「おおおおおおおっっっきいいいよぉぉぉお!!」
着いたと同時にアドが大声を上げた。
「騒ぐな。またゾンビが来たらどうするんだ」
「あーごめんごめん」
「しかし、ゾンビが一匹もいないとはな」
「女性陣は女性陣で探したい物もあるだろう。悪いが、班分けをして探さないか?」
との礼音さんの提案で、僕らは最低限の人数に分かれ物色を開始した、のはいいんだが、なんで僕の班だけ四人も来てるんだよ?!
「んー、オシャレはあんま興味ないねんかなー」
「……そんなこと言わずに、これ」
しかもそのうちの二人は勝手に行動してるし。
「サン様ー、見てくださいましー! お洋服屋さんが並んでますよー!」
「あ、ああ今行く。沙織ちゃんたちも、こっち来て!」
「分かった! ほら行くでー、沙南ー!」
女性物の服が並ぶとおりに着いた甘噛はとにかく目一杯はしゃいでいた。それは、初デートに行く女性のように。
まぁ、来栖崎はもうちょっと楽しんだらな、とは思うけど。
「わっ、ほら、『BALLY MASON』ですわ!」
「お、ホコリは被ってるけど、商品は残ってるな」
僕が一枚の服を手に取った瞬間、服の裁縫がバラバラになってしまう。
「あちゃー、こりゃ虫食いがひどいな」
「そ、それも仕方の無いことですわ。あ、ねぇサン様、こちらに来てください!」
「リボンコーナーか、どれか欲しいのでもあったのか?」
「いえ、サン様に選んで欲しいなと」
「あぁ、そういうことか、ならこれなんてどうだ?」
僕は店頭に並べられていた花柄のリボンを取る。
「レモンイエロー……」
やべ、沖縄出身らしいから南国っぽい色選んだんだけど、やっぱり青色の方が良かったか?
僕は内心かなり焦りながら、甘噛の応答を待つ。
「絶対、大切にします」
満面の笑みだった。
後の展開を知っている僕にとっては、残酷なまでに純粋な、その笑顔に、僕は涙を零してしまう。
「うん、ありがとう。気に入ってもらえてくれてうれしいよ」
僕は慌てて顔を後ろに向け、涙を拭う。
「なに泣いてんの、気持ち悪いんだけど」
「別に泣いてねーし」
「それよりも、来栖崎はリボンとか興味無いのか?」
「リボン嫌い、なんかつけてるやつきもい」
「あ、そうなんだ。でも、つけたらもっと可愛くなると思うんだけどなー」
「いいでしょ、別に。私あんましリボンとかシュシュとか、髪の装飾似合わないのよ」
「そんなこと言わずにさ、これとか!」
「この黒すっごく似合ってると思うよ!」
「ちょ、やめ」
試しに、来栖崎の額にリボンを添えてみる。
「ど、どう……?」
「おぉ、これはいいぞ。マフラーの赤と髪の白に黒がワンポイントであることで、目立ってるし、それに」
「リボン似合わないとか言ってたけど、めっちゃ似合ってるぞ!」
「なぁ! 甘噛もそう思うよな!?」
「……。……」
「おーい甘噛ー、聞いて────」
「そうだ来栖崎さん! そのリボンでしたらあちらのお洋服はどうですのー」
と、甘噛は来栖崎の手を無理やり引き、奥の更衣室へ歩いて行ってしまった。来栖崎も抵抗すると思いきや、意外と従順だった。
なんだ、結構気に入ってくれたんじゃん。
「じゃ、沙織ちゃんはどうかな?」
「うちはそんなオシャレとか興味無いから──」
「……お姉ちゃん、さっき選んだやつは?」
「あーもう分かったから、つければええんやろ? つければ」
そう言って、さっき沙南に選んでもらったであろうリボンを付けた。
「ど、どうや?」
「え、いいじゃん。結構似合ってるよ!」
「お、そうか?! よっしゃ、ありがとうな沙南!」
「喜んでもらえたようで何よりだ────って、あれは……!」
そう、モールの大通りを、見覚えのある生き物が通ったのだ。
「沙織ちゃん、沙南ちゃん! 僕に着いてきて!」
そう言って、全力で踵を返し、女子更衣室の扉を開ける。
そこに居たのは、現在お着替え中の来栖崎と、色々な服を持った甘噛だった。
「────ッ!」
来栖崎から蹴りが繰り出される。それを避け、僕は状況の説明をする。
「早く服を着ろ! ゾンビが襲来した!」
「ちょ、開口一番がそれ? 謝罪はないわけ?」
「あぁ、開けたことは謝るよ。すまない。それより早く応戦するぞ!」
僕らは武器をかまえ、ショッピングモールの大通りへと向かった。
「……こりゃひでーな」
全階吹き抜けになった大通り4階から、1階を見渡した僕は唖然とする。
急に湧いて出てきたゾンビたち。
「ど、うなってんのよこれ……」
「さっきまで……ゾンビなんて一匹たりともいなかったじゃありませんか」
「まさか……沙織ちゃん。この状況、経験あるよね?」
「……うん、これ、工場の時と一緒や」
「それって、入る時にはいなかったゾンビが湧いてきた」
「こんなところで喋ってる場合じゃない! 急いで出口を目指すぞ!」
来栖崎の言葉で、僕達は急いで出口を目指す。