「わたしの勝ちだよ!」
「負けた……」
ルウィー教会にて、ネプテューヌとブランは早押しクイズゲームで対決していた。
そして、意外にも勝者はネプテューヌであった。
クイズの難易度が低く、知識勝負というよりは早押しの瞬発力勝負となったためである。
「あ、もうこんな時間。そろそろ帰るねブラン! ばいばーい!」
「ええ……さよなら」
変身して窓から飛んで帰っていくネプテューヌを眺めながら、ブランはふと思った。
(納得がいかない……)
どうやらブランは、ネプテューヌにクイズ対決で負けたのがよほど堪えているようだった。
(クイズっていうのは知識で競うものでしょ? ……そもそも『早押し』って何? どうして知識の競い合いに早さが要求されるの?)
悔しさから次々と不満が出てくる。
(あんな知性も理性もないような女神に負けるなんて……!)
最早不満を超えて悪口となっていた。
「……あ、良いことを思いついたわ」
*
「……というわけで、クイズ勝負のリベンジよネプテューヌ」
「良いけど、ブランがわざわざこっちまで来るの珍しいね。そんなに悔しかったの?」
「黙れ」
「はい、ごめんなさい」
ブランは鞄からゲーム機と解答ボタン型のコントローラーを取り出す。
「おお! 本格的!」
「さて、ルールは説明するよりやってみたほうが早いわね」
ゲーム機のセッティングを済ませ、ゲームを起動する二人。
ゲームが起動され、チュートリアルモードに入る。
「最初は簡単な問題でチュートリアルよ」
「おっけー!」
チュートリアル用の簡単な問題が画面に映し出される。
『問題、プラネテューヌの女神こ……』
問題の途中で、ネプテューヌが解答ボタンを押す。
少し遅れてブランが解答ボタンを強打する。
「よし! わたしの方が早かったよ!」
「いいえ、ゲームの画面をよく見てみなさい」
ゲーム画面は、解答権を持っているプレイヤーをブランと表示していた。
「えっ⁉︎ どうして⁉︎」
「プレイヤー名の下にある数値を見てみなさい」
そう言ってブランが指で刺したプレイヤー名の下には、ネプテューヌは『2』、ブランは『4』という数値が表示されていた。
「これは……?」
「これには私たちが解答ボタンを押した時の力の強さを十段階に分けた数値が表示されるのよ」
「わたしが『2』で……」
「私が『4』。数値が高い方が解答権を得る。ボタンを押す早さにはなんの意味もないわ」
「ボタンを押した時の力の強さ……ボタンを押す早さには意味がない……」
ブランの言った言葉を口に出して反芻するネプテューヌ。
「これが早押しクイズに変わる新たなクイズ。『力押しクイズ』よ!」
ネプテューヌは目を丸くした。
しかし、すぐにその目を輝かせ。
「へー! いいね、面白そう!」
斬新なルールを受け入れた。
「意外ね。私有利のルールだから、卑怯だと言われる覚悟はできていたけど……」
「全然? ブラン面白いこと考えるなー、って」
「……そう」
「それに、ブランが有利だと決まったわけじゃないんだなーこれが!」
「何ですって?」
「さ、チュートリアルが終わって、対戦モードに入るようだよ」
「そうね。あなたの発言の真意は対戦で確かめるとするわ……」
そして、対戦モードがスタートし、問題文が流れ始める。
早さを競うゲームではないので、ゆっくりと問題文を読み、解答を考える二人。
「……らぁっ!」
そして、ボタンを力一杯押すブラン。
その数値は『5』と表示された。
「……ん? 割と力を入れて押したつもりだったんだけど、意外と限界値は高いようね」
ブランの言う通り、最大値の『10』を出すには女神であっても困難であるようだ。
「すぅ〜〜……とりゃあっ!」
続いてネプテューヌがボタンを押した。
その数値は……
(ネプテューヌのSTRは私より劣る。いくら力を入れたとしても、私より高い数値は出せないわ……!)
……『6』であった。
「……えっ⁉︎」
「よし! これで解答権はわたし!」
そして、解答を難なく当て、ポイントを得る。
「わかった……『頑張れファイトファイト』ね……!」
「ご名答!」
ネプテューヌが行ったのは、SPスキル『頑張れファイトファイト』で自身のSTRを高めること。
これにより、素のSTRで劣るネプテューヌでも、一時的にブランのSTRを超えることができる。
「やるじゃない。けど、私にも自身のSTRを上げるSPスキルがあるのよ?」
「そう何度も通じないってことは分かってるよ。けど、今回のポイントはいただくね!」
「……勝負はこれからよ」
「望むところだよー!」
続く問題、お互いがスキルを使ったり、変身をしたり、果てには解答ボタンに武器を振り下ろして高い数値を狙ったりなど、戦いは熾烈を極めた。
*
こうして、ブラン有利と思われた『力押しクイズ』は互角に進んでいった。
気づけばもう最終問題。お互いのポイントは同じ。これで決着となる。
「やるじゃねえかネプテューヌ……!」
「あなたもね、ブラン!」
「実は少し思ったんだ。たかがゲームでこんなに熱くなっちまったな、って。けど、違ったぜ。ゲームだからこそこんなに熱くなれるってな!」
「私も、同じことを思っていたわ。変身までして全力で真剣に遊ぶからこそ、楽しいのよね!」
二人の間には、謎の友情が芽生えていた。
「けど、勝利までやるつもりはねえ! この問題でトドメを刺してやる!」
「いいえ! 勝つのは私よ‼︎」
そして最終問題が流れ始めた。
「はぁぁぁぁっ! 『ネプテューンブレイク』ッ!」
パープルハートは、自らのエグゼドライブを解答ボタンに叩きつける。
その様子を見るホワイトハートは、焦ることなく小さな笑みを浮かべた。
(……終わりだな)
すると、解答ボタンが砕け散ってしまった。
「……なっ⁉︎」
「やっちまったなネプテューヌ。いいや、私の作戦通りだ」
「作戦……?」
「私たちの戦いが盛り上がり、解答ボタンにスキルまでぶつけるようになることを実は想定していたんだよ。だから、この解答ボタン型コントローラーは私たちのスキルになら耐えられるが、エグゼドライブには耐えられないような耐久性で作ったんだよ」
「何……ですって……」
「これでお前は解答ボタンを失い、解答権も失った」
そう言ってホワイトハートは変身を解き。
「こうなれば、私はもう力を込める必要もないわ……」
指先で軽く、解答ボタンを叩く。
数値は『1』と低かったが、解答ボタンが破壊されたネプテューヌはどうすることもできない。
「私の……勝ちよ……!」
そしてクイズに正解し、最後のポイントを得た。
勝者は、ブランとなった。
*
数日後。
「お姉ちゃん、どうして最近筋トレしてるの?」
「ブランとのクイズ勝負に勝つために鍛えてるんだよ!」
「はい????????」
プラネテューヌ教会では、ブランへのリベンジを心に誓い体を鍛えるネプテューヌと、そんな姉に困惑して固まるネプギアの姿が見られるようなったとか。