ネプ短編まとめ   作:烊々

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 6/10ネプテューヌワンドロお題『ホワイトシスター(ラム)』で投稿させてもらったものです。



『学会メスガキ事件』 ( ホワイトシスターラム )

 

 ルウィーは魔法の国である。

 学問としての魔術も盛んであり、ルウィーの女神ホワイトハートは代々年一で行われる名門ルウィー大学の学会にて魔法を披露するというイベントがある。

 ある……のだが。

 

「やらかした」

 

 女神ホワイトハート、ブランは頭を抱えていた。

 

「遊び過ぎた。学会の発表の準備全然できてない……」

 

 ゲストという扱いのブランは、他の学者や学生と違い大掛かりな研究を披露する必要はない。ちょろっと女神の魔法を披露するだけで良い。

 

「どうしよう……何も考えてないわ」

 

 しかし、ブランはその最低限すら用意していなかった。

 

「ふっ……どうして大事なモノに追われている時に限って、執筆は捗るし、新作のゲームは発売されてしまうのでしょうね」

 

 挙げ句の果てに、どうしようもない状況を笑う始末。

 

「この際女多忙ゆえに用意できませんでした、みたいなこと言おうかしら……けどそんなことしたら女神の威信とルウィー教会の伝統が……」

 

 そんな絶望的な状況のブランの前に。

 

「お姉ちゃーん! 新しい魔法を思いついたのー! 見てみてー!」

 

 救世主が現れた。

 

 

 

 

「お姉ちゃんから任された大事なお仕事、頑張らなくちゃ!」

 

 ブランは、社会勉強という名目でラムに発表を依頼すると、ラムはこれを快諾、学会へと向かう。

 また、公務ということで、女神化していた。

 

「はいはーい! 女神ホワイトハートの……えーと、代理? で来ました! ラムちゃんでーす!」

 

 ルウィーの学者や学生は皆紳士なので、学会の場に似つかわしくないラムのハイテンションを、文句ひとつなく受け入れる。

 そして、学会が始まり、ラムは出番まで待機。他の発表を聞いていた。

 

(なんであんな簡単な魔法のためにあんな複雑な術式が必要なのかしら? あんなのちょちょいのちょいでできるでしょ?)

(あの学者さんの魔法よりロムちゃんの魔法の方が上手いな……)

(あそこの術式間違ってるけど誰も何も言わないなぁ。恥かかせちゃ可哀想だから黙っとこうっと)

 

 そして、ゲストであるラムの出番、女神の魔法披露の番が来た。

 

「とりあえず、まずは……!」

 

 ラムは魔法の氷塊を出し、魔力で削り、『女神ホワイトハート』のオブジェを作った。

 

「お、おぉ……!」

 

 その時点で歓声が湧く。人間にとっては精巧な魔術操作が必要だからだ。

 

「そして……えいっ」

 

 ラムが彫刻に魔力を込めると、なんとホワイトハートのオブジェが動き出した。

 

「……えっ」

 

 そして数十秒ぐらい、その場で軽く手足や斧を動かしたりなどすると、オブジェは溶けてしまう。

 

「う〜ん、やっぱりこの程度が限界かなぁ」

 

 すると、数分前まではラムの可愛さで和んでいた学会のムードが、一気に盛り下がる。

 ラムが『この程度』と言った今の魔法─精巧な氷のオブジェを作りそれを操作する─を使える者は、ラムを除いて誰もこの場にいないからだ。

 この時点で、魔法学者たちの何年間にもおける歩みを、ラムはただの思いつきで踏み越えてしまっていたのだ。

 続いて攻撃魔法。ラムは『アイスコフィン』を披露する。ラムからしたらもっと威力の高い技を披露したかったようたが、予めブランに釘を刺されていた。

 

『ラム、あなたが本気で魔法を使ったら、その場にいる何人かの学者がもう研究をやめかねないわ。だから、披露するのはアイスコフィン程度にしておきなさい』

 

 ブランの忠告を守り、ちゃんとアイスコフィンに留めておいたラム。

 

「あの! 質問が!」

 

 すると、学会の中で手が上がる。

 

「はーい、なんですか?」

「どうやって魔力の威力を底上げしてるんですか?」

「底上げ……?」

「今ほどの威力の魔法を扱うには、魔力を高める術式を仕込むなどして威力の底上げをしていたと思われるのですが……女神様はどう行なっているのですか?」

「え? 特に何もしてないよ」

 

 構内がざわついた。一部の者は唖然とし、一部の者は心が折れていた。人間が研究していた魔法の限界など、女神にとっては取るに足らないものだと知らしめられたのだから。

 そんな学者たちの様子を見て、ラムの悪戯心に火がつく。

 

「……おじさんたちこ〜んな簡単な魔法もできないの〜?」

 挑発的な表情で、言う。

 

「でも大丈夫よ〜! こんな簡単な魔法も使えないよわよわなおじさんたちのことは、み〜んなわたしが守ってあげるから、ね!」

 

 その瞬間、盛り下がっていた会場が、再度湧く。

 心が折れかけていた学者たちは、いつか目の前のメスガキをわからせるため、更なる研究や修行に励もうと心に誓ったのだ。

 この学会を境に、ルウィーの魔法使いのレベルは全体的に一段上がることになる。そしてしばらくの間、この学会で起こったことは学生たちの間で『学会メスガキ事件』と呼ばれることになった。

 そして翌年の学会では、今度はゲストとして招かれたロムが、ラム以上の魔法を見せつけ、鍛えてきた魔法学者たち全員の心を無惨にへし折った。

 

 

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