3/5 ネプテューヌワンドロお題『ラム』にて投稿させてもらったものです。
「つまんないなー」
HPが底をつき、青いポリゴンになって消えていくモンスターを眺めながら、ラムは退屈そうに呟く。
「みーんな弱すぎて、これじゃ意味ないじゃない」
自分一人の実力を試すためと、ロムを置いて一人でクエストに出かけていたラムだったが、どうやら向かった先のダンジョンでは、実力を試せるほど強いモンスターが存在しなかったようだ。
というのも、ラムがそう思い込んでいるだけで、今しがたラムが撃破したモンスターたちは一般人のハンターらにとっては脅威となるほどの強さをしているのだが、女神候補生のラムにとっては取るに足らない相手だったのだ。
「もう帰っちゃおうかなぁ」
言いながら、ルウィー教会の棚からくすねてきたお菓子を懐から取り出し、封を開けて頬張る。
「へもほんふぁにふぁふぁふふぁへふふぉふぇっふぁふふぃふぁふぃふぃふぁふぁふふぁっふぁふふぁー……」
口いっぱいにお菓子を詰めながら独り言を続けるラム。
普段なら行儀が悪いからと姉のブランからお叱りを受けそうな行為であるが、今ここにラムを咎める者はいない。
「グルルル……!」
すると、後方からモンスターの呻き声が聞こえた。
「……ん?」
ラムが振り返ると、そこには大型の獣タイプのモンスター『フェンリル』が今にも襲い掛かって来そうな気迫でラムを睨みつけていた。
「なーんだ。ちゃんと強そうなのいるじゃない」
ちょうどお菓子を食べ終わり、杖を回しながら構え、ニヤリと笑うラム。
「ガァオォォッ!」
目があったことを戦闘開始と判断したのか、フェンリルは咆哮を上げながらラムに飛びかかる。
フェンリルの巨大な腕がラムに振り下ろされ、爪が大地を抉る。
「おっそーい」
しかし、その場所に既にラムはいなかった。ラムは攻撃を避けつつ、フェンリルの側面に回り込んでおり、杖に貯めた魔力を解き放つ。
「『アイスコフィン』!」
氷魔法『アイスコフィン』の氷塊をフェンリルにぶつけ、数メートル吹き飛ばす。
しかし、大したダメージではなかったようで、すぐに起き上がり体勢を立て直したフェンリルは、口からビーム砲を吐き出した。
「嘘っ⁉︎」
咄嗟に魔法で防壁を作るも、展開が間に合い切らず、今度はラムが吹き飛ばされてしまった。
「いったいわね……! なにすんのよ!」
かつてのラムだったら、ダメージを受けてしまうと痛みによる恐怖に戦意を奪われていたかもしれない。しかし、今のラムが感じているのは"恐怖"ではなく自分を痛がらせた相手への"怒り"。
怒りによって恐怖は上書きされ、ラムの戦意は奪われるどころか沸々と湧き続けていた。
(……そういえばお姉ちゃんが言ってた気がする。最近はモンスターも強くなってきてて、思いもよらない攻撃をしてくるとかなんとか)
しかし、冷静さも失ってはなく、敵への認識をアップデートさせ、次の攻撃に備える。
ルウィーの女神の中では末っ子のラムであるが、意外と一人の時はしっかりするタイプであった。
(……あ、魔力反応!)
フェンリルが動くよりも前に、ラムはフェンリルの身体の中から魔力を感知した。
そして次の瞬間、フェンリルの目の前につららが出現し、ラムに向かって射出される。
「……おっと」
ラムは一つは避け、もう一つは杖や魔法で叩き落とすなどして、冷静に捌いていく。
「モンスターのくせに魔法まで使ってくるなんて……」
しかし、全てを避け切ることはできず、少しだけダメージが入る。
「……でも、下手っぴな魔法ね」
だが、ダメージを気にもかけず、ラムは再び杖に魔力を込める。
「魔法っていうのはね、こう使うのよ!」
そして、闇魔法『ダークネスフォール』の奔流をフェンリルに解き放った。
また数メートル吹っ飛ばされたフェンリルは、魔法の撃ち合いでは不利と判断したようで、一気にラムに駆け寄って距離を詰める。
上から腕を叩きつける攻撃が先程回避されたことを学習し、今度は地面と水平に腕を振るい辺り一体を薙ぎ払う。
「……当たり前だけど、お姉ちゃんより遅いしお姉ちゃんより力も弱いわね」
……ように見えたが、その攻撃はラムの『アイスハンマー』によって受け止められていた。
「もういいや、飽きちゃった。あんたも弱いし」
そのまま『アイスハンマー』を使い、フェンリルの頭部を回りながら殴打し続ける。
「それそれそれっ!」
そして、よろけたフェンリルに追撃と言わんばかりに、アイスハンマーを思い切り振り下ろした。
「おっしまい!」
技名こそ口に出すことはなかったが、今ラムが用いたその技はブランの『テンツェリントロンペ』であった。
「ゥゥ…………」
フェンリルは力尽き、青いポリゴンとなって消えていった。
ラムは変身することなく、危険種として登録されているほどの強いモンスターであるフェンリルを撃破した。
「……やっぱりダメね。つまんないわ。お姉ちゃんかロムちゃんと特訓する方がよっぽと楽しいもん」
結果、ダンジョン探索に飽きてしまったラムは、退屈そうな足取りでルウィー教会へと帰るのだった。
その背中から感じられる雰囲気は、小さな子供のものではなく、ゲイムギョウ界に君臨する絶対の強者、守護女神そのものであった
可愛い子のカッコいいところ書くのが好きです