ネプ短編まとめ   作:烊々

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酔いどれ黒女神 ( ノワール ユニ )

 

 

 真面目な女神ほど酒に弱い、というジンクスがある。

 実際はジンクスというほど大それたものではなく、女神の身体の性質に由来する。

 女神は人体と酷似した身体を持つが、その性質は全く異なる。シェアエネルギーが巡っているからだ。それ故に、華奢な少女のような見た目からでは考えられないような常人を卓越した戦闘力を持つのである。

 シェアエネルギーによる身体強化は膂力だけではない。身体の防御力、その中に毒物への耐性なども含まれる。

 つまるところ、酒類に含まれるアルコールによる身体への悪影響を、シェアエネルギーで軽減することができるのだ。女神は祭事などでお酒を嗜むことがあり、その際に悪酔いしない為にシェアエネルギーを使用する女神は多い。

 しかし、信仰(シェア)は国民からの贈り物であり、そういった個人的な使用は憚られる、と考える女神もいるわけで、シェアエネルギーで軽減せずに多量のお酒を摂取してしまったら当然人間と同じように酔ってしまうのだ。

 

「うふふ〜あははは〜っ」

 

 ひどく上機嫌に軽い足取りで教会の居住スペースへと向かう女神が一人。

 ラステイションの元守護女神、ノワールだ。

 

「たっだいまぁ〜っ!」

 

 居住スペースに帰ってきたノワールは、楽しそうに声を張り上げた。

 

「……」

 

 居住スペースの奥の自室にまで届いたその声に、妹のユニは頭を抱える。

 

「お姉ちゃん……めっちゃ酔っ払ってる……」

 

 そう、ゲイムギョウ界の真面目女神筆頭であるノワールは、とても酒に弱い。理由は前述したとおり、修練以外でのシェアの私的利用を殆どしないからだ。

 そして、ユニが頭を抱える理由は至極単純。

 めんどくさいのだ。

 酔っ払ったノワールは本当にめんどくさいのだ。

 

「どうしよう……」

 

 時刻は既に深夜0時を回っており、白面の時のノワールならユニに「もう寝なさい」と言う時間だ。

 それを逆手に取り、このままノワールが酔い疲れて寝るまで相手をせずにやり過ごしたい、ユニはそう思ってすらいた。

 

「ユニぃ〜!」

 

 ……が、無理。

 そんな淡い希望を砕くかのように、姉は妹の名を叫び呼ぶ。

 

「ユニぃ〜! ユニユニユニ〜! 私の可愛いユニはどこぉ〜⁉︎」

 

 酔っ払いは厄介なもので、一度だけではなく連呼するのだ。

 ここまで呼ばれたら無視するのも目覚めが悪いと思い、ユニは内心でため息を吐き、呼び掛けに応え、自室から出てノワールを出迎える。

 

「お姉ちゃん、飲み過ぎよ」

「ユ〜ニ〜っ!」

 

 名前を呼ぶや否や、ノワールはユニを思い切り抱き締める。

 

「お、お姉ちゃん……!」

 

 酔っ払っているとはいえ、愛する姉からの抱擁にユニの表情が緩み、その体温を感じようと更に身を寄せた時だった。

 

「……お酒臭ッッッ‼︎」

 

 姉への愛を上回る程の酒臭に、ユニが叫んだ。

 

「くっさ! 酒くっさ! いやほんともう、どんだけ飲んだのよ!」

「なぁにぃよぉ〜、お姉ちゃんに向かって臭い、なんてぇ〜、偉くなったわねこのこの〜」

「酒臭い上に酔っててウザいっ! 誰よこんなに飲ませたの⁉︎ どーせ他の三人だろうけどっ!」

「そうなの〜! みんなで集まってね〜! 楽しかったんだぁ〜!」

 

 守護女神という責務から解き放たれた三女神は、プライベートでの飲酒を解禁し、偶に集まって飲み会を開くようになった。守護女神を引退していないにも関わらずプライベートで飲酒を常に解禁しているある女神も一緒に。

 そして、ノワールは酔っ払うとツンデレからツンが抜けてただの可愛い女になるので、他の三女神が酔ってたかって酒を飲ませる。

 喋れなくなるか歩けなくなるぐらい飲ませるのはやめてほしいと以前ユニが苦情を言ったぐらいだ。

 

「とりあえずお風呂……はこんなに酔っ払ってたら無理か。明日朝イチでシャワー浴びなね」

「ゆ〜に〜」

「はいはい、アタシはここにいるわよ」

「大きくなったわね〜」

「女神なんだから産まれてからずっとこの大きさよ」

 

 妹の顔を見た安心感からか、ノワールは自分だけで歩くことをやめ、思い切りユニに寄りかかりながらよたよた歩く。

 ユニは呆れ顔ながらも、しっかりとノワールを支える。

 

「ゆ〜に〜」

「なによ」

「大好き」

「え……」

 

 いつもなら言われない、そして酔っていてもレアな愛情表現の言葉に驚いたユニがノワールの方に向くが、既にノワールはすぅすぅと寝息を立てていた。

 

「んぐ……っ」

 

 途端に自分より身体が大きい姉の全体重がかけられ、押し潰されないように堪えながらノワールを寝室まで運ぶユニ。

 シェアで身体を強化すれば簡単に運ぶことができるが、そうする気持ちにはならなかった。

 

「……えへっ」

 

 たとえ酔っていたから出たものだとしても、ユニは大好きなお姉ちゃんからの言葉に頬を緩ませる。

 

「よい……しょっ」

 

 ユニはノワールをベッドまで運び、優しく寝かせる。

 

「あーもう疲れた。今度お詫びにご飯でもご馳走してよね。じゃあおやすみ、お姉ちゃん」

 

 そう言って自分の部屋に戻ろうとするユニだったが……

 

「……」

 

 部屋に戻らず、そのままノワールの隣で横になり、自分とノワールの身体に毛布をかける。

 

「おやすみ、お姉ちゃん」

 

 まだ酒臭の残るノワールに身を寄せ、ユニは目を閉じて眠りについた。

 

 

 

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