『借り』がある……。
『砂と木ノ葉は再び同盟を結んだから』、とかいう理由なんかじゃなく、返さねばならぬ『借り』があったから、自らの意思を持って動いた。
己の存在を引っぱり上げた、『うずまきナルト』。
そして、敵だったはずの自分を救った『いずみナナ』。
木ノ葉には、返しても返し足りない『借り』がある。
「ナルトくんとナナが、サスケくんを追って先に行きました」
隣でリーがそう告げた。
「そうか……」
答えてから複雑な心境になる。
あの二人が行ったのなら、きっと……。
そういう思いと。
逆に、
そういう思い。
部外者だから、余計に複雑だった。
木ノ葉で見た彼らは、うっとうしいくらい『仲間意識』が強かったはず。
なのに、今、自分がここにいるのは
自分が見出した、うちはサスケの『孤独』。
それを改めて思い知る。
自分によく似た、あの瞳……。
だが、信じたかった。
うずまきナルトと、いずみナナを。
そんな甘い現実じゃない……という考えはある。
どちらかといえば、そっちの思いが強かった。
でも信じたかった。
世界には『温度』があることを、自分に教えたあの二人を。
だから、確かめるように、呟いた。
「あの二人なら、うまくいくんだろう……」
「ええ、ボクもそう信じてます」
隣から返ってくる、迷いのない言葉。
コイツも大したやつだったな……と思いながら見やる。
大して『熱い』やつだった……と。
するとリーは、思い出したように彼に聞いた。
「そういえば、君はナルトくんと戦ったんですよね」
「ああ……」
答えると、もうひとつの問い。
「ナナとも、話したことがあるんですか?」
リーが不思議に思うのも無理はないだろう。
“あの事”は、おそらく居合わせた姉兄とうちはサスケしか知らないはず。
よくは覚えていないが、ナナの使った術は異常だった。
ナナが“あの力”を他人に明かしているとは考えにくい。
だが、不思議そうに寄った厚い眉毛を見て、素直に答えた。
「オレはアイツに救われた」
救われた。
敵だったはずなのに……。
が、リーは驚きの欠片も見せずに納得する。
「そうですか、やっぱりナナはすごいです!」
なぜお前が得意げな顔をするんだ……と内心突っ込みつつ、彼は小さくうなずいた。
確か『友だちだから』という理由を口にして、この男の『誇り』のために戦ったナナ。
そして、敵だったはずの自分を無条件に救ったナナ。
その『すごさ』は、自分もよく知っているつもりだった。
しかし、リーは意外なことを口にする。
「でも、今のナナは……誰かが救ってあげなくちゃいけないのかもしれません」
「…………?」
意味が飲み込めず、下まつ毛を凝視した。
リーはため息をつくように言った。
「傷ついて、悲しんで……ボロボロです……」
最後にこう付け足して。
「
「…………」
彼は何も言えなかったし、それ以上聞けなかった。
『あのナナ』が、今、何を思って目の前から去った『仲間』という存在を追っているのか。
うずまきナルトは、おそらく迷いもせずに進んでいるのだろう。
だが、ナナは……。
『もうあなたは……人の死で自分の存在を実感する人じゃない……』
たしかナナはそう言ってくれた。
自分を『変わった』と言って、変えてくれた人だった。
強くて、優しくて、温かい……。
そのナナが、変わってしまったのだろうか。
だとしても……。
彼はただ、空を見上げて、遠くのナナへと思いを馳せた。