夏休みが終わって今日で一週間。みんな徐々に2学期が始まったことを自覚し、夏休み気分から切り替えている中…
「なぜ終わってしまった…。夏休み(;_;)」
たった1人、現実を受け入れられていない人が隣で机に突っ伏していた…。
「もう、渡辺。それ言い始めて今日で一週間経つんだけど…。いい加減受け入れなって…。」
「はぁ〜…、大切な物って失って初めて気づくんだな…。」
「それもこの一週間ずっと聞いてんだけど…。ほら、そろそろホームルーム始まるんだしシャキッとしなよ。」
このセリフ言うのも何回目になるんだろ…。
ガラガラ「はーい、全員席に着け〜。そして渡辺はいい加減現実逃避をやめろ〜。」
それからすぐに担任の先生が教室に来て、朝のホームルームが始まった。
そしてあらかたの今日の予定を話した後、最後にこう言った。
「あと、1限目のLHRでは要望が凄かった席替えをするのでお楽しみに〜。」
その一言を聞いた瞬間教室内が一気に盛り上がった。
席替えを喜んでいる人がほとんどだったけど、あたしはあまり乗り気じゃなかった。
「席替え…か。春にやったばっかりじゃん…。」
そんなにコロコロ変える必要ないでしょと思い、チラッと隣の渡辺を確認してみる。
「後ろの席であれ後ろの席であれ後ろの席であれ後ろの席であれ後ろの席であれ」ブツブツブツ
あーもう、すごい。執念がすごい…。さっきまで絶望してたはずなのに…。切り替えの早さが相変わらず異常…。
まぁ、渡辺はあたしと違ってある程度喋れる人がいるし席替え自体にはあまり反対じゃないんだろうなぁ…。
それに比べてあたしは未だにクラスで渡辺以外の人とあまり話せないし…。と言うかあまり馴染めてない。ん?待てよ?この前海で渡辺と一緒にいた2人…えっと、名前なんだっけ…?
あの2人ならあたしでもギリギリ…、、うん。やっぱり微妙かも。
「はぁ〜、せめて、近くの席にならないかな…。」
そうして時間がすぎていき、いよいよLHRの時間になった。
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席替えは前回同様くじ引きで行われた。全員順番にくじを引いて黒板にある番号を確認した。
「あたしは…、真ん中の列の1番後ろか…。」
渡辺が喜びそうな場所だなぁ。
「そういえば渡辺はどこなのかな?」
チラッと隣を見る。隣ではなんか負のオーラをまとった渡辺が…。あれ?こんな疫病神みたいなオーラあったっけ?
どうしようすごい話しかけずらい…。
「よーし、それじゃ各々の番号の席に移動しろ〜。」
それから渡辺に話しかけることができず、あたし達は自分の番号よ席に向かった。
「あっ!隣美竹さんじゃん!よろしくー!」
先に来ていた隣の人から急にあいさつされた…。あれ?ていうかこの人、海で渡辺と一緒にいた…
「よ、よろしく…。え〜っと…、た、田中、さん?」
「いや佐藤だよ!?俺の名前そんなに覚えにくい!?一応日本で1番多く使われてる苗字なはずなんだけどぉ!?」
あっ、思い出した、佐藤だった。
「…念の為聞くけど、この前海で遊んだもう1人のやつの名前は…??」
「ッスー、えっと…、、そっちが田中、?」
「美竹さん……。」
うん、これは絶対間違えてしまったやつだ…。
「一応俺らクラス同じなんだし、名前は覚えてもらえると嬉しいかな…。」
「ご、ごめん。もう、覚えたから…。」
「な、ならいいんだけどさ…。」
「「……。」」
やっぱりだめだ…。あーもう、こうなるんだったら海で遊んだ時もう少し話せるようになってれば良かった…。
「おい、渡辺!起きろ!」
気まずい雰囲気の中、前の席の方から担任の声が聞こえた。
「ったく、席替えそうそうそんなに堂々と寝るなんていい度胸してるなぁ…」
見てみると教卓の目の前の席で渡辺が机に突っ伏しているのを先生が注意していた。
ああ、だからさっきあんなに負のオーラを発してたんだ。
「お前、いい加減寝るのやめろぉ!」
「先生〜、渡辺君は寝てるんじゃなくてうなだれてるんだと思いま〜す。」
クラスの誰かがそう言い笑いが起こる。多分本人は相当ショックを受けてるだろうけど。
それにしても、結構遠くなっちゃったな…。
「蓮の隣じゃなくて寂しい感じ???」ニヤニヤ
この佐藤って人どことなくノリがモカみたい…
「い、いや、別に…。そんな事ないし…、」
嘘だ…。本当の事を言えば少し寂しい。あたしはまだこのクラスに全然馴染めてなくて渡辺以外にちゃんと話せる人なんていない…。
でもまぁ、席が変わっただけで別にクラスが変わるわけじゃないし、それに話したかったら渡辺のところに行けばいいだけだし…。
うん、そうだよ、別に寂しいがる必要なんてない…。
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それから2限目、3限目と今日の授業が始まった。
(なんか、物足りない…。)
2限目以降あたしはずっとこんな感じで授業に集中出来なかった。
授業の後の休み時間に渡辺の所に行こうとしたけど、渡辺は既に近くの席の人と仲良く話していてあたしが行けるような雰囲気じゃなくて断念した。
(この感じ…、1学期の最初の頃に戻ったみたい…。)
あの時は学校にいても退屈でつまらなかったな。でもあの席になってから、と言うか渡辺の隣になってからは退屈だった学校が少しずつそうじゃなくなってきてた。
正直に言えばずっとあの席のままでいたかった…。
渡辺の隣にいる時間はいつも楽しかったと、今まで過ごしてきて思ったから…。
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こんな憂鬱な気分のまま時間だけが過ぎていき、気がつけば5限目が終わっていた。
(確か次は担任の担当する授業だったような…。)
そんな事を思いながら次の授業の準備をしていると、まだ休憩時間だと言うのに担任が入ってきた。
「先生ー!ちょっといいっすかー?」
するといきなり隣の佐藤が手を挙げ先生に呼びかけた。
「ん?どうした佐藤?」
「いや〜実は今日1日この席で授業受けてたんすけど〜、最近視力が落ちてきて黒板の字が見えにくいんですよね〜〜。」
そう言いながらあたしの方をチラッと見てくる。
え、いきなり何言ってるの…?
「そうなのか。そういう事は席替えの前に言ってくれるとありがたかったんだがなぁ。」
「いや〜、俺とした事がうっかりしてましたァ〜!」
すっごいわざとらしい言い方…、何が目的なの…?
「いや〜困ったなぁ〜!誰か席交換してくれるh…「佐藤!!俺の席教卓の前で黒板見やすいから俺と交換してくれ!!」お前って本当思惑通り動いてくれるよな…。」
さっきまで机に突っ伏してた渡辺がありえない速さで反応した。
「よし、それじゃあ佐藤は渡辺と席を交換するって事で大丈夫か?」
「はーい、大丈夫でーす。」
いきなりすぎてよく分からないけど、どうやら佐藤と渡辺が席を交換するのが決定したみたい。、、、ん?それってつまり…。
「ねぇねぇ美竹さん」ヒソヒソ
「な、何…?」
渡辺が移動の準備を始めている時に、佐藤が小声で話しかけてきた。
「良かったねぇ!蓮が来てくれるってさ!」ヒソヒソ
「やっ、別にあたしは何も…」
「いやいや、今日ずっと蓮の方見て暗い表情だったのバレバレだったから!」ヒソヒソ
「そ、そんな事//」
「蓮も多分美竹さんが隣の方がいいと思ってるだろうし、これが1番でしょ!」
「…もしかして、これが目的であんなわざとらし演技を…?」
「…まぁ、ずっと隣であんな暗い顔されんのもあれだしさ…。美竹さんもこっちの方がいいでしょ?」
「でも、佐藤はいいの?…」
「ああ、俺は席なんて別にどこでもいいし、全く気にする必要なし!」
「おーい佐藤、こっち片付けたから荷物持ってきていいぞー!」
「はいよー!それじゃ美竹さん、頑張ってね!!応援してる!!」
「えっ、ちょ!な、何を!?//」
そう言うと佐藤は渡辺の席の方に行ってしまった。
「あれ?佐藤の隣って美竹だったのか?」
「う、うん。まぁね…」
「そっか、いや〜にしてもこんなにいい席を譲ってくれた佐藤には感謝だなぁ…。」
「そう、だね…。」
「しかもまた美竹の隣だしな〜。」
「うん、//」
「やっぱり話慣れてる奴が隣だと安心するな〜。」
それは本当に同感。
今度佐藤にはなんかの形でお礼しよう。
「ねぇ、渡辺…。」
「ん?」
「これからもよろしくね…、」ニコ
「おう!よろしく」ニッ
それからあたしは授業中でも関係なく、ずっと渡辺と話していた。また隣で過ごせる事が嬉しくてついつい話すぎたかもしれないけど、渡辺の方もすごく楽しそうだったし、別に今日くらいは良いよね…。
以上、今回のヒーローは佐藤君でした。