「ふわぁー……おはよ、来栖崎、甘噛」
「おはよ、ケツパ」
「おはようですわ。サン様」
「お、おはよう……あのさ、大丈夫なのか?」
「大丈夫、ってなんのことですの?」
「昨日の……いや、何もない。気にするな」
「そうですのね。では、そろそろ行きましょうか!」
「え、行くって、どこにだ?」
「忘れていたのですか? 全く、お寝坊さんなんですから」
「え、僕寝坊していたのか!? そ、それは大変だ。早く準備するぞ!」
「私たちはもう準備してあるんだけど、早くしてくれない?」
「来栖崎さんもそう責めずに」
そういえば僕が起きた時二人とも目が覚めていたな。僕としたことが……
「さぁ皆! 鳳凰軍事学校までいざゆかん!」
アドの号令に僕らは不安な足取りで鳳凰軍事学校方面まで進んでいた。
「ねぇねぇサンちゃん、聞いてよー!」
「なんだアド、うえぇ、てかお前臭ッ」
「あひゃ、サンちゃんだって人のこと言えないスルメだぜ、もう」
「それを言うならスルメじゃ……」
「細かいことはいいの!」
「はいはい、わかったから。で、なんだよアド」
「そうだよ聞いてけろけろ!」
「リッちゃんがさぁ! あたしなんかお嫁に行けないっていじめるんだぜ?!」
「はっ、いやいやアド。お前に嫁の貰い手入るわきゃねーだろよ」
「いるもん! ねぇサンちゃんからもなんか言ってやってよ!」
「ハッハッハ。性転換でもしたらいいんじゃね? w」
「女としての幸せが欲しいんだよッ?!」
「てかちょっと意外かも。アド、お前って結婚願望とかあったんだ」
「ふっふふー、もち、とーぜんよぉ! 子供だって3人欲しい家族計画です、はい」
「可哀想だよなぁ」
「なに?! 可哀想って、産まれてくる子供が!?」
「なんでそんな話題になってんだよ」
「アドさんが……私と栗子がデキてるって……言うから」
「でで、ででででデキてるって?! えぇ?!」
「子供ができるようなこたぁしてねぇよ」
「それ以外は……し、してるんですか……?」
「子供ができるようなことって、どういうことなんや?」
「沙織ちゃんは知らなくていいから、こんな話は聞かないの」
「気になるんや! お願いやから聞かせてくれ!」
「沙織、じゃあ教えてやるよ。ちょっと耳貸せ」
「ちょーっと待ったー! 沙織ちゃん! 子供はね、コウノトリが運んでくるんだよ!?」
「へぇーそうなんや。ありがとうな、教えてくれて!」
その純粋な目が僕の心にザクザク刺さるよ、ホント。
「……今どきコウノトリが運んでくるって、年寄りでも言わねぇーぜ」
「栗子、サンさんは100年前の人なんですから、仕方ないこと」
「おいそこ、黙れ。それと栗子、あの姉妹に余計なこと教えたら……分かってるよな?」
「なに保護者ヅラしてんだよ、怖い怖い」
「ホント、栗子の相手してると疲れるよ……」
「そうですよ、栗子さん。あまりサン様の手を煩わせないで下さい」
「いや、そこまで言わなくても……」
「サァァァァァァンちゃん! あたしを婿養子にしてケロぉぉぉ」
「うるさいなぁもう! どういう話の流れでそこに辿り着いたんだよ!?」
みんな凄いよ、これから死地に赴くというのにこんなに明るくいられるなんて。
そして歩くこと1時間。
僕らは新花芽地区の東側、広末駅駅前付近にまで辿り着いた。
「しっ、皆静かにっ」
前を歩いていた礼音さんが急にぼくらを止め、ビルの影に隠れてるように促した。
「ようやく現れましたか。じゃ、どうします?」
「そりゃ、迂回して行くしか……」
「────迂回して何処に行く気だ、小娘共」
「あはは、こんな場所に何の用ですか? 軍人さん」
「貴様に答える義理はない、各員、奴らを拘束しろ」
「────ッ、やっぱり、そうなるよな……! 来栖崎ッ!」
「チイィッ」
僕が命令したのが気に入らなかったのか、来栖崎は舌打ちをして、力任せに拳を地面へと振り下ろす。
爆弾が爆発したような粉塵が立ち篭める。
「手元がガラ空きだぜ! 軍人さんッ!」
「なに!?」
僕は今の爆発により、一時的に目が眩んだ軍人から機銃を奪い取る。
「ふっ、どうせガキが打てるわけが────がぁっ」
「バァーカ、撃てるんだよ!」
僕は軍人の脚を撃ち抜き、動けないようにする。
「ギャッ、離せぇ!」
「アドか?! クソッ!」
「甘噛!」
「分かっておりますわッ!」
「当たれぇぇぇ!」
ヤケになって撃った弾は、もちろん当たるはずもなく、すぐさま弾切れを起こし、取り押さえられてしまう。
「クソッ、弾切れかよ! ──あぐッ」
「殺さぬ程度に撃てッ! 全員生け捕りで組み伏せろッ!」
「ふっ、僕らがそんなに怖いんですか?」
「くっ、コイツは殺しても構わん!」
「へー、じゃあ、僕の言葉を認めるってことに──」
パァン、と、一発の銃弾が僕の頭を撃ち抜く。
「うぐぁ!」
僕は数秒の間だけ意識を失ってしまう。
「はぁ……おはよ、軍人さん」
「なんだと!? 俺は確かに頭に撃ったはずだ!」
軍人が困惑している隙に、甘噛と来栖崎に命令を出す。
「今のうちにアイツらの車を奪うんだ! 早く!」
「で、でも!」
「行くわよ、甘噛!」
「わ、分かりましたわ!」
エンジンの音ともに動き出す軍用車両。
「な、なんだと?!」
「気とられてんじゃねぇよ!」
僕は目の前の軍人の足を手持ちのナイフで切り裂き、アドをおぶって車に乗る。
「走れぇぇぇぇ!」
タイヤをフルスロットルで回転させ、蛇行しながら発進する。
「ど、どうすればいいのですか!?」
「ハッ、アイツら、指揮官失って、慌てふためいてるぞ」
「と、とにかく、タイヤを撃て!」
ばららら、と打ち出される弾丸。しかし、その全てが車体に当たらず、僕に当たる。
「サンくん!? 大丈夫か?!」
「あ、はい。頭、撃ち抜かれたけど大丈夫でしたし」
「なに?! そんなことがあったのか! すまない、こちらも必死で……」
「謝らなくてもいいですよ、生きてるんですし」
「それと、来栖崎も甘噛もありがとうな、この車を奪ってくれて」
「追え、追え!」
後ろから大声が聞こえる。バックミラーを見ると、追跡してくるもう一台の軍用車。
「どうすんだよ!? このままデパートまで連れてく気か!?」
「止まらせた方が────」
「────止まらなくていい! 来栖崎!」
「お前が死なない限り、僕も止まらない! だから、止まるんじゃねぇ!!」
「私もそのつもりよ!」
僕は車の積荷から手榴弾を取り出す、そして、窓を開けて、道へと投げ込む。
「ど、どうするのだ!? もう止まれないぞ!」
「う、うあぁぁぁあああ!!」
爆煙をあげ、軍用車は木っ端微塵となった
正真正銘追っ手も振り切れ、僕らは進行方向だけを見据える。
その日、僕は初めて──────生きた人間を殺した。