「〜〜で、その時ネプギアがね」
「あはは、ぎあちゃんったら面白い〜」
ネプテューヌとプルルートは『四女神オンライン』のボイスチャットで会話していた。
今日はオンラインゲームでおしゃべりする、そんな気分で、プルルートとピーシェが営んでいるコスチューム&アクセサリーショップ『ふぁんし〜しょっぷ』にて駄弁っていた。
「……あ、お客さんが来たから、そっちの対応するね〜」
「わかったー」
「いらっしゃいませ〜!」
「ここがふぁんし〜しょっぷね。こんにちは」
客として現れたのは、ゲーム内のNPC『女神パープルハート』。
「あっ! ねぷちゃ……じゃなくて、パープルハート様だ〜。いらっしゃいませ〜」
NPCであるパープルハートが街を歩き回ること当たり前の事だが、自ら店に入ることは稀、というかほぼ無いことであるため、ネプテューヌは不思議そうな表情をする。
しかしプルルートはゲームシステムをネプテューヌほど理解していないため、いつもと変わらない様子で接客するのだった。
「何かお探しですか〜?」
「今日は、ウィシュエル一番の縫製職人であるあなたに頼みがあってきたの」
「ウィシュエル一番なんてそんな〜、照れちゃうな〜。頼みってなんですか〜?」
「私の衣装について、かしらね」
「ふむふむ〜」
「ゲームをしているみんながみんな、とても魅力的なコスチュームをしているものだから、私も新しい衣装が欲しくなっちゃったの」
「確かに、わたしたちプレイヤーは自由に服装を変えられるけど、女神様には別衣装無いもんね」
「そうなのよ。そこで、ウィシュエル一の縫製職人であるあなたに、私の新コスチュームを作って欲しいのよ!」
「え、ええ〜!」
「ダメ……かしら? タダでなんて言わないわ。もし作ってくれたら、超レアアイテムをあげちゃうわよ!」
(……NPCが運営の意図しないタイミングで勝手にプレイヤーに超レアアイテムあげちゃうオンラインゲームって大丈夫なのかな? ……まぁいっか)
「わかりました〜。でも〜、すこ〜し時間がかかっちゃうけど、大丈夫ですか〜?」
「大丈夫よ。ありがとう」
「は〜い」
注文が済むと、パープルハートは嬉しそうな足取りでふぁんし〜しょっぷから去って行った。
「……大変なお仕事を頼まれちゃったよ〜。緊張しちゃうなぁ〜」
「へぇ、ぷるるんでも緊張することってあるんだね」
「も〜! ねぷちゃんはあたしのことなんだと思ってるの〜?」
「ごめんごめん。でも、ゲームのわたしとはいえ、ぷるるんがわたしの服のデザインをしてくれる楽しみだよ。ぷるるんが作ってあげてた向こうのノワールの普段着に少し憧れてたんだよね」
「そっか〜。頑張るから期待しててね〜」
かくして、プルルートによる女神パープルハートの新衣装デザインが始まった。
*
「う〜ん……」
プルルートは悩んでいた。
「もっと細かく聞いた方が良かったかも〜」
これまで服のデザインは何度もしてきたが、その殆どはイメージを向こうから細かく伝えてくるノワール(神次元)相手である。
しかし、パープルハートは別のコスチュームを作ってくれと言うだけで、作って欲しいコスチュームに関しては何の指示もしてこなかったのだ。AIだからしょうがないという話は置いておき、具体的な指示がなく一からのデザインとなると、流石のプルルートでも苦戦していた。
(ねぷちゃんだから紫、っていうのも安直だし、少しイメージと違う色にしてみようかな〜。そして、あくまで主役は服じゃなくてねぷちゃんだから、ねぷちゃんの良さを出すために飾り付けは無難にしてシンプルに仕上げた方が良いかも〜。あとは、変身したねぷちゃんだからきゅーとよりくーるでせくしーな感じが良いよね〜)
だとしても、そこで止まるようなプルルートではない。
プルルートには、ほんわかとした緩い雰囲気の中に「手を抜かず最高の逸品を仕上げる」という確固たる意志、縫製における意識の高さがあった。
これこそが、ゲーム内のコスチューム&アクセサリーショップの中でもふぁんし〜しょっぷの人気が特に高い理由でもある。
(……あっ、閃いたかも〜! よ〜し!)
デザインを思い付き、それを普段のプルルートとは思えない迅速な手捌きで製図していく。
「ぷるるとー! 遊……」
その時、元気いっぱいに部屋に入ってきたピーシェだが、あまりにも真剣な様子のプルルートを見て、あのピーシェが気を遣って引き返した。
(……がんばって、ぷるると)
そして、心の中でエールを送る。
神次元のアイエフとコンパも、プルルートを優しく見守っていた。
「……にしても、おかしいわね」
「何がです?」
「プルルート様がデザインしてるのはゲーム内での変身したネプ子の衣装なのよね?」
「そうですよ」
「ならどうして、ここ最近プルルート様はデザインの間に何度も現実のクエストに足を運んでいるのかしら?」
「確かに……です」
「よし、できた〜! 後はこれをデータにしてゲームに入れれば〜…………どうやるんだろう? う〜ん……あいちゃん〜! 助けて〜!」
「……おっと、呼ばれたわ。プルルート様のお手伝いしてくるわね」
「はーい」
*
プルルートが仕上げたのは、真っ赤なドレス風のワンピースだった。シンプルな見た目であるもの、女神としての高貴さと可愛らしさが見事に内包されているデザイン、正に逸品。
「わぁ〜……!」
AIとは思えないほどに、目を輝かせ喜ぶパープルハート。
「着てもいいかしら?」
「勿論〜」
「ネプテューヌ、操作してくれる?」
「おっけー」
ネプテューヌがステータスウィンドウを開き、パープルハートの装備欄から衣装を入れ替える。ゲーム内なので着替える動作は必要なく、一瞬で服装が変わる。
「すごい……! 流石ウィシュエル一番の縫製職人、私の目に狂いはなかったわ」
「いやぁ、それほどでも〜」
「謙遜する必要なんてないわ。本当にありがとう。これ、約束の超レアアイテムよ」
「は〜い。毎度あり〜」
「本当はあなたと冒険がしたいけど……そのためにはあなたがもう少しストーリーを進めてくれないと、仲間には加われないのよね……」
「ごめんなさい〜。あたしはゲーム攻略の方はあんまりなんですよ〜」
「そう……でも、こうしてお店に顔を出すことはできるから、これからもよろしくね」
「は〜い。これからもふぁんし〜しょっぷをご贔屓に〜」
注文した時よりも格段に嬉しそうな足取りでふぁんし〜しょっぷから去って行った。
「そうだ、このアイテム、ねぷちゃんにあげるね〜。あたしはゲーム攻略はしないし〜」
「ありがとうぷるるん! それと、ゲームのわたしのこともありがとう!」
「いいんだよ〜。あたしが作ったものを喜んでもらえるとあたしも嬉しいから〜。あと〜、ねぷちゃんログアウトしたら、あたしの部屋まで来てくれる〜?」
「良いけど、どうしたの?」
「それは〜、来てからのお楽しみだよ〜」
「えー、気になっちゃってゲームにならないから今から行ってもいい?」
「いいよ〜」
ネプテューヌはログアウトし、プルルートの元へ向かう。
「来たよぷるるんー」
「いらっしゃ〜い。早速だけど、ねぷちゃんにプレゼント〜!」
「え? これって……」
そう言ってネプテューヌがプルルートから手渡されたのは、四女神オンラインでパープルハートに着せたものと全く同じドレス風のワンピースだった。
「実はね、こっちのねぷちゃんにも着て欲しかったから、普段着にしてもいいようなシンプルなデザインにしたんだよ〜」
「わぁ〜……!」
プルルートは自らの手で最高の素材を集めに行っていた。
大切な親友のためのプレゼントを作る、そこに一切の妥協はなかった。
「ねえぷるるん! 今着てもいい?」
「勿論だよ〜。むしろ着て見せて欲しいなぁ〜」
「わかった。着るね」
ネプテューヌは変身してプルルートから受け取ったワンピースを身に纏う。
「……ありがとうぷるるん。嬉しいわ……本当に嬉しい」
そして、プルルートを優しく抱きしめる。
「えへへ、どういたしまして〜」
大切な親友のために頑張ったプルルートなのだった。
*
しかし、それによりある問題が生まれてしまったようで、プルルートが四女神オンラインにログインすると。
「わたくしにも、わたくしにもデザインしてくださいまし!」
「いいえ! 次は私よ!」
「私が先だ! なぁ、いいだろ⁉︎」
パープルハートを羨ましがった他の女神三人が一斉にふぁんし〜しょっぷに押しかける姿が見られるようになったとか。
ギャグばかりだとギャグしか書けなくなりそうで怖かったのでたまにはまともなものにしました。