ネプギアとユニ、二人の女神候補生は、プラネテューヌとラステイションのシェア集めと鍛錬を兼ねてクエストに来ていた。
「これで決める! 『ビットズコンビネーション』!」
『ビットズコンビネーション』。ネプギア自作の自律浮遊砲台『ビット』と共に連携攻撃を行うネプギアの必殺技で、斬撃と砲撃を織り交ぜた強力な攻撃である。
「やぁぁぁっ!」
その強力な攻撃により、クエストのターゲットのモンスターであるエンシェントドラゴンは倒れ、消滅した。
「これでクエスト完了だねユニちゃん!」
「……」
クエストが完了したにもかかわらず、不満そうな表情をしているユニに対しネプギアが不安そうに尋ねる。
「ユニちゃんどうしたの?」
「うーん、ネプギアもいきなりこんなこと言われて困ると思うんだけど……」
「?」
「そのビット。あんたに使えてあたしには使えない射撃武装があるっていうのがなんか気に入らないのよね」
射撃機能が付いているビットとの連携攻撃は女神の中でネプギアのみが使える必殺技である。どうやら、それをユニもやってみたいと思っていたらしい。
「えっ……うーん、じゃあユニちゃんもやろうよビット攻撃! 私と一緒にユニちゃんのためのビットを開発しようよ!」
「いいの?」
「ユニちゃんがやりたいことができるのが一番だよ!」
「……ありがと」
そう言って屈託のない笑顔を向けてくるネプギアに対し、みっともない嫉妬をしてしまったと己を恥じるユニであった。
そんなこんなでギルドにクエスト完了を報告してプラネテューヌ教会に戻った2人は、ユニの新武装及び新技『ビット』開発を始めるのだった。
「ユニちゃんはどんな感じのビットが良い?」
「どんなって?」
「ビットにも色々種類があるんだよ。私みたいな
ファンネル型のビットとか、ネクストフォームのノワールさんが使う『ナナメブレード』みたいなソード型のビットとか、そういう感じ」
「そういう感じね。あたしは……ええと……攻めより守りの方がいいわ」
「守り?」
「変身後のあたしの武器のエクスマルチブラスターって威力が高い分大きくて取り回しが悪いじゃない? そこを補えるようなビットが良いかなって」
「なるほど、私みたいにビットに火力を求める必要はないってことだね」
「そういうこと」
「そうなると火力を下げた分のエネルギーをシールド機能に回せそう」
「それいいわね、狙撃の隙をカバーできそうだし」
「じゃあ、早速制作に取り掛かろう!」
ネプギアが残していたビットの設計図をユニ用のものに転用することで、制作はスムーズに進んでいった。次に二人が話し合っているのは、ビットの操作方法についてである。
「そういえば、ビットってどうやって操作するの?」
「私のビットは、私の攻撃パターンや合わせて自動で動いてくれるけど、そのうち脳波制御で操作できるようにしたいなって思ってるよ。その方が動きに幅ができるし」
「やっぱ自分で動かすのって難しいのね」
「一つの頭で複数の身体を動かす感じだから難しいよ。失敗するとビットの攻撃が自分に当っちゃうかもしれないし」
「じゃあ、あたしも最初は自動でいいわ」
「わかった。じゃあユニちゃんの戦闘データを集めなきゃね。ちょっと模擬戦やろっか」
「おっけー」
そのまま二人は教会地下の訓練場に行き模擬戦を始めた。この模擬戦は、ユニの戦闘データを集めるための試合なので二人が本気で戦う必要はあまりない。しかし、お互いに戦っているうちに感情の抑えが効かなくなり本気でぶつかり合ってしまうのだった。
こうして開発、模擬戦、そして模擬戦のデータを反映させた上で再度の開発、これらを数週間にわたって繰り返し、遂にユニ専用のビットが完成した。
「できた……私専用のビット! 名付けて『シールドビット』よ!」
「やったねユニちゃん!」
「ネプギア……その……ありがとね。できるまでずっと付き合ってくれて」
「えへへ、どういたしまして。私もユニちゃんと一緒に開発してて楽しかったよ!」
「悪いけどもうちょっと付き合ってくれる? 早速これを試しに行きたいの」
「勿論だよ! 私もユニちゃんがビット使ってるところ見たいし。クエスト行こっか!」
「よし、じゃあ行きましょ!」
そう言ってギルドで手頃なモンスター討伐のクエストを受注し、ダンジョンに向かう二人。
そしてダンジョンに到着した彼女たちの前に、早速モンスターが立ち塞がる。
\ ぬらっ /
「おっと、出たわねモンスター! スライヌごとき新武装を使うまでもないけど、せっかくだから使ってやるわ! 『シールドビット』展か……痛っ‼︎」
高らかに武装名を宣言したユニであったが、急に頭上に出現したビットに思い切り頭をぶつけてしまった。悶絶しながら数秒間その場に蹲る。
「ユニちゃん! 大丈夫⁉︎」
「へ、平気よ……なるほど、出現させる位置をミスるとこうなるのね……勉強になったわ……」
その隙を狙い、ユニに向かってスライヌが突進してくる。しかし、その突進は『見えない壁』に阻まれユニに届くことはない。
\ ぬらっ⁉︎ /
その見えない壁こそシールドビットの機能。シールドビットは小型のバリア発生させ、敵の攻撃を防ぐことができる。
「今度は……『ライフルモード』よ!」
ユニがそう言って音声入力をすると、盾状のシールドビットが銃の形に変形していく。
「さぁ、行きなさい」
そのままビットがスライヌの周りに飛んでいき、ビームを発射する。
シールドビットは攻めよりも守りのための武装。それゆえにネプギアのビットほど高出力のビームを放つことはできない。しかしそれでもスライヌを倒し切るには充分な威力であった。
\ ぬらぁ……っ!/
……と思いきや、倒れることなく健在するスライヌ。
「っ! ……こいつ、『外道スライヌ』ね」
『外道スライヌ』とは、スライヌと見た目は似ているが、普通のスライヌと比べものにならない強さを持つ特殊な種である。
しかし、それでも女神であるユニの敵ではないことに変わりはない。
\ ぬ……らぁっ! /
だが、外道スライヌは強さだけでなく知能も高い。ユニを自分が勝てない相手と悟り、逃走という手段を取った。ダンジョンの障害物を盾にするように上手く逃げて行く。
「逃がさないわよ! シールドビット、『リフレクターモード』!」
今度はライフル状のシールドビットがまた盾状に戻る。
「さて、と」
ユニはライフルを構える。狙いは外道スライヌではなく、シールドビット。
そう、『リフレクターモード』とはその名の通り、ユニの放つ射撃を反射することができる機能。つまり、この機能を使うことで障害物越しの狙撃が可能となる。
「狙い撃つわ!」
ライフルから放たれたビーム砲がビットに当たって反射し、障害物の先へビームが飛んでいく。
\ ぬらぁ…… /
すると、少し遠くから外道スライヌの断末魔と、それに続いて消滅する音が聞こえてきた。
「あたしからは逃げられないわよ」
ユニは結局その場から一歩も動くことなく、外道スライヌを撃破したのだった。
「いけるわね、この新装備」
「ユニちゃんすごい!」
「ふふっ、すごいのはあたしとあんたで作ったこのビットよ。それに悪いわね、あたし一人でやっちゃって」
「いいよ、元々ユニちゃんのためのクエストだし。それよりも、もっとそのビットで戦うところみたいなぁ」
「じゃあ、この調子でどんどん行くわよ!」
こうして新武装『シールドビット』が完成し、新たな戦闘スタイルを身につけたユニ。また一つ成長し、理想の女神としての強さを手にすることができた…………
……………はずだった。
ビットが完成してから数ヶ月後。
「あら、新しいシューティングゲームが入荷されてるじゃない。早速店内スコアを総ナメしてやるわ!」
一人で散歩している時になんとなく寄ったゲームセンターでシューティングゲームに興ずるユニ。
ユニの通っているゲームセンターのシューティングゲームのハイスコアはほぼ全て彼女のもので埋め尽くされている。最新機種のそのゲームのハイスコアも同じようにユニのスコアで埋め尽くされることになるだろう。
「あれ……?」
しかし、プレイし終えたユニの表情は良くなかった。ユニのスコアは決して低くはなく、普通のプレイヤーよりも高いスコアを出せている。しかし、ユニは自分の実力を発揮できていないと感じていた。
(……まさか)
ユニはここ数ヶ月の自分の戦闘を思い返す。雑魚モンスターはシールドビットのライフルモードを使いオートで蹴散らし、少し強力なモンスターにはリフレクターモードを使い障害物越しのアウトレンジから一方的に撃ち倒す、そんな戦い方ばかりしていた。
(あたし、ビットの使いすぎで射撃の腕がかなり落ちてる……⁉︎)
そう、ユニはここ最近自分で狙って弾を撃っていない。そんな戦い方を数ヶ月も繰り返していたせいで、射撃の腕がかなり落ちてしまっていた。
「はぁ……射撃の腕が戻るまで、しばらくビットは封印ね……」
そんな独り言を呟き、項垂れながらゲームセンターを後にするユニ。
親友であるネプギアと共に開発したシールドビットはかなり高性能な武装だったが、その高性能さがかえって仇となってしまった。
(武装が強すぎるのも考えものってことなのね……)
それから必死に鍛錬を積み、ビットの便利さの誘惑を跳ね除け、しっかりと射撃の腕を戻したユニであった。
サバーニャのN特射に盾が出ません。助けてください。