレーナーさん行ってきます!」
「あいよ」
机に置かれたバクシンオーのものであるスポドリを持って「バクシンバクシンバクシーン!」と言いながら練習に戻っていく後ろ姿を見送って、ハゲトレーナーを追い出してオレとキャップも着替えて練習に取り組む。オレとキャップは別トレなので別れ、コース場で先に待っていたエアシャカールと──
「来たか」
「今日もありがとうございます、ビワハヤヒデパイセン」
視界の三割を占領するほどの毛髪量持ちのビワハヤヒデパイセン。よく顔のデカさを気にしてるようだがそこまでデカいか?と思ったり。
「私の顔はデカくない」
「いや誰も言ってませんから」
デカイのは乳と毛髪量でしょうが。
「まぁ良いだろう。そら、始めるぞ」
「うっす」
わざわざ自分の時間を削ってまで協力してくれるビワハヤヒデパイセンと、オレとエアシャカールの2人を加えた訓練を始めていく。
チームサジッタのまとめ役、曲者揃いのメンバーを纏めあげたことで必然的にリーダーとなったウマ娘『ジャスタウェイ』は、私とエアシャカールに見守られながら特訓を開始した。マイル最長の芝1800を走るが、初めにストライド走法でのスタートをきった。
およそ半分の距離まで詰めたところで、ジャスタウェイが一気に走法をピッチへと変更させた。順調に走っていくが残り400を切ったところで僅かに掛かったものの、すぐに立て直しそのままゴールまで駆け抜けエアシャカールがストップウォッチを押した。
「0.6の遅れ、だが前よか良い」
「バ体も程よく安定してきている。唯一の懸念は変わらんが、それでも良い成長具合だ」
「発言に目を瞑りゃ、本人は至って真面目な努力家なんだがねぇ。どこでああなったんだか」
エアシャカールがジャスタウェイの元へと駆け寄り、少ししてジャスタウェイはこちらの方へと向かい手すりに体を預けた。その手にスポーツドリンクを持って。
「ふぇぇぃ…」
「こちらまで気の抜ける声だな」
「何時でも気ぃ張ってちゃキツいんでね。やる時やるぐらいで丁度いいんすよオレぁ」
「後輩に示しがつかんぞ」
「ならオレを反面教師にして成長してけ、とでも言やぁ良いっすよ。そうなりゃ誰もオレみたくならない」
草臥れた声色でそう言い、今度はエアシャカールのタイムを計るためストップウォッチを手に取った。そのタイミングでこちらへと歩む足音が聞こえてそちらへと振り向いた。
「やぁ、リーダー。それとビワハヤヒデ」
「来たかタキオン、丁度いいエアシャカールと走れ」
「何故かな?」
「少なくとも競争相手の有無によって訓練意欲が高まる。その分運動効率を求めてお前らは考え実行しやすくなる。あとは2人分の練習メニューが組みやすくなるな」
「……対価はいつもので頼むよ」
「ハゲがペンライトになるんだ、夜訓練にちょうどいい」
「なら少し待ってもらおうか」
アグネスタキオン。超光速の粒子の名がつけられたウマ娘だが性格はマッドのそれ、選抜レースではG1経験ウマ娘たちを押し退けて1位に躍り出た実績があるが、何やら研究をしているため滅多に練習に来ることは無い。
まさかチームに入るとは思っていなかったが。アグネスタキオンがサジッタの練習に加わってそれほど経っていなかった頃は、何の冗談か理解できずにいたのは記憶に新しい。どのような手腕でチーム入りを果たせたのかは結局はぐらかされて答えなかった。
『アグネスタキオン』
『エアシャカール』
『サクラバクシンオー』
『オグリキャップ』
『ジャスタウェイ』
この5名によって構成された曲者だらけのチーム【サジッタ】、これからどのような道を辿るのだろうか。
・チーム【サジッタ】
アグネスタキオン
エアシャカール
サクラバクシンオー
オグリキャップ
ジャスタウェイ
の5名とトレーナーである本埼玉成によって構成されるチーム。チーム名は矢座から決められた。
曲者揃いのメンバーを纏めあげたのは現リーダージャスタウェイ。立場的にはリーダーというよりも皆のオカンという認識らしい。