俺と粘着な女の子   作:歩(ホ)

21 / 34
21話。

 

「うっ……また噛まれた。蚊、鬱陶しい……」

 

「蚊を可愛い女の子に擬人化すると鬱陶しくないぞ」

 

「血を吸いに来るメスは全部交尾産卵済み。血を吸うのは卵の栄養を得るため」

 

「一瞬にして蚊が悪女に変換された」

 

 

 夏休みに入った。

 

 冷めたように言っているが内心「イヤッホオォォ!!」な状態であり常時ヘヴン状態である。

 

 ついでに、聞くと女の子はそのゲームをやったことがあるらしい。激しく将来が心配になった。

 

 さて、去年は高校時代より長く設定された夏休みに惑わされてレポートが終わらず悲惨な目に合ったが今年は違う。

 

 兼ねてからサボらずにやってきたモチベーションを維持し、夏休みの宿題のレポートに突撃する。

 

 夏休みに入ってから毎日図書館に通い詰め、レポートを文字で埋め尽くしていく。家に居たら間違いなく出来ない。

 

 女の子のほうも溢れる暇を持て余してついて来ては机に突っ伏して寝ている。

 

 今では着いて10分もしない内に即行で寝に入る。何しに来てるんだお前は。

 

 

「毎日遅くまで飽きもせずよく宿題を出来る。わたしなら計画立ててゆっくりする」

 

 

 女の子は足をブラブラさせて、腕をクッションに顎を下ろして詰まらなそうに俺のレポートを覗く。

 

 

「最終日まで宿題の恐怖に怯えるなんて嫌だろ。何をしてても宿題のことが頭の隅にあるんだぞ、軽く欝になれる」

 

「前から思っていたけど、貴方の思考回路は少しおかしい」

 

「物凄くお前が言うなと叫びたい」

 

「図書館の中心で?」

 

「ここは端だよ」

 

「愛なら喜んで受け取る」

 

「レンタル制。1分50ぺリカ」

 

「延滞し続ければお金を払わなくていいと閃いたわたしは天才?」

 

「変態です」

 

「男はみんなエッチだと聞いた」

 

「じゃないと人類滅亡してるだろ。繁殖的な意味で」

 

「こんな身近に滅亡の種がっ!」

 

「14にして子作りを身近とか言っちゃうお前マジ変態」

 

「昔はわたしぐらいの歳で嫁いでた」

 

「ロリコンが許容される素晴らしい時代ですね。側室とかいう公然浮気制度も完備」

 

「なんという理想郷。よーしみんな、タイムマシンに乗り込めー」

 

「わぁい」

 

 

 航時機でも可。

 

 喋っているとどうしても手の動きが遅くなってしまうので、会話もそこそこに黙る。

 

 女の子も慣れたことなので幾度か俺の宿題を邪魔した後、いつも通りに机に突っ伏して寝始めた。

 

 女の子の小さな寝息と僅かな雑音、それとボールペンを走らせる音だけが俺の周りを支配した。

 

 割ったらウン十万はしそうなデカい窓ガラスから漏れてくる光が、オレンジ色に変わり始めたのを確認して席を立つ。

 

 レポートをカバンに突っ込んでから女の子の肩を叩いて起こす。

 

 気だるそうに目を擦る女の子を連れて家へと帰る。帰ればすぐに食事の用意だ。

 

 女の子が買ってきた食材を俺が料理本を見ながら調理して、それを女の子が後ろから観察するというのが最近の日課だ。

 

 たまに包丁を握らせたりもする。

 

 いくらか戸惑ったが、ロールキャベツという食欲が低下しがちな夏だと糞食いづらい料理が完成した。

 

 正直言うと調理する間に食う気力がゴッソリ失われている。今年の夏もまた体重減るな。

 

 白ご飯は無しにして、ロールキャベツだけを食うことにする。ちなみに女の子は白ご飯も食っている。

 

 

「……うん美味しい。貴方も随分と料理が上手になった」

 

「なんでちょっと上から目線なのお前?」

 

 

 女の子がロールキャベツを咀嚼して飲み込むのを確認する。

 

 失敗はしてないようだ。俺も後に続くようにロールキャベツを口に運ぶ。

 

 2・3個食った時点で限界を感じ、冷房を最大にして横になる。

 

 これは……完全に夏バテだ。ウナギでも買うかな、金はあるし。

 

 少し眠ろうかと目を瞑るが、すぐに女の子に肩を揺すられて起きる。

 

 

「何?」

 

「わたしがまだ食べてる。対面に座るべき」

 

「……簡潔に理由を述べなさい。くだらない理由の場合、布団巻きで外に放置の刑に処す」

 

「独りで食べても美味しくない」

 

「? ……意味がわからん。さっき美味いって言ったじゃん」

 

「せっかく2人居る。1人で食べるのは勿体無い」

 

 

 女の子の発言が意味不明を極めているので少し頭を働かせて意味を考える。

 

 

「あ~……簡単に言えば俺の顔を見ながら食いたい。と?」

 

「そういうこと」

 

「趣味悪すぎて笑える」

 

「そこで笑う貴方最低」

 

「というわけでおやすみ」

 

 

 ゴロリと寝っ転がる。俺が納得出来なかったので女の子の提案は却下された。

 

 携帯の目覚ましを手早くセットして目を瞑る。

 

 ちょっとして、瞼を透過してきていた蛍光灯の光が消えうせる。

 

 気になって目を開けると、モクモクと白米を食べる女の子が目の前に居た。

 

 一瞬背筋に寒いものが走る。

 

 無表情に赤い目で見据えられれば、流石の俺でも怖気が走る。

 

 

「……気持ち悪い」

 

「寝てていい。勝手にやってるから」

 

「この状態で寝るとか無理に決まってるだろ」

 

「心頭滅却という言葉があります」

 

「訓練してないと出来るわけないからな」

 

「じゃあこれが訓練」

 

「いきなりハードルが高すぎる」

 

「ハードルは高いほど潜りやすい」

 

「跳べよ」

 

「旋風脚でハードル破壊」

 

「くにお君かよ。ゴージャスパンチすんぞ」

 

「か弱い女の子にそんな最強技しないでください」

 

 

 話してる最中もずっと女の子は白米とロールキャベツを口に運んでいる。

 

 辞める気配が無い辺り、こっちが折れたほうが早そうだと判断して起き上がる。

 

 ベランダからコーヒーを取り出して女の子の対面に座って、頬肘を突きながらテレビを見る。

 

 

「これでいいのか」

 

「うん」

 

 

 表情を伺うとさっきの無表情とは打って変わって終始ニコニコしていた。理解出来ん。

 

 眠気も覚めてしまったので、食後の時間もレポートに回す。

 

 レポートを纏めた束の厚さに絶望感を覚える。しかし千里の道も一歩から。

 

 趣味の時間を取りたくなるが、グッと堪えてペンを走らせる。

 

 その間に女の子は風呂を済ませ、既に隣で布団に包まって寝ている。

 

 最近シャツとショーツ一丁で寝るようになったが、

 

 無防備すぎるだろと思うが、まぁどうでもいい。俺だし。

 

 そうこうしている内に時刻は12時を回り深夜帯に入る。見たいアニメもあるのでレポートはここらで切り上げる。

 

 飲み残した缶コーヒーを飲みながらエンドレスエイトが終わらないことに絶望する。

 

 余談だが、バイト先のスーパーでやっていた短冊に『エンドレスエイトが終わりますように』と書いたが、願いは叶わなかったようだ。

 

 いつまでこの悪夢は終わらないんだろうか。

 

 そういえばそろそろエヴァ破も見に行かなければ。夏休みはやることが多くて困る。

 

 時刻が2時になる。

 

 本当なら4時まで起きて居たいが、そうすると夏休み明けの社会復帰が困難になるので自重する。

 

 寝ながら起きてる女の子も大変だろうしな。

 

 風呂や歯磨きをして寝る準備を済ませ、電気を消してからベットに潜り込む。

 

 部屋が一気に静寂となり、まるで部屋全体が寝静まったようになる。

 

 溢れる眠気に任せてすぐに就寝したいところだが、まだイベントが残っているのでまだ寝ない。

 

 俺が嘘の寝息を立てて数分、モゾモゾとした音と共に隣の布団で寝ていた女の子が起きた。

 

 やっぱり今日もか、と関心する。俺が初めて女の子の行動に気付いてから毎日である。

 

 どうでもいいとは言ったが、やはり寝ている間に何かされると思うと寝るに寝れないのが人間だ。

 

 俺は女の子の立ち姿を薄目で確認する。

 

 毎日飽きもせずよくやれる。俺なら絶対寝ている。

 

 最近では起きたときに女の子の股の間に腕がある時もしばしばだ。

 

 ペタペタと床を素足で歩く音が近づき、数歩で俺のすぐ隣へと到着する。

 

 冷たい手が、起きてるのを確認するように頬を数度撫でる。ひんやりしていて気持ちいい。

 

 もう一度薄く目を開けて、女の子の姿を確認する。

 

 窓から差し込む僅かな光に肌を照らされ、頬を上気させた女の子が切なそうな目で俺を見ていた。

 

 ここまで来ると何をされるか確定しているようなものなので、眠ることにする。

 

 瞼をカッチリと閉じて意識を深く沈める。時期に朝になっているだろう。

 

 

「……ん……ん……ん……」

 

 

 女の子の唇が重ねられる。

 

 事前に濡らされていたのか、女の子の唾液が唇から頬を伝って流れ落ちる。

 

 それを手で拭うと、続けて2度3度と唇を押し当ててくる。

 

 次第に行動はエスカレートし始め、唇を吸われる。

 

 最終的には舌を差し込まれて口内を貪られた。

 

 女の子の唾液口の中に入るが、すぐに女の子が俺の唾液と一緒にすすり上げて飲み込む。

 

 理性が外れているのか、確実に相手が起きると思われるほどの行動でさえ最近は躊躇わずやってくる。

 

 舌を入れてきたのは一週間ぐらい前だったと思う。

 

 10分ほどが経過し、経験からそろそろ終わるだろうと予測する。

 

 

「はぁ……はぁっ……。や……っぱり……やっぱり、そうだ」

 

 

 何がやっぱりかは知らないが、こういう意味不明の発言は今日が初めてではないので気にしない。

 

 そうして予想通り女の子の口付けタイムは終わる。

 

 正された姿勢をさり気なく崩して眠気に誘われるがままに寝る。今日も最後まで寝れなかった。

 

 ペタペタと女の子の足音が離れていく。

 

 トイレかと思ったが、違ったようだ。

 

 カチッカチッと蛍光灯を点ける音が鳴り、部屋全体が明るくなる。

 

 瞼では防ぎきれないほどに光が、瞳孔が開いた瞳に差し込んでくる。

 

 痛いさえ感じる光の暴力に思わず「う」とうめき声が漏れる。

 

 

「―――なんで無視するの?」

 

 

 女の子の独り言……

 

 

「……」

 

「……起きてるんでしょ? 寝たふりしたってダメ。舌動いてたのわかってる」

 

 

 と思ったが違ったようだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。