感染少女 ReBORN   作:キラトマト

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「まさか来栖崎があんな大胆なことしてくるとはな。……これが若さか」
「……ッ、忘れなさい……」
「しかも礼音さんにも見られたしな笑」
「な……!」
「はいはい2人とも落ち着いて!」
「礼音さん?!」
「それでは第3話、どうぞ!」


第三話 秘密の告白

 14日後

 

 サンはポートラルでの鹿狩を企画し、そしてそれらを狩り終えて帰路に着いていた……。

 

「ん……? アレはなんだ?」

 

 そんな中でサンたちは、『ソレ』に遭遇した。

 

「……な、んだよ……あれ?」

 

 全長3mを超える、女性の姿をしたゾンビ。そう、変異種である。

 

「とぅるぅるるるる」

 

 変異種は奇妙な唸り声を上げ、地面にヒビを入れる。

 

「変異種……か」

 

 サンは奴の名前を呟く。

 

「変異……種とは……?」

 

「貴方……『アレ』がなんだか……分かるのですか?」

 

「ああ……分かる」

 

 そう、サンがこの事件の元凶。八月朔日真綾だからだ。しかし、今の彼の中に彼女の人格はこれっぽっちも残っていない。

 

「変異種は体のDNAを壊し、肉体が形を保てなくなった存在。設計図を失った体は際限ない構築を始めてしまっている」

 

「あなたはまた情報を隠して……」

 

「すまない百喰。説明はあとだ!」

 

 怒る百喰を抑え、サンは来栖崎に促す。

 

「来栖崎。アイツ、殺れるか?」

 

「これくらい、余裕……!」

 

 来栖崎が一歩前に出る。

 

「ちょ?! ダメだってヒサ……ギ……ン?」

 

 そして、皆が驚愕した。サンを除いて。

 

「よっ、と」

 

 来栖崎の足元、コンクリートでできた地面が木っ端微塵に吹き飛んだ。そして、30m近くあった変異種との距離は一瞬にして縮まり、彼女は赤き刀を振りかぶる。人間を、いや、人類を遥かに超越した動きの少女は、変異種と互角以上に渡り合っている。

 

「ちょ……ちょみんな! 兎に角疑問は全部あとあと! 仲間が戦ってるんだから! あたしらもヒサギンを援護するよ!」

 

「分かっている。僕も行きます!」

 

「サンちゃん!? 君はまだ……」

 

 サンはアドの静止を振り切り、来栖崎の元へ駆けつけた。

 

「援護する!」

 

「邪魔……すんなッ!」

 

 来栖崎が言い切る前にサンは変異種の振りかぶった腕によって腹部を切り裂かれ、そして地面に叩きつけられる。

 

「がはぁッ!?」

 

「ちょ、アンタ!?」

 

「今だ……来栖崎。行けぇええ!」

 

 来栖崎は悲しみを抑えながら、変異種へとトドメの一撃を繰り出す。

 

「ハァアアア!」

 

 その声は、いつもの来栖崎より、怒りが込められている気がした。恐らく、サンが死んだら自分も死ぬ、という焦りからだろう。そして、変異種は奇妙な断末魔をあげ、その巨体を橋に沈める。

 

 そんなことに目もくれず、一人の少女はサンに駆け寄っていく。

 

「アンタ! 何勝手に……行動してんのよ……。アンタが死んだら……私……ってあれ?」

 

 来栖崎に抱き抱えられているうちに、サンは段々と腹の傷が塞がっていった。

 

「傷が……治ってる……?」

 

 アドは驚きのあまり言葉を失ってしまう。

 

「その事に関してはまた後で。それよりも、よくやったな。来栖崎」

 

「べ、別にアンタがいなくても殺れてたし」

 

「それと、僕が倒れた時、随分と感情的になってたよな? まさか、僕が死ぬのがそんなに怖かったのか?」

 

 来栖崎が僕の心配をしていな

 

「別に、アンタの心配なんかしてないし。それよりも、アンタの傷がどうやって治ったのよ?」

 

「知らん。勝手に治っていただけだ。それよりも、おい! みんな! 倒せたぞ!」

 

 だが、サン達を褒め称える声は一向に聞こえてこない。ただ無言で、奇異の目を向けるだけだった。

 

 しかし、その沈黙を破るものが一人。

 

「やっぱり、君だったんだね……」

 

「え?」

 

 それは、アドだった。

 

「なんのことだ?」

 

「アンタが八月朔日真綾っていうこと」

 

 図星をつかれた、という表情のまま固まってしまうサン。そして冷静さを取り戻しようやく口を開く。

 

「誰だ? そいつ」

 

「知らないなんて言わせない。君がこのゾンビウイルスを撒いた張本人だってこと!」

 

「いや……違っ────」

 

「最初から怪しいと思ってたんだよね。記憶喪失とか、ゾンビ化を抑制する血とか。でも、さっきの傷の修復で確信したよ」

 

「よせ樽神名くん。もしサンくんがその八月朔日真綾だったとしてもいまの彼はサンくんなんだ」

 

 だがここまでのようだ。サンは意を決して自分のことについて話す。

 

「いや、礼音さん、アドの言う通りです」

 

「────僕は八月朔日真綾の記憶を植え付けられた不死の生命体なんです」

 

「不死……? 記憶の植え付け……?」

 

 誰もが困惑する中、百喰が口を開く。

 

「どういうことですか? 簡単に説明してください」

 

「僕は八月朔日真綾が望んだ不死身の生命体の完成形なんです。ですが、今の僕はあなた達に会った時の僕でも、八月朔日真綾でもない」

 

「……?」

 

「来栖崎を救う時にたくさんの記憶が入ってきたんだ。その中に、彼女のものじゃない記憶が入ってきた。そして、それが入ったことで、今の僕になったって訳だ」

 

「それでも、君が八月朔日真綾だって事は──」

 

「わかってます。僕がポートラルにいちゃいけない存在だってことも。僕が、いや、元の僕が取り返しのつかないことをしたってことも。だから、僕は、今日限りでここを──」

 

 出ていきます。と、言いかけたところで百喰が言葉を遮る。

 

「ダメです。アナタにはこの惨劇を引き起こした責任があります。なので、これからもここにいて罪を償う必要があります」

 

「百喰さん……?」

 

 サンは正直、真っ先に百喰さんが僕の退去を命じると思っていたので、驚きの声を隠せない。

 

「それに、アナタがいないと私はどうなるのよ?」

 

「来栖崎……でも、お前の恋人を間接的にとはいえ殺したのは僕なんだぞ? それでも」

 

「それでも? そんなことはどうだっていい。正直真司のことは貴方を殺したいほど憎いけど、アナタにその記憶が無いのなら、仕方ないじゃない」

 

「それに、アナタは私を認めてくれた」

 

「あたしも百喰や来栖崎に賛成だぜ」

 

「私も賛成ですわ。いくらサン様がここを離れると言っても、私たちは引き止めますわ」

 

「私もだ。それに、サンくんと来栖崎くんのことも見届けたいしな」

 

 礼音の理由はちょっとよくわからないがスルーしておいたサン。

 

「サンさんは確かに樽神名さんや姫片さんに酷いことをしました。でも、パンデミックを起こすなんてそんな大層なことは出来ないと思います!」

 

 サンのことはみな、一様に信頼しているのだろう。

 

「で、でもみんな、彼はみんなの仇なんだよ?」

 

「アド。その辺にしておけ。彼だってもう真綾? の記憶はないと言っていた。それに、彼には罪の意識がある」

 

「その八月朔日真綾という人物は人の命をなんとも思ってない人物だったのではないか?」

 

「なんでそれを……?」

 

「彼の口ぶりから想像するに八月朔日真綾の人物像を大体察することが出来た」

 

「……分かったよ。モグッチやあやねるが言うなら賛成だよ。それに、サンちゃんはヒサギンの命を救ってくれたしね!」

 

 そして、いつの間にかアドはいつもの口調に戻っていた。

(コイツの精神構造どうなってんだ?)

 

「じゃあ、帰るぞー! アタシらの家にー! そして、鹿を、食べるぞー!」

 

「樽神名くん。テンションが変わりすぎではないか?」

 

「いいではないか! みんなが一致団結できたということで!」

 

「あの、みんな。盛り上がってるとこ悪いんだけど、ちょっと先行っててくれない?」

 

「どしたの?」

 

「あのさ、ちょっと先行っててくれない? さっきの戦闘で来栖崎が怪我したっぽくてさ」

 

「あーね。了解。じゃあアタシらはちょちょいーっと先にGO HOMEして、鹿さん屋上に運んで待ってるんで!」

 

「みんなが君たちの帰りを待ってるぜ、アデュー」

 

「気遣い感謝するよ」

 

「うし、じゃあ皆! 我々は帰ってお肉様をお迎えする準備に取り掛かるぜ!」

 

「「「うぉおおおお!!!」」」

 

 みんなが一斉に叫ぶ。肉の喜びか、それともアドが元に戻ったことか……。

 

 そして皆がアドに従うように「ニクパじゃぁ!」と騒ぎ立て、和気藹々と帰途に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「…… ……ぅ」

 

 そして、アド一行の背中が小さくなるにつれ、来栖崎の息が荒くなっていく。

 

「……ぅぅぅ」

 

「……ぅぅはぅ」

 

 次第に肩で呼吸し、静かに足が痙攣を始め、ついに見えなくなったところで────

 

「ぁあ゙ん!」

 

 唸り声をあげる。

 

「よーし。よく耐えたな。よしよし」

 

 サンはそう言って、来栖崎の頭を撫でる。

 

「すぐ飲めるようにするから、待ってろ」

 

 サンは人差し指にナイフで切込みを入れ、血が滴る指を来栖崎の唇へと近づける。

 

「ゔゎぁあ゙あ゙あ゙ん」

 

「アンタが、アンタがあんな無茶するなんて!」

 

「死ん゙だがど!」

 

「ごめんな。来栖崎。でも、これからはあんな事はしないから」

 

「だからさ、帰ろう。みんなのところに」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「肉じゃ肉じゃぁぁぅぉぉんぉんぉん!!」

 

「あひゃひゃひゃもっとやれぇ!! 脱げ脱げぇ!!」

 

 感涙を流しながら肉を貪る『知性を忘れしものたち』を眺めながら、僕は香ばしく焼きあがったソテーを頬張った。

 

「ふふ、君は宴会が嫌いだったかな」

 

「礼音さん……いえ」

 

「僕は混ざる派じゃなくて、眺める派なだけですよ」

 

「っていうか、僕と話すことに抵抗はないんですか?」

 

「ないさ。それに、樽神名くんもすっかりいつもの樽神名くんに戻ったようだしな」

 

「あはは、そうですね」

 

「だが、あの話。本当なのか?」

 

「はい、嘘偽りなく話しました」

 

「ほう、では君が私達と出会った時のサンくんはいないということだな?」

 

「いえ、少しですが、残ってるようです。それのおかげで僕は、こうしてみんなとやっていけてる訳ですから」

 

「ってか、いつの間にか隣座ってますね」

 

「すまない。ダメだったかな?」

 

「いえ、全然いいですよ」

 

「でも、今日は大変な一日でしたねー」

 

「同感だ。だが、こうやって誰一人欠けることなく帰ってこれたのは喜ばしい限りだよ」

 

「ホント、良かった────」

 

「すぅぅぅぅぅぁぁぁああああん、ちゃぁぁぁぁん!!」

 

「愛と勇気の美少女戦士、樽神名アド只今参上」

 

「あ、あぁ、アド。今日は本当にすまなかった」

 

「まぁまぁ、そんな辛気臭い顔するな、サンちゃん。今から大事なお話があるんだからね」

 

「ありがとう。許してくれて」

 

「いやー感謝されると照れるなー」

 

「いつもの調子で安心したよ。で、大事なお話って?」

 

「次の作戦のお話だよ!」

 

 くるくると、裸踊りの延長のようにアドは一回転し、そのまま腰に手を当て決めポーズで止まる。

 

「ヒサギンのお力をお借りして、ペトラ橋を攻略するんだぜぃ」

 

 にか、っと笑った。

 

「はぁああ?! ぺ、ペトラ橋ってあの!?」

 

「そうだよ! あのペトラ橋だよ!」

 

「それに、考えたんだよ。ヒサギンがいてくれればさ、あたしらは世界の果てまで行けそうじゃん?」

 

「面白そうじゃん。じゃ、僕はそれに賛成するよ」

 

「よかったぁ! サンちゃんが賛成したってなれば、みんなの信頼も得られるし!」

 

「はぁ? 僕を利用するつもりなのか?」

 

「そうだよ! サンちゃんが提案した鹿狩のおかげでみんなの信頼は厚いからね!」

 

「ったく。まぁ僕も今さっき考えてたけどさぁ」

 

「そうなんだ!」

 

「で、次の作戦会議はいつなんだ?」

 

「えーと…… 明後日だね!」

 

「じゃ、それまでに作戦内容考えとくから」

 

「よっろしくぅー。あ、でも今回みたいな鈍器はダメだよ!」

 

「分かってるって。心配しなくていいから」

 

 こうして僕らはニクパを終え、それぞれの部屋へと戻っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 来栖崎と一緒に部屋に戻ったサンは、来栖崎に自分のことについて聞かれていた。

 

「あのさ、アンタ、あの話本当なの?」

 

「ん、なんだ? あの話って」

 

「アンタが不死身ってことと、あのパンデミックを引き起こした張本人だってこと」

 

 すると、サンは語り始めた。

 

「あぁ、不死身ってことは本当だけど、パンデミックを引き起こしたのは僕じゃなくて八月朔日真綾っていう、まぁ簡単に言うと、僕の中にあった、記憶の持ち主? みたいな感じの人」

 

 少しどころじゃないくらいわかりづらい説明であった。

 

「じゃああのパンデミックを引き起こしたのはアンタじゃなくて、アンタの中にある記憶の持ち主ってこと?」

 

 そんな説明でもわかってくれる来栖崎に、サンは感謝してもしきれないのであった。

 

「ああ、そうだ」

 

「それと、自分が不死身だからって、無茶な行動はやめてよね」

 

 

 

「ああ、ごめん。反省している。お前を心配させてしまったんだな……」

 

「全く、なんで自分じゃなくて他人の心配するのよ……」

 

「ん? なにか悪いこと言ってしまったか?」

 

 そんな来栖崎の本心をわかれないサンであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 来栖崎ひさぎは心底疑問であった。どうして彼がこんなにも自分のことを心配するのか。私はこんなにもわがままで、きつい口調で怒鳴ったりするのに、なんで構い続けてくれるのか。

 

「────い」

 

「おーい」

 

「来栖崎ー。大丈夫かー」

 

「ん。ああ何よ?」

 

「いや、急にボーッとしだすから何事かと思ってさ」

 

「考え事してただけよ。なにか問題でもある?」

 

「大丈夫だ。もしかしたら、また発作が起きそうのかと思っただけだ」

 

「そう……」

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