感染少女 ReBORN   作:キラトマト

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第十一話 罪と罰

「みんな! 起きろ!」

 

「にゅ……なに……もう参勤交代の時間……?」

 

「ふざけたこと言ってないで、敵が来たんだ!」

 

「ふぁぅ……サンくん、それは誠か」

 

「はい、校庭から二十人近い人間の集団が突撃してきています!」

 

 人間の集団、この言葉にみんなの顔が一気に青ざめた。

 

「政府軍ですかッ? 何故ここまで執拗に……」

 

「いや、おそらく違う。が、とにかく4階にいるのはまずいです」

 

「と、とにかく下の階まで移動しましょうッ、私が先陣を切りますわ」

 

「ああ、甘噛、まかせたぞ」

 

 僕らは足早に教室を出て、北側の階段を使い一階をめざした。

 

「一階に着いたら裏の給食室の裏口から出て、裏通りまで駆けますから」

 

「心得まし──」

 

「────ッ?!」

 

 ばったり、出くわした。3階から2階への踊り場で──

 

 銃火器を装備した、人間に。

 

「チィッ!」

 

 僕は奴らの元に駆け寄り、手に持っている銃を取り上げた。そして即座に組み伏せ、敵の狙いを聞く。

 

「お前ら、政府軍か?」

 

「ヒィッ! お、男?」

 

「いいから質問に答えろ」

 

「あ、あたしらはリーダーの命令で沙南と沙織を取り戻しに来ただけなんだよ!」

 

「政府軍じゃない!」

 

「ほぅ……まさかあの姉妹が元いた生存組合ってのはお前らのことか?」

 

「だ、だったらなんだって言うんだよッ!」

 

「沙織から聞いたぞ、お前らが──」

 

「サン様危ないッ!」

 

 パンパンッ、と僕の背後から銃声が聞こえる。

 

「もう追っ手が来たのか! 早く逃げるぞ甘噛!」

 

「わ、分かりましたですわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先程のサン様、カッコよかったですわ」

 

「あ、あれは忘れてくれ! 恥ずかしい……から」

 

 あの冷たい態度、アイツらを怖がらせるためにやったんだけどなぁ……

 

「照れてるサン様も可愛いですわ!」

 

「なに無駄話をしているのですか二人共!」

 

「あ、百喰さん! 敵の目的がわかりました!」

 

「なんですって?! でもそんなことより今は……」

 

 百喰さんは2階の踊り場に向けて威嚇射撃を開始する。この様子じゃ、今は伝えられそうもないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵は政府軍じゃねぇな、多分私らと同じ民間だ」

 

「いや、それは分かっているんです。それで、敵の目的なんですけど、夢氷姉妹を取り戻しに来たらしいんです」

 

「でも、聞いてたでしょ? 沙織ちゃんのグループの話」

 

「話? なんだそりゃ」

 

「沙織ちゃんが散々な扱いを受けてたってこと」

 

「サオリンにそんな過去が……」

 

「まあな。ってか、もうあだ名つけてんのかよ!」

 

「あったりまえじゃん! 仲間なんだから」

 

「ま、政府軍じゃないってわかったんなら、安心だな」

 

「それに、相手は見たところ単発式の銃火器しか持ってなかった。それだったら来栖崎の敵じゃ────」

 

「──サンちゃんッ、南階段側から敵さん来てるよッ!」

 

「南ッ──?」

 

「いたぞッ!!」

 

 L字に折れ曲がった廊下の南側を、敵兵が十人ほどこちらへと走ってくるのが見えた。

 

「君たちの目的は分かっている。夢氷姉妹を奪還することだろう?」

 

「──ッ?!」

 

「な、何故それを?!」

 

「ケツパ、それ言っていいの?」

 

 来栖崎が耳元で聞いてくる。

 

「大丈夫だ。計画はもう考えてある」

 

 僕は来栖崎に小声で返答すると、奴らの方へ歩みだした。

 

「返して欲しいんだったら、返してあげるよ。それに、僕らは攫ったわけじゃないからね」

 

「な、いるのか!?」

 

「ああ、だが条件がある」

 

「なんだッ? どんな条件でも呑む。だから……」

 

「ああ、お前たちのアジトへ行かせてくれ」

 

「はぁ? い、いや、いいわよ」

 

「いいんですか? リーダー」

 

「いいのよ。どうせ────」

 

 なにか小声で内緒話をしているが、まぁ構わん。

 

「じゃあ二人を連れてくるんで、貴方はメンバーの停戦命令を出しておいてください」

 

「わ、分かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい沙織ちゃん、沙南ちゃん」

 

「なんや? 兄ちゃん」

 

「だから兄ちゃんじゃないって、それよりも、君の元チームメンバーが君たちを迎えに来たよ」

 

「え、あの人らが?」

 

 沙織は怯えた様子でこちらを伺う。

 

「ああ、それで、君たちを取り戻しに来たらしいんだ。だから──」

 

「嫌やッ!」

 

「いや、ほんの少しだけ戻ってくれるだけでいいんだ。僕たちがあの人たちのアジトに行く約束もしてあるしね」

 

「……まさか、あの人らの味方──」

 

「いや違う。だから、ちょっとでいいんだ、すぐに連れ戻すから」

 

「わ、分かった。約束やで!」

 

「もちろんだ。僕は約束を決して破らないからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、連れてきましたよ」

 

「沙織……沙南……!」

 

「改めてお礼を言わせてもらうわ。本当にありがとう……!」

 

「では、あなたたちのアジトへ……」

 

「ああ、そのつもりだよ」

 

「えぇ?! なになに? アジト!?」

 

 アドがはしゃぐ。

 

「で、さっき私たちで考えたんだけど、あなたたちには迷惑かけたってことで、なにか食事を振舞おうと思ってるの。いい?」

 

「ええ、構いません」

 

「お食事ッ! 甘いものはあるぞよ?!」

 

「甘いものね……贅沢なものはちょっと難しいけど、可能な限り用意させてみるわ」

 

「お肉はあるです……?」

 

「お肉……ね、うん、高級なものでなくて良ければ見繕えるわ」

 

 まぁ睡眠薬が入ってるせいで、僕は食べれないんだけどね……

 

「「「肉じゃああああああああ!!」」」

 

「よーし皆のシュー! 次なる目的地は千妃呂ズハウスforモラトリアムに決定ぞッ!」

 

「千妃呂? モラトリアム? なんだそれ」

 

「このお姉さんの名前だよ!」

 

「で、モラトリアムってのは、このお姉さんのチームの名前。知らなかったの?」

 

「ああ、さっきまで姉妹を連れてきていたところだったからな」

 

 ────この話をしている最中も、沙織と沙南の表情は曇ったままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、どうしてなかなか広いじゃねぇか」

 

「あひゅー!」

 

「立派じゃないか。1000人ぐらい収容できるんじゃないか?」

 

「ふふ、ありがとう。スタンディングでよければ1500人収容できるわ」

 

 ──────アドたちがステージに上がって遊んでいる最中──────

 

「いやー、騒がしくしちゃってすみませんね、ホントに」

 

「いいのよ。賑やかでいいわねぇ。ポートラルは」

 

 ニッコリと笑って、カウンターに手招きされたため、僕と甘噛、その隣に礼音さんと来栖崎が腰を下ろした。

 

「賑やかではなく、阿呆と言うのですわ。サン様がいらっしゃって、幾分マシになりましたけれど」

 

「ふふ、全盛期に会ってみたかったわね」

 

「おや、そういえばライブハウスに入ってから沙織と沙南を見ないが」

 

「あ、ええ。今、仲間に奥まで連れてってもらったのよ」

 

 本当かな? まぁ姉妹揃って生きてるんだし、すぐに殺すということはしないだ────

 

 急に意識が遠のいていく。なんだ? 僕はまだ何も食べて──

 

「────ツパ、おいケツパ。起きろ」

 

「ん、僕寝ちゃってたのか?」

 

「そんなこと言ってる状況じゃない」

 

「私も目が覚めたらここにいて……」

 

「まさか! おい来栖崎、早くあの姉妹を助けに行くぞ!」

 

「命令すんな! って言いたいところだけど、今日だけは許してあげるわ」

 

 片っ端から部屋を開けていく。

 

「おーい。沙織ちゃん! 沙南ちゃん!」

 

「──────けて!」

 

 どこか遠いところから、助けを求める声が聞こえる。

 

「声が聞こえるぞ! 早く助けに行かないと!」

 

「分かってるわよ!」

 

 僕らは走った。声のした方向に向かって、全速力で

 

「この部屋か。おい来栖崎、このドア、開けられるか?」

 

「当然よ」

 

 バァンッ、という轟音と共に、二人が閉じ込められているであろう部屋のドアは派手にぶち破られた。

 

 そして、中にいたのは──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────体がボロボロになり、衰弱しきって地面に倒れている夢氷姉妹がいた。

 

「……ぉぃ、どういう……ことだ」

 

「いや、さっき声がしたんだ、まだ生きてるはずだ!」

 

「おい沙織ちゃん! 沙南ちゃん!」

 

「……にぃちゃん?」

 

 僕の声に二人の目が覚める。

 

「いいから僕の血を飲め!」

 

「え、血?」

 

「いいから、これで傷が治るから、早く!」

 

 僕はそう言って、ナイフで傷つけた左の人差し指を差し出す。

 

「え? 傷が……治ってく」

 

「やったで! 沙南! 沙南も兄ちゃんの血、飲んだら治るで!」

 

「……ぅん。分かった」

 

 何か言いたげな表情の沙南だが、まずは傷の修復が先だ。なりふり構ってなんかいられない。

 

「ちょ、アンタなにやってんのよ!? 私のケツパでしょうが!」

 

「いや、彼女たちはゾンビにはならないさ。傷を治しただけだから」

 

「それでも……!」

 

「とにかく、あとはポートラルのメンバーだけだ」

 

「沙織ちゃん、沙南ちゃん。立てるか?」

 

「うちは大丈夫やけど、沙南が……」

 

「ああ、だったら僕が背負うから、来栖崎はポートラルの連中を助けてやってくれ!」

 

「いちいち言われなくても!」

 

 来栖崎はそう言って、ライブハウスの舞台がある方へかけ出す。

 

 僕らもそれに続いて、走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこれは……」

 

 ライブハウスの舞台前に着いた僕たちが見たのは、血溜まりに横たわるモラトリアムのメンバー。ベッドに縛られているポートラルのメンバー、まさしく地獄であった。

 

「おい来栖崎。誰も殺してないよな?」

 

「もちろん、浅く切っただけよ」

 

「ひ、ヒィィ! た、助けてくださいぃぃぃ!!」

 

「今更謝ったって遅いわよ。この子達にこんな仕打ちをしておいて」

 

 そう言って、残りのメンバーを切り伏せていく。

 

「他のメンバーは生かしておいたけどあなたは別。死んでもらうわ」

 

「ぐ、ぐるっでる……あんたは……」

 

「黙れ外道。年端もいかない子達に拷問するあんたに比べちゃ──」

 

「黙れごの化け物がッ!!」

 

 ピクリ、と来栖崎の動きが止まる。

 

(やっぱこいつ、死んだ方がいいんじゃないかな)

 

「あ? 今なんつった」

 

「ケツパ……?」

 

「来栖崎が、化け物、とか……言ったのか?」

 

「そうよそうよぞうよ゙この化け物がッ!! なによなんなのよっ! こんなな化け物がッ! 一丁前に人の皮被ってッ! 偉そうに人間様に説教してッ!? 人間ごっこしてんじゃないわよッ! 死ねッ!! 人間に迷惑かけずに死ね化け物!!」

 

「……人間ごっこで何が悪い……! あんたは少なくとも六人は見殺しにした。そんな奴が……人間語ってんじゃねぇよッ! ……それに来栖崎はな、消えた恋人を探してんだよ! お前みたいな目標もなんもない腐れ外道に比べたら」

 

「来栖崎の方がよっぽど人間なんだよ!」

 

「悪い来栖崎、刀、借りるぞ」

僕は来栖崎の手から、刀を取り、目の前にへたりこんでいる屑に刀を振りかぶる。

 

「……死ねよ」

 

「やめてッ!!」

 

 僕は背後からの大声によって、僕は刀を振り下ろす手を止める。

 

「沙南ちゃんか……なぜ止める」

 

「この人は……たしかに悪い人です。でも、殺すのは……やりすぎだと思います」

 

「でも……コイツは沙南ちゃんたちの友達の仇なんだぞ。それでもまだ、許しておけるって言うのか……?」

 

「……もう、やめて……私のためにあんたが人殺しになる必要なんてない……だからお願い、もうやめて……!」

 

「来栖崎……。……ごめん、少々気持ちが荒ぶってしまった。反省するよ」

 

「……。……?」

 

「……いいか、これは僕の命令だ──モラトリアム」

 

「……めい……れ」

 

「五分だ。五分以内に全ての仲間を連れてライブハウスから撤収しろ」

 

「そ、それだったら、この子たちも……」

 

「沙織ちゃんと沙南ちゃんは既に僕らポートラルのメンバーだ」

 

「もしそれでも、この子達を連れていくと言うなら────分かってるよな?」

 

 醜くのたうち回るように、千妃呂たちは全速力で撤収を開始した。

 

 ────五分後、モラトリアムは跡形もなく撤収しきった。

 

「……来栖崎。すまない」

 

「なんで謝るのよ」

 

「お前に、辛い思いさせちゃったからさ」

 

「ん。分かったわよ、じゃあお詫びに、血」

 

「ん?」

 

「血、って言ってんじゃないの!」

 

「あ、ああ! そうだ、忘れてたよ! はい」

 

 僕が差し出した指を来栖崎は、はむ、と口に咥えた。

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