翌朝
ローブを羽織り、部屋外に出る。すると、なぜか知らないが、酔っぱらいの女の人、ヴァネッサさんの部屋が目の前にあった。
「あれ?俺の部屋の前ってバネッサさんの部屋だっけ?」
「ふぁーあ、おはようって、今日はあなたの部屋の前なのね」
「あ、バネッサさん、おはようございます。今日はって、どういうことですか?」
「ああ、坊やには話してなかったわね、このアジト、形がしょっちゅう変わるのよ」
「魔法、ですか?」
「ええそうね。でも、何で私たち女の領域にこれたのかしら?」
「え!
へー、面白い拠点だなぁ。形が変わる拠点かぁ~、小説に使えそうな要素だなぁ。
「さっ、坊や、ご飯ができてるわよ」
「あ、はい!」
バネッサさんの後についていき、食堂へ向かう。すると、騒ぎながら走るマグナさんとアスタがいた。たぶんアジトを案内してもらってるのだろう。俺は昨日フィンラルさんが案内してくれたので何があるのかわかってはいる。どこにあるかはわからないけど。
「いつも通りすごい勢いで食べてますね・・・」
「チャーミーはいつもあんな感じだから」
と、酒を飲みつつ朝食を食べるバネッサさん。すごいな、朝からお酒なんて。
「あれ、あの子、ここの団員?昨日見てなかったけど居たんですね」
「あー、あの子はあなたと同期の子よ。まぁ、あなたの方が、立場上は上だけどね」
「へー、挨拶しておかないと」
俺は立ち上がり、銀髪の子のところへ向かう。
「はじめまして、俺はトウマって言います。同期と聞いて挨拶に来ました。どうぞよろしくおねがー」
パンっ!
握手をしようと出した手を払われた俺。どうしたんだろうか?
「フッ!下民の薄汚い手なんて触りたくもないわ。私は王族よ、誰の許可を得て話しかけてきたのかしら?」
「あ、そうだったんですね、すみませんでした。王族とは気付かず無礼な行いを。そういえば、ミモザさんとは知り合いなんですか?」
王族立ったんだね。ならそんな態度は普通だろう。ミモザさんはちょっと変わった人なのかな?
「ミモザを知っているの?」
「はい!試験の時に知り合いになりました」
「わ、私のこと何か言っていたかしら?」
「いえ、聞いてきたのは俺が持ってるこの剣のことだけですが、何かミモザさんとあったんですか?」
「なにもないわ、下がりなさい」
「わかりました」
俺はバネッサさんのいるところへ戻ろうとしたとき、銀髪の子に呼び戻された。
「なんでしょうか?」
「あなた、水の聖剣について、聞いたことあるかしら?」
「水の聖剣?いいえ、ないですけど」
「そう、わかったわ。お礼に特別に私の名前を教えて上げるわ、ノエルよ」
「ありがとうございます。失礼します」
へー、水の聖剣なんてものもあるんだ。誰が持っているのだろうか・・・。
「あなた、あの子の扱いうまいわね」
「そうですか?」
バネッサさんが突然そんなことを言ってきた。
「ええ、私ちょっと苦手だなぁ」
「あの子は王族として育てられたんです。威張るのは当然なんですよ。だからそれを受け入れて、うまくかわしてあげるのが、あーいう子と対話するのには一番効果的なんです」
「へー、あなた、相当苦労してたわね?」
「いえ、本を読んで学んだだけです」
村には貴族なんて居なかったし。居たとしても、関わりなかったからなぁ。
本を読んで見よう見まねに対話してみたけどうまくいってよかったよ。
その後、何事もなく一日が過ぎた。ほんと何事もなく。ただ本を読み漁るのみであった。
翌日
「フッ!ハッ!」
現在、俺は朝の剣の素振りをしている。すると、トイレを探していたアスタが眠気眼を擦りながら現れた。
「おはようアスタ」
「おう!おはようトウマ!!トウマ、トイレわかるか?」
「いや、ごめんわからない」
「だよなぁ!!形が変わると覚えた場所とかわかんなくなっちまうんもんなぁ。ん?トウマそれなんだ?」
「ああ、これ?さっきグリモワールから出てきて」
俺は青いWRBを見せる。そこには、目を光らせ咆哮する、青いライオンの姿があった。
「ライオン戦記って言うらしい」
「ライオン戦記かー、強そうな名前だな!!」
「うん、グリモワールの説明をみる限り、どうやら水の力を持ってるみたい」
「ほぇー、んじゃ赤は火か?」
「そうみたい」
ドガァァアアアン!!
と、アスタと話していると、どこからか大きな爆発音が聞こえてきた。
「ん?なんだ?」
その時、突如森の方から大きな水の玉が現れ、俺達の近くに着弾した。
「なんだなんだなんだ!?」
「いったいどこから来たんだ?」
俺達はずぶ濡れになりながら立ち上がり、水の玉が来た方向に走っていく。
そこでは、木に印をつけ、水の玉をそこに向かって放つノエルさんの姿があった。
額に汗を滴しながら、的を狙うノエルさん。だが、水の玉は見当違いの場所に飛んでいってしまう。
「もしかして、魔力の操作が苦手なのかも」
「そんなことあるのか?」
「あるよ普通に、魔力の許容量が多いと、こうなってしまうことがあるんだって」
「ほぇー、たくさん魔力を持つのも、以外と大変なんだなぁ」
「今では、大量の魔力を持っていても操れるのが普通になってるけど、昔は大量の魔力を操れることさえすごいことだったのかもよ」
と、アスタと小声で話していると、的から逸れた玉が俺達の方に向かってきた。何とかギリギリで避けることに成功するが、ノエルさんにバレてしまった。
「よっ!」
「す、すみません、こっそりと」
「小虫!?それに剣士も!?」
俺達の姿を見ると、緊迫した表情になるノエルさん。一体どうしたのだろう?
「お前ー」
「い」
「「い?」」
「イヤァアアアア!!!」
叫んだかと思えば水の玉が現れ、ノエルさんを巻き込んで空中に上がっていった。
しかも、その水の玉から渦巻きが現れ、俺達に襲いかかる。
「フッ!」
『ディアゴスピーディー!!』
俺はディアゴスピーディーを取り出し、乗り込む。逃げ惑うアスタを拾い、アジトの方に走り出す。
アジトにつくと、団員の全員が外に出ていた。
「お、ちょうどいいところに来たなお前ら」
「「え?」」
「ちょっとあれ、どうにかしてこい」
「どうにか?わっかりましたぁー!!って、あんなところまでどうやって?俺飛べないです・・・」
「それなら俺が何とかするよ」
俺は聖剣ソードライバーを巻き、ブレイブドラゴンとジャッ君と土豆の木、そして先ほどてにいれた水の力を持つライオン戦記を取り出す。
『ブレイブドラゴン!』
『ジャッ君と土豆の木!』
『ライオン戦記!
この蒼き鬣が新たに記す、気高き王者の戦いの歴史・・・』
『烈火、抜刀!!三冊の本が重なりし時、聖なる剣に、力がみなぎる!
ワンダーライダー!!
ドラゴン!ライオン!ジャックと豆の木!』
俺は三冊のWRBの力を宿したセイバーに変身すると、右腕から豆を飛ばし、ドでかい豆の木を作り出す。
「おー、お前そんなことも出来るのか」
「はい!アスタ、ここを登っていこう!」
「おう!!」
俺達は、暴走しているノエルさんがいる場所まで駆け登り、剣を構える。
「俺がこの剣であの水を払うから、トウマはその蔦でノエルを助けてくれ」
「わかった!」
俺は右腕をつきだし、蔓を射出する準備に入る。
「よし、行くぞぉお、オラァア!!」
アスタは自慢の脚力で飛び、水を切り払う。そこに俺が蔓を射出し、ノエルさんを巻き取る。だが、そこにアスタが乗っかってきてしまい、バランスを崩してしまう。
「うぁあああ!!」
豆の木から落ちてしまい、地面に真っ逆さまに落ちていく。
「ヤベェエエエエエ!!!」
バタバタと手足をばたつかせるアスタ。そのばたつかせた手が、俺のドライバーに当たる。その手がライオン戦記WRBに当たったのか、ブックから大きな蒼いライオンが現れ、俺達を拾い上げた。
「おおお!!!なんだこのデッケェライオンはぁあああ!!!」
ライオンの上でアスタは騒ぎ、ライオンから怒られて黙る。
ライオンは地面に降り立つと、咆哮、そして消えていった。
俺は変身を解除し、ライオン戦記をみて、心のなかでお礼を言った。
「ハッハッハッ!!小僧ども、よくやった!!」
「あざぁーす!!」
「ありがとうございます!」
「おいお前!!」
アスタがノエルさんの方に向かっていき、こう言った。
「お前、なんちゅう魔力持ってんだよ!!すっげぇーなぁ!!」
「え?」
非難されるかと思っていたのか、不思議な顔をしてアスタを見る。
「俺達、魔力が生まれつきないから」
「ああ!!羨ましいぞちくしょー!!特訓して自在に使えるようになれば、無敵だな!!ノエル!!」
「ああ!!魔力に関することなら、本とか学説とかいろいろあったはずだからそういうのも調べるのもいいかもね!」
俺はノエルさんを立ち上がらせながらそう言った。たしか、団長って城の図書館とかいろいろ見れるんだっけ?なら調べておこう。
「俺もがんばんねぇと!!」
「チッ!なんだよ、魔力がコントロールできなかっただけかよー。早く言えよ、出来損ない王族。俺達は、出来損ない集団、黒の暴牛だぞ!!てめぇの欠点の一つや二つ、どーってとこねぇんだよ、バカたれ」
すると、バネッサさんが魔法を使い、ノエルさんに暴牛のローブを着せる。
「俺は団が違うけど、協力するよ。この、火炎剣烈火に誓ってね」
「とにかく、無事でよかったよ!ところで、美味しいパスタのお店があるんだけど、今度一緒にどう?」
「その前にとりあえずこれ食べてみ?ら?」
「すごかったわねぇ!あたし、魔力のコントロールだけは超得意だから、教えて上げるわよ?あと、大人の女のテクニックとか」
「妹のマリーがどれだけ天使なのかも、教えてやろう」
ぶつぶつぶつぶつ。
「ふしゅー」
最後の二人は何て言ったんだ?
「にひ!一緒に頑張ろーぜぇ!」
「っ!」
目に涙を貯めながら、アスタの差し出した手をとる。
「よろしく、お願いします!」
その時、トウマのグリモワールが、蒼く光っていたことを、誰も気付くことはなかった。