「面白いものが出来たよ!盟友!」   作:黒夢羊

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第6話 売れず繁盛の店

 人里から少し離れた場所にある原生林。

幻想郷に住まう人妖から『魔法の森』や『森』と呼ばれるその場所の入り口近くには、ポツンと1つ佇む瓦屋根の目立つ和風の一軒家がある。

しかし、よくよく見ればその入り口はドアでありながら、窓は障子であるなど、所々からちぐはぐな印象を受けるその建物の名は香霖堂(こうりんどう)

 

 幻想郷で唯一外の世界の道具、冥界の道具、妖怪の道具、魔法の道具全てを扱う道具屋で、なお販売だけでなく買い取りも行っている。

人妖ともに拒まれず、誰でも利用できるこの店には今現在二つの人影があった。

 

 1つは香霖堂の店主である森近(もりちか) 霖之助(りんのすけ)

眼鏡をかけた整った顔立ちで、

椅子に座り本を読んでいるその姿から、知的な雰囲気を見るものに感じさせる彼はその若々しい見た目に反し、幻想郷創立以前から生きる長寿の妖怪と人間のハーフ。

 

 もう1つは外来人、葛之葉 真上。

椅子に座りっぱなしの霖之助と異なり、店の中をひっきりなしに彷徨ついている彼は霖之助の指示で香霖堂の商品の入れ換えを行っていた

季節は春。夏に比べ空気が涼しいとはいえ、空気の籠った香霖堂の中で動き回っている彼の額には汗が浮かんでおり、幾つもの道具が入った木箱を床に下ろすと首にかけた手拭いで額の汗をぬぐいながら店の棚に陳列される商品を見渡す。

 

「それにしても……」

「うん?どうしたんだい」

「いえ、こうして改めて見ると色んな道具があるなぁと思いまして」

 

 真上はそう言って幾つもある商品達を眺める。真上その言葉に何を思ったのか、手元の本から顔を上げるとその視線を彼の方へと向けながら呟く。

 

「生憎、能力のお陰で用途とかは分かるんだが、実際に使うとなると分からないものが多くてね」

「確か『道具の名前と用途が判る程度の能力』でしたっけ?」

「ああ……便利なのは確かだし、名前や用途が判れば問題ないと以前は思っていたんだが……如何せんそう上手くはいかないみたいだ…………おっと、それは右側の3段目辺りに置いてくれ」

「あ、分かりました」

 

 困ったといった感じに後頭部をかく霖之助。

その姿を視界の端に納めながらも、仕事を再開するためにガサガサと木箱の中から棚へと並べるために商品を取り出し、霖之助から指定された場所へ置いていく。

 暫くは商品を並べながら霖之助と談笑するだけの時間が過ぎていたが、それは唐突に第三者の手によって終わりを向かえる。

  

「お邪魔しますー」

 

 明るく活発な印象を受ける声で店の中に入ってきたのは、赤い瞳に黒髪のセミロングの美少女。

一見すれば人間と見間違う容姿をしているが背中にある烏のような黒い翼が彼女が人間であると言うこと否定する。

頭に赤い山伏風の帽子を乗せ、帽子から垂れる左右の紐を揺らしつつ此方へ快活な笑みを浮かべるのは名を射命丸(しゃめいまる) (あや)。妖怪の山を河童と共に治めている天狗の種族の1つ、烏天狗の少女である。

 

「いらっしゃいませ、射命丸さん。今日は何用ですか?」

 

 入り口付近から既に所狭しと置かれている道具やガラクタに目をやりながら店内に入ってくる文を迎える。

実は文がここ香霖堂にやってくるのは特段珍しいことではなく、少なくとも真上がここで働き始めた頃には既に月に2~3回ほどはやって来ている。

 

 

 どうやら頻繁に入れ替わる香霖堂の商品のチェックが目的のようで、暫く商品を眺めていき、気になったものがあれば霖之助や真上と会話を交え、全部を見終わると「また来ます」と一言の後に店を出る。

…………最初は商品を見るだけで殆ど商品を買っていかないという文を始めとした香霖堂の客に驚いていた真上だが、今ではすっかり慣れてしまい、店の外まで客を見送る余裕が生まれている。

 

 今回も恐らくはそれだろうと内心思いつつも、今の自分は香霖堂で働く店員である。店主の霖之助が「やらなくても良いのに」とは言っているが、それでも折角やってきた客を無下に扱うわけにはいかない。

そのため一応、念のために文に来店の目的を聞いた真上だったが、彼女が返した答えは真上の予想とは異なっていた。

 

「いや、実は霖之助さんに取材用カメラの修理を依頼してまして。今日はその受け取りに来たというわけです」

「……あ、ああ。そうだったんですか。それはお邪魔しましたね、どうぞ」

「いえいえ」

 

 予想外の答えに吃りつつも、意図せぬ事とはいえ霖之助へ一直線に向かうことの出来る道を遮ってしまっていた事に謝罪しつつ横に避けて文に道を譲る真上。

そんな彼に会釈しながら文は勝手知る他人の家のように、迷うことなく霖之助が待つカウンターの方へと向かう。

そしてカウンターへやって来た文を見た霖之助は、彼女に修理品を持ってくるので寛いでいてくれと、伝えそのままカウンターの奥へと消えていった。

 

 手持ち無沙汰となった文は、道具の埃を落としている真上の隣へ並ぶと、出来る限りの自然体に、良くある日常会話をするようなトーンで彼に声をかける。

 

「そ、そう言えば真上さん」

「……はい?なんでしょうか、射命丸さん。もしかして気になるものでもありましたか?」

 

 いつの間にか隣に並んでいた文に内心驚きつつも、表情に出すことなく店員としての対応する真上。

一瞬なぜ自分に話しかけて来たのだろうかと疑問に思うも、霖之助が奥に消え不在の今、自分に話しかけてきたということか購入したくなった商品があり、それで話しかけたのではないかと考える。

 

「前から言ってますが名前で呼んでも良いんですよ?……まぁそれはそれとして、商品ではなくて真上さんにお願いしたいことがありまして」

「……依頼?私にですか?」

 

 ようやく店の商品が売れるところが見れると言う期待を裏切られ、若干声が沈む真上だったがその後に続いた内容に首をかしげる。

そんな怪訝そうな反応を返した彼に対し、調子を取り戻したのか明るいいつもの笑みを浮かべる文。

 

「はい!私が以前、真上さんにインタビューをさせて欲しいと言って約束をしたのは覚えてますか?」

「ああ、勿論ですよ」

 

(確か、外来人である私の記事は見目新しいモノを求める幻想郷の方々に一定の需要があって、それに人里での交流の切っ掛けになるとかで受けることにしたんでしたっけ……?)

 

 そんな当時のことを思い出しつつ、約束を覚えていることを真上が告げると文は見るからにホッとした様子で胸を撫で下ろし。

 

「良かったです、忘れられていたらどうしようかと思いましたよ~」

「それは無いですよ、射命丸さんが私の事も考えてくれた上での約束ですから忘れるわけがありません」

「へっ!?……あ、あははは!そ、そそそう言って貰えるとこちらとしても嬉しいですねぇ!」

 

 実際はネタ欲しさにそれらしい事を言って取材を取り付けただけであり。今はともかく、当時は真上の事などまったく考慮する気は無かった等とは口が割けても言えない文。

罪悪感からか吃りつつ、冷や汗を流しながら笑顔を浮かべる彼女は誰がどう見ても何かを誤魔化しているように見えるのだが、作業をしながら会話をしている真上はそれに気づくことはない。

真上がこちらの言葉を信頼してくれているのが分かる反面、だからこそ今更ながらに申し訳なさを感じる。

ザクザクと己の罪悪感に刺さる相手からの信頼を剃らすために文は話題を切り替え、早急に本題に移ることにした。

 

「そ、それでですね!そのインタビューの件なんですけど、その後あの異変が起き始めて出来ず終いじゃないですか」

「……確かにそうですね」

 

 実際に異変を起こした軍勢の首魁が現れ、本格的に事を起こしたのは4~5日程度だったのだが、それ以前から敵側の干渉がインタビューの約束を取り付けた直後から約半年近く起き続けており、当時の文はそちらの方の調査に乗り出していた。

真上も独自に行動しており、それによって異変が解決しきるまで録にインタビューの機会なんてものは訪れず、解決した後も

 

「そ・こ・で!先の異変解決の功労者の1人である真上さんに約束していたインタビューも兼ねて、異変解決までの話を聞きたいんですよ」

「ふーむ、成る程……しかしなぜ私なんでしょうか?あの異変を解決したのは霊夢さんですし、その2人に聞いた方がより良い記事に出来るのでは……」

 

 作業を一旦区切り、文に向き直りながら告げられた真上の言葉に笑顔から一転、困ったように目を閉じ腕を組んだ文は言葉を選びながら真上に対して説明を始める。

 

「確かに真上さんの言う通りなんですけど、霊夢さんの話は途中からあの人の独壇場になってるので中々裏が取れないんですよね……霊夢さんと対峙した異変の首謀者に話を聞こうにも、文字通り跡形もなく無くなってますし。私自身がその場に居合わせていれば話は別なんですけど」

 

 ハァ……とため息をつく文。

記者として新聞のネタ、それも見出しを飾れるような特大のネタが眼前にありながらそれに手を出すことが出来ないのはかなり悔しい。

ならば霊夢の話だけを聞いて書けば、霊夢自身そこまで見栄を張る性格でもない為に問題は無いように思えるのだが、『清く正しい射命丸 文』を自負しているだけあり、出来るだけ掲載する内容は裏が取れたものにしたいのだ。

 

「それで、ですよ。真上さんも霊夢さんと異変の首謀者との最後の戦いの場に居合わせたんですよね?」

「そうですね、力不足でまったく役に立つことが出来ませんでしたが、それが…………ああ、成る程。そう言うことですか」

「そう!あの場に居合わせた真上さんの証言があれば霊夢さんの話の裏も取れますし、真上さん自身の異変の行動を知ることで記事に深みが出ます!なので!是非!」

「あ、あの……」

 

 興奮した様子でずずいと美しさと可愛らしさを両立した整った顔を近づける文に思わず少しだけ後ろに下がる真上。

しかしお互いの距離の近さに気付いていないのか、そんなこと構わずに文は捲し立てる。

 

「少s「真上さんであれば人里の方からも信頼されてますし、裏付けとしては充分なんです!」……」

「更にその真上さんのインタビューもあればネタとしては充分すぎる内容になる筈!ですかr「射命丸さん」……はい?」

「あの……この距離は少々近すぎるかと、思うのですが」

 

 最初は真上が何を言っているのか理解できなかった文だったが、あと一歩でも距離を積めれば互いの唇がふれ合う距離であることに気が付いたのか、その肌は段々と朱に染まっていき、終いには熟れたトマトのように真っ赤に変わる。

見事な変わりようですね。と真上がそう内心で思った瞬間、バッと跳び跳ねるように文が後ろに下がり、ワタワタと両腕を動かしながら罪に問われてもいるわけでも無いのに早口で弁明を始める。

 

「えっ、えっとですね!ここれはべべっ別にそう言う意図があったという訳じゃなくて、そっそそそのより良い記事を作りたいという私の信条からきた行動でして新聞記者としてごくごく当たり前というか仕方ないというかなんと言うか言い表し辛いんてですけど決して口付けをしようした訳ではなくてでも別にだからといって真上さんの事が嫌いと言うわけではなくてむしろその逆で好意を持っていますというかうわぁあああ!?」

「落ち着いてください、落ち着いてください、射命丸さん」

 

 余りの早口に彼女が正直何を言っているのか分からない真上だったが、今の文が混乱しているのは目を見るのも明らかな為に、失礼だとは思いつつも彼女の肩に手を置き勤めて冷静に何度も落ち着くように促す。

腕を振り回す事で商品と彼女の腕に傷が付くことを危惧し肩に手を置いて落ち着かせようとした真上だったが、手を置かれた当の本人は湯気でも出そうな程顔を赤くし、更に慌ててしまい。

真上がそれを宥めるのに余計に時間が掛かってしまったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変お恥ずかしいところをお見せしました……」

「いえいえ、お気になさらないでください」

 

 なんとか真上の説得(?)によって落ち着いた文。

先程に比べ顔はいつもの色を取り戻してはいるが、良く見ればその頬は未だにほんのりとだが朱に染まっている。

……それが他人の前で取り乱したことによるものなのか、それとも別の要因なのかは本人のみぞ知ること。

 

 それはともかく、真上は先ほどの取材の件について答えていない事を思い出し、文の意識を先ほどの混乱状態からそらす意味を含めて話題を変えることを試みる。

 

「そうだ。先程の取材の件なんですが、お受けさせていただきます」

「……え、良いんですか?」

 

 若干うつむき気味になっていた顔が上がり、驚きの色が込められた赤い瞳が真上を映す。

自覚がない上目遣いに怯む真上だったが、なんとか頷き返し、了承の意を伝える。

 

「ええ、それで射命丸さんの記事が良いものになるのであれば喜んで」

「あ、えっと……その、ありがとうございます」

「……いえいえ、感謝されるほどではないですよ」

 

 入店した時の快活な様子からは想像できない程にしおらしく感謝する文に何やら良からぬ感情が芽生えそうになるのを必死にこらえる真上。

恥ずかしい思いをして落ち込む彼女に対してなんて失礼なことを思っているんだと己を罵倒しながら取り敢えず今の状況を打開するために会話を続けようとするが、元々そこまで話題作りが得意でない彼が上手くその場を回せる筈もなく、それ以降会話が続かずなんとも言えない空気が2人と店内に流れる。

 

──誰でも良いので助けて欲しい。

そう思った彼の願いを叶えたのは妖怪の山にいる神でもなく、ましてや毘沙門天の化身でもない。

彼自身が働く香霖堂の店主であった。

 

「待たせてしまってすまない、少々散らかしてしまっていてね。見つけるのに少し時間が掛かってしまった」

 

 それからの彼女は速かった。

音もなく、そして目にも止まらぬ速さでカウンターへ向かうと事前に用意していたであろう修理の代金をカウンターに置き、カメラを半ば引ったくるかのように受けとると短く「ありがとうございました」と告げそのまま店の外へと飛び出していった。

慌てて真上は追いかけ店の外に出るが、そこには既に彼女の姿はなく、ただ黒い羽がヒラヒラと舞い落ちて来るだけであった。

 

 

 

幻想郷最速。

 

 

 彼女のそう謡われるその素早さは今こうして遺憾無く発揮されたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんと言う速さかと、呆然と彼女が消えていったであろう青空を眺める真上。その光景を見つめる1つの影。

 

「ふふ、これは聞き捨てならないことを聞いたね」

 

そして、やがて店員としての仕事をするために店内に戻る真上は勿論のこと、瞬く間に店から出ていった文も呟かれたその声が聞こえることはなく、声の主と共に森の中に溶けるように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーすっ!来たぜ、香霖(こうりん)

 

 文が店を出てから寸刻。

同じ明るく活発なイメージを持ちつつも彼女とは違う、若干男勝りな口調の持ち主が香霖堂を訪ねてきた。

店の入り口に視線をやるとリボンのついた大きめの黒い三角帽と黒系の服に白いエプロンと外の世界で語られる魔法使いのような身なりの少女が立っていた。

 

 その少女の名は霧雨(きりさめ) 魔理沙(まりさ)

正真正銘の魔法使いであり、幻想郷で起きた数々の異変を解決してきた博麗の巫女である博麗 霊夢と同じ異変解決のプロであり、ここ香霖堂の常連客の1人である。

そんな片手に彼女の背丈はあろう箒を、反対側の手には何やら大量に何かが入っているであろうパンパンに膨らんだ白の布袋を持った魔理沙は何の迷いもなく店の中へ足を踏み入れる。

 

「いらっしゃいませ、霧雨さん」

「おう!毎回会うたびに言ってるが魔理沙で良いぜ」

 

 店員として挨拶をする真上に満面の笑みで返事をしながらカウンターへと向かい、その上に袋を置く。

そこそこの重さがあったのであろう。置かれた袋はドサリとやや大きめの音を立てる。

 

「今日はこれを買い取って貰いに来たぜ」

「ふむ……どれどれ」

 

 閉められていた袋の紐を解き、中に仕舞われていた道具と思わしきものを時に眺め、時に振り、時に叩きながら1つの1つ丁寧に鑑定していく霖之助。

結果に時間がかかるのが分かっているからか、彼が鑑定を始めるや否や真上の方へとやって来て、相も変わらず商品の埃を落としている彼に話しかける。

 

「どうだ、ここでの仕事にも慣れたか?」

「ええ、森近さんもお優しいので楽しくやらせていただいてます……これでお客様が商品を買っていってくださったらなお良いのですが」

「ふふ、言うようになったじゃないか。最初の頃とは大違いだぜ」

「霧雨さんのお陰ですよ」

 

 そう軽いやり取りを行う2人。

自分から絡み行く魔理沙と基本的に受け身である真上。会話に置いて相性が良いのもあるが、一部を除いた他の少女達よりもやや真上の態度が砕けているのは、何よりも彼女の性格によるものが大きかった。

才能の塊である霊夢に並び立つために誰の目も届かない影で途方もない努力を重ねる彼女のその姿を偶然目にした真上は強い憧れと尊敬の念を抱き、以降時折ではあるが彼女の魔法の研究に付き合うようになる。

 

 魔理沙も己の実力不足を認め、強くなろうと方法を模索し足掻く真上に少なからず共感を覚えており、彼が扱う術具に関しての相談事を持ちかけられた際は、専門外でありながら魔法使い目線での案を述べたりしている。

 そうして行く内に2人の仲が良くなるのは必然であり、今では友人のような関係に落ち着いている……最も、真上の名字呼びと敬語使いのせいで他者から見ればそのようには見えないのだが。

 

「それで最近は術具の開発はどうだ?順調か?」

「……残念ながら余り進んでいませんね、材料があまり集まらないのもありますが、如何せんそう言う知識が不足しているのが何よりの痛手ですね」

「それなら紅魔館の図書館はどうだ?あそこならお前が求めてる内容の本があるかも知れないぜ」

「それも考えたんですが……私が行けば紅魔館の皆さんが不快に思われるでしょうから」

 

 少し沈んだ声色の真上の答えにほんの少しだけ、瞳をきょとんとさせた魔理沙だったが、次の瞬間には大きなため息をこれ見よがしにつき、呆れたと言わんばかりに半目で真上を睨む。

 

「……あのなぁ、もし本当にお前の事を不快に思ってるんだったら、お前の特訓にあの門番が付き合うと思うか?」

「……紅さんはお優しい方ですので」

「ハァ……改めて見たがこれは重症だな

「霧雨さん?」

「いや、何でもないぜ」

 

 決して嫌われていないと諭そうにも全く聞く耳を持たない真上に、ため息の後に小さく、小さく呟かれた魔理沙のその一言を真上が聞き取れる事はなく、呟いた魔理沙も有耶無耶に終わらせる。

以前頭を悩ませる真上に魔理沙は仕方ないな、と内心呟くとビシッ!と真上を指差す。

 

「よし、次の研究に必要な魔術書を今度取りに行くんだが、その時にお前にもついてきて貰うぜ。お前を連れていけばすんなりと紅魔館に入れるし、多少は探しやすいだろうからな」

「はぁ……」

 

 「言っとくがお前に拒否権はないんだぜ~」と鼻歌混じりに言う魔理沙。

真上も彼女が唐突に約束を取り付けてくることは何度か経験済みであり、この時は幾ら断っても無駄だと言うことを理解しているので困惑しながらも決して文句を言うことはなかった。

 

 それから暫くの間、魔理沙の愚痴に付き合っていたが、霖之助が鑑定を終え買い取りの代金を受け取ると「じゃあな」と一言告げて箒で飛び去っていく。

 

「またのお越しを~」

 

 店の外まで出てそう言いながら手を振り、魔理沙を見送る真上。

ふと空を見れば頂上にあった太陽も傾き、西の方角へ段々と沈んでいこうとしており、空はまだ青いが今日という日の終わりが少しずつ訪れていることを知らせる。

 

 しかし、まだまだ香霖堂は開店中。

今日の間にやっておくべき事はもう少し残っている上に、魔理沙が持ってきた道具も陳列しなければならないだろう。

 

(数が少ないと助かりますけど、どうでしょうかね)

 

 そう内心でため息混じりに呟いた真上は店の中へと戻って行く。

春風吹く季節の中。

香霖堂の道具は今日も売れることはなく、いつも通りに閑古鳥が鳴いていた。

 

 

 

 

 

 

 




今回も読んでいただき有り難う御座います。

まさかの評価バーに色がつくとは思っていなかったので、思わず二度見しました。
今後も精進していきたいと思います。

それと、話は変わりますが何人かの方に「タイトル詐欺では?」と言われたのでタイトルを変更しようか悩んでいる状態です。
なのでいきなりタイトルが変更される可能性があることをお知らせしておきます。

あと、今後についてアンケートを設置しておりますので、もし宜しければ投票をお願いします。

今後の展開の優先度について

  • 幻想少女とのやり取り重視
  • 異変について
  • 外の世界の友人達との再開
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