蛇腹剣良いよね
モンスター退治に勤しむプラネテューヌの守護女神アイリスハートと、諜報員アイエフ。
「これでイかせてあげる……『ファイティングヴァイパー』!」
「援護します、プルルート様! 『天魔流星斬』!」
アイエフの素早い剣技によりモンスターは翻弄され、アイリスハートの蛇腹剣から繰り出される斬撃によって一掃される。
「お見事です。プルルート様」
「あたしとしてはもうちょっと骨のある相手が良かったわね、これじゃ欲求不満だわ。それにしても、アイエフちゃんがあたしをクエストに誘ってくるなんて珍しいじゃない。しかも二人きりでなんて」
アイリスハートはアイエフの腰に手を回し、耳元で囁く。とても際どい光景となっているが、これが彼女なりの普通のスキンシップなのである。多分。
「そ、そうです!二人きりになりたかったんです! それと……その……まだ変身は解かないでくれませんか⁉︎」
「……? 別にいいけど」
アイリスハートは、自分が想定していたような反応がアイエフから返って来なかったことと、いつもは皆に戦いが済んだらすぐに解くように言われる変身をアイエフが解かないように頼んできたことに、驚く様子を見せた。
「えっと、その……私がまだ小さかった頃、マジェコンヌに連れ去られたことがあったじゃないですか」
「……そんなこともあったわね」
かつてマジェコンヌにアイエフが誘拐された際、アイリスハートが怒りのあまりマジェコンヌを執拗に痛めつけたことがアイエフのトラウマとなってしまい、アイリスハートとアイエフの両者にとって苦い思い出となっている事件である。
「そのことなんですけど……」
「……」
アイリスハートは少し身構える。
もしや反抗期になったアイエフに恨み言の一つや二つ吐かれるのではないか、と思ってしまっていた。
ノワールなど他の女神に苦言を呈させるのは慣れているが、幼児の頃から娘のように育ててきたアイエフとコンパやピーシェにそうされるとなると、流石のアイリスハートも狼狽えるものだ。
「あ、ありがとうございました!」
「……え?」
しかし、想定していた事と真逆の内容の言葉に少し驚き目を丸くする。
「あの時の記憶はショックすぎて覚えてなかったんですけど、最近少しずつ思い出してきて……ネプ子にはちゃんとお礼を言ったのに、プルルート様には言ってなかったなって。あの時、プルルート様が助けてくれたのに、私は泣いてるばかりで……」
「それはまぁ……あたしが悪かったのよ」
「プルルート様が怖かったのもあって、あれからコンパやピーシェと比べてプルルート様には少し距離がある気がして……」
「そうかしら?」
「プルルート様は気にしてないって、ネプ子は言ってくれましたけど、私の中でずっと引っかかっていて……これからも引っかかりながら一緒に暮らしていくのは嫌でしたから……ずっと謝りたかったんです。怖くて泣いたことも、気まずくて距離を置いてたことも」
「そうだったのね……」
「ごめんなさい。プルルート様」
アイエフの謝罪を聞いて、そもそもアイエフが自分を恐れるようになったのは自分のせいなのにアイエフに謝らせてしまった、とアイリスハートは少しバツの悪い表情をする。
「……良いのよ。それに、むしろあたしが謝ることよね。ごめんなさい、アイエフちゃん」
「そ、そんな……プルルート様が謝ることでは……」
「え〜、あたしには謝らせてくれないの?」
「いえ、そういうわけじゃ……」
「これで仲直り、ね?」
「はい。ていうか、元々喧嘩していたわけじゃないですけどね」
「ふふっ、そうね」
「あ、それとまだ言いたいことが」
「……!」
アイリスハートは再び身構える。
もしかすると、距離が縮まったことで普段アイエフがネプテューヌに向けて言うような辛辣な言葉でも出てくるのではないか、と思ってしまったのだ。
「……とってもカッコよかったです。あの時だけじゃなくて、今でもずっとプルルート様はカッコいい女神様です!」
「アイエフちゃん……」
『カッコいい』。
マジェコンヌを撃退した時、ネプテューヌだけではなく自分にも言って欲しかったその言葉。
「それと……っ、大好きです! プルルート様!」
自分たち以外誰も聞いていないから恥ずかしがってもしょうがない、この際もう言ってしまえと、アイエフは思いの丈を口にする。
それを聞いたアイリスハートは小さく笑い、アイエフを持ち上げて思い切り抱きしめた。
「えっ! ちょっ! プルルート様⁉︎」
「なぁに?」
「どうしたんですかいきなり⁉︎」
「良いじゃないたまには。そういえば、昔はよくこうやって抱っこしてあげたわよね」
「昔って……私が赤ちゃんだった頃のことですよね⁉︎ 今はもう抱っこなんてされるような歳じゃないです! 降ろしてください!」
「あたしにとってはあの頃のアイエフちゃんのままよ」
アイリスハートはアイエフを抱き上げたまま、街に戻ろうとする。どうやらしばらくは降ろすつもりはない様子。
「……わかりましたから、せめて街に着く前には降ろしてくださいね」
「え〜どうしよっかなぁ〜。むしろあたしとアイエフちゃんの仲の良さをみんなに見せつけるいい機会だと思わない?」
「恥ずかしいですー! 降ろしてくださいー!」
口ではそう言いながらもアイリスハートにしっかりと掴まり、身を寄せて思い切り甘えているアイエフなのだった。
「ねえ、アイエフちゃん」
「はい。どうしましたか?」
「……あたしもアイエフちゃんのこと大好きよ。ずっとね」
信仰する女神、守りたい仲間、そして家族としての愛情。その温もりも感じ合う二人なのだった。
*
それから数日後。
プラネテューヌ教会にて。
「やだ〜〜! お昼寝するの〜〜!」
「待ってくださいプルルート様! 今日という今日は溜まっているお仕事を片付けてもらいます!」
女神の仕事から逃げるプルルートを追いかけるアイエフ。しかし素早さの差は歴然で、すぐに捕まってしまう。
「捕まえましたよ!」
「うぅ〜……あいちゃんの意地悪〜! だったら〜……!」
すると、プルルートは変身する。
「うふふ……アイエフちゃぁん? さっきはよくもあたしを追い回してくれたわねぇ?」
アイリスハートに変身してしまってはもう誰にも手がつけられない……………………と思われたが。
「あぁ、変身したなら丁度いいです。それならもっとたくさんお仕事できますね」
「えっ……?」
他の守護女神ですら恐れるアイリスハートを前にしても、全く反応が変わらないアイエフ。
数日前の件を経て、アイエフがアイリスハートを恐れる理由なんてもうどこにも無くなっていた。
「ほら、行きますよプルルート様」
「いやぁ〜ん! やめてぇ〜!」
「変な声あげないでください。それに往生際が悪いですよみっともない」
「アイエフちゃんの意地悪〜!」
こうして、プラテューヌ教会では、アイエフの手によって執務室に強制連行されるプルルートの姿が見られるようになったとか。
神次元のぷるるんとアイコンピーシェの母娘みたいな関係好き。父親はネプ。
神次元の成長あいちゃんってぷるるんに対して敬語だったよね? Vのストーリーあんまり見返す機会なくてうろ覚えなので、もし間違ってたらこの話は消えます。