ひと葉 ~壱の巻~   作:亜空@UZUHA

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第1章 忍者学校編
春風


「ねぇ、この合同演習、男女ペアでチームを組むらしいわよ」

「うそー! じゃあ、あたしがサスケ君と……」

「なに言ってんのよ! あんたとサスケ君じゃ釣り合わなすぎ!」

 

 

 “くのいち”たちの異様な興奮が、アカデミーの廊下を満たしている。

 

 

「こらこら、演習場に向かう時も授業中だって言っただろ!」

 

 

 率いるイルカが振り返りざまに注意しても、少女たちのテンションは下がるどころかますます上昇する。

 その後ろを、面倒くさそうに歩くのは男子生徒たち。

 

 

「ったく……こんないい天気に演習かよ、面倒くせぇ……」

「馬鹿だなシカマル、天気がいいから戸外演習するってイルカ先生が言ったんじゃないか」

 

 

 そして最後尾を、先頭集団の人気を独占する少年がひたすら無表情に歩いていた。

 くのいちたちの騒がしさと、彼女たちの中の一人と組まなければならないといううざったさで、内心かなりイラついてはいたが……。

 

 

(ちっ……足手まといになるだけだ……)

 

 

 サスケは舌打ちして、廊下の窓から外をにらんだ。

 うららかな……、といった表現がまさにぴったりな、そんな陽気だ。

 なんだかそれすらもうっとうしくて、ひらひらと春の風に舞った花びらに眉をひそめる。

 

 その時、前方の騒がしさが突然ぴたりと止まった。その足並みも同様に止まる。

 何事かと、サスケも足を止めて皆が注目し始めた方を見た。

 

 

「だれだ……?」

 

 

 少し前で、ナルトがいぶかしげにつぶやいた先に居たのは、ねずみ色の着物をまとった老女と、そして、純白の袴姿の少女だった。

 二人はそれぞれの白髪と黒髪を、同じように巫女風に結い上げている。

 里の街中では見かけない出で立ちだった。

 一瞬にして静まり返った廊下に、老女の声が響いた。

 

 

「火影様はこの先におられるか」

 

 

 それはイルカに向けられたもので、彼を威圧するに十分の張りがあった。

 

 

「は、はい……。まっすぐ行って、右にある階段を三階まで上られると……」

 

 

 皺だらけの顔にもかかわらず、どこか気品を漂わせ、同時に棘のような空気をもまとうこの白髪の老婆に、当然イルカはしどろもどろに答える。

 

 

「そうか、失礼……」

 

 

 老婆はイルカの答えを最後まで聞かず、生徒たちには目もくれずにまた歩き出す。

 同時にグイッと少女の手を引っ張って。

 

 

「あの子……、転校生なのかしら……」

 

 

 誰かがそうつぶやいた。

 が、誰もそれに同意しない。

 それ程に、袴の少女はこの|忍者学校()()()()()には不似合いだった。

 

 全員が息をひそめて見送る中、少女は半ば強引に手を引かれながら、大きな目でくるりと周りを見回した。

 幼さの残る、青白い顔の小さな少女だった。

 少女は、周囲が異様な雰囲気なのにもかかわらず、遠慮がちな笑みを浮かべて通り過ぎる。

 やわらかな空気は、その手を引く老女とは正反対だ。

 ふわりと、腰まである長い黒髪が揺れた。

 サスケがぼんやりとそれを眺めた時、ちょうど彼の目の前で、少女は思いがけずにその表情を変えた。

 

 

(……!?)

 

 

 サスケが不思議に思って、その漆黒の双眸を見返した時には、少女はグイと手を引かれて行ってしまった。

 この、ほんの刹那の出来事を、彼以外の者が気づくことはなかった。

 だが、確かに少女はサスケを見て一瞬目を見開いた。

 まるで、懐かしい顔を見て驚いたかのように……。

 

 再び歩み始めた生徒たちの集団は、今度は今すれ違った奇妙な二人の話題で興奮していた。

 サスケは、ポケットに手を入れたまま、一呼吸おいて振り返る。

 あの長い髪の先が、角を滑すべるように曲がって消えた。

 彼は何か不可思議な体験をした後のような気分で、ひとり、集団の後ろに続いた。

 

 

 

 

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