俺と粘着な女の子   作:歩(ホ)

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10話。

 充電が切れ掛かっています。充電を開始します。なお、これを怠った場合脳がクラッシュする恐れがあります。

 

 行動には結果が付随する。

 

 運動をすれば疲れるように甘い物を食べれば太るように、女の子の相手をし続けていれば俺の精神は限界を迎えて崩壊する。

 

 唯でさえ短い俺固有の時間が減ったのだ。それも致命傷なまでに。

 

 今こうして人間の生活を送れているのも奇跡といって過言じゃない。

 

 それを防ぐ……いいや、これ以上のダメージを受けないように押し止めるためにも充電する必要がある。

 

 小学校低学年時代の俺が見たら「何これショボッ!!」と言いそうな筆箱を漁って黒のマジックを取り出す。

 

 次に大学用鞄から一枚の画用紙を取り出し、マジックでデカデカとそれに文字を書いていく。

 

 キュッキュとマジックが滑る音が鳴り、特有のインクの臭いが鼻を刺激する。

 

 書き終わり、達筆に出来たそれをテープで背中に貼り付ける。

 

 それから座布団を枕にして新刊のライトノベルを読む。

 

 それからほどなくして何処かへ出掛けていた女の子が家に入ってくる。

 

 俺は背中の向きを調節して、女の子が注目するように傾ける。

 

 

「『充電中。話しかけてくるな。これは命令である。もし話かけてきた場合、指のささくれを容赦なく剥がす刑に処す』……?」

 

 

 不思議そうに読み上げる女の子。だが内容の意味は理解できたらしく大人しく距離を置いて隣に座る。

 

 無言の空間が広がり、俺に優しい世界が出来上がる。

 

 あぁ愛しきこの瞬間。正直ラノベとDVDと漫画と水があれば何もいらない。人間関係も。

 

 快晴が広がる窓から取り入れられた光を浴びて、ラノベを読み漁る。

 

 30分ぐらい経過しただろうか、女の子がテレビの電源を入れた。すぐに手元のリモコンを操作して消す。

 

 

「……」

 

 

 なんとも言えない視線を感じるが無視する。多分半目で睨んできてるんだろう。ウザいウザい。

 

 再度テレビが点く。が、消す。5回くらい繰り返した末テレビは点かなくなった。

 

 次にガタゴトと物音が鳴ったかと思うと、掃除機の音が響き渡った。

 

 なぜか俺の周りを念入りに掃除してくる。

 

 真面目に家事をやっているのには感心するけど、うるさいのでコンセントを抜く。

 

 掃除機の頭が飛んでくる。背中に当たる。痛い。

 

 無言で立ち上がり、女の子に近づく。抗議でもするような視線を送られるが、交渉の余地は無いので頭目掛けてチョップする。

 

 多分今まで一番威力のあるチョップだと思う。

 

 「おおぉっ!?」と女の子は頭を押さえて崩れ落ちた。

 

 元の位置に戻り元の体勢に戻り元の読書に戻る。

 

 女の子が何故かハイハイ歩きで近づいてくる。とりあえず害が無いので無視する。

 

 しかし一瞬の隙が命取りだった。

 

 バッ、と女の子の手が目の前を過ぎ去ったかと思うと、手元の本が無くなっていた。

 

 振り返ると超いい笑顔の女の子が居た。

 

 飛び掛って捕まえる。

 

 

「……っ!」

 

「わ……わっ!」

 

 

 無言の攻防の末女の子から漫画的な湯気が吹き上がり、顔を見てみると真っ赤になっていた。

 

 硬直しているようなのでこれ好機と抱きかかえてベットへ直行、無造作に落とした後布団に包んでビニール紐で縛る。

 

 3重ぐらい縛り付けて逃げられないようにして床に転がす。ぷげら。

 

 ラノベを拾い上げて読むのを再開する。

 

 中々面白くつい時を忘れて熱中してしまう。外は既に暗くなりあとがきも見終わる。

 

 次の巻も買おうと決意し、あくびをしながら起き上がる。首を間接を鳴らし、目に涙を溜めながら時計を見ようと顔を上げた瞬間だった。

 

 

「うぉぉっ!? え、何っ? 怖っ!!」

 

 

 思わず声を上げてしまうほどビビる。

 

 目の前には、2本の足を生やした布団が仁王立ちしていた。妖怪布団お化け、誕生の瞬間である。

 

 暗がりの中、こんな不気味な生物が突っ立ってたら誰だって驚く。俺だって驚く。

 

 思わずさっき読んでいたラノベを思い出す。そのラノベには布団を巻きつけた女の子がヒロインとして出演しているのだ。

 

 

「……エリオさん?」

 

「ほぉふぁう」

 

 

 呼びかけるが首を……というか布団全体を横に揺らして否定される。

 

 まぁ正体は分かっているので足払いをかけてコかす。前が見えているわけもない油断だらけの格好なので、簡単にスッ転ぶ。

 

 ドタッと布団に衝撃を吸収されながら床へと転がると、足をバタつかせて俺へと反撃しようとしてくる。

 

 面白いので放置することする。

 

 改めて時刻を見ると既に8時になっていた。時間も時間なので腹も減ってきたので料理をしに台所へと向かう。

 

 料理をする前に背中の画用紙を剥がしてゴミ箱へポイしとく。

 

 白ご飯の余りを卵でコーティングしながら炒めてをチャーハンへと変身させる。

 

 

「こ、こんな格好をさせて、わたしに一体何をさせるつもりなのっ!?」

 

 

 後ろから声がしたので振り返ると、芋虫の様に床を這ってくる布団女の子が居た。

 

 

「誤解するようなセリフを吐くな布団星人」

 

「わたしのほかにも枕星人・抱き枕星人・足枕星人が居る。1匹1点。しかしスーツを無効化する」

 

「うわーHガンでぶっ潰してぇ」

 

「そんなことよりわたしをこの布団から解放するべき」

 

「俺の時間を邪魔した罰なのでムリ」

 

「わたしの時間はわたしの物、貴方の時間もわたしの物」

 

「なんというジャイアニズム。人のアイデンティティすら奪うとか本物でもしないぞ」

 

「ジャイアンは甘い。もっと残虐になるべき」

 

「小学5年生に一体何を求めてるんだお前は……」

 

「実際は44歳。きっとみんな厚化粧で年を誤魔化している」

 

「それ言ったらダメだろ」

 

「この作品に登場する人物は全員18歳以上です」

 

「魔法の言葉過ぎる」

 

「そんなことより早くわたしを布団から開放するべき」

 

「だが断る」

 

 

 2人前のチャーハンが出来上がり、テーブルまで持っていく。

 

 俺の対面に座る女の子は、割と本気で抜け出せないらしく顔だけを布団から出しているというシュールな姿になっていた。

 

 テレビを点けて場を明るくしてからチャーハンを食べる。

 

 女の子はスプーンを咥えて上下へと揺らしている。半目で睨んでくる視線がウザい。

 

 無言の視線に絶えかねた俺は「はぁ」と溜息を漏らして女の子の分のチャーハンを掬って口元へと運ぶ。

 

 

「あーんしてやるよ」

 

「……あ、あ~ん」

 

 

 まるで雛鳥にエサをやる親鳥の気分だ。

 

 1つ違うのは俺が女の子に対する愛情を持っていないという点だろうか。

 

 食べられる瞬間にスプーンを引いて、顎を空振りさせる。

 

 『白けたのび太とドラえもん』というアスキーアートそのまんまな顔になる女の子。

 

 

「これが世に言う放置プレイ……」

 

「間違ってるぞ。何がとは言わないけど間違ってるぞそれは」

 

「きっとこれが快感になるように調教されてしまう」

 

「お前は一体どこでそんな言葉達を覚えてくるのだろうか」

 

「前の家にはパソコンがあった」

 

「世も末すぎる」

 

「YOUはSHOCK!!」

 

「それは世紀末。愛で空が落ちて来るだろ」

 

「わたしの熱い心を鎖で繋いでも無駄」

 

「体は布団で動けないけどな」

 

 

 女の子の不思議が1つ解かれる。

 

 パソコンは良い使い方と悪い使い方があるけど、コイツは間違いなく後者だろう。一体どこを覗いてたのやら。

 

 パソコンと言えば、俺の家にはパソコンが無い。実家のほうにはあるんだけどな。

 

 パソコンを持ってない理由は唯1つ。

 

 時間の進みが速すぎるからだ。

 

 だから持たない。多くは語らなくてもわかると思う。

 

 未だスプーンの上に載るチャーハンは俺が食い。再度掬って女の子の口元へ運ぶ。

 

 が、警戒してるのか口を開かない。

 

 

「いや……その、間接キス……」

 

 

 いつまで立っても口を開けない女の子に、いぶかしむように眉を寄せていると、突然そんなことを言われた。

 

 女の子の顔がほんのりと赤くなっている。

 

 

「どれだけピュアなんだよ。スプーンに間接キスとかあるわけないだろ」

 

「……ロマンスは大事」

 

「お前ロマンス大好きだな。もうそれ口癖というか語尾として活用したらいいんじゃね?」

 

「あーんも本当だったらわたしがするべき」

 

「俺とお前だからいいんじゃね?」

 

 

 飯が冷めてきたので、何か言おうと口が開いているのを狙ってスプーンを押し込む。

 

 モグモグと咀嚼して飲み込み、また喋ろうとするところにまたスプーンを入れる。

 

 5分ほどで女の子のチャーハンが無くなる。

 

 ペースが速かったのか若干息が荒い。もしかしたら暑いのかもしれないけど、布団は外さない。

 

 コップにお茶を注いで飲ませて一息つく。

 

 「けぷっ」とゲップを抑えて吐き出す女の子。

 

 食わせるのに熱中しすぎて自分の分が疎かになっていたので、遅れを取り戻す様に早めに食べる。

 

 先に食い終わって暇なのかボーっと宙を眺めていた女の子は、急になにか閃いたような顔したあと口を開いた。

 

 

「……ついでに言うと口マンも―――顔が怖くなってる顔が怖くなってる。笑顔が怖い」

 

「はいはい。18禁&キチガイ発言する子は閉まっちゃおうね~」

 

 

 上手いこと言ったつもりだろうが、声が聞こえる俺からしたら明らかにピュアじゃない発言だったので軽く蹴って横倒しにする。

 

 そのまま足で押して女の子の後ろにあるベットの下へと閉まいこむ。

 

 

「そこまで怒るとは思わなかった。ムクたんに代わって謝る」

 

「ガッチャピンはお前のスケープゴートじゃねーよ」

 

「科学忍法でなんとか」

 

「5人揃ってないから使えない」

 

 

 ベットの下から顔だけひょっこりと出す女の子。

 

 チャーハンを食い終わり女の子の分と一緒に皿を洗う。ジョイくんを使ってるのでチョチョいのチョイで終わる。

 

 

「風呂沸かしてきてくれ」

 

「この状態で?」

 

「外すと思ってんのか」

 

「でも外さないと沸かせない。外すべき」

 

「やってみないとわからないだろ。さっさと行って来い」

 

「……結果は見えているような気がする」

 

 

 呆れた顔でトボトボと布団妖怪女の子が風呂場へと歩いていった。

 

 数分後。

 

 目を丸くして女の子は帰ってきた。

 

 

「……出来た」

 

「マジでっ!?」

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