俺と粘着な女の子   作:歩(ホ)

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6話。

 

 

 降り注ぐ日光が暖かかった朝方は何処へやら、夜になると天気は雨になった。

 

 家に帰る頃には時刻は4時半、風呂の水を捨ててお湯張りが出来た時には5時をまわっていた。

 

 俺はと言えば座布団を枕に朝のライトノベルの続きを読んでいる。雨音とシャワー音が雑音として耳を刺激してウザいことこの上ない。

 

 未読み部分の厚みを確認して溜息。

 

 物語は山場を通り越して次回への期待を高まらせるように主人公がヒロインとイチャイチャしていた。2次元限定で羨ましい。

 

 熟読すべき場所はもう無いので流し読みでペラペラとページを捲くり後書きに到着する。

 

 読書終了。表紙を閉じて本棚へとしまう。

 

 見計らったように風呂の扉開く音がした。エスパーか。

 

 次に聞こえたのは倒れる音。溜息を吐きながら起き上がって脱衣所に向かう。腰が重い。

 

 正直「またか」という予想でいっぱいだ。まぁ予想通り女の子が倒れてたわけだけど。今度は意識があるようで自力で起き上がってペタンと床に尻をついている。

 

 俺は置いておいたバスタオルを手に取り投げつける。

 

 

「早く拭け」

 

 

 丁度良くバスタオルが広がって頭に被さり、女の子はのっそりとした動作で髪を拭き始める。

 

 疲れているのかバスタオルを握る女の子の腕の動きは遅い。

 

 髪を拭いていると言うのに床にポタポタと水滴が何回も落ちる。

 

 ポタポタ、ポタポタ。……水分多い所から拭けよこの置物野郎。そのあまりに非効率すぎる拭き方にイライラする。

 

 まだ体もあるというのにこのペースだと日が暮れる。とっくに暮れてるけど。

 

 ガッ、とバスタオルを掴み主導権を女の子から奪う。背中まで届く長い髪を纏めてバスタオルで包む。

 

 それからゴシゴシと効率良く髪を拭き、あっと言う間に湿る程度になる。

 

 このままバスタオルを返してもトロいことは確定なので続いて体を拭いてやる。

 

 既に1回見ているわけだけど、相変わらずメリハリが無くて凹凸の少ない体型をしている。

 

 腕と手で局部を隠す女の子。

 

 邪魔なので力技で退ける。つか、もう1回見てるから。正直貧相すぎてなにもする気が起こらない。する気があったとしてもフラグ立つからやらないけど。

 

 

「……えっち」

 

 

 風邪が悪化したのか、惚けた顔で女の子が俺を見てくる。ウザウザウザ、ウザ!! 堪らず呪詛染みた言葉を心の中で大量発生させる。

 

 でも俺は優しいので? 口には出さない。顔には出てるけど。

 

 山も谷も無いので簡単に体を拭き終わり、そのまま女の子を抱えて来客用の布団へとブチ込む。

 

 熱を測ろうとしたけど作業後で手が暖かいので額を押し付ける。体温計なんて便利な道具はありません。

 

 案の定熱があった。8~9分ぐらい。

 

 額を離すと女の子がトマトと張り合えるぐらい赤くなっていた。

 

 また上がったのかと思い、再度額を近づけようとすると「ちょっ」と女の子が呟いて押し返された。

 

 親切を踏みにじる女の子の態度に怒りゲージを上げてしまう。MAXになると謙虚な俺から有頂天な俺になります。

 

 棚を漁って薬を探す。

 

 ……使用期限去年までだ。まぁいいか。

 

 戻ってきて見ると、女の子がキョロキョロと何かを探している。

 

 布団から出ようとしていたので足で女の子の頭を押さえて正位置へと戻す。

 

 

「何探してんの? 物次第なら燃やしてきてやるよ」

 

「……服。後、燃やされると困る」

 

「服? お前の?」

 

「うん」

 

「汗塗れで臭かったから洗濯機入れた」

 

 

 下着も含めて。胸ないのにブラとか不要じゃね? むしろ野に帰るためにパンツもいらなくね?

 

 

「なんてことをしてくれる」

 

「良いことしてやったのに怒られる。不思議!」

 

「あれしか服無い。わたしに裸で過ごせというのか」

 

「……実は今お前は服を着ているんだぜ」

 

「次にお前は裸の王様と言う」

 

「裸の王様と言う話があってだな……―――ハッ!?」

 

「その理屈で行くとオール5の私に見えないのはおかしい」

 

「馬鹿の成績もきっと5なんだよ」

 

「貴方の良心の成績はきっとマイナス5」

 

「そんなの付けられた日には投身自殺してるわ」

 

 

 お粥なんて気の利いた物を作る気なんてサラサラないので女の子の分の鯛焼きを食わす。

 

 中身がアンコであることに気付いた女の子に、カスタードは俺が食ったと言うと文句を言われた。

 

 しかし間違えたのはコイツだ。それに金を払ったのは俺だ。図々しいぞ。

 

 安全性が確認出来ない薬を飲ませて再度布団に叩き込む。

 

 女の子の相手も面倒になってきたのでテレビをつけて四季が来るのに成長しない一家なアニメを見る。作画ミスでタラちゃんの腕が超長かった時は衝撃だった。

 

 冷蔵庫の中身と米の量を考えながら見てたらすぐに楽しいハイキングなエンディングが流れた。

 

 俺を挟んでテレビの反対側に居た女の子もアニメに集中していたのか、終わってから行動を起こしてくる。

 

 服の裾をクイクイと引かれるの振り返ってやる。

 

 

「服貸して」

 

 

 口元まで布団を持ち上げながら言われる。唾つけたら殺す。

 

 腕だけでも見られるのが恥ずかしいのが直ぐに布団の中に引っ込む。

 

 後、誰が貸すか。

 

 

「なんで?」

 

「外出れない」

 

「外雨だぞ。濡れるから貸したくない」

 

「でもそうしないとわたし外出れない」

 

 

 全裸という選択肢は無いようだ。

 

 

「なんで外出たいの? いまの子供は風じゃなくて雨の子ですか。世の両親が泣いて面倒くさがるぞ」

 

「服着ないと、外で寝れない」

 

「ここで寝たらいいだろ」

 

 

 女の子が目を丸くする。次に何故か頬を引っ張り出す。

 

 意味不明なその動作を機械的に行った後、目をパチクリ。

 

 

「夢じゃない。これはおかしい」

 

「何がおかしいか述べよ。返答次第で俺の態度が変化します」

 

「貴方が優しい」

 

 

 簡潔に述べられてズッこける。……まぁ優しいと言うのかなコレは。

 

 俺は女の子が公園に髪を洗いに行くときに、こう思った。

 

 利用価値は充分にあるな。と。

 

 ちゃんと考えてみればメリットも確かに存在する。

 

 今は覚えていないにしても、家事を仕込んで出来るようにすれば一気に俺は家事から解放されるし、その分の時間を趣味に当てられる。

 

 掃除に洗濯に料理に買出し、それらを含めた時間は馬鹿にならない。

 

 あの様子からして対価は寝床と食事で充分だろう。……それ以上を求めたら叩き出す。

 

 こう見れば、教育時間を考えなければ良い条件だ。教育時間を考えなければ。

 

 だから別に俺は、優しいわけでもデレたわけでもなんでもない。つかツンデレじゃない。

 

 つまり、全ては俺のためであるわけだ。

 

 別に、女の子が可哀想に見えただとか、俺が罪悪感を覚えただとかは切欠に含まれない。

 

 含まれないと言ったら含まれない。ないったらないのだ。

 

 後邪魔になれば警察に通報すればいいしな。言い訳めんどそうだけど。

 

 

「泊めてくれるの?」

 

「勘違いすんな、泊めてやるんだよ」

 

「1日だけ?」

 

「別に、俺が出て行けって言うまで」

 

「……本当に?」

 

「その代わり家事全部お前がやれよ。それが条件だからな。俺一切やらないからな」

 

「うん。―――わかった」

 

 

 寝たまま俺を見て微笑んでくる。薬はまだ効いてないのか、女の子の頬は赤い。

 

 ……うん、顔は可愛いな。性格最悪だけど。

 

 

「ありがとう。……嬉しい」

 

 

 せ・い・か・く・さ・い・あ・く・だ・け・ど・な。

 

 

「何嬉しがってるわけ、別にお前のためじゃないんだけど。俺にとって得があるから泊めてやるんだよ。勘違いすんな」

 

「ツンデレ」

 

「ツンデレじゃねーから」

 

「ツンデレ」

 

「黙れよ」

 

「ツンデレ」

 

「黙って寝てろ。ゆっくり出来るの今日だけだからな。明日からやってもらうんだからな」

 

「……わかった。もう寝る」

 

 

 言って女の子が目を瞑る。

 

 俺はまだアニメがあるので寝ない。てか7時台に寝るとかありえない。どれだけ時間の無駄なんだよ。

 

 次の見たいアニメにまではまだ時間があるため食事を済ませておくことにする。

 

 冷蔵庫の中身を思い浮かべた結果、外で何か買ってくうことに決定。米を炊くのも面倒だしな。明日教えるし、その時に炊いたらいい。

 

 洗濯を終えた女の子の服を即席で作ったつっかえ棒に干しておく。

 

 財布に携帯に鍵、必需品を持って外へ。

 

 雨はさらに勢いを増していた。1本だけ常備してある俺専用の傘を差して雨中へ突撃する。

 

 最寄のコンビ二へと赴き俺の分の飯とビニール傘を1本買って帰る。

 

 

「雨ひっでー」

 

 

 足元がお留守ですよ、と言わんばかりに集中攻撃をされて足元はもう酷いことになっている。

 

 それに必殺2本傘で対抗する。

 

 傘をグルングルンして人の多い所でやったら袋叩きにされそうな遊びに興じる。

 

 余計濡れた。鬱だ死のう。

 

 傘を突撃形態に構えて歩いていると、目の前からライトを振りかざして向かってくる人を発見する。

 

 見ると警察の格好をした女の人、要するに婦警さんがこっちに向かって歩いてきていた。

 

 そういや俺の通報に対応していた人も女の人だったよなぁ、と僅かに思い出を振り返る。決していい思い出ではない。

 

 婦警さんは俺を視界に捕らえると進路を変更して俺のほうへとやってくる。

 

 ボブカットでメガネのいかにも新人さんっぽい童顔な顔をしている。体のほうは可哀想としかいい様がないので描写を控える。

 

 

「あの、すいません」

 

「はい? なんでしょうか」

 

「この辺りで最近不審な子を見掛けませんでしたか」

 

 

 無言で婦警さんを指差す。

 

 

「いや私じゃなくってですね」

 

「俺にとっては不審人物ですね。そんなコスプレをしていかにも不審人物じゃないですか」

 

「……失礼ですね貴方。私はいかにも警察ですよ」

 

「じゃあ証拠見せてください。笑ってあげますから」

 

「なんで笑うんですか!?」

 

「笑うのに理由が必要でしょうか?」

 

「必要ですよ!? ―――これが証拠で……あれ」

 

 

 婦警さんは内ポケットを漁った。しかし何も無かった。

 

 婦警さんは全身のポケットを漁った。しかし何も無かった。

 

 婦警さんは焦っている。

 

 さらに婦警さんは全身を調べた。しかし何も無かった。

 

 婦警さんは情けない顔になった。

 

 婦警さんは目を泳がせて明らかに動揺している。

 

 

「……警察手帳。忘れてきちゃいました」

 

「いますぐ通報しますね。警察を偽った不審人物が目の前に居ますって」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよっ! ホラコレ、銃っ! 銃ならありますよっ!」

 

「まさかの銃刀法違反ですか」

 

「ちょ! そういう風に判断しますか!?」

 

「それと、アナタ年偽ってませんか? まだ成人してないようにも見えますけど」

 

「よく言われますけど26ですっ!」

 

「スリーサイズは?」

 

「言いませんっ!」

 

「なるほど、B129のW129のH129ですか」

 

「ドラえもんっ!?」

 

「まぁいいです。今日はMPが無いので見逃してあげましょう」

 

「MP関係ないと思うんですけどっ!? ―――……はぁ、いやもういいです。夜道には気をつけてくださいね」

 

「まさかの闇討ちですか」

 

「違いますからっ!」

 

 

 喚く婦警さんを後にする。……前に気になったので婦警さんを呼び止める。

 

 ショボンとした姿勢を正して国家公務員の鏡のようにでもなったつもりで対応してきた。

 

 

「さっき言ってた不審な子って……」

 

「あぁ、最近ここらで不審な女の子が居るって電話がありまして―――まぁ悪戯電話なんですけどね。ちょっと気になったんで見回りをしてるんですよ」

 

 

 ……もしかしてこの人って電話対応してた人かも。

 

 

「へぇどんな子なんですか?」

 

「白い髪に赤い目……ぐらいでしょうか。電話相手もそう詳しく話さなかったんで、これといった特徴はないんですよね」

 

「白い髪に赤い目……あぁその子ですか、心当たりありますよ」

 

「え、本当ですか?」

 

「はい」

 

 

 一息付く。

 

 

「俺の妹です。深夜徘徊が趣味らしいですけど、まぁ悪い子じゃないんで。こっちから注意するように言っておきます」

 

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