「ほげほげーーーーっ!」
「あぁっ! お姉ちゃんが女神があげちゃいけないような悲鳴をあげてる!」
ある日、ラステイション国土内のダンジョンにて、ラステイション女神姉妹はモンスター退治に勤しんでいた。
敵を追い詰めたはいいものの、最後に残ったモンスターが自爆特攻を仕掛けてきたことによりノワールが大ダメージを食らってしまったところから話は始まる。
「痛た……まさかこの私と差し違える気で来るなんて……モンスターながら天晴れな心意気ね……」
「お姉ちゃん大丈夫?」
「平気よ。心配してくれてありがとうユニ」
「う、うん」
(……あれ?)
ユニはノワールに対して少し違和感を覚える。
「さて、モンスター退治も終わったし、帰って書類仕事の続きね。ユニも手伝ってちょうだい。頼りにしてるわ。あなたがいれば百人力よ」
「……わかった」
(うーん……なんだろう? お姉ちゃんなんだけどちょっとお姉ちゃんらしくない感じ……)
どうしてもその違和感を放っておけなかったユニは、教会に戻ってから教祖のケイに頼んでこっそりとノワールのステータスを確認してもらうことにした。
「……ふむ。ノワールのステータスを確認した結果、今ノワールはある状態異常に罹っていることがわかった。おそらく、君たちが戦ったモンスターの自爆攻撃の衝撃でなってしまったんだろう」
「状態異常⁉︎ 大変じゃない! どんな状態異常なの⁉︎」
「ノワールの状態異常、それは『ツン封じ』だ」
「『ツン封じ』……?」
「その名の通り、『ツンデレ』の『ツン』が機能しなくなるものだ。日常生活に支障はないが、君や僕にとっては厄介かもしれないな……」
「厄介? どうして?」
「一緒にいればわかるさ。僕はツンの無くなったノワールの相手をするのは面倒臭いから今日は退勤させてもらうよ」
そう言ってケイは目にも止まらぬ速さで荷物を纏めて退勤していった。
(ツンデレのツンがないお姉ちゃんか……なんかちょっと面白そう!)
最初はそう思っていたユニであったが、
「ふふ、今日もかわいいわね。ユニ」
「流石ユニ。私の自慢の妹ね」
「ありがとうユニ。愛してるわ」
といった風に、純度100%の愛情をぶつけられ続けた結果、
(もう無理、限界。ツンデレのツンが無くなったお姉ちゃんの破壊力やばすぎ。死ぬ)
嬉しさと恥ずかしさが混ざり合い、メンタルが持たず情緒不安定になってきていた。
すると、
「やっほー! ノワール! 遊びにきたよー!」
我らが主人公、プラネテューヌの女神ネプテューヌが舞い降りた。
「あら、ネプテューヌ! 来てくれて嬉しいわ。今お茶とお菓子を出すから待っててね」
「……ねえユニちゃんこのノワールに似てる人誰?」
「それはかくかくしかじかというわけで」
「まるまるうまうまってことね。そっかー。わたしてっきり偽物のノワール、略してニセモノワールに国を乗っ取られたのかと思っちゃったよ。メガミラクルフォースのメインストーリーみたいな感じで」
「ネプテューヌさん、メガミラはもう……」
「あっ…………じゃなくて、ごめんユニちゃん。わたしツンの無い今のノワールに耐えられる自信ないからもう帰るね」
「はい」
ネプテューヌが帰ろうとしたところ、丁度ノワールがお茶菓子を持ってきた。
「あ、ノワール。わたし用事を思い出したから帰るね」
「……えっ、もう帰っちゃうの? 寂しいじゃない……もっとここにいなさいよ……」
「ぐはっ……だ、ダメだ。ツンのないノワールは威力が高すぎる……! こんなのただの美少女だよ……! 撤退ーーッ!」
ネプテューヌは変身し、よろよろと飛びながら帰っていった。
「はぁ……せっかく来たんだからもうちょっとゆっくりしていけばよかったのに……」
「まぁ……ネプテューヌさんにも色々あるんだよ」
「そうね。まぁ私にはユニがいるから寂しくないわ!」
そう言ってノワールはいきなりユニを思い切り抱きしめた。
「わわっ、お姉ちゃん!」
「そうだわ。仕事もひと段落したし、一緒にお風呂入らない?」
「まぁ……良いけど……」
ユニとしては今のノワールと接する時間を減らしたかったが、ノワールからの頼みを無碍にするほどの非情さを持つことはできなかった。
(……あー、もういいや。あたしもこの際素直にお姉ちゃんに甘えちゃおう)
そして、ユニの中で決定的な何が砕け散った。
こうして、ユニはツン封じ状態のノワールと数時間過ごした結果、
「そろそろ寝よっか、ユニ」
「んー……まだお姉ちゃんと一緒にいたい」
「なら一緒に寝ましょう? そうすれば一緒よ」
「うん!」
すっかり甘えん坊モードになってしまっていた。
「……ごめんね、ユニ」
電気を消し、ベッドの中で身を寄せ合っていると、急にノワールがそんなことを言い出す。
「いきなりどうしたの?」
「実はなんとなくわかってたのよ、今の私はいつもの私と違うって。わかってたけど、こんな時じゃないとユニを素直に可愛がれないからって……それでも結局ユニに無理をさせちゃったわ。いつもあなたに気を遣わせるばかりの姉でごめんなさい」
「……無理なんてしてないわよ。それと、こっちこそごめん。いつも素直になれなくて。本当はお姉ちゃんのこと大好きよ」
「ありがと、ユニ。私も大好きよ。おやすみなさい」
こうして、ラステイションの女神姉妹は眠りに落ちていった。
状態異常『ツン封じ』の効果は翌朝にはもう消えて無くなり、彼女たちはいつものツンデレ姉妹に戻った。
しかし、それでもお互いを想い合う幸せな姉妹であることには変わりはないのだった。
*
「……ってことがあってさ。ノワールがやばかったんだよ」
「そうなんだ。私も見てみたかったな……なんて」
(……状態異常『ツン封じ』にユニちゃんがなれば、ツンツンしてない可愛いユニちゃんが見れるってことだよね? いや、ツンツンしてるユニちゃんも可愛いけど……ってダメだよ私! ユニちゃんを状態異常にしちゃおうなんて! ……でも、クエストの途中に偶然たまたま状態異常になっちゃったとしたら………………よし、今度ユニちゃんをクエストに誘おう!)
してはいけない決意がされた瞬間であった。