感染少女 ReBORN   作:キラトマト

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第十二話 前兆

「────こうして、憎きモラトリアムを成敗した勇者ヒサギンは、助けたお姫様サンちゃんとともに」

 

「二人の幼女を助けるのでした──めでたしめでたぁしぃ……」

 

 ミルクセーキのひげを作りながら、アドは朝食を囲む皆へと得意気に語った。

 

「僕は姫様じゃない。ってのは置いておいて、まぁ大体あってるよ」

 

「ふむ……私たちが寝ている間に、戦争が起きていたんですね」

 

「……かたじけない。何の役にもたてなかった……」

 

「ふっふふー、寝てても敵を退けちゃうなんて、もしかしてあたし天才ぞ?」

 

「起きてても仲間に引かれてる奴がなんか言ってんぞ」

 

「酷い!」

 

「ま、それで豪勢に朝飯にありつけてるわけだ」

 

「まぁな。ライブハウスの奥は、予想以上に入り組んでて沙織ちゃんに教えてもらったんだけどね」

 

「で、食料庫を見つけたから、こうやって食べてるってわけ」

 

「ありがとうな。沙織ちゃん」

 

「う、うん」

 

 沙織が僕に脅えている気がするが、まぁ気のせいかだろう。

 

「で、だサンくん。いよいよもってだが」

 

「朝食中になんだが、今後の身の振りについて、一度検討しないか?」

 

「あ、ええ、軍の封鎖についてですね」

 

「しっかし、ヤバイ展開になってきたじゃねぇか。軍が封鎖するのはわかるが」

 

「トカゲのしっぽ切りじゃあるまい、殺そうってのは納得いかねぇよな」

 

「海浜橋の軍の対応からみても、信ぴょう性は高いと僕は考えている」

 

「日本政府は一体何を考えているのだろうか……。サンくん、過去の記憶から何か分かることはないか?」

 

「ああ、すみません。何も、思い出したことは……ないです」

 

「いや、別に責めているわけじゃないんだが……」

 

「まぁ、軍が敵って分かったことですし、僕らがやらなきゃいけない事はもう決まってるんですよ」

 

「なんだ、それは?」

 

「情報収集と戦力増強、渚輪区脱走路の確保です」

 

「真実を知り力を蓄え、この島から一秒でも早く出る、か」

 

「はい。まぁ大まかなプランですけどね。僕はこれを思いついたんですけど、みんなはどうかな?」

 

 朝飯の合間に話す話題にしては些か重すぎたのか、みんな食べる手が止まり考え込んでしまった。

 

「サンちゃん、柚子胡椒とってー」

 

 その沈黙を破ったのは、アドだった。

 

「たく、お前はいつも呑気なもんだな。ま、それがいいんだが。てか考えてんのかよ」

 

「考えてるよー」

 

「考えてるって……じゃあアドの意見を聞かせてもらうぞ」

 

「ようはさ、みんなで頑張って、元気ハツラツこの鳥かごから羽ばたくぞぇ! ってことだしょ?」

 

 アドはそう言うと、あどけなく笑った。

 

 ったく、うちのリーダがアドで良かったよ。

 

 仲間の顔に、僅かに活力が戻りだす。

 

「うっし、────ってなわけで皆のシューよく聞け!」

 

「突如迫り来る巨悪、そして鳥籠世界の暗雲、だがあたしらにゃ、生まれ持っての翼がある!」

 

「ってなわけで、第一回『南の島までランデブー作戦』の延長続行をここに宣言するぜぃ!」

 

「作戦名変わってんぞ」

 

 ──ともあれ、各々が各々で、アドに応える。

 

 未来が不明瞭だからこそ、調査作戦は、続行であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆけーゆけゆけ邁進、前進、陪審員♪」

 

 僕らはライブハウスを出て、さらに東へと歩き出した。

 

「サン様、次はどちらに向かわれるのですか?」

 

「ああ、まずは『鳳凰軍事学校』の偵察に向かおうと思ってる」

 

「偵察? 何故ですの?」

 

「あの軍事学校は既に政府軍が占拠してるんだ。って、朝の話聞いてなかったのか?」

 

「……サン様の向かう方角へ、御伴が叶えばどこでもいいですので」

 

「いやいや……」

 

「けれど、何故わざわざ偵察なんかに行くのですか?」

 

「分からないのか? 敵の戦力を把握しなきゃ、勝てる戦いも勝てないんだよ」

 

「それに、万が一襲われても、来栖崎がいるからね」

 

「サン様は……来栖崎さんのことを信頼してらっしゃるのですね」

 

「まぁな。でも、僕のことも頼って欲しいとは思うけどね」

 

「どういうことですの?」

 

「いや、僕って不死身じゃん? だからさ」

 

「不死身だったら、どんな扱いをされてもいいとお思いですの!?」

 

「甘噛?」

 

「あ、すみません。つい取り乱してしまいました」

 

「別にいいんだ。甘噛がそんなに僕のことで熱くなれるんだって思って」

 

「当たり前です。サン様は私の想い人ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、汗臭くてそろそろもたねぇよ、身体が」

 

「ええ……ですね。シャワー室の場所くらい、言い残してから逃げて欲しかったです」

 

「せめて下着替えてぇよ……マジで」

 

「シャワーくらい良いだろ。どうせあと数日でデパートに戻るんだからさ」

 

「はぁ……これだから童貞は」

 

「ど、どど童貞?! いやそんなわけないだろ! もしかしたら元の体ではモテモテだったかもしれないだろ!」

 

「だってよアド。サンの奴、まだ来栖崎と○○○○(自主規制)してねーんだってさ」

 

「は? ……粉物あんた……またぶちカカスわよ?」

 

「ブチカカス、ってサンのセリフじゃん。んな仲いいのに、サンも奥手だこって」

 

 来栖崎が襲いかかる前にゾンビが襲いかかってくれたことで、喧嘩はお流れとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいかよく聞け、童貞」

 

「クソッ、これで僕が卒業してたら覚えとけよ!」

 

「年中無休で女がいい匂いするわけじゃねーし、毛だって剃らなきゃボーボーになるんだよ」

 

「あたしらが普段、見た目にどんだけ気を使ってキープしてるか、知らねーだろ」

 

「ああ、そうなのか。大変だな、女子って」

 

 正直、僕が元の時代にいた時は女性との関わりが少なくて、知識すらなかったんだ仕方がないだろう。

 

「ほらサン、礼姉みてみろよ」

 

「露出多い格好で来たこと後悔してる顔してるぜ?」

 

「……できれ足元は、見ないでくれると助かるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや甘噛、意外と身だしなみについてうるさいこと言わないんだな」

 

「サン様の……そういった水を割ったような性格は好きですよ……」

 

「わたくし、永久脱毛しておりますのでムダ毛処理はいりませんし、それにわたくし」

 

「今朝、シャワー浴びてきましたし」

 

「「「ふざけんなよお前ッ?!!」」」

 

 一同から一斉に怒声が飛んでくる。

 

「お、おいてめぇ朝風呂浴びたってホントかよ?!」

 

「はい。シャワー室が奥にありまして、ペットボトルにお水も汲まれていましたので」

 

「てめぇ?! んで教えねぇんだよゲロ野郎?!」

 

「あらやだ、ゲロ臭いのは貴方たちですわ。くちゃい」

 

「くちゃいじゃねぇんだよ……猫かぶる女見るとぶち殺したくなるアレルギーなんだよあたしゃ」

 

「タオルドライに時間がかかりまして、朝食は食べれませんでしたけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく歩いていると、僕らは、巨大なショッピングモールを発見した。

 

「ねぇサンちゃん! ねぇねぇねぇねぇ遠くに見えるでっかい建物はぁぁぁ!」

 

「あれは……ショッピングモールだな」

 

「あれは確か『メグリエ』じゃないか。渚輪区随一を謳っているモールだった気がするが」

 

「ねぇねぇ! 駐車場も広いし、寄って行こうよぉー、ねぇーねぇー!」

 

「はしゃぐな、子供じゃあるまいし」

 

「しょぼんぬ」

 

「けどサン、通り道だしちょいとばかし寄り道したっていいんじゃねーのか」

 

「ダメとは言ってないぞ。ちょうど僕も休みたかったところだし」

 

「うっし、決まりだぜぃ! 全軍、ショッピングモールメグリエに突撃じゃぁぁ!」

 

「ちょ、そんなに急いで行ったら……!」

 

「私が止めて来ますッ、メグリエの入口で待ってますので!」

 

「ったく、あいつの体力は無尽蔵かよ……」

 

「しかし、実際私もショッピングモールに寄れるのは助かるよ」

 

「今直ぐに使いたいものが無いわけではないしな」

 

「そうですね。あ、そういえば!」

 

「ん、どうしたサンくん」

 

「いや、来栖崎に用が……」

 

「ああ、その事か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい来栖崎、ショッピングモールに着いたらさ、ドラッグストアに寄ろう」

 

「さ し ず す る な」

 

「違うって、お前、体、臭くなってきてるし」

 

「……」

 

「ドラッグストアに制汗剤とボディーペーパーあったら、いいなって思ってさ」

 

「お前のその激臭も、多少は緩和されるはずだ」

 

「……」

 

 無言のうちに、僕の顔に回し蹴りが放たれた。

 

「ぃって……ちょ、ごめんって」

 

 何故だ。結構優しめに言ったはずなのに……

 

「死ね、ほんと死ねッ」

 

 僕に追撃を与えると、来栖崎はスタスタとショッピングモールに行ってしまった。

 

「ったく、不死身だからってさぁ……」

 

「大丈夫ですの、サン様」

 

「あ、ああ……死ぬかと思ったよ。まぁ死なないんだけど」

 

「もう、来栖崎さんも最低ですわね……」

 

 甘噛は僕を労わるように言った。

 

「サン様がここまで心配されているというのに、その気持ちも知らないで」

 

「……まったく、手が早い性格だけは直して欲しいよ」

 

「暴力振るう女性は最低です」

 

「けどまぁさ、来栖崎だって僕といることを強制されてるんだし、辛いことばっかりなんだよ」

 

「早く人間に戻してやらないとな……」

 

「わたくし、来栖崎さんが羨ましいですわ」

 

「ん、どういうことだ?」

 

「いえ、わたくしも来栖崎さんみたいに感染したいなーって、そしたら」

 

「わがまま言ってもサン様に優しくしてもらえるのかなー、なんて」

 

「いや、そんな都合のいいもんじゃないぞ。ゾンビ化ってのは。殺人衝動なんて、自殺したくなるくらいの苦しみらしいし」

 

「それに──────」

 

「もういいですわ。言わなくて」

 

「すまん。嫌な話を聞かせてしまったな」

 

「じゃあ僕は来栖崎に謝らないといけないから先行っとくよ。甘噛も早く来いよー!」

 

 僕は場の空気を悪くさせて居心地が悪くなったので、逃げるようにショッピングモールへと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......」

「......なにそれ」

 

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