キバの鼻で追跡し、トラップをかいくぐって、ネジの眼で補足した。
音隠れの4人の忍は森の中で休んでいた。
サスケの姿は無い。
4人の他にあるのは、棺桶のような樽だけ。
シカマルは作戦をたてた。
大事な『初手』だ。情報が少ないと嘆いている場合ではない。
みんなは信頼して強い視線を向けてくれている。
ナナも……。
6人と1匹の、“仲間”のための命がけの戦いが始まった。
「……っぐっ……!!」
腹を襲う、激しい痛み。
熱の固まりか、あるいは鋭い何かが、中で暴れてでもいるよう。
だが、一本の木を前にして、チョウジの心は満たされていた。
『誰よりお前はやさしいやつだ』
(とうちゃん……)
涙が、自然と湧き上がる。
『いつか必ず、お前のそういうところをわかってくれる友達ができる。そしたらお前は、その友達を大切にして……』
かつて父に授けられた言葉。
『信じ合える“仲間”になればいい』
そんな“いつか”の日を信じて、今日までやってきた。
(ボクにも、こんなにたくさんの仲間が……できたよ……)
その幹に刻まれていたのは、仲間の『信頼』。
(……みんな……)
こんな自分を、みんなは信じてくれた。
シカマルは、ずっと信じていてくれた。
自分が一番弱くて臆病だということは、出発前から知っていた。
それでも、あの次郎坊とかいう強敵に勝つことができたのは、シカマルという親友の誇りを守りたかったから。
大切な親友の誇りが、とことん傷つけられたから。
そのための決意と勇気を持てたのは、きっと、
ナナのおかげ……。
―――――――――――――――
『すっごかったのよー、ナナ!!』
中忍試験、第三試験の予選が終わった時、アスマが約束どおり連れて行ってくれた焼肉屋でいのが言った。
『忍者学校の頃とはぜんっぜん別人だったの!! ね、シカマル!!』
『あー。メチャクチャ強かったぜ、ナナのやつ』
事細かにその様子を語るいの。
焼肉を食べている最中など、大抵いのの話なんて耳を素通りだった。
が、その時は箸こそ休めなかったものの、チョウジの耳はちゃんと機能を果たしていた。
ナナは、『友達の誇り』のために戦ったという……。
あの、リーとかいう忍のために。
いのはそこのところを詳しく言わなかったが、チョウジはそれを心に強く受け止めた。
だって……。
自分を馬鹿にしなかった人間は、数えるほどしかいなかったから。
シカマル……大切な、大切な親友。
それに、二年前、木の葉に来たばかりのナナ……。
『チョウジがくれるお菓子、なんで全部おいしんだろ』
そう言って笑ったナナ。
何気ない言葉に添えられた笑みはもったいなくて。
自分に向けられるにも、もったいなくて……。
『チョウジのマフラーって、カッコいいよね』
そんな言葉だって、もったいなかった。
クラスの中心とは言えない場所で、その輪にいるでもない『ナナ』という存在を眺めていたからわかる。
ナナは誰にだってやさしくて、いつだって笑ってた。
トロい自分でさえハラハラするほど頼りなくて、それでも、いつも浮かべていた笑みは、芯にある強さをさりげなくかもし出していた。
だから、ナナが今、どんなに苦しんでるか、よくわかる。
里を出る時に見せたあの顔は、今でも信じられないくらい辛そうだった。
でも、ナナはここまで来た。
一緒に。
サスケやサクラとの間で何があったか知らないけど、ナナはそれも乗り越えてここまで来た。
きっと一生かかったって、ナナには敵わない。
そう、思う。
だからこそ、今、少しでも変われるのかと……そう思っていたから、
『ボクだっ!!!』
友の誇りが傷つけられたあの時に、心から叫べた。
シカマルの、誇りのために。
この敵は、なんとしても『自分が』やらなくては……。
その決意を持てたのは、だからナナのおかげだと、
心からそう思える。
「ぐっ……!!!」
激痛に、立つ力は奪われる。
チョウジはその木を背にして、地にうずくまった。
(みんな……シカマル……ゴメン……)
体の機能が、停止していくような感覚の中……。
(そっちには……行けそうも……ないや……)
そう思って。
(ナナ……)
ナナだけは、前へ進むことを、
(ボクも……あのサスケには、君が……)
強く願って。
(必要なんだって……思うよ……)
最後の心を飛ばして、
(みん……な……)
チョウジは……目を閉じた。