第二十二話 新たな力
無事に本州に到着した僕達。だが、そこで待っていたのは……。
「予想はしていたがひでぇなこりゃ」
姫片がつい声を漏らす。そして、耳がいい個体なのか、『ソイツら』は一斉にこちらへ向かってきた。今はひさぎも甘噛も特殊な力は持ってない……、なら僕が行くしか……!
「ちょっとサン。アタシらどんだけ軽く見てんのよ」
「だってお前ら、もうゾンビじゃねぇんだぞ! 無茶したらまた……!」
「サン様に助けてもらいます」
甘噛も口を挟む。
「……分かった。だが、これだけは言っておく。死ぬなよ!」
僕がそう言うと、船内に待機していた他のメンバーも含めて夢氷姉妹を除く全員でゾンビの大群へと向かっていった。
「はぁッ!!」
僕は向かっていった勢いでそのままゾンビ達を切り払う。だが……
「ちっ、おいサン、コイツら硬ぇぞ!」
僕たちの刃が通らない。姫片の鎌でも活動を停止しないってことは……。
「まずい、みんな! 一旦撤退だッ!!」
僕たちは船内に残っていた夢氷姉妹を抱えて、近くにあった建物へと逃げ込む。
「アイツら、渚輪区の連中とは桁違いに強ぇぞ……」
姫片が弱音を吐く。
「何かこの建物内に有効なアイテムがあるかも知れない。探索するぞ」
「了解!!」
一斉にみんなが建物内を探索していく。そして僕はというと……。
「ねぇサン、まさか、入るの……?」
隠し通路を発見していた。
「勿論だ。こういうとこには大体強い武器があるもんなんだよ」
そう言って僕達は通路を進んでいく。すると、開けた場所に辿り着いた。
「なんなのこれ……」
そこには、沢山の武器と、六つのアタッシュケースが置いてあった。
「嘘だろおい……」
僕は想定外の出来事にその場から動けずにいた。なにしろ、数十個はあると思われる弾薬や武器の数々と、恐らく大金が入っているであろうアタッシュケースが置いてあったのだ。
「ひさぎ、戻ってみんなに知らせるぞ!」
「う、うん、了解!」
僕らは来た道を戻って、さっき皆で集まった場所へと移動する。
「サンちゃぁん……なんもなかったよぉ……」
アドは相変わらずのテンションだが、それは放っておく。
「みんな、朗報だ。向こうの隠し通路の先に、武器庫があった」
僕がみんなの前でそう言うと、一斉に歓喜の声が上がる。
「いやぁっほぉーい! お手柄だよサンちゃん!!」
アドなんてこんなんだし……。
「とにかく、そこまで行くぞ」
皆と共に、先程の通路を道なりに進んでいく。
「なんて広いんだ……」
到着すると礼音さんから驚嘆の声が上がる。
「サンちゃん! この箱開けてみようよ!」
「え? あぁ、うん」
アドは僕の答えを聞く暇もなくそのアタッシュケースを開いた。
「なにこれ?」
(は? なにこれ、ってお金だろ?)
「はいはい、そういう冗談はいいから」
僕はそのアタッシュケースの中を覗き込む。
「なんだ? これは……」
中に入っていたのは、何かのベルト? のようなものと、四角い……僕が元いた時代で言うカセットテープのようなものが各一つずつ入っていた。
「と、とりあえず説明書を読むぞ」
僕は同梱されていた紙でできた説明書を口に出して内容を読む。
「こっちのベルトの方は……えぇっと、レイドライザーで、この四角いのが、プログライズキーって言うらしい」
「続き」
ひさぎが声を上げる。
「え?」
「だから続きは、って。使い方ぐらい書いてあるでしょ普通」
「いや、これで終わりなんだけど……っていうか、なんか破られたような痕跡があったから、多分誰かが破ったんじゃないかな……」
そう、その説明書は、一ページ目の付属品の書いてあるページしか存在していなかったのだ。
「知将さん、これを」
百喰さんから一つしかボタンがない、リモコンのようなものを手渡される。
(一回押してみろってことか?)
僕はそう考えてボタンを押す。そしたら爆発……なんてことはなく、壁に映像が投影された。
『それでは、今からゾンビへの対抗手段として開発した、我が社の商品、レイドライザーの実施試験を開始する』
そのあまりにも本格的な映像に、あのアドでさえ口を挟まなくなっていた。
そして、男性が出てきて、そしてレイドライザーを腰に装着し、そしてプログライズキーの天面にあるボタンを押した。
(何が始まるんだ? 一体)
そんなことを考えていると、衝撃的な映像が流れる。
男は、そのままプログライズキーをレイドライザーのスロットに入れ、上にある赤いボタンを勢いよく押した。すると……。
(か、変わった?!)
そう、男の姿は一瞬にして変わり、機械のような姿に変わったのだ。
『これにて、レイドライザー、及びレイダーの実施試験を終了する』
そこで映像は終わった。
(これレイダーっていうのか……)
すると皆が口々に。
「え、なに? CG……じゃないわよね?」
「明らかに変わってたよね……実際に」
「てかよぉ、これとこれがあればあれみたいなんになれんだろ? おいサン、一回やってみろよ」
姫片が僕にベルトとキーを渡してくる。
「……実験台……です」
やちるが不吉なことを言い出した。まぁ、不死身だしやってみてもいいか。僕は映像と同じようにベルトを腰に装着して、キーのボタンを押してそれをベルトのスロットに入れて、赤いボタンを押す。すると……。
『レイドライズ!』
「う、うわっ、なんだこれ!?」
僕の周りにアーマーのようなものが浮かんで、僕に装着される。
『eternaling human!!』
ベルトから何か英語のような文が発せられる。……いや、今はそんなことさしたる問題じゃない。
「か、変わったー?!」
僕は思わず大声を上げてしまう。そして、それが隠し部屋とはいえ外にも響いていたのだろう。隠し通路からゾンビの大群が通ってくる音が聞こえてきた。
「くっ……戦闘班はこのベルトを使うんだッ!! 他は奥に行って隠れてるんだッ!」
俺はみんなを扇動していく。すると、戦闘班の皆はアタッシュケースを開けて、各々違う色のキーを手にして、それをベルトに填めて姿を変えていく。
「よし皆、行くぞッ!!」
僕の声とともに、このレイダーという強化スーツの初陣が開始されるッ。
レイダーの力は圧倒的で、数十匹はいたゾンビを、瞬く間に倒していった。レイダーの武器は、個人個人が持っていた武器を元にして作られるようで、僕の場合は二刀流、ひさぎは日本刀、甘噛はトンファーと、皆が各々の得意武器を扱っていた。