感染少女 ReBORN   作:キラトマト

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第十話 敵は誰か

「おい……そん……な」

 

 橋にたどり着いたみんなは──驚愕のあまり、言葉を失ってしまう。

 

「嘘……でしょ」

 

 蠢くゾンビ──などはいない。

 

「まさか、ゾンビがいないとはな」

 

「だけじゃない、橋だって平穏無傷だ……」

 

「……サンくん、これはもしかして」

 

「……本気で……海浜間横断橋を渡る作戦を練るべきかもしれません」

 

「いや、あれ見てください」

 

 僕はそう言って、数台の車を指さす。

 

「あれは……!」

 

「さぁァァァァァんちゃあああんっ!!」

 

「ったくアド、はしゃぐな。まだ味方と決まったわけじゃないだろ」

 

「それに、あれがどこの組織の車かわかっていない以上──」

 

「極東日本軍……政府軍の軍用車ですわ」

 

「──。──」

 

「──。──」

 

 車のそばには、数人の軍人たちがなにか通信機のようなもので連絡をとっていた。

 

「やった……やったよ皆ッ。救助隊だ……ついに救助が来たんだよッ」

 

「私たち……これで助かるですか?」

 

「ああやちる……救助は大成功かもしれねぇぞ」

 

「きっと、きっとこれから救助を開始するところだったんだよ」

 

「ねぇサンちゃん?!」

 

「い、いや待て。僕が話をしてくる。まだ救助と決まっていな──ー」

 

「おおおおおい!! 軍人さあああん」

 

 アドは友好的に手を振りながら、軍人に自分たちの存在を示した。

 

「ちょ、話を聞けっての」

 

 僕は慌ててアドを連れ戻しに行く。

 

 パンッ

 

 銃声と同時に放たれる弾丸、しかし、弾がアドの頭に当たることはなかった。

 

「っぶねぇな! アド、僕が話をするって言ったろ!」

 

「早く逃げるぞッ!」

 

「サンちゃんは……」

 

「僕はちょいとばかし背中に当たっただけだ。すぐ治る」

 

「それより早く逃げろッ!!! みんな!!!」

 

「軍人どもッ! 発砲してきやがったんですか?!」

 

「いいから早く逃げろッ!! 僕がアイツらを引き付けておくからッ!!」

 

「そしたらサン様はっ!!」

 

「僕は大丈夫だ。心配するな、だからッ!!」

 

 バララララと案の定、追射撃が軍人から放たれる。

 

「ならあたしも残るわ」

 

「来栖崎、お前は……」

 

「アンタは私のケツパなんだから離れたらダメなんでしょ?」

 

「ッハ、だったら好きにしろ。──────絶対に死ぬなよ」

 

「分かってるわよッ!」

 

 そう言って僕たち二人は軍人に向かって、武器を構える。

 

「ッヘ、まだ生き残りが──ーぶへぇっ」

 

「なんだよコイツら、身体能力がバケモンだ──ーうわぁああ!」

 

 ドスン。鈍い音を立て、最後の一人を気絶させたところで、来栖崎に確認する。

 

「来栖崎……殺してないよな?」

 

「もちろんよ。人殺しなんてやりたくないもの」

 

「安心したよ。じゃ、みんなと合流するぞ……!」

 

「…………」

 

 否定も肯定もしないということは肯定ということなのであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、またヤベェ奴らに目ぇつけられたんじゃねぇのか?」

 

「かもな。でも今はそんなことを言ってる場合じゃない。もうすぐ夜になる」

 

「早急に宿代わりになる建物を探さないと」

 

「せやな、でも兄ちゃん。どこに泊まるんや?」

 

「兄ちゃんじゃなくてサンな?」

 

「アハハ、すまんすまん」

 

「まぁ地図見ればわかるだろ」

 

「なんか大雑把じゃない?」

 

「いいんだよ、それくらいで」

 

 ──そして僕は、地図を頼りに近くの小学校の最上階を寝床に提案した。みんな、一秒でも早く、全部忘れて眠りにつきたかったのだろう。反対らしい反対は一切なく、僕らは小学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校庭に徘徊するゾンビをちらほら駆除して、僕らは都立朱雀小学校の4階に辿り着いた。

 

「よし、2階から4階までゾンビはいなかったし、窓からの見晴らしもいい」

 

「今夜の寝床は、ここで問題なさそうだな」

 

「うむ、そうだな。一応ゾンビの襲来も考慮して交代で見張りは立てた方がいいだろうな」

 

「だにゃー。けどあたしはもう、へとへとだよ」

 

「いいよ。見張りは最初、僕がやる」

 

「すぐに疲労も治るしね」

 

「わぁ、ホンマやねんな。不死身っていうの」

 

「信じてなかったのか?」

 

「そんなことあらへんけど……ちょっと疑ってた」

 

「まぁ信じられるわけないしな」

 

「へっ、正直に言っていいんだぜ、この兄ちゃんが怖いって」

 

「なっ、別に怖かあらへん」

 

「かはっ、まぁいい。ほらこっち来い、やちる」

 

「うん──。ねぇ、脱いでいい栗子?」

 

「今日は好きにしな。見張りが紳士なら万事順調だ」

 

「ぶふぉっ、み、見ねえよ! きょ、興味無いし」

 

「今日はもう……みられてもいい……」

 

「はは……まぁ、流石に疲れたからな……」

 

「軍のことも……考えるのは明日にしよう……」

 

 みな、ヘトヘトの調子のまま、あるいは抱き合いながら、或いは壁にもたれ掛かり、或いは教室の床に横になり、交わす言葉も最小限に、寝息をたて始めた。

 

 ったく、普段はあんなにうるさいのに寝息立てりゃ……可愛いんだよな、不思議と。

 

 鬼気迫る戦いを演じようと、みな普通の女の子だ。そんな子たちを戦いに巻き込んだ政府軍、いやあの研究所は絶対に許さない。

 

「絶対に……守るからな」

 

 ガラガラ、と不意に教室の扉が開く音がした。

 

「ヒッ、ってなんだ来栖崎か……何処に行くんだ?」

 

「月を、見に行くだけ」

 

「月か……わざわざこんな時間にか?」

 

「……あんたには関係ない」

 

「いや、さっき自分で言ってたじゃないか。離れちゃダメって」

 

「あ、あれはなし!」

 

「フッ」

 

「何笑ってんのよ」

 

「いや、来栖崎にもこんな一面あるんだなって思って」

 

「まぁ丁度僕も外の空気吸いたいなーって思ってたところだしさ、一緒に行こうよ」

 

「分かった。でも話しかけないでね」

 

「分かったよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、屋上の鍵しまってるけど……」

 

 バゴォーン、と来栖崎が扉を蹴破る。

 

「マジかよ……」

 

 

 

 

 

 

 

「夜は静かだよな、来栖崎」

 

「話しかけんなって言わなかったっけ?」

 

「べつにいいじゃないか。話すくらい。それとも、僕と話すのがそんなに嫌なのか?」

 

「違う……けど、今はそういう気分じゃないの。ほっといて」

 

「そうか、お前の気持ちを汲んでやれなくてゴメンな。まぁ僕も外の空気吸いたかったからここに来たんだから、ここにいるくらいはいいだろ?」

 

「いいけど、ってか誰もいちゃダメとか言ってないんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が校庭を見ていると、ふと集団の人影が見えた。

 

「おい来栖崎。あれ」

 

「なによケツパ、話しかけんな──ってあれは」

 

「あれ、マズイんじゃないの?」

 

「ああ、わかってる。みんなを起こしに行くぞ!」

 

「だっから命令すんなケツパ!」

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