1/8 ネプテューヌワンドロ お題『ベール』で投稿させてもらったものです。
「やぁああっ! 『ミラージュダン……」
「踏み込みが甘いですわね」
ネプギアが繰り出そうとした技は、発生する直前にベールの槍を剣先に押し込まれ、不発となる。
「くぅ……っ!」
「終わりですか? ならこちらから」
槍で押されて怯んだネプギアに、ベールは容赦なく槍の連続突きを差し込む。
「……っ」
ネプギアはなんとかベールの猛攻を捌くも、反撃の糸口を掴めずにいた。
(ベールさん……やっぱり強い……っ!)
ネプギアとベール。何故この二人が戦っているかは、数時間前に遡る。
*
「わたくしに……稽古ですか?」
「はい」
ベールを尋ねてリーンボックスに来たネプギア。
「お姉ちゃんとかユニちゃんと稽古することが多いんですけど、お姉ちゃんには元から勝てないとはいえ、ユニちゃんにも連敗してて……」
ネプギアは、調子が悪いから負けて更に調子が悪くなる、という負の連鎖に陥っていた。
「自分一人で悩んでいても仕方ないからって、誰かに話を聞いてもらおうと思って、良い機会だからベールさんに色々教わろうと思って来ちゃいました」
ネプギアが遠慮せずにベールに頼み込むことなどとても珍しいことであったが、それだけここ最近の連敗が響いているのだろう。
「それにその……聞いても笑わないでくださいよ?」
「ネプギアちゃんを笑うことなんてしませんわ」
「秘密の特訓をして、お姉ちゃんとユニちゃんを驚かせたいな、って」
ネプギアは恥じらいで少し顔を赤くしながら言う。
ベールは、ネプギアのあまりにもの可愛さに頬が緩みそうになるが、笑わないという約束を守るためになんとか耐える。
「ダメ……ですか?」
「全然構いませんわ。むしろ嬉しいです。それに、素直にわたくしを頼りに来るなんて……ついにわたくしの妹になる気になったんですわね……!」
「えっ、いや、それは……」
また始まったいつもベールがしてくる要求にたじろぐネプギア。
(でも……私はベールさんにお願いに来たんだよね。ベールさんもお仕事とかで忙しいはずなのに、私のために時間を割いてくれる。だから、私のして欲しいことだけをしてもらうなんて不公平だよね)
しかし、今日だけは断り切ることが出来なかった。
「わかりました」
「はぁ、やっぱり今日も振られてしまいまし…………え? 今なんと?」
「今日だけは、私はベールさんの妹になります! だから、私のことを鍛えてください! ベールさん! いや、ベールお姉ちゃん‼︎」
ネプギアは、ベールの誠意にネプギアなりの誠意で応えることにしたのだ。
「あっ……ああっ……あああああああああああ」
ベールはネプギアの答えを聞くと、ワナワナと震え出す。
ネプギアが自分を頼りにきたこと。妹になって欲しいという要求を承諾してくれたこと。
そして、今だけとはいえ自分を『お姉ちゃん』と呼んでくれたこと。
取り繕っていたベールの理性は、もう限界だった。
「ネプギアちゃん! ネプギアちゃんっ! ネプギアちゃぁんっ! 大大大大大大好きですわぁっ‼︎」
ベールは絶叫し、目にも留まらぬほどのスピードでネプギアを思い切り抱きしめた。
*
……というわけで、ベールはネプギアと戦闘訓練をしていたのである。
「どうなさいました? 今度こそ終わりですか?」
「まだですっ!」
必死で剣を振るネプギアと涼しい顔で槍を振り回すベール。
まるで先程の醜態が嘘のように、ベールはネプギアの行動を冷酷に無に返していく。
「てやあっ!」
「……おっと」
ネプギアがなんとかベールの槍を弾いて押し返し、一旦距離を取る。
そして、振るった剣から衝撃波を放つ技『スラッシュウェーブ』をベールに繰り出す。
「見えていますわ」
しかし、ベールはネプギアの剣を振る方向やシェアエネルギーの流れからスラッシュウェーブの軌道を予測し、最小限の動きで回避する。
回避の勢いでネプギアに接近し、剣を思い切り振った直後で体制を崩して隙を晒したネプギアの頭の上にに槍を差し出した。
「はい。わたくしの勝ち、ですわ」
そして、コツンとネプギアの頭を軽くつついた。ちなみに、両者が使用していた槍と剣は訓練用のゴム製のものであるため、勢いがなければ身体に当たっても全くダメージはない。
「……参りました」
「さてと、ネプギアちゃんの戦い方の良いところも悪いところも今の戦闘で良くわかりました。休憩とお茶会を兼ねながら、ゆっくりとお話ししますわね」
「はい。お願いします」
ネプギアは敗北の悔しさが全くないとは言えない様子ではあったが、それ以上にベールの強さを思い知り、今の自分では勝てないことを理解し、敗北を受け入れる。
「そんなに気を張らないでくださいな。今のわたくしたちは姉妹! なのですから」
「そ、そうですね。あはは……」
同時に、ベールからどんなことを教えてもらえるか、そして教えてもらったことを活かせばどれほど成長できるかが楽しみだった。
限られた時間で戦闘シーンなんてやるもんじゃないですね。マジで。