感染少女 ReBORN   作:キラトマト

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「いやー、アドってテンションの変わりようがすげぇよな」
「まったく~、褒めてもらっちゃ困るぜぃ! サンちゃんっ」
「ま、いつもありがとな、……ってことで第5話、始まります!」


第五話 意外な戦力

「ねぇねぇ、サンちゃん」

 

「あ、なんだ?」

 

「大事な話があって……」

 

「なんだ? 告白か?」

 

「実は……サンちゃんのことが……って! 違くて!」

 

「あ? ふざけてんならこの銃ぶっぱなすぞ?」

 

「ちょちょちょ、ストップ! その銃しまって!」

 

「で、なんだよ? 大事な話って」

 

 アドは瞳を輝かせ喜んだ。

 

「あのねのね! サンちゃん好きな食べ物ってなんぞ?」

 

「……はぁ ペトラ橋直前で何くだらない質問してんだよ」

 

「うぅ……大事なお話なのにぃ」

 

「答えてやるよ、焼き立てのピザだよ。どうだ、満足か?」

 

「……」

 

「ん? どうかしたか?」

 

 なるべく八月朔日真綾の好みからは外したつもりだが……

 

「……え? あ、家庭的な趣向だなと思いまして」

 

「お前のための料理係はやらんぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 くだらない会話もそこそこに、遂に僕らは辿り着いた。

 

 未開の地へと繋がる、掛け橋へ。

 

 ペトラ橋を埋め尽くすゾンビの大群に、僕らは呆然と立ちつくした。

 

「橋の……床が……ゾンビさんで見えません」

 

「ちょ……橋から溢れそうじゃねぇか。ゾンビの橋詰ソーセージかよ」

 

「はぇー。実際見てみると迫力が違うなぁ」

 

「そかそか、サンちゃんもリッちゃんもやっちーも来るのは初めてだっけ」

 

「ああ、第一こんな危険な場所、一人で来たくない」

 

「それに、やちると私は古参じゃねぇからな」

 

「で、どうです参謀さん?」

 

「我々が渚輪区本島へ渡らない理由が、決して日和ってたからではないと理解出来たでしょう」

 

「正直な感想だが、予想以上の数です。まさに、ゾンビの宝石箱状態ですね」

 

「そんな冗談を言っているということは、なにか策はあるのでしょうか?」

 

「ああ、予想以上とは言ったが、想定外ではない。つまり、このくらいの数、僕達で対処出来るってこと」

 

「なんですって?! 私たちでこの量を殺れと?!」

 

「ああ、勿論僕も参戦する。それに、アドも言ってたじゃないか、来栖崎がいればどこまでも行けるって」

 

「いくら来栖崎さんでも……」

 

 百喰は僕の言葉に言葉を濁らせる。

 

「なぁ、来栖崎」

 

「なに? 会話? 情報伝達?」

 

「情報伝達だ。この量──ー殺れるか?」

 

「はっ、冗談で言ってんのかしら」

 

 紅く煌めく刀を掲げ、来栖崎はニヤリと笑った。

 

「超余裕だから」

 

「じゃ、行くか」

 

「え?! アンタも行くの?」

 

「勿論だ。そのために鍛えてきたんだからな」

 

 そう、僕はこっそりと自主練をしていたのだ。まぁあの会議から今日までの一日だけだけどな。

 

「くれぐれも、邪魔だけはしないでよね。切っちゃうから」

 

 少女と、少年の残像が──屍体の群れへと侵入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ーその戦いぶりは、2人で、全く異なるものであった。

 

 少年は、自らの身を犠牲にして相手を倒し、また少女は、圧倒的な身体能力で相手を翻弄する。それは、コンビと言うにはあまりにもバラバラな戦い方であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅおらッ!!」

 

「はぁぁあああ!!」

 

 片方は電光石火、疾風迅雷。そしてもう片方は、勇猛果敢、獅子奮迅──ーそんな言葉が良く似合う怒涛の猛攻で、二人の戦士は橋に滞留するゾンビの群れを片っ端から食いちぎって行った。

 

 

 

「ちょ、みんな! ボケっとしてる場合じゃないぜ!」

 

 唖然としたままのメンバーに、アドは檄を飛ばした。

 

「っと、すまない、呆けている場合ではなかったな」

 

「くそッ、あのインテリ坊主。いつの間に!?」

 

「話はあとにして! 早く援護に向かうよ!」

 

「「OK!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんっ!」

 

 橋のふちに立つ礼音さんが放った矢が──ー寸分違わずゾンビの脳髄を射抜いていく。

 

「背後の敵は気にするなッ! 皆の背中は、私が預からせてもらう!」

 

「ひゅー。ったく、礼音の俠気には惚れ惚れするなっ──ーと」

 

 そして、姫片は身の丈ほどある大鎌を巧みに扱い、次々とゾンビを薙いでいく。

 

 ひさぎが大多数を食い破っているとはいえ、《戦闘班》の肩書きは伊達ではなかった。僕なんて足元にも及ばないほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五分ほどの戦闘で、僕らは橋の二分目まで進行した。

 

「橋の淵付近のゾンビは殺しきらずとも、橋から突き落としてください!」

 

 僕は近くのゾンビを薙ぎ倒しながら、皆に指示する。

 

「帰りの心配がありますのでッ! できる限り排除をお願いします!」

 

「戦いながら指示なんて────器用なこったぁ!」

 

「ふふ、チンパンジーはキャパシティが小さいのですわね」

 

「んだと?!」

 

「そっちに敵が!」

 

「分かっていますわ! サン様!」

 

 来栖崎にも引けをとらない勢いで、甘噛のトンファーがゾンビを打ち砕く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っとにキリがねぇなッ。まだ半分しか進んでねぇのかよ!」

 

「チッチッチ。まだ愚痴を言うのは早いぜぇリッちゃん」

 

「それに、『半分しか』じゃなくて『半分も』進んだんだぜぃ!」

 

「確かに……ッ。確かに大橋が微動だにしなかった時と比べれば、飛躍的進歩ですけどッ──ー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしっ……来栖崎くんは壮絶だな」

 

 返り血さえ浴びない速度で戦う彼女に、礼音さんは感嘆の声を漏らした。

 

「それに比べてサンくんは……」

 

 一時回復の為帰還して、血だらけになった僕の姿を見て、礼音さんは呆れたような声を出す。そう、いくら身体は治っても、服についた血はとれないのだ。

 

「来栖崎はすげぇな……」

 

 前方のゾンビを一刀両断するや、返し刀で左右のゾンビまでも瞬殺。時にはアクロバティックに宙を舞い、時には曲芸師のように刀を手放し、持ち手を切り替る。それはもはや、なにかのパフォーマンスと言っても差し支えないレベルだった。

 

「じゃ、僕もそろそろ行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペトラ橋はあと四割、いや三割をきったところだった。

 

「みんな! あと少しで終わるから! あとたった三割だよ!!」

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この戦いが終わったらサン様といちゃいちゃ、この戦いが終わったらサン様といちゃいちゃ」

 

「おい……そんな……事実無根の鼓舞は……止めて貰って貰えないか……」

 

 僕はゾンビを切り伏せながら、甘噛の言葉に反論する。

 

「事実無根?! 何を仰ってるんですかサン様!」

 

「女は片思いでもいちゃいちゃ出来るんですよ!」

 

「……聞かなきゃ良かった」

 

「ほらほら! もうすぐ終わりが見えてきたよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

「ハァッ……ハァッ……やっと……」

 

 最後の1匹は今、橋へと沈んだ。

 

「……ゃ……った」

 

 我らがリーダーの本心からの感激は、彼女らしからぬか細いつぶやきで零れ落ちた。

 

「サンちゃん……ねぇ、もしかして」

 

「ああ。ペトラ大橋攻略作戦──ー成功だ」

 

 アドが今回のMVPに抱きついたところで、それに乗じて僕も抱きつこうとしたのだが、当然のように来栖崎に振り払われ、その場に倒れ込む。

 

「なにアンタまで来ようとしてんのよ。気持ち悪いんだけど」

 

 その言葉と共に、僕らの第一目標。本島上陸は達成された。

 

 

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