俺と粘着な女の子   作:歩(ホ)

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4話。

 

 

 玄関出たら2秒で追跡。狂気の美少女ストーカーが俺の家に搭載されました。

 

 ……ヤフオクで転売出来ないかなぁ。

 

 

 警察が頑張らなかったので女の子は今も野に解き放たれています。

 

 朝の目覚めをKYな女の子に邪魔をされあまり気分は優れない。

 

 こういう時は外の自動販売機にでも行って大好物のデカビタでも飲みたい気分だ。

 

 けど残念なことに、外には危険な生物が俺を狙ってウロチョロしてるので買いに行かない。

 

 台所で今日の朝御飯(スクランブルエッグ)を調理していると、ふいに目の前にある窓が開く。

 

 言うまでもなく女の子である。

 

 白髪に赤い瞳をして、いつものワンピースとカーディガンを着た(多分)少女は背が足りないため、顔の上半分しか窓枠に入らない。

 

 

「お腹空いた」

 

「出て行け」

 

「この廊下は皆の物。だから今の言葉は誤用」

 

「……」

 

 

 正論すぎて反論出来ない。しかしこれはプライバシーの侵害ではなかろうか。

 

 でも最近「出て行け」が口癖になりつつあるな俺。自重自重。

 

 視線がウザいので窓を閉める。……閉めれなかった。

 

 

「……その指どけろ。ちょん切るぞ」

 

「やれるものな―――ちょ、ちょっとまっ!」

 

 

 窓を引いて加速をつけて窓を閉める。

 

 寸のところで指を引いて脱出される。っち。

 

 

「ほんとにやったっ! 信じられないっ!」

 

 

 焦った様子で反対側の窓から顔を出す女の子。格子が無かったらそのままニュルンと入って来そうな勢いだ。

 

 もはや交渉の余地は残されていないので反対の窓も同じように閉める。

 

 同じように逃げられる。

 

 今度は開けられないように鍵を閉める。

 

 安心してると上のちっちゃい小窓の部分が開いた。しかし窓越しの影から見る限り腕しか届いてない。

 

 精一杯背伸びしてると思うと可愛らしいなぁ。思うだけ。

 

 

「開けろー」

 

「誰が開けるかー」

 

「お前は完全に包囲されているー」

 

「ごっこ遊びなら公園でしてこいー。つか、いい加減諦めて養護施設にでも行けー」

 

「やだー。絶対にやだー。絶対にノー」

 

 

 3度言うな。

 

 

「その理由はー」

 

「臭い飯しかくれないー」

 

「お前いますぐソコで世話になってる子供達に土下座してこいー」

 

 

 話もそこそこに朝御飯も出来たので皿に移す。手を洗って料理を運ぼうとするが、その前に水道が出ない。

 

 ……おかしいな、今日配管工事だっけ。

 

 カレンダーを見ても何も書いてない。大家の連絡忘れかな。

 

 そう思いながら明らかにさっきまで水が出ていたことを覚えていたので、真相は別にあることを俺は知っている。

 

 とりあえず玄関の鍵とチェーンを解除。

 

 右見て左見て女の子が居たので入られないようにガードしながら外に出て鍵を閉める。

 

 

「くっ!」

 

「はいはいご苦労さん。―――やっぱな」

 

 

 外の水道のバルブを調べると閉められてた。確実に女の子の仕業、間違いない。

 

 とりあえず戒めを込めてチョップを旋毛目掛けて振り下ろす。

 

 

「ぉぉぉっ」

 

 

 頭を押さえて崩れ落ちる女の子。

 

 

「これだけされても通報しない俺超優しくね?」

 

「本当に優しい人は既にわたしを家に泊めてくれてる」

 

「もう1回泊めた」

 

「間違えた。住ませてくれてる」

 

「近くの公園紹介してやるからそこに住んだら」

 

「もっといい物件無いの」

 

「屋根なし壁なしガス電気なしだと色々ありますよ」

 

「なんでホームレス限定に話を進めるのか理解出来ない」

 

「実際ホームレスだろホームレス」

 

「……うー」

 

 

 返す言葉が無いのか呻き声しか上げない女の子。

 

 傍目から見たら虐めに見えるだろうが、はっきり言って俺の良心はこれっぽっちも痛んじゃいない。

 

 せいぜい人に見られたら拙いだろうなぁ~と思うぐらいだ。

 

 まぁそんなことを思ったのがフラグだったんだろうな。俺は大嫌いな面倒事を起こしてしまう。

 

 カンカンと木製サンダルで階段を上がってくる音。この音は、このアパートで生活している人間なら誰でも知っている。

 

 大家である。

 

 脳内でターミネーターの音楽が流れる。……いや、大家がターミネーターの様に怖いわけじゃないけど。

 

 廊下の角から姿を表す寸胴な体系。モジャモジャとしたパーマ。

 

 顔面は「リセットすんな言うたやろっーーーー!!」な感じだ。分からない人はおいでよ動物の森。

 

 一歩一歩に風圧を感じられるほどに、俺の内心は焦りに焦っていた。

 

 その理由は一重に傍らに居る女の子にある。この状況で何を言われるのかわかったもんじゃない。女の子に。

 

 大家は俺を見て次に女の子を見る。

 

 そして大家何か口にしようする前に女の子が動いた。

 

 

「もぉお兄ちゃんなんで部屋に入れてくれないのっ!」

 

「……はっ?」

 

 

 女の子の奇行に目を丸くする。

 

 俺が低下した思考を回復する前に女の子が畳み掛けてくる。

 

 

「妹が遠くから遥々やってきたのにヒドいよっ!」

 

 

 俺には妹が2人居るわけだけど。当然コイツは含まれない。

 

 お前は一体何を言っているんだ―――と言う前に、大局(大家)は女の子の方についてしまった。

 

 気づいた時にはもう遅い。女の子の口元には笑みが浮かんでいた。

 

 

「ダメじゃないかアンタ。家族は大切にしないと」

 

「い、いや家族じゃなくって赤の他人なんですけど」

 

「お~に~い~ちゃ~んっ!」

 

 

 黙れ。お前に言われても萌えねーんだよカス。

 

 調子に乗って腕を組もうとする女の子を振り払いながら大家に真実を知ってもらおうと向き直る。

 

 

「そんなことしてるといつかきっと後悔するよ」

 

「あの……」

 

「アタシみたいになっちまうよ……」

 

 

 大家は知りたくも無い過去を語ろうとしているようだ。

 

 このまま現状を続ければ俺の時間は大幅に失われるだろう。それは俺の生存理由の消失を意味する。

 

 最善の策を取るしかないと判断する。俺は女の子を腰を抱くと鍵を開けて扉を開放する。

 

 

「ごめんな妹、兄ちゃんが悪かったよ」

 

「あ、どこ掴んでるのお兄ちゃん。もぅ……強引だぞっ!」

 

 

 負荷が掛かりすぎて肉体に悲鳴が上がる。

 

 急いで家の中に引き入れるが、女の子の演技は止まらない。

 

 死ねばいいのに死ねばいいのに死ねばいいのに。呪詛を億万回唱えて精神の安定を図る。

 

 死角で大家から見えなくなった女の子の表情は明るい。まるで純粋無垢な赤ちゃんのようだ。

 

 きっとこう考えているだろう「この人を使えば家に簡単に入れる」と。

 

 思考もそこそこに安易な道を選択してしまった俺も悪いが。女の子のほうはもっとタチが悪いぞ。

 

 

「すいません大家さん。お騒がせしました」

 

「あらそう? ……ちゃんと優しくしてあげるんだよ」

 

「ええそりゃもう。代わりの居ない肉親なんですから」

 

 

 バタンと扉をしめて大家を視界から消す。残ったのは笑顔の女の子だけだ。

 

 コイツを追い出すのは、大家が2階から降りて1階の自宅に帰ってからだ。対策は後で考える。

 

 

「お兄ちゃんっ!」

 

「し、ね、ば、い、い、の、に」

 

 

 抱きつこうとしてくる女の子を、鳥肌全開になりながらも両腕で押さえつける。

 

 一瞬にして妹の皮が剥がれて女の子の本性が露になる。

 

 

「もう諦めたらいい。わたしは攻略法を知ってしまった」

 

「要約するとお前はもう死んでいると言いたいんですね」

 

「北斗の拳知らない」

 

「安心しろ俺も知らない」

 

「家事頑張る。頑張って覚える」

 

「じゃあ今から逆立ちして町内一周してこい」

 

「それはおかしい」

 

「家事の基本は体力だぞ」

 

「ならここで腕立て伏せする」

 

 

 言葉の裏に「出て行け」と「出て行かない」を付属させながら会話を交わす。

 

 そこでチャイムが来客を知らせてくる。女の子を見ると礼儀正しく正座してた。

 

 そこはかとなくポイント稼ぎをしているようでムカついた。

 

 女の子ばかりに構っているわけにも行かず、ノックに切り替えてきた来客に対応するために扉を開ける。

 

 居たのはリセットさん、ではなく大家だった。

 

 

「言い忘れてたけどアタシ明日から3ヶ月くらい旅行行くから」

 

 

 挨拶を終えて今度は俺が笑顔のまま部屋に戻る。

 

 目の前にはorzな女の子が居た。

 

 形勢は逆転じゃないにしろ五分に戻った。そんな所でいつものことを言っておく。

 

 親指で玄関を指差し、

 

 

「出て行け」

 

 

 俺の言葉に放心していた意識を取り戻したのか、ハッと顔を上げて俺を見上げてきた。

 

 

「何がお望みですか」

 

「永久の平和を」

 

「それをわたしと一緒に作っていきませんか」

 

「いきません」

 

「今ならロマンスが生まれます」

 

「生まれなくてもいい」

 

「我侭な生徒は先生嫌いです」

 

「先生。ホームレスの追い出し方をおしえてください」

 

「ホームレスも人の子。優しくしてあげましょう」

 

「ところがどっこい世間はホームレスに厳しかった。―――とりあえず警察に通報するぞ」

 

「……さっきの経験上、通報しないのは予測出来る」

 

 

 図星というわけじゃないけど。女の子の言うとおり俺は通報する気がない。

 

 なぜなら事情聴取とかされそうだから。

 

 確実に俺の時間が無くなる。これ重要。

 

 とりあえず時間が勿体無いので作ったスクランブルエッグをテーブルへと運び食す。テレビも忘れずに付ける。思い出の爆弾的なアニメがやってた。

 

 羨ましそうに女の子が見てくる。

 

 

「わたしも食べたい」

 

「いいよ」

 

「どうやったら食べさせてくれ―――……いいの……?」

 

「作りすぎたからな」

 

 

 賞味期限切れかけの卵を全部ぶち込んだお陰で皿に大盛りに盛られてます。きっと食べきれない。

 

 

「……デレ来た?」

 

「お前はなんでそんな方向に話を結びたがるのか」

 

「きっとそんな星の元に生まれた」

 

「じゃあその星の名前はホームレス星だな。ついでに言うと俺はツンデレじゃない」

 

 

 言いいながら持ってきた小皿にスクランブルエッグを盛ってやり、床に置く。

 

 半目で睨まれる。少しも罪悪感は湧かない。

 

 誰が一緒にテーブルで食べるか。

 

 諦めたのか素直に小皿の前に座り込む女の子。

 

 

「お箸は?」

 

「立派な手があるじゃないか」

 

「スプーンは?」

 

「立派な手があるじゃないか」

 

「フォークは?」

 

「立派な手があるじゃないか」

 

「四つん這いになれば……」

 

「なってもあげない」

 

「……」

 

 

 試行錯誤の末、小皿を傾けて啜るように食べていた。

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