ブォン!ブォン!!
魔神の頭蓋骨の中にある森で、何かを振る音が聞こえる。その音の正体は、火炎剣烈火を振るトウマだ。
「フッ!ハァッ!」
時折炎を刀身から吹き出させる烈火。この剣の正体を今だ知らないトウマ。それはなぜか、火炎剣烈火や剣士に関することは、なぜだか知らないが、歴史から抹消されているのだ。知っているのは、限られた貴族と魔法騎士団団長、魔法帝、そして国王のみ。そのため、市民に伝えられているのは、魔法帝が魔神を倒し、魔法帝となった部分のみである。
「少しはわかってきたぞ、烈火の使い方」
(最初はただの剣だと思ってたけど、炎を纏うごとに、力が強くなっている感じがする。これが烈火の性質か)
烈火の刀身を撫で、鞘に納める。
「さて、もうそろそろ帰ろうか」
グリモワールとブレイブドラゴンのワンダーライドブックを持ち、教会へと向かうトウマ。その途中、ガンッ!ガンッ!と、何かを打ち付ける音が響いてきた。
見ると、アスタがあの黒い大剣で岩を切りつけていた。
「アスタ!」
「オオー!!トウマじゃないか!どうしたんだ?」
「烈火の使い方を覚えてたんだ」
「そうなのか!それにしても、その剣すげぇよなぁ!!あの変な怪物倒しちまうし」
「うん、まだよくわからないけど、この剣のことをもっと知っていきたい」
烈火を鞘から取り出し、眺めながら言うトウマ。
「そうか、頑張れよ」
「ああ!!」
烈火を鞘に納め、ベルトを取って袋に入れるトウマ。
「アスタは何してたんだ?」
「お?俺は魔法騎士団入団試験のために特訓してたんだ!!」
「そうなんだ、アスタ、じゃあ王都に行くんだな」
「え?トウマは行かないのか?」
「ああ、俺は教会に残ってみんなの手伝いをするよ」
(本当は、この剣とグリモワールの正体を知るために旅に出たいんだけどね、この小さな本のことも調べたいし)
「じゃあ、ここでお別れなのか」
「まぁね」
帰り道を進みながら、雑談をする二人。すると、前の方では、大量の薪を魔力で運ぶユノがいた。
「オオー!ユノ-!!」
「ユノ、こんなところでどうしたの?」
「薪を運んでいたんだ」
「そうなのか、そうだ!教会まで競争しようぜ!!」
「えっ」
「行くぞ!よーいスタート!!」
ものすごいスピードで走り出すアスタ。負けじとユノがそのあとを追う。その後ろをあわててトウマが追う。
「うおおおおおお!!!」
ほぼ同時にゴールする三人。
「ゴール!!」
「はぁ、はぁ、だ、誰が一番早かった?」
「うーん、ユノ兄の方が、ほんのちょっとだけ速かったな」
「マジで!?ちゃんと見てたのか?くぅー、ならば、教会に入るまでが競争でーす!!」
そう言ってドタドタと教会へ入ろうとするアスタ。しかし、ユノの魔法で足止めされ、空高く放り投げられる。そして、悠々とユノが教会へ入っていき、勝利を納めた。その後ろをトウマが入っていき、結局アスタがビリとなった。以外と大人げなかったユノであった。
翌日
「なれっこねぇよ!!俺たちみたいな捨て子で、貧しい奴らは、夢なんて見ちゃ行けねぇんだよ・・・」
ナッシュの悲痛な叫びが、森に響いた。それを聞いたトウマは、声が聞こえてきた方へ向かった。
「ナッシュとアスタ、何してるんだ?」
そばの茂みにかくれながら、アスタ達の会話を聞くトウマ。
「ナッシュ・・・」
肩を振るわせるナッシュ。いつもやる気無さげな表情をしていたナッシュが、こんな感情的になるのは、小さい時以来であった。
そんなナッシュの肩に手を置くアスタ。励ますのかと思いきや。
「最初から諦めるな!!可能性は誰にでもあるわー!!」
耳のそばで叫ぶアスタ。先ほどまでのシリアスな雰囲気が一気にぶっ壊れる。
「うっせぇーなぁー!んなもんねぇよ!!」
「いや、ある!俺は夢を追い続ける!!」
黒い大剣を持ちながら、宣言するかのようにナッシュへ教える。
「貧しかろうが捨て子だろうが、誰だってこの世ですごくなれるって、何でも出きるって、夢を叶えられる、みんなを幸せに出きるって」
大剣を振りかぶり、こう叫ぶ。
「俺が証明して見せる!」
「証明・・・」
「魔法騎士団に入って、魔法帝に・・・なるっ!!」
そして振り下ろし、岩を粉々にぶった斬る。そして、その砕いて岩の上に乗り、ナッシュの方を見た。まるでヒーローのように。
(誰だって、夢を叶えられるか、俺も、叶えられるかな?)
トウマはそう思いながら、ナッシュ達を見ていた。
夜
「「「わーー!!」」」
「ハッハッハ!明日は、王都へ向けてアスタとユノが出発する日だからな!派手に送り出してやらんとな!」
「神父様が、あちこちの村を回って、ノモイモ貰ってきてくれたのよ」
「神父~!」
キラキラした目で神父を見るアスタ。
「なんじゃいその目、お前だけのためじゃない、ていうか、ほぼユノのためだ、ユノの」
「神父ー!!」
神父の言葉にご立腹のアスタ。トウマやレッカは苦笑い、ナッシュは深く頷いていた。
「そうだろう?ユノは魔法騎士団に入れるかもしれないが、お前は・・・」
「神父!!」
「アスタ、試験に落ちても、恥ずかしがることないぞ!」
「え?」
「誰も受かると思ってないから」
イラッとくる笑顔でアスタにそう言う神父。まぁ、そう思うのが必然だろう。
「励ましているのか、バカにしているのか、どっち!」
「いつでも、帰ってきていいんだ、お前の家は、この教会だ!どんなにクソぼろでも貧しくても、お前の家だ」
「そうだよ、アスタ」
「アスタがいなくなると寂しいの!ユノも」
「みんな、家族ー!!」
「そ、それユノにも言ってやれよ!いつでも帰ってきていいんだって」
「ユノは、大丈夫」
額に汗を滴しながら、アスタから目をそらす神父。
「え!何が!ていうか俺も大丈夫だって!魔法帝になるんだから!んで、シスターを迎えにくる!」
「え?」
「だからそのときは、俺と結婚してくだグああ!!」
「さぁ、食べましょう?ノモイモの煮物にノモイモの天ぷら、ノモイモ焼きにノモイモのフライ、ノモイモの炒め物、茹でノモイモ・・・」
さまざまなバリエーションのノモイモ料理を紹介するシスター。アスタの結婚してくれ騒ぎへのスルー技術が確実上がるシスター。
「「いただきまーす!」」
ノモイモの料理をたくさん食べたトウマ達、さぁ、明日は別れの日だ。
夜遅く
「ん?アスタか」
「おー、トウマか、ちょっと眠れなくて」
「そうなんだ、俺は喉が乾いちゃって」
「そうか」
水をコップに入れ、一気に飲み干す。その後、しばらく無言が続いた。そして、会話を切り出したのはアスタだった。
「なぁトウマ、お前も魔法騎士団に入らねぇか?」
「え?俺が?」
「ああ」
「ど、どうして?」
「その剣のこと、知りたいんだろ?」
そう言って火炎剣烈火を指差すアスタ。
「まぁ、そうだけど」
「村の人から聞いたんだけど、魔法騎士団って、いろんなところに行って、任務をこなすらしいんだ、だから、その剣のことを知りたいんだったら、魔法騎士団に入るのもいいんじゃないかなって」
(へー、そうなんだ、それはいいかもしれない、でも)
「でも誰かが残らないと、俺も、この剣については知りたい。だけど、放っとけないよ」
「なに言っとるんじゃトウマ」
「え?」
見ると、後ろに神父がいた。
「夢があるんだったら、言っておくれよ」
「で、でも、そんなこと話したら、神父達の負担に」
「ならんよ」
「え?」
予想外の答えに、困惑するトウマ。
「もうレッカもナッシュも大きくなった、三人がいなくなったってやっていけるわい、それに、子供の夢を叶えさせたいのが、親心なんじゃ、トウマも行ってこい」
その言葉を聞いて、トウマは決意を固めた。
「うん、わかったよ、神父」
「うむ、それでいいんじゃ、さて、トウマの分も荷造りをせんとな」
「そうですね」
「よしっ!やるぞー!!」
張り切るアスタと吹っ切れた笑顔をするトウマ。それを見て微笑む神父。三人は、トウマの分の荷造りをしたあと、朝まで起きることはなかった。