「で、これからどうすんだ? サン」
姫片が僕に問いかける。
「どうするって、そりゃあアイツらを倒してここから脱出。それしかねーだろ」
「倒すって……正気で言っているのですか?! 智将さん」
僕の言葉に、少し怒りを混ぜた言葉で反論する百喰さん。
「ええ、本気です」
「ですが、あんなに巨大な組織を相手にして────」
「だから、まずは関連施設から潰していくんですよ」
「関連施設?」
「はい。農業テクノロジーセンター。通称ATC」
「今は政府軍によって占拠されてる施設です。そこには、沢山のクローンが眠っています。なので」
「まさか、それを助けようと?! そんな無茶な」
「無茶じゃありません。それに、またあの化物が現れたら? その方が危険です」
「……それもそうか、ではサンくん。私の罪滅ぼしとして、今回の作戦、私も入れてくれないか?」
「すみません、今回の作戦は潜入調査なので……」
「そうか、では、今回はやめておくことにするよ」
「では、作戦のメンバーを発表します。残ったメンバーはデパートの護衛をするように」
「僕と来栖崎で行こうと思います」
「甘噛さんはどうするのですか?! まさか、発症するまでに帰ってくる、とか言わないでしょうね!」
「はい、流石にそんな無茶は言わないですよ。さっきやいとさんに実験してもらって、僕の血は最低でも一日は効力が続くことがわかったんです」
「それで、携帯血液で帰ってくるまで甘噛には待ってもらおうと思いまして」
「……はい。その件は了承しました。ですが、そんな人数で成功するんですか?」
「はい、極力戦闘は避けたいので」
「じゃ、沙織ちゃんたちはここで待機しておくように」
「「はーい!」」
聞き分けが良くて助かるよ。ホントに
「行ってきます」
「……ビンゴだな」
正門の前には数人の政府軍が立っており、入れそうにない。
「じゃ、どれから殺すの?」
「殺さねーよ。どこか別の入口をって、ないんだったな」
「どうしたものか……」
「そうだな……来栖崎、この外壁って飛び越えられるか?」
「6mくらい、かしら? 余裕でしょJK」
「いや来栖崎、お前ホントにそういう用語よく知ってるよな」
「……別に、小耳に挟んだだけだし」
「じゃ、僕はロープとか持ってきたし、それで引き上げてよ」
「ロープとか、って、備えあれば嬉しいな、かしら」
「それ、憂いなし、じゃないか?」
「……嬉しいのよ。いいでしょ、人が喜ぼうが勝手でしょ」
そう不貞腐れげに頬を膨らませて、来栖崎はひょいっ、と6mを一飛び。外壁の上へと飛び乗った。
「ほら、ロープ垂らしたから掴まりなさい」
「了解」
来栖崎との協力プレイで、僕は遂に────ATCの敷地内に侵入した。
「ふぅ、改めて見るとかなりでけーな」
「当たり前でしょ。政府がかなりの資金援助をしていたんだから」
「ったく、いつどこでそんな勉強したんだっつーの」
「……関係ないじゃない」
「じゃ、裏口に行ってみるか」
「裏口?! って、なんでそんなこと知ってんのよ?」
「ああ、真綾の記憶だよ」
大体はこれを言っておけば信じてくれるからな。便利なものだ。
「えっと、……確か……ここだ」
記憶を頼りにたどり着いたのは、ボロボロになって、鍵もかけられないくらいの状態になったドアであった。
「本当に……あったわね」
ボロボロになって、ドアノブすらないドアを手で押して開ける。
「うぉごっごご」
建物内から出てきたゾンビと対面した。
「邪魔よ」
そう言って来栖崎は目の前のゾンビを切り捨てる。
「はい、いっちょ上がり」
「ここにもゾンビが湧いてるのか……」
「ゾンビを中に匿うとか、もう物的証拠ゲットでしょ? ATCは黒?」
「あぁ、そうかもしれないな。でも、このゾンビってさ、研究員のゾンビじゃないか?」
ATCの内部は、想定通りかなりの荒廃ぶりだった。
「本当に……機能してるのここ?」
一部崩壊した天井に、ひび割れた壁、血か薬品か判別もつかない汚れは至る所にあり、腐臭らしき異臭が蔓延り鼻を突く。来栖崎がそう疑問を抱くのも仕方ないことであった。
「ねぇただの廃墟じゃないの?」
「いや、それはない。入口に軍人がいたんだ」
「だから、できる限り見つからないように、クローンの保管場所に行くぞ」
「りょーかい」
僕は記憶を頼りに、一番奥の部屋へと進む。
「なんだよこれ……クローンなんて一人も────」
「ちょケツパ、アレ見なさいよ!」
来栖崎が指さしたのは一つの巨大なビーカー、その大きさに見合わず、入っている物体は人と同じ大きさの女性、というか……礼音さんであった。
「────ここは、『見 た な ?』と、言うべきなのかね?」
「お前ええぇぇぇえ!」
僕は怒りに身を任せて透露へと突撃する。
「ふん────殺れ」
そこに拘束具で縛られた二人の少女が彼を守るように登場する。
「「乱暴は──ダメ、だと言います」」
「黙れ」
そう言って俺は切りかかる。
「ちょケツパ!」
「来栖崎は赤を頼む! 僕は青を──殺る」
「クソッ、早すぎて見えねぇ!」
青は素早く、目で追うので精一杯といった感じであった。
──しかし、今やっと、攻略法を見つけた。それは────
「──これで終わりと──言っているのですッ」
「捕まえたぞッ、青いの!」
僕はやつの足を持って地面に叩きつける。青のガキは気を失ったようで、ピクリとも動かなくなった。
「加勢に向かうッ!」
一方その頃────
「コイツッ!」
来栖崎は赤色の子供に苦戦していた。
「来栖崎ッ! 一旦退くぞ!」
「ちょケツパ!」
僕は来栖崎を抱き抱えて血を飲ませる。
「退けぇぇぇえええ!」
僕は周りの様子なんて気にせず、全速力で駆ける。
そして、二人の少年少女がいなくなったクローンの保管庫、
「フフ、フフハハハハッ! 素晴らしい、素晴らしすぎるぞ世界ッ!」
そこには、歓喜に満ち溢れた雄叫びをあげる男が一人いた。