────これは、少女たちが本州にたどり着いたあとの、少しの平和を取り戻していた頃の物語。
某日 本州
「なあなあ、ひさぎってさ、甘いもの好きか?」
彼は、何気なく聞いたつもりだったのだろう。だが彼女はそれにひどく動揺し、呂律が回らなくなってしまった。
「は、はぁ?! ちょちょ、チョコ……なな何言ってんのよサン?!」
しかもこの少女はまだチョコのちょの字も出していないのに早とちりしてしまっていた。だが彼は、生前……というかまだサンでなかった頃には女性との付き合いが全くと言っていいほどなく、しかもラブコメ漫画の主人公の比にならないくらい鈍感であった。
「チョコか……好きなのか?」
「いや……別に特別好きってわけじゃないけど……」
「あ、じゃあ──────」
「頂戴!! 甘いもの大好き!!」
というかこの二人、好きと言い合った仲なのにまだこんな関係性なのか、と周りで背景に徹しているポートラルのメンバーは思った。
「じゃあ作ろうか……あーでも僕、料理とか出来ないんだよな。ひさぎは出来るか?」
「私も出来ないんだけど」
「んー……せめてレシピとか材料があればな……」
するとどこからともなくレシピ本とチョコの材料、調理道具が入った箱が湧いて出てきた。
「うおっ、なんか怖い」
彼がそう言うと、天の声のような声が二人の耳に入ってきた。
「ヒサギンとサンちゃんに、プレゼントをさずけよう!」
謎の女性の力でキッチンも生成される。
「なんでもありじゃない」
そして二人は、料理を開始した。
「えっと……まずはこのカカオ? って奴をすり潰すのか……」
しかもその謎の女性はよりにもよって『チョコレート』の作り方のレシピを渡してきたのだ。だが今のふたりには強力な戦力『レイダー』を持っているのでそういう力仕事は簡単なのだ。そして十分ほどでカカオ豆は粘り気が出るほどすり潰された。
「あれ、結構いい匂いするじゃない」
そう言って彼女はつまみ食いをする。が……。
「それは────」
「なっにこれにっが!?」
口を抑えて悶え苦しむ彼女に、彼は「だから言ったのに……」と、呆れていた。
────数時間後、悪戦苦闘の末、二人はようやく完成させることに成功した。そしてそれを食べる彼ら。
「ん~~~美味しいっ~~~!!」
「……ほんと、可愛いな」
男はボソッとつぶやく。が、それは彼女には聞こえていたようで、口に含んでいたチョコを吹き出してしまいそうになる。
「な、ななな?!」
「ん? どうかしたか?」
聞かれているとはつゆ知らず、彼は心配の声を投げる。
「何も無いわよっ!」
バカっ、と付け加える彼女。これにて、とても平和なチョコ作りは終わった。
焙煎? でしたっけ。それをする場面は飛ばしています。