最新作のネタバレが含まれているので、未プレイの人は閲覧注意。
「できたよジャガちゃん! ピピちゃんの服が弾け飛ぶボタン!」
「……は?」
そんなことを言いながら、リディオは屈託のない笑顔で、小さなスイッチをジャーガに手渡した。
「操作は簡単、真ん中のボタンを押すとピピちゃんの服が全部弾け飛ぶんだ〜」
「いや、なんだそれ? ていうかなんでそんなものを作ったんだい?」
「弾け飛んだ衣服は時間が経つと、再びピピちゃんに着せられるように再生するから安心設計になってるよ〜」
困惑するジャーガを気にすることなく、説明を続けるリディオ。
「ちょ、そういうことが聞きたいんじゃ……」
「くれ悪だからね〜」
ジャーガの訴えを聞くことなく、リディオはウキウキとした足取りで立ち去って行った。
そして、ジャーガのデスクの上には『ピピの衣服が弾け飛ぶボタン』が残った。
「S・W・I、捨てる・わけにも・いかないよね……」
元CEOであるネプテューヌが去ってから、ピピは以前よりもリーダーシップを発揮するようになった。ビクトリィー社のビッグタイトル【ムシカイザーシリーズ】の売り上げに負けず劣らずの企画をパンパンと打ち出し、増えてきた社員たちをまとめ上げ、会社の業績を上げていく。
そんなピピは、CEOの座をあえて空けているビクトリィー社にとって、実質最高責任者ともいえる。ピピ本人は、ジャーガとリディオと三人合わせて代表だと言っているが、ジャーガもリディオも、ピピがリーダーであることは認めている。
本人に言うと調子に乗るから直接は言わないではいるが。
「……ネプテューヌにも見せてあげたいね。ピピが頑張ってるところを」
ピピは今、ビクトリィー社のオフィスの応接間でゲーム雑誌からの取材に応えている。
人前に立つことに緊張していたピピはもういない。今やビクトリィー社の実質的な代表としてあらゆるメディアへ露出している。そんなピピに──
「──今、このボタン使ったらどうなるんだろうか?」
一瞬、そんな邪悪な考えが、ジャーガの頭を過った。
「まぁ、そんなことするわけないけどね」ポチッ「……え?」
すると、ジャーガの添えた手が、机の上に置いてあったボタンに触れてしまった。
「やばっ……!」
すると数秒後。
「ひぎゃぁぁああああああッ⁉︎」
応接間から、ピピの悲鳴が会社中に響き渡った。
*
「できたよピピちゃん、ジャガちゃんの衣服が弾け飛ぶボタン!」
「……は?」
「くれ悪だよ〜」
そんなことを言いながら、リディオは屈託のない笑顔で、小さなスイッチをピピに手渡した。
「……こ、この前のアレそのボタンのせいかーッ! なんてもん作ってんのよ! この間マジで大変だったんだからね! 取材の写真を撮った瞬間に服が弾け飛ぶし! しかも、弾け飛んだ衣服で大事なとこは隠れてるからって、その写真普通に使われたし!」
結局、服がバラバラに弾け飛びながら笑顔でピースしてるピピの写真付きの雑誌が発売されたが、ゴールドサァドたちが取り締まり事なきを得たのだった。
「大変だったね〜」
「大変だったね〜、じゃ! ないのよ!」
「でも、あたしはボタン作っただけで、押したのはジャガちゃんだよ〜?」
「はぁ⁉︎ なんでジャーガが⁉︎」
「あたしもくれ悪って言ったんだけどね〜」
「悪用しかできないもん作っといて何言ってんのよ! まぁいいわ! ジャーガにもあたしの屈辱を思い知らせてやるんだから!」
ピピは、リディオから貰ったボタンの真ん中のスイッチを連打する。
「ひっひっひ! 屈辱を思い知るといいわ!」
「うわぁ邪悪な笑顔〜」
その頃、ジャーガは今日ケーシャのとこに商談に行っていた。
「……あ」
それを思い出し、ピピは顔を真っ青にする。
ケーシャの前でジャーガが脱ぐ、それはまるで、飢えた獣の前に餌となる草食動物を放り出すような行為である。
「ど、どうしようリディオ……!」
「あたし、知らないよ〜? くれ悪って言ったし〜」
「ケーシャ、今日はありがとう。君が協力してくれるなら、次回作のゲームも上手くいきそうだ」
「こちらこそありがとうございました。あのジャーガさん。もう少しだけ、帰らないでいてくれませんか……? もう少しだけあなたと一緒にいたいんです……」
「ケーシャ……しょうがないな。この後の予定は無いし、少しぐらいなら君に付き合……」ビリビリビリパァーンッ!
「……!」
「……っ⁉︎」
「ジャーガさん……! そんな情熱的に……! わたしもう我慢できませんっ!」
「ちょ、やめ……アーーーーッ!」
*
翌日。
「ジャーガ、ごめんね。ジャーガがあんなことわざとやるわけないのに、自分がやられたからって、熱くなって……」
「ピピ……でも、ボクは君を責めたりはしない。先に君の衣服を弾け飛ばしたのはボクなんだから……」
ピピとジャーガは、無事和解していた。
そんな二人の様子をニコニコと眺めるリディオ。元凶であるとは思えない屈託のない笑顔であった。
「……ていうかさ、わたしたちがこんな目に遭ってるのに、全ての元凶が涼しい顔してるのって、納得いかなくない?」
「その通りだよ。F・K・H、不公平だ!」
そして、ピピとジャーガの視線が、リディオの方に向く。
「……え?」
「ボクたちにリディオの服を弾け飛ばせるボタンを作れる技術力はないから、もう物理的に剥いちゃうのはどうだろう?」
「いいわね、それ。あの無駄にでかい胸とケツを晒してあげようじゃない」
「ちょっと、待って二人とも〜! どうしてそんな流れになるのさ〜!」
逃げ場が無くなるように囲い込みながら、じりじりとリディオに近づいていく二人。
「や、やめて二人とも〜!」
「覚悟しなさいリディオー!」
「Do the math!」
「ごめんなさ〜い!」
その日、リディオは罰としてほぼ裸で仕事をさせられていたのだった。