魔法騎士団の朝は早い。やらなければならないことがたくさんある。
「とりゃぁああああああああああ!!!うぉおおおおおおおおお!!!」
「ハッ!ハッ!ハッ!はぁー、さすがアスタ、早いなぁ」
「おらおらおらおらおらおおらぁああああ!!ごほっ!ごほっ!ごほっ!」
「ごほっ!ごほっ!アスタ、めちゃくちゃやればいいもんじゃないんだよ」
掃除に。
「おおおおらぁああああ!!」
「アスタ!もっと丁寧に洗わないと布が痛んじゃうよ!!」
「わかった!ん?ぐはぁあ!!」
「女性物はノエルさんにやっもらおう・・・」
洗濯に。
ガルルルルルル!!ガォオオオ!!
猛獣の世話。
「よーし、お座り!!」
アオン!アオン!
「よーしよしよし、いい子いい子~。ほれ!」
ガボォ!
「のわぁあああああああ!!!」
「アスタ!?」
猛獣に食われそうになっても、耐えなければならない。
さらに!
「ヤミ団長!!」
「ヤミさーん!」
「団長~!」
黒の暴牛団団長、ヤミ・スケヒロを起こさなくてはならない。
「団長~!!朝ですよ~!!」
「ヤミさーん!」
「起こすんじゃねぇ殺すぞ!!!」
「「失礼しましたー!!」」
「自分が毎朝起こせって言ったくせに!!」
魔法騎士団の団員は、理不尽にも耐えなければならない。
「あー、今日も朝からよく働いた~」
最後の洗濯物を干しながら、アスタは言った。
「魔法騎士団の仕事は、たくさんあるなぁー」
「でも、新人は最初こういうところからだよね」
「それもそうだな、ていうか、トウマはうちの団員じゃないからやらなくていいんじゃ・・・」
「居候させてもらってる身だからね。これくらいやらなくちゃ!」
「そっか、まぁとりあえず、朝ごはん食べに行こうぜ!」
「ああ!」
洗濯物が飛びされないか確認した後、俺達は食堂へと向かった。
まさか、朝から肉料理を食べることになるとは・・・。
目の前に出されたステーキをもくもくと食べる俺達。バネッサさんの関してはお酒を飲んでいる。しかも一升瓶空けてるし。
「ノエル、何でお前掃除とか手伝ってくんないの?」
「掃除?私は王族よ?」
「同じ新人でしょ!?」
「産まれてこのかた、掃除や洗濯なんてしたことないわ!」
「そこ威張るとこじゃないよね!?せっかく同じ団にいるんだろ?協力すべきだと思うんですけどぉ~?」
やいのやいのと騒ぎ始めるアスタとノエル。昨日の感じ見ると、相性いいんだろうと思ってたけど、これじゃいいんだか悪いんだかわからないな。
「って、そもそも魔法騎士団ってなにするんですか?」
「あー!!マジで言ってんのかぁテメェ!!」
食べていた肉を皿に置き、アスタの方に来るマグナさん。胸ぐらを掴み、壁に押し付けると、騎士団の大まかな仕事を教えてくれた。
「国守ったり警備したり、世界一漢らしい仕事だぞボケェ!!なんも知らないで何で入ろう思った!!ゴラァ!!」
マグナさんはいちいち行動が大袈裟だよなぁ。
「朝から元気だねぇ」
ぶつぶつぶつぶつ。
「おーいそこの飲んだくれ!魔法騎士団の仕事教えてやれぇ!」
「そうねぇ、市民の安全守るぅ~、みたいな。護衛で素敵な殿方と、お近づきになれるかも?」
「なるほど」
「敵と戦いまくれる面白い仕事だよ?犯罪者だったらどれだけぼこぼこにしても怒られないしねぇ」
ラックさんは相変わらずだな。
「何よりも妹に尊敬される素晴らしい職業だ。どうだ?天使だろう?給料で好きなもん買ってやれるしな。ただし!マリーに手を出したら、殺す!!」
鼻血を出しながら言ってくるゴーシュさん。この人も相変わらずだなぁ。
「ふぃ、フィンラルさんは?」
「女の子を助けまくってモテまくる。最高の仕事さ!!」
ここの団はまともな理由で入ってた人は居なさそうだな。
ぶつぶつぶつぶつ。
ゴードンさんはなに言ってるのかわからない。何か言ってはいるんだろうけど・・・。
「はぁあ!?」
「「「「ん?」」」
チャーミーさんの方を見ると、なにやら空の皿を見て嘆いていた。
「まだ腹八分目!!綿創製魔法、羊のコックさん!!」
グリモワールから綿が現れたかと思うと、コックボウを被った羊になり、料理を始めた。へー、チャーミーさんの魔法はこういうのなんだ。
「いっただっきまーす!!魔法騎士団にいれば、ご飯もたくさん食べられるよー!!」
肉料理が多かったのはこのためか。
「ふしゅー」
「お?グレイさん?」
口から白い煙を吐きながら、グレイさんが現れる。すると、水色のグリモワールを開くと、グレイさんの体が煙に包まれた。煙が晴れると、何とアスタが二人いた。一体なにが?」
「えええ!?」
「まっ、とにかくいい仕事さ」
「そっくり」
「うん、ほんとそっくり」
「そのうち一緒に任務するときはよろしくな!」
「は、はい」
グレイさんの魔法は変身魔法か。グレイさんは潜入任務とかに向いているのかもな。
「これになぁ、こうしてなぁこうするとなぁ美味しいんよぉ~。一口食べてみ?ら?」
「もうお腹一杯っすー!」
「どうだ!!魔法騎士団の仕事についてよくわかったか?」
全くわからなかった。わかったことと言えば、ここにいる人は変な人ばっかりってこと。
ドガァーン!
すると、ドアを蹴破ってヤミ団長が食堂に入ってきた。えー、蹴破って入ってくんの?
「行くぞ、マグナ」
「はい!ヤミさん!」
「なんすか?」
「任務だ」
そう言って、ヤミさんについていくマグナさん。
「魔法騎士団の任務、俺も一緒に!」
「ダメだ!ガキは連れていけねぇ。これは、大人の漢の大事な任務だからなぁ。じゃあ行ってくるぜ」
「お前ら!もの壊したりすんじゃねぇぞ!!」
「はーい、いってらっしゃーい」
「団長!帰ってきたら、僕と戦ってくれる?」
ぶつぶつぶつぶつ。
「夕飯までには帰ってきてねぇ」
「そろそろマリーに会いに行ってもいいですか?禁断症状が・・・」
「ふしゅー」
「僕もナンパ、んんっ!任務に行こうかなぁ・・・」
マグナさん、すごい険しい表情だったなぁ。それだけ危険な任務なんだな。俺も、そんな任務任されるような騎士団員になろう。
とか思ってたけど、翌朝、アスタとノエルと共に猛獣の世話をしていたら、ローブのみだけになって帰ってくる二人に遭遇。こりゃカジノに行ってきたな。プラス初任務も伝えられた。
「つーわけで、お前らに初任務を与える!!」
「魔法騎士団の」
「初任務」
「一体どんな任務が・・・」
「何ですか!!」
「王族である私に、ふさわしい任務なんでしょうねぇ」
「おー、光栄に思え。ソッシ村で、猪狩りだ」
「いの?」
「しし?」
「狩り?」
まさかの猪狩り。まぁ、初任務はそんなところから始めるのが普通か。
「なに、そのダサい任務」
「ダサいとはなんだぁあああ!!
「猪なんて、素手で倒せますよー!!」
「猪なめんじゃねぇえええ!!あいつら、やみくもに突進してくんぞ!!猪突猛進って聞いたことねぇのか!!」
「そのソッシ村の村長に、二人して負けちまってなぁ」
カジノだよね。
「ヤミ団長とマグナ先輩が負けるなんて・・・」
「どんな強いやつなの?」
「トランプでな」
「「トランプ!?」」
やっぱり。
「身ぐるみはがされちまたってわけだ。」
「給料半年分もな!」
そんなに持ってかれたんだ。なにやってるんだかこの二人は。
「さらに、なんでも一つ言うことを聞くって約束しちまってなぁ。そしたら猪退治を頼まれた」
「村の近くに群れが出没して、畑を荒らされて困ってるらしい」
「はいはーい!!それって俺達関係ないっよねぇ!!」
「そうそうよ!負けたの団長とあなたなんでしょ!?だったら」
「俺なんて別の団だからさらに関係ない・・・」
「バカ野郎!!ヤミさんの尻拭いを、ヤミさんにさせるつもりか!?」
なに言ってんだこの人・・・。
「ヤミさんの尻拭いは、俺達がするんだ!」
すると、ヤミさんが立ち上がりこう言ってきた。
「行くのか死ぬのか、どっちだ?」
「「「行きます!!」」」
強引に押しきられてしまった。まぁでも、初任務だ。ちょっとテンション上がるな。
「猪退治とはいえ、魔法騎士団の初任務だ!テンション上がるぜ!うぉおおおおおお!!!」
「この私が猪退治?」
「んだテメェ、まだ文句あんのかぁ?ゴラァ」
「誰も文句なんて言ってないわぁ。そのぉ、魔力のコントロールも出来ない私が、行ってもいいのかなって」
「ばーか!」
「なっ!?」
「んなもん任務重ねてりゃあ出来るようになんだよぉ!それに、テメェらよちよち歩きの後輩のケツくらい、先輩の俺が見てやるよ」
「うぉおおおお!マグナ先輩漢っすねぇ!」
「よせよバカスタ、照れんだろ?」
「それに、魔力が暴走しても、また俺達が止めるから大丈夫だよ」
「トウマ団長、ありがとうございます」
「あの、団長ってのはちょっと・・・。同じ新人だし」
「テメェ!!何でトウマだけに敬語なんだ!!」
「あなたは騎士団員、それに下民、トウマ団長は、出が下民でも、立派な団長よ。敬語は当たり前だわ」
そうそう。ノエルさん、あのあと俺のこと団長呼びするようになったんだよねぇ。むず痒いことこの上ない。
「つーわけで、てめぇの空間魔法でソッシ村まで飛ばしてくれ」
「ソッシ村?うーん。無理」
「無理ってなんじゃあてめぇ!」
「だって、目に見えない遠い場所は、俺の魔力でマーキングしたとこしか行けないんだなぁ~」
「ああ?」
「つまりね、一度も行ったことない場所は、むーりってこと」
フィンラル先輩の魔法。便利だと思ってたけど、誓約とかめんどくさいんだなぁ。
「役に立たねぇええ!仕方ねぇ、ホウキで行くぞ!」
「はいマグナ先輩!」
「あいアスタ?」
「俺、ホウキで飛ぶの、出来ません!!」
「はい」
「あいノエル」
「右に同じ」
「あああああああああ!!マジかお前らぁあああ!!何でそんな簡単なことも出来ねぇんだバカタレおらぁああえあ!!基本中のきほんだろうがぁああああ!!」
「だって魔力がないですからねぇ!なっはっはっはっは!」
「何で誇らしげ?」
「魔力のコントロールが出来ないんだから、無理に決まってるでしょう、バカね」
「なんで偉そうなの!?ま、まさかじゃなくてもトウマも・・・」
「俺はこれがあるんで」
『ディアゴスピーディー!』
ディアゴスピーディーWRBを変形させてバイク形態にする。
「そういや、お前、ここに来る時それ乗ってたな。にしてもカッケェフォルムしてんなぁ。何て乗り物なんだ?」
「バイクって言うらしいです」
「バイクか!!そいつはイカす名前してんなぁ!!」
「でも、湖を横断する時はどうしよう・・・」
「ライオン戦記に乗せてもらえばいいんじゃないか?確かあのライオン、水の力を持ってるんだろ?」
「アスタナイスアイディア!!マグナさん、俺のことは大丈夫なんで、そこの二人をお願いします」
「チッ!仕方ねぇなぁ!俺の愛箒、まとめて乗せてやるぜ」
「「「愛箒?」」」
そう言ってマグナさんが出してきたのは、正面に牛の頭骨がついた、いかにもチンピラが乗っていそうな箒を持ってきた。
「その名も!紅零爾威災駆乱号だぁ!!」
「かっ、カッケェエエエエ!!」
目を輝かせながらマグナさんの箒を見るアスタ。
か、かっこいいのか?これ?
「だっはっはっはっはっはっ!!だろぉ!!イカすだろぉ!!」
「はい!イカしまーす!!」
「ダサ」
「んだとぉ!!」
うわぁ、辛辣だなぁノエルさん。
「オメェにはこの芸術的なフォルムがわからないのか!!」
「・・・・ダサっ!」
溜めたねぇ。
「ふー!ふー!ふにゅー!」
「うおおおお!!出発しましょう!!」
「大丈夫なの?あなた」
どうやらマグナさんでも三人乗りはキツイようだ。
「うおおおおおお!!漢に二言はねぇ!!おおおおおおおおお!!飛べえええええ!!」
おおおおお!飛んだ!!よし俺も!
ブルルン!
俺はエンジンを吹かせ、なかなかのスピードで飛ぶアスタ達を追いかけはじめた。