見渡す限り猫、膝の上にも猫、肩の上には子猫、おっかかるとそこには大きな猫。俺は今大量の猫達に囲まれてる。その辺の猫カフェなんて比にならないくらいの。
頭を撫でてやると甘い鳴き声を出しながら近づけてくる。腹を撫でてやればもっと撫でろと言わんばかりにその場に転がりぐーっと伸びる。
…こんなにも心が満たされる空間があるだろうか?
『…まるで夢のようだ…』ニチャ〜
ずっとこの空間にいたい……。なんて幸せな時間なんだ…。
ピピピピピ!!ピピピピピ!!ピピピピピ!!
「…………」ムクリ
ふと、目覚ましのアラームによって目が覚める。
「……夢かよ……。」
……………………
(でもいい夢見れたわァ…( ◜ω◝ ))ニコォ
はい、こんな感じで1日が始まります。
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「あ、蓮だ。」
学校に登校している途中、蓮の背中を見つける。少し猫背で気だるそうに歩いているからすぐにわかってしまった。
「おはよ、蓮。」トコトコ
「…あぁ、蘭か。おはよ…。」
(……あれ?なんか元気なさそう…。)
隣まで来て声をかけたけどなんかいつもより元気がないように見える…。
「…どうしたの?なんか元気ないよ?」
「…別に、俺はいつも通りだよ…。」
(……やっぱり、おかしい。いつもはもっと明るいはずなんだけど…、)
本人はいつも通りだと言っているけど、あたしには全然そう見えなかった。何かに落ち込んでるようにも見えるし…。とにかく雰囲気が暗いのだ…。
(何か、悩み事でもあるのかな…、)
もし仮に何か悩んでいるなら抱え込まないで相談して欲しい。もっと頼って欲しい。…一応、あたし達は恋人同士なんだし。蓮の暗い顔なんて見てられない…。
(…じゃあ蓮から来ないならあたしから…!)
周りを見渡し、誰もいないことを確認する。
「…ねえ、蓮。」
「…ん?」
「…」ギュッ
「ちょ、え?」
あたしは蓮の名前を呼び、そして抱きしめる。
「……なんか嫌な事でもあったの?」
「…。」
「もし何かあって悩んでたりしたらさ、抱え込まないであたしの事頼って欲しい。あたしも蓮の力になるからさ…。」
抱きしめながら『何かあったら頼って欲しい』と言う気持ちを伝える。こうでもしないと蓮は自分から話さないと思ったから。
「……蘭。」
「…何?」
「とりあえず抱きつくなら1回猫になって出直してきてくんね??」
「……よく分かんないしなんかすごいムカつくんだけど…」
その後事情を聞いて心配した自分がバカバカしくなったのは言うまでもない。
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学校……
1限目
「ボケー……」
「……」
2限目
「ホゲー……」
「……」
3限目
「ポケー……」
「……」イライラ
4限目
「ホケー……」
「……」イライライライラ
昼休み
「(°ࡇ°)………「いつまで猫の夢引きずってんの!!!!」」
さっきからずっっっっっと(°ࡇ°)な顔して!隣に座るあたしの気持ちも考えてよ!!!!
「蘭〜みんなでお昼食べよ〜?」
「あ、モカ、」
隣の蓮に呆れているとモカが教室に来た。
「お、れー君もちょうど良いし一緒に……あれ?これ魂入ってる〜?おーい、」
「……モカ、多分何言っても無駄だよ…。」
蓮の顔の前で手を振っているモカにそう告げる。
「とりあえずれー君をこのまま放置するのもなんかあれだし〜、一緒に連れて行こっか〜。」
「…そうだね。ほら、蓮、行くよ!」グィッ
あたしは蓮を連れてひまり達がいる教室に向かった。
「あ、今日は蓮君も一緒なんだー。ってあれ?なんかぐでーってなってない?」
教室に着くと早速ひまりが蓮の異変に気づく。
「今日は朝からずっとこうなの…。」
モカ達と弁当を食べながら蓮がおかしくなった経緯をみんなに説明する。
「な、なるほど…。その夢を見たせいで猫に取り憑かれちゃったと…。」
「うん。今日何回か蓮に話しかけてたんだけどさ…。」
「……( ꒪﹃ ꒪)猫カフェに住みたァい……」
「しか言わないの。」
「じゅ、重症だな…。」
ほんと、なんでこんなになっちゃうかな…。
「なるほど〜それで今日れー君にかまって貰えなくて蘭もご機嫌ななめってことね〜。」
「いや//あたしは別にそんな//」
「まぁ彼氏に相手にされないって結構寂しいのかもねー。」ŧ‹”ŧ‹”
別に寂しいなんて思ってないし…。別に…、そんな事無いし…。
「でもさすがにこのままってのはな〜…。」
「なにか治す方法があれば良いんだけど…。」
多分これ1週間ぐらい時間置かないと治んないんじゃないの?
「あ、いい事思いついた〜。」
するとモカがある事を思いつく。
「いい事って、大丈夫なの?」
「まぁまぁ〜、これなられー君もきっと正気に戻るって〜。」
そう言いモカは蓮に近づくと、力の入っていない片腕を持ち、
「それじゃ〜蘭〜、ちょっとこっち来て〜。」
「……何?」
「よいしょっと。」
ッポン、とその手をあたしの頭の上に乗せた。そしてあたしの頭を撫でるように左右に動かす。
「ちょ、//モカ、なにっ///」
「おーい、れー君?今自分が何を撫でてるか分かる〜?」
焦るあたしを無視してモカは蓮に話しかける。
「猫」
ちょっと?その答えはさすがにあたしも怒るよ?
「よく見てごら〜ん?猫なんかじゃなくて蘭の頭だよ〜?」
「……蘭の、、頭、、、」ナデナデ
「……///」
「そうそう♪可愛い可愛いれー君の彼女の蘭だよ〜?」
「……可愛い…、、?」ナデナデ
「ほら〜、可愛いって思えるでしょう〜?猫より蘭の方が断然可愛いでしょ〜?」
「……可愛いって、思える、、…っは!?」ナデナデ
「お、ようやく戻ってきたね〜。」
「人間の素晴らしさを思い出させてくれた。ありがとな青葉。」
「いや〜この程度モカちゃんの手にかかれば朝飯前よ〜。」
どうやらようやく正気に戻ったみたい。戻ったみたいなんだけど……
「……ね、ねぇ蓮//」
「ん?」
「…その、、いつまで撫でてんの…///」
「……すみません///」ッス
蓮は慌ててあたしの頭から手をどかす。
「おやおや〜、他の教室に来てもイチャイチャしちゃって〜。」
「「し、してない!」」
「蘭ったら撫でられてる時すごい照れてたんだから〜。」
「照れてなんかないから///!!」
「蓮にかんしては実の彼女の頭を『猫』ってww」
「と、巴ちゃん、笑いすぎだよ」プルプル
「人の事言えないからな?羽沢だって笑ってるからな!」
その後もあたし達はモカ達にいじられ続け、昼休みを終えるのだった…。
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放課後……
なんか学校着いてから昼休み前までの記憶が曖昧なんだよな……。まぁ深く考えるのはやめておこう…。
「蘭〜、そろそろ帰ろうぜ〜。」
「…うん。」
どことなく不機嫌な蘭に声をかける。
「あ、そうだ!さっきスマホで調べたんだけど近くに新しい猫カフェが出来たらしいから今度行ってみようぜ!」
帰り道、蘭を先程スマホで見つけた猫カフェに誘ってみるが、
「絶対やだ。」
余裕で拒否られてしまう。
「えぇ!?なんで!」
「だって蓮どうせまた取り憑かれるでしょ。」
「それは無い!…………とも言いきれない!」
「今後蓮は猫と戯れるの禁止ね。」
「…………( ꒪﹃ ꒪)??????」
「そんな顔してもダメ。また今日みたいにずっと無視されるのも嫌だし。」
「……え、俺そんなに無視してた?」
「してたじゃん。ずっとあたしの事無視して猫のこと考えてたじゃん。どうせあたしとの会話なんて猫の二の次なんでしょ?」
「……」
拗ねちゃってるよ、、わかりやすく拗ねちゃってるよ……。
おい、日中の俺何やらかしてんだよ。どんだけ彼女の会話シカトしたらこんなになるんだよ……。
「……分かった、とりあえず今回は俺が悪かった。もう猫とはなるべく関わんないようにするから許してください……。」
我ながらおかしな謝罪文だ。でももうこんくらいしか言葉が出てこない(´;ω;`)
「……」
無言の『無』に無言の『言』と書いて無言。
「ど、どうしたら許してくれる……(^^;?」アセアセ
「自分で考えたら??」
分かるわけねぇえだろおおぉおお!!!?!?
(こ、こうなったら……)
俺はおもむろにスマホを出し救世主達にLINEでメッセージを送る。
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LINEグループ名《低俗ゲーマーズ》
蓮『色々あって蘭が拗ねてしまいました。誰か助けてください。』
佐『自分で考えたら??』
蓮『なんで全く同じセリフ言うの?見てたの?拗ねてるとこ見てたの?』
鈴『落ち着け。多分その拗ね方だと構って貰えなくて寂しがっていた可能性が高い。』
蓮『ほ、ほう……』
鈴『よって今日お前の家に連れ込んでめいっぱい構ってやれば機嫌が治るとみた。』
佐『お前天才すぎ。』
蓮『いや新手のバカだろ。そんな事で機嫌が治るわけねぇだろ!』
佐『何言ってんだ、これやれば120%治るって。』
鈴『そんじゃ頑張れよ〜(^q^)』
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……まじか……。これしかないのか……。
「……」スタスタ
俺が悩んでいると、もうおしまいだと言わんばかりに蘭は先に歩いていってしまう。
ええい!もう、なりふり構ってられるか!こうなったらもうヤケクソじゃあ!
「ら、蘭!待ってくれ!」
「何?」
「え、っと、その、き、今日俺ん家来ないかっ?なんか今日家誰もいないし……」
「なんで?」ギロッ
「ェ、ィウェッスッーー、そ、そのまぁなんと言うか今日は全面的に俺が悪かったわけだし、何かちょっとでもお詫びが出来ればと思って考えたんすけど…」
「……。」
やはり、これではダメか……、
「……行く。」
「……え?」
「…だ、だから行くって言ったの!」
「お、そ、そうか、」
よかったああああああああああぁぁぁ……。
「ほら、そうと決まったなら早く行くよ!」
「分かったから、そんなに引っ張るなって!」
そう決まるやいなや早く帰るぞと言わんばかりに俺の手を引っ張る蘭。どうやら上手くいったらしい。
「…♪」
うわぉ。数秒前と表情が大違い…。
やれやれ…。俺もまた猫に取り憑かれないように気をつけなければ…。記憶がないって正直怖い。気がついたら蘭の頭をひたすらに撫でてたし…。て言うか蘭の頭サラサラすぎて猫を撫でてる時より心地よかったんだよな…。
ん?猫よりも?
「……。」
「?どうしたの?蓮。」
「…なぁ蘭、1回だけで良いから猫の鳴き真似してくれないか?」
「…は!?いきなり何言ってんの!?」
「いや、おかしい事を言ってるのは十分分かってるんだ!でも頼む!1回だけでいいから!」
だいぶ気持ち悪い事を言ってるのは承知の上だ。だがこの可能性を試さずにはいられない!
猫よりも触り心地が良かったなら!きっと鳴き声だって負けていないはず!なんなら蘭の方が可愛いまであるかもしれない!
「なんなの一体………、ンン……ニ、ニャァ、ン///こ、これで良いの?///」
「………………ゴフッ」吐血
「え!?ちょ、大丈夫!?」
「だ、大丈夫…、こ、これでもう俺が猫に取り憑かれることは二度とないだろう……」
人生で2度目の吐血。この日この瞬間、俺の中の''可愛い''で蘭の右に出るものは1人として、1匹として居なくなった。
しかも蘭の奴、顔の横に猫のように丸めた手を持って来てその状態で鳴き真似をするなんて…。
無意識であんなにあざとい仕草をされたらもう持たんわ……、
「……ら、蘭。お前がナンバーワンだぁ…」